多和田新也のニューアイテム診断室

DDR3-1333対応のハイエンドチップセット
「Intel X38 Express」




 1,333MHz FSBをサポートするIntel 3シリーズチップセットが正式発表されたのが2007年6月。その段階ではメインストリーム向け製品のみの発売となっていたが、10月10日からハイエンド向けチップセットとなる「Intel X38 Express」搭載製品の発売が始まった。この製品の大きな特徴であるDDR3-1333利用時のパフォーマンスを検証してみたい。

●DDR3-1333、PCI Express Gen2をサポートする初のチップセット

 まずは、Intel X38の特徴について簡単にまとめておきたい。Intel 3シリーズの従来製品に対する優位点は下記の通りである。

1. DDR3-1333をサポート
2. ECCメモリサポート
3. PCI Express 2.0(Gen2)をサポート

 Intel 3シリーズで初めてサポートされたDDR3 SDRAMであるが、メインストリーム向けとなるIntel P35/G33などではDDR3-1066までの対応となっていた。Intel X38では、より高クロック動作となるDDR3-1333に対応する。すでに発売されていたIntel P35を搭載する製品の中にも、メーカー独自の対応としてDDR3-1333をサポートするものがあったが、Intel X38ではチップセットレベルで正式にサポートされるのが大きなポイントである。

 また、メモリについて、ECCメモリがサポートされる点もIntelのハイエンド向けチップセットの伝統に則った特徴である。

 そして、Intel X38のもっとも大きな優位性といえるのが、PCI Express 2.0のサポートである。従来のPCI Express 1.xに対して1レーン当たり倍の帯域幅を持つ規格で、PCI Express 2.0 x16の場合、上下合わせて16GB/secの帯域幅となる。このPCI Express 2.0を、Intel X38は32レーン分持っている。よって、PCI Express 2.0 x16×2スロットという構成が可能になり、CrossFireもサポートしている。

 ただし、PCI Express 2.0をサポートしたビデオカードは現時点で発売されていない。PCI Express 2.0はPCI Express 1.xの上位互換となっているので、現状ではPCI Express 1.x対応のビデオカードを装着して従来の帯域幅で利用することになる。

 もっとも、AMD、NVIDIAともに年内にPCI Express 2.0対応ビデオカードをリリースする見込みで、これらが発売されれば、Intel X38とP35などの差が、より明確になるだろう。

●DDR3-1066、DDR3-1333の違いを見る

 さて、今回のテストに利用するのは、ASUSTeKの「P5E3 Deluxe/WiFi-AP」である(写真1)。合わせてIntel P35を搭載する「P5K3 Deluxe/WiFi-AP」(写真2)も借用している。

 なお、今回のテストとは直接関係がないが、ASUSTeKのP5E3 DeluxeはExpress Gateと呼ばれる一種のインスタントOS機能が実装されている(画面1)。マザーボード上に実装したフラッシュからLinuxを起動して、WebブラウズやSkypeを実行できるもので、簡易的な利用において便利そうな機能である。新チップセットを搭載しているだけでなく、独自機能の面でも野心的で興味深い。

【写真1】Intel X38 Expressを搭載する、ASUSTeKの「P5E3 Deluxe/WiFi-AP」。次のIntel P35搭載機と比較するとチップセットヒートシンクが非常に大型化されていることが分かる 【写真2】Intel P35 Expressを搭載する、ASUSTeKの「P5K3 Deluxe/WiFi-AP」 【画面1】P5E3 DeluxeではBIOS POST処理の初期段階で、Linuxを利用した簡易システムを選択し起動することができる。ここではWebブラウザやSkypeなどを利用可能

 メモリはKingstonの「KHX11000D3LLK2/2G」をテストに利用する(写真3)。このメモリは本来DDR3-1066のオーバークロック向けメモリとして発売されているもの。ただ、メモリの型番からも分かる通り、1,333MHz以上のクロックで動作するとされている。

 SPDにはDDR3-1333のパラメータが登録されていないが、BIOSから指定することで1,333MHzで問題なく動作する。各種パラメータはオーバークロック時の動作に合わせて設定されているパラメータが適用されており、DDR3-1333では一般的なCL=9に設定されている(画面2、3)。

 なお、今回からCPUやチップセットの記事に関してもテスト環境をWindows Vista Ultimateに変更することにした。それに伴い、いくつかのベンチマークソフトの入れ替えを行なっているのでご留意いただきたい。

【写真3】テストに利用したKingstonの「KHX11000D3LLK2/2G」。オーバークロック用メモリで、DDR3-1375相当までサポートしている 【画面2】ASUSTeKの仕様表によればDDR3-1600/1800にも対応するとされるが、今回使用した機材では333MHz FSB時にDDR3-1333までの選択が可能となっていた 【画面3】BIOSでDDR3-1333に指定して起動すると、9-9-9-25のパラメータが適用されている

【表】テスト環境
チップセット Intel X38 Express Intel P35 Express
マザーボード ASUSTeK P5E3 Deluxe ASUSTeK P5K3 Deluxe
CPU Core 2 Extreme QX6850
メモリ PC3-10666 DDR3 SDRAM 1GB×2(9-9-9-25) PC3-8500 DDR3 SDRAM 1GB×2(7-7-7-20)
ビデオカード NVIDIA GeForce 8800 GTX(ForceWare 163.69)
HDD Seagete Barracuda 7200.10 (ST3250620AS)
OS Windows Vista Ultimate

 では、まずはマザーボードやメモリクロックの違いによってCPU性能が変化していないかをチェックしておきたい。テストは、Sandra XIIの「Processor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark」(グラフ1)と、PCMark05のCPU Test(グラフ2、3)である。

 若干ながらIntel X38で良好なスコアを出す傾向がみられるが、ほぼ誤差の範囲といっていいだろう。PCMark05とSandraでまったく同一の傾向が見られるわけではなく、CPU性能の面で大きく結果が左右されることはなさそうである。

【グラフ1】Sandra XII (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test - シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test - マルチタスク)

 続いてはメモリ性能である。テストはSandra XIIの「Cache & Memory Benchmark」(グラフ4)、EVEREST Ultimate Edition 2007 Version4.00」のCache & Memory Benchmark(レイテンシの項のみ、グラフ5)である。

 まずメモリアクセス速度の面で、DDR3-1333がかなり良好なスコアを出している。これに加え、同じDDR3-1066でもIntel X38とP35で差が出る結果となっている。同じシリーズに属する製品ではあるが、ダイ自体が違うことからメモリコントローラにも若干手が加えられている可能性がある。

 レイテンシに関してはDDR3-1066の2環境においては、それほど大きな差がない。一方、DDR3-1333においては大幅にレイテンシが下がる結果がみられた。DDR3-1066のCL=7とDDR3-1333のCL=9は時間にして大きな違いはない。にも関わらず、グラフ5のような結果になってしまっている。

 また、誤差程度に留まるはずのL2キャッシュのレイテンシにも大きな差が出ており、Intel X38とDDR3-1066の環境におけるレイテンシは過去にテストした結果と比べても非常に大きな値である。

 これらの結果を見るに、ASUSTeKのP5E3 Deluxeは、よくも悪くもチューニング途上であるということだろう。

【グラフ4】Sandra XII(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ5】EVEREST(Cache & Memory Benchmark)

 ここからは実際のアプリケーションを利用したベンチマークである。テストは「SYSmark 2007 Preview」(グラフ6)、「CineBench R10」(グラフ7)、「動画エンコードテスト」(グラフ8)である。また、3D関連のアプリケーションとして「3DMark06」(グラフ9、10)、「3DMark05」(グラフ11)、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ12)、「LOST PLANET EXTREME CONDITION」(グラフ13)の結果も合わせて紹介する。

 結果を見ると、安定はしていないがIntel X38とDDR3-1333の組み合わせが他の環境に比べて好結果を出す傾向を見てとることができる。DDR3-1066との組み合わせでは大きくスコアを落とすケースが目立っており、先のL2キャッシュのレイテンシで見せたような性能の不安定さが影響していると想像できる。

 もう1つIntel X38の特徴的な点として、SYSmarkの3DやLOST PLANETといった3D関連ソフトの一部でP35よりも大きく勝っている。いずれもWindows Vista登場後にリリースされたアプリケーションだが、このほかの3D関連のベンチマークでは両者でそこまで大きな差はなく、ハードウェア上の決定的な性能差とは言い切れない。ただ、PCI Expressのコントローラに変更が加えられているのも事実で、互換性のある規格ではあるが、両者において性能差が発生したという点は気に留めておく必要があるだろう。

【グラフ6】SYSmark 2007 Preview(Ver.1.02)
【グラフ7】CineBench R10
【グラフ8】動画エンコード
【グラフ9】3DMark06 Build 1.1.0 (CPU Test)
【グラフ10】3DMark06 Build 1.1.0
【グラフ11】3DMark05 Build 1.3.0
【グラフ12】Splinter Cell Chaos Theory Patch 1.05
【グラフ13】LOST PLANET EXTREME CONDITION(DX10)

●ハイエンドの性能を垣間見せたX38

 多くのテストでもっともよい成績を出したのが、Intel X38+DDR3-1333の環境であることを見ると、持っているポテンシャルの高さは感じられることができる結果となった。もちろん、この差はメモリクロックの差によるものと考えるのが妥当であり、より高いクロックのメモリをサポートする強みが発揮されたに過ぎない。

 現時点ではDDR3-1333のメモリモジュール自体の選択肢が少ない上、DDR2 SDRAMの価格低下もあって、相対的にも非常に高価で手を出しづらい状況ではある。しかしながら、高い性能を求めるユーザーに対して、より性能の良いパーツを選択できる製品を用意している点や、Yorkfield/Wolfdale世代まで利用できることを見据えて導入に踏み切るという選択肢も悪くない。

 また、PCI Express 2.0対応のビデオカードが登場したとき、改めて評価を見直す必要があるかも知れない。この点に関しては、現在の3Dグラフィックにそれほどの帯域幅が本当に必要なのかという疑問もあるわけで、実際に製品が登場するまでは未知の部分である。PCI Express 2.0対応ビデオカードの登場は遠くない話であり、将来性というファクターを抜きにしても、性能面でインパクトを与えるものであったならばIntel X38の魅力は増すことになる。

□Intel X38 Express製品情報
http://www.intel.co.jp/jp/products/chipsets/x38/
□関連記事
【9月28日】Intel X38チップセット搭載マザーボードレビュー速報
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0928/x38.htm

バックナンバー

(2007年10月12日)

[Text by 多和田新也]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2007 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.