大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

オンキヨー傘下入りの真相を、ソーテック社長に聞く




ソーテック 山田健介社長
 オンキヨーによるソーテックの子会社化が発表されて、約3週間が経過した。

 なぜ、ソーテックは、オンキヨーの傘下入りを決定したのか。そして、オンキヨーとのコラボレーションによって、ソーテックはどう変わるのか。ソーテックの山田健介社長に、その狙いなどを聞いた。


●生き残るための資金

7月2日、オンキヨーが、ソーテックの発行済み株式総数の50.1%を取得し、連結子会社化することを発表しました。なぜ、ソーテックは、オンキヨーの子会社になることを決意したのですか。

山田 私は、2005年6月に社長に就任し、ソーテックの再生に取り組んできた。組織を再編し、人事給与体系の見直しや若手社員の積極的な登用、子会社の統廃合、新たな情報システムの導入によるマネジメントの改革などを進めてきた。現在、社員数は128人。スリム化はかなり進んでいる。だが、これらの施策はあくまでも「内向きの施策」であり、「外向きの施策」は打ち出せていない。

 PC事業で戦える体制を作るには、もっと踏み込まなくてはならないし、しかも、それを短時間にやらなくてはならない。細々とした資金だけで、手を打っても期待通りの効果が得られず、次の一手を打つのにも、もう待てないという状況にきていた。しかし、構造改革をさらに進めようとすると、資金的な壁に突き当たる。6期連続の最終赤字という状況では、銀行からの資金借り入れもままならない。構造改革をやるための資金を調達する必要があったのです。昨年から、資金を調達するための施策の1つとして、提携先を探していたという事実はありました。

「内向きの施策」に対して、山田社長が位置づける「外向きの施策」とはなんですか。

山田 いまさらいうことでもないが、PC業界の進化は劇的です。とくに、今は大きな変革のなかにある。例えば、一般コンシューマ向けPCは、デジタルメディアの融合、ブロードキャスティングを活用した新たなイノベーションが進展している。ところが、ソーテックの社内を見てみると、それに対応できる技術力が蓄積されていない。ファブレスメーカーを追求したツケが出ているんです。一時期は、金型の投資をしないという決定までした。2006年春以降は、これをやめ、金型への投資を開始し、オリジナリティのあるデザインを採用できるようになったが、金型をきっちりと見られる技術者が社内に不足していることも深刻な問題だ。

 また、コンシューマ市場を対象としたPCのラインナップと、量販店チャネルに偏った事業構造を見直す必要がある。収益性の高いウェブダイレクトビジネスの強化、法人向けビジネスへの展開、それらを実現する上でのBTO生産体制の確立が重要なテーマとなる。こうしたことを実現する上では、どうしても、外部との提携を模索しなくてはならない。そうした意味を込めた「外向きの施策」ということになります。

ソーテックが2006年1月に発表した法人向けPC「e-three」シリーズ。法人向け製品が、今後の成長の鍵を握ると山田社長は位置づける

必要とする資金はどの程度ですか。

山田 3年間で35億円。まずは20億円程度の資金が必要になると試算しています。当社では、コンシューマ向けPC分野における技術開発、Blu-rayや地上デジタル放送、PLCといった技術への対応、PCC(パーソナル・コミュニケーション・コンピュータ)と呼ばれるコミュニケーションを主軸としたPCの開発に取り組みたいと考えている。法人向けの体制強化や、シンクライアント、ワークステーション、サーバーといった領域への進出も視野に入れている。こうした事業を円滑に推進するためのBTOの体制強化も必要だ。これだけでざっと10億円が必要。さらに、これからのPC業界の発展を考えれば、周辺機器事業も育てていかなくてはならない。個人的には、Skypeに興味がある。こうしたさまざまな要素をどう組み合わせていくかも重要になってくる。やらなくてはいけないことが山積している。

外部に頼らず、自ら資金を調達する手段として、新株発行などもありましたね。

山田 基本的には、自主自立を目指したかった。その手段として新株発行という手があり、これにより、15〜20億円程度の資金調達は可能だったと思う。しかし、その新株をどんな人が購入するのか。買収を視野に入れている企業などに渡るリスクを考えると、その手段はなんとしても回避したかった。

オンキヨーの子会社化により、どの程度の資金調達が可能ですか。

山田 ミニマムで6億3,000万円。マックスで21億円です。ただ、オンキヨーの子会社となったことで、銀行との関係も変わるだろうし、社会的信用という点での変化は大きいと思っています。

●オンキヨー以外の選択肢

ソーテックは、KOUZIROとの提携を発表しています。KOUZIROの親会社であるヤマダ電機に支援を求めるという手もあったのでは。

山田 もし、ヤマダ電機が主力としていないダイレクトビジネスと法人向けビジネスにおいて、当社の事業基盤が出来ていれば、そうした選択肢もあったでしょう。しかし、当社の現状の主軸事業はコンシューマPC領域であり、量販店向けビジネスです。当社はメーカーです。その立場を維持するという点からも、それは慎重に考える必要がある。

オンキヨーとの話し合いはいつ頃からはじまっていたのですか。

山田 正式には今年2月からですね。オンキヨーが当社に興味を持っているという話をいただいた。それを受けて、2月中旬から、情報交換という形で話し合いの場を何度か持った。お互いにメーカーですから、わかりあえる部分も多い。その後、一時期的に会談は中止していたが、5月20日過ぎに、先方から提案をいただいた。これを検討し、7月2日の発表になったというわけです。

ソーテックにとっては、どんなメリットが想定されますか。

山田 今のソーテックには、PC業界のこれからの流れについていく体制が備わっていない。PCは、部品を買ってきて、それを組み合わせば済むといわれるが、やはり組み合わせるにもノウハウがいる。技術的に開発していかなければないない分野もある。そうした点でのシナジーを期待したい。これまでの体制では研究開発投資には限界があったが、それを改善できるだろう。ソーテックは、PCCをはじめとする新たな領域への展開や、法人向けのPCビジネスも加速したい。そうした製品開発を加速するための体制が強化できると考えている。短期的なシナジー効果というよりも、中長期的な視点での研究開発成果というものに期待したい。

2006年4月に発表したPCとAVを融合したHDメディア・コンピュータHDC-7発表では、インテルの吉田和正共同社長(右端)も登壇した オンキヨー代表取締役会長兼社長 大朏直人氏 HDC-7は、音質の向上に注力した特色あるPCだ

●100万人のユーザーへの責任

社員に対してはどんな説明をしましたか。

中央区東日本橋のソーテック本社
山田 7月2日午後5時から本社で約30分間、午後6時45分から、神奈川県の幸浦の拠点で、それぞれ私から直接、全社員に話をしました。昼過ぎには、社員に対して、資本提携について、私から説明があるという通達を出していましたから、なかには、それまでの経緯を見て、「ヤマダ電機の傘下入りか」と思っていた社員もいたようですが(笑)、オンキヨーというのは、誰も想像していなかったようですね。

 私は、社員に対してこう言いました。「ソーテックをいい会社にしたい。だが、自分たちのお金で、自主自立でやるには、時間も含めて、もう限界のところにきている。だから思い切って踏み出すことにした。業容を拡大し、黒字化するには、オンキヨーと手を組むしかない」。もちろん、社員には不安もあるでしょう。これまでとは違う文化が入ってくるわけですから、一人一人の努力も必要になる。ただ、腹を決めて、やっていこうと。ソーテックの社員は、知恵と気力と体力がある。

 私は、シャープというメーカーに長い間いたからわかるが、社員一人一人がいろいろな経験をできるのは、ソーテックという小さな組織にいるからです。とても、シャープじゃ、若いうちから、重要なポストを任されて、これだけの経験をすることはできない。そうした知恵と力のある社員だからこそ、新たな挑戦も乗り越えていけると信じています。

これから、もう一段踏み込んだリストラがありますか。

山田 人員削減という点では、「人には触らないでほしい」という要望を出していますから、それはありません。128人という社員数をこれ以上切るのは難しいと思いますよ。本社も今の場所のままです。上場廃止という手段もとらない。ただ、取締役の過半数を、オンキヨーから受け入れることになる。また、名刺に、「オンキヨーグループ ソーテック」という表記を入れるなど、一体感を出しながらPC事業の責任を負う体制とすることも検討したいですね。ただ、私の社長としての立場については、すべて預けてある。理由はどうあれ、私には黒字化できていないという責任がありますからね。

オンキヨーにとってはどんなメリットが想定されますか。

山田 これは、これからの話し合いになります。今週(7月23日の週)、オンキヨー側との話し合いの場を持ち、具体的な協業内容について検討することになります。高音質を追求するオンキヨーの技術と、年間20万台以上ものPCを出荷している当社の体制によって、どんな補完関係が実現するのか、オンキヨーは当社に何を求めることになるのか。それを踏まえて、8月中にはソーテックとしての1つの方向性が打ち出せると思っています。

山田社長は、ソーテックの社長に就任して以降、法人向けビジネスの基盤づくりに力を注いできました。その取り組みはまだ道半ばですが、コンシューマ事業に強いオンキヨーとの協業は、この推進に壁にはなりませんか。

山田 この点については、オンキヨーとの話し合いになってきます。ただ、私としては、これからの成長戦略を推進する上で、法人向け市場への展開は不可欠だと考えている。この成長戦略を描くための資本参加の要請でもあったわけですから、ここは、オンキヨー側にも、ぜひ理解を求めていきたいと思います。私は、ソーテックを良くしたいという想いだけで、ここまでやってきた。それはこれからも変わりません。年間20万台を出荷し、5年間で100万台ものPCを出荷している。100万人のユーザーに対する責任がある。オンキヨーという、ものづくりで成長してきた会社と手を組むことで、ソーテックは、さらに良くなっていくと信じています。

□関連記事
【7月2日】オンキヨー、ソーテックを完全子会社化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0702/onkyo.htm
【5月22日】【大河原】自社生産にシフトするソーテック、Vista時代の事業戦略を聞く
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0522/gyokai206.htm
【5月10日】ソーテックとヤマダ電機/KOUZIRO、PCに関する業務提携に基本合意
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0510/sotecyamada.htm
【2006年1月26日】【大河原】ソーテックは、今度こそ変われるのか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0126/gyokai149.htm

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(2007年7月24日)

[Text by 大河原克行]


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