多和田新也のニューアイテム診断室

1,333MHz FSBのハイエンド向けクアッドコア
「Core 2 Extreme QX6850」




 Intel P35/G33 Expressの登場で、PC向けIntelプラットフォームも1,333MHz FSBへの移行が始まった。この1,333MHz FSBのデスクトップ向けCPUで最上位モデルとなる「Core 2 Extreme QX6850」が間もなく登場する。そのパフォーマンスをチェックしてみたい。

●G0ステッピングを採用するQX6850

 今回登場するCore 2 Extreme QX6850(写真1、2)は、アーキテクチャ的には従来のKentsfieldを踏襲するクアッドコアの製品で、FSBクロックが1,333MHz(333MHz×4)、倍率が9倍に設定され、コアクロック3GHzとなる製品だ。L2キャッシュも4MB×2コア分の計8MBで変わりない。ワークステーション向けのXeonはデスクトップに先立って1,333MHz FSB化が進んでいるが、このラインナップの中にある「Xeon X5365」と同等の仕様ということになる。

【写真1】1,333MHz FSB/3GHz動作のクアッドコアCPU「Core 2 Extreme QX6850」 【写真2】Core 2 Extreme QX6850(左)と、同QX6800 G0ステッピング品(右)の裏面。両者に違いはない

 TDPは130Wとなっており、従来のCore 2 Extremeのクアッドコア製品と同じである。ただし、T.caseはCore 2 Extreme QX6700と同じ64.5度に設定されている。これは、すでにConroe系CPUで導入が開始されているG0ステッピングによるところが大きいと見られる(画面1〜3)。

【画面1】Core 2 Extreme QX6850におけるCPU-Zの結果 【画面2】Core 2 Extreme QX6800 G0ステッピング品におけるCPU-Zの結果 【画面3】参考までに以前掲載したCore 2 Extreme QX6800 B3ステッピング品におけるCPU-Zの結果。マザーボードが異なる環境での画面キャプチャだが、こちらの方が低い動作電圧で動作している

 1,066MHz FSB/3GHz動作のCore 2 Extreme QX6800は当初B3ステッピングを採用しており、その時はT.caseが54.8度と非常に扱いにくいCPUだったが、QX6850はすでにG0ステッピングとなっている。

 このように、FSBクロックの向上とG0ステッピングを採用している点の2つが、技術面では大きな特徴となる本製品であるが、マーケティング面で、もう1つ注目しておくべきポイントがある。それは、1,333MHz FSBモデルではExtreme製品=クアッドコアという立場になった点だ。

 1,066MHz FSB世代では、デュアルコアが先行して発売されたこともあって、Core 2 Extreme X6800は、Core 2 Extreme QX6800と並んで最高動作クロックを維持したデュアルコアのExtreme製品だった。

 しかし、1,333MHz FSBでは、Core 2 Extreme QX6850と同じ3GHz動作のデュアルコア製品は、Core 2 Duo E6850となりExtreme製品ではなくなった。このあたりは、クアッドコアをプレミアム製品として売っていこうというIntelの意思を感じさせる。一方、ユーザーにとっては、デュアルコアでも不満がないのであれば最高動作クロックの製品がより安いセグメントに置かれることは歓迎できるのではないだろうか。

●FSBと動作クロック向上の相乗効果はあるか

 それでは、ベンチマーク結果をお届けしていきたい。環境は表の通りで、従来からメモリ容量を1GB×2にアップしてテストを行なっているが、OSはWindows XP Professionalに据え置いている。

【表】テスト環境
CPU Core 2 Extreme QX6850
Core 2 Extreme QX6800
チップセット Intel P35 Express
マザーボード Intel DP35DP
ビデオカード NVIDIA GeForce 8800 GTX(ForceWare 158.22)
メモリ PC2-6400 DDR2 SDRAM 1GB×2 (5-5-5-18)
HDD Seagete Barracuda 7200.10 (ST3250620AS)
OS Windows XP Professional(ServicePack2/DirectX 9.0c)

 マザーボードはこちらの記事でも利用したIntel DP35DPを利用しているが、BIOSはテスト時点の最新版であった「DPP3510J.86A.0249.2007.0625.1327」にアップデートしている。また、比較対象に用いているCore 2 Extreme QX6800はG0ステッピングのものである。

 まずは、CPUの演算性能を見る「Sandra XI SP1」の「Processor Arithmetic Benchmark」と「Processor Multi-Media Benchmark」の結果である(グラフ1)。Core 2 Extreme QX6850とQX6800は動作クロックで2.3%弱の違いがあるが、グラフ1の結果では2.4%前後の差がついている。誤差と見ることもできるが、安定してクロック比以上の差が付いており、FSB帯域幅向上の効果も多少は出た可能性がある。

【グラフ1】Sandra XI SP1(Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)

 続いては、「PCMark05」のCPU Testである(グラフ2、3)。Sandraに比べるとやや実践的なCPUベンチマークであるが、シングルタスクでの向上具合は2%未満に留まるところもあれば、4%を超えるなど、クロック差以上の性能向上を見られるシーンもある。

 このあたりはFSBクロックの向上の恩恵が出た可能性があるが、一方のマルチタスクテストでは各同時実行テストの平均が2.3%強となっており、クロック差より多少良いものの、それほど大きな性能向上は見られていない。CPU処理が中心となるテストにおいてもFSBクロック向上の効果が多少は出ているように見られるが、当然ながらそれほど大きくは出ていない結果となった。

【グラフ2】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test - シングルタスク)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test - マルチタスク)

 次にメモリ性能のチェックである。テストはSandra XI SP1の「Cache & MemoryBenchmark」(グラフ4)と「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version 4.0」のCache & Memory Benchmark(レイテンシの項のみ、グラフ5)である。順番が前後するが、レイテンシに関してはクロックアップに伴ってCore 2 Extreme QX6850が多少速いといったところで、特筆すべき点はないといえる。

 メモリのアクセス速度に関しては、16MBブロックの転送で速度が逆転してしまう不可解な結果は出ているものの、概ねCore 2 Extreme QX6850の結果に優位性があるものとなった。L1/L2キャッシュに関してはCPUの動作クロック向上、メインメモリに関してはFSBクロック向上の効果と見ることができる。

 ちなみに、今回の使用機材であるIntel DP35DPは、以前のテストでメモリ性能が著しく悪く、メインメモリのアクセス速度は3.3GB/sec程度にだった。今回、多少環境が異なっているものの、1,066MHz FSBの環境で3.8GB/sec近い性能を出しており、新BIOSによって改善が進んでいるようである。

【グラフ4】Sandra XI SP1(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ5】EVEREST(Cache & Memory Benchmark)

 さて、ここからはアプリケーションを利用したベンチマークテストである。テストはSYSmark 2004 Second Edition」(グラフ6)、「CineBench 9.5」(グラフ7)、「動画エンコードテスト」(グラフ8)である。

 SYSmark 2004 SEのOffice系処理などで今一歩のところも見られるが、概ねCore 2 Extreme QX6850の優位性が出た結果になっている。特にCPUの動作クロック比以上の好結果が目立ったのが、エンコードテストやCineBench 9.5のマルチCPUレンダリングだ。マルチスレッド化されたアプリケーションで効果がよく出ており、複数のコアからデータ要求が並列的に発生するシチュエーションに強いことが分かる。

【グラフ6】SYSmark 2004 Second Edition
【グラフ7】CineBench 9.5
【グラフ8】動画エンコード

 次に3D関連のベンチマークである。テストは、「3DMark06」の「CPU Test」(グラフ9)、「3DMark06」(グラフ10)、「3DMark05」(グラフ11)、「3DMark03」(グラフ12)、「F.E.A.R.(SoftShadowsは無効)」(グラフ13)、「Splinter Cell Chaos Theory(HDR有効)」(グラフ14)、「LOST PLANET EXTREME CONDITION(DX9版)」(グラフ15)である。

 かなりスコアのバラつきが目立っている。概ねCore 2 Extreme QX6850が動作クロックの高さ分の良い結果を出してはいるが、劣る結果を見せるシーンも少なくない。F.E.A.R.やLOST PLANETはCPUが行なう処理も多いのだが、安定感のない結果となった。

 パフォーマンスアップも、大きなところでも10FPS未満に留まっており、ゲームパフォーマンスの底上げにはつながっているが、大幅な改善は期待できない結果といえるだろう。

【グラフ9】3DMark06 Build 1.1.0 (CPU Test)
【グラフ10】3DMark06 Build 1.1.0
【グラフ11】3DMark05 Build 1.3.0
【グラフ12】3DMark03 Build 3.6.0
【グラフ13】F.E.A.R. Patch 1.08
【グラフ14】Splinter Cell Chaos Theory Patch 1.05
【グラフ15】LOST PLANET EXTREME CONDITION(DX9)

 最後に消費電力のテストである(グラフ16)。Core 2 Extreme QX6800とQX6850の差は、このテスト結果では13〜22Wといったところ。クロック差があるため、どうしても後者の方が消費電力が高くなる。

 ちなみに、Core 2 Extreme QX6800の結果であるが、以前にテストしたB3ステッピングと、今回のG0ステッピングでは23〜41Wの差が発生している。マザーボードが変わっているので確実なものとはいえないが、マザーボードを変えただけにしては大きく消費電力を下げている印象を受ける結果となっている。

【グラフ16】消費電力

●Intel X38 Express登場のお膳立てが整った

 1,333MHz FSB化と、わずかではあるが動作クロック向上を果たしたCore 2 Extreme QX6850。動作クロック比以上のパフォーマンスを見せるシーンも多く、同社のデスクトップ向けCPUのパフォーマンスリーダーとなったことは間違いない。

 価格は正式な情報が得られていないが、Extremeシリーズの伝統に従って999ドルとなる可能性が高い。Core 2 Extreme QX6800は併売される見込みで、1,066MHz/1,333MHz FSBの両方で、近いクロックのクアッドコア製品がラインナップされることになり、ユーザーにとって選択の幅が広がったといえる。

 ただ、1,333MHz FSB対応のIntel製チップセットは、Intel P35/G33に留まっている。今回のCore 2 Extreme QX6850は、1,333MHz FSB初のクアッドコア製品となったわけだが、すぐに積極的に導入していく動機は強くない製品という印象も受ける。

 もちろん、1,333MHz FSB製品では現時点で唯一のクアッドコア製品となるし、セグメントの性格上、存在すること自体に意味を持つともいえる。さらにいえば、今四半期中にも予定されているハイエンド向けチップセット「Intel X38 Express」の登場を控えて、それに相応しいCPUが用意されたことにもなる。その点では、Core 2 Extreme QX6850は、Intel X38 Expressの登場を待って導入するのがベターな選択だろう。

 今回、まずはCPUのラインナップが整えられ、続いて残りのIntel 3シリーズチップセットのラインナップが登場し、1,333MHz FSB化が進行していくことになる。Core 2 Extreme QX6850は、CPUのフラッグシップとして1,333MHz FSB化を牽引していくために生まれたCPUともいえるだろう。

□関連記事
【6月28日】Intel、Core 2 Extreme QX6800のステッピングを変更
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0628/intel.htm
【5月21日】【多和田】DDR3 SDRAM対応の新チップセット「Intel P35」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0521/tawada105.htm
【4月10日】【多和田】デュアルコアの最高クロックに追いついたクアッドコア「Core 2 Extreme QX6800」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0410/tawada99.htm

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(2007年7月17日)

[Text by 多和田新也]


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