前編に引き続き、Windows Vistaをインストールする上での注意点や実際のPCにインストールしたレポートをお届けする。 後編となる今回は、筆者宅にあった4台のPCにWindows Vistaをインストールして、その結果をお伝えしていきたい。 ●自宅にあった4台のPCにWindows Vistaをインストール 今回、Windows Vistaをインストールするにあたり、筆者の自宅のPC環境をもう一度確認してみた。確認してみると、筆者宅には、稼働する状態のPCが7台あり、うち5台が常時電源が入っている状態であることがわかった。そのPCとは以下の通りだ。 (1)リビングにある自作PC(常時ON) このうち、ThinkPad X40は家族が会社で仕事用として利用しており、基本的には会社のネットワークに接続する必要があり、OSの更新は会社のシステム管理者の方針にも従わなければならないので除外し、残りの6台の更新の是非を検討することにした。 (3)のサーバーPCは、OSがWindows Server 2003であるのでこれも除外した。なぜなら、今のところVista世代のWindows Serverはまだβの状態であり、これをWindows Vistaに置き換えた場合、Windows Server特有の機能(WINSサーバーなど)を利用できなくなってしまうからだ。 そんなわけで、対象になったのは5台。実際、これらすべてをWindows Vistaにアップグレードするつもりだったのだが、(7)のVAIO RZや、(6)のFMV DESKPOWER Hは、Windows Vistaのインストールを断念した。なぜ、そうなったのかは、FMV DESKPOWER Hのところで詳しく触れることにする。 ●容易になったAHCIやRAIDを利用したHDD構成へのインストール まず、(1)のリビングにある自作PCにインストールした。リビングにある自作PCは以下のようなスペックになっている。
【表1】リビングの自作PCのスペック
基本的なスペックとしては、Intel Core2 Duo E6600、マザーボードはIntel 975X Express+ICH7-DHのIntel D975XBX、メインドライブが500GB HDD、光学ドライブがDVDスーパーマルチドライブという形だった。ビデオカードはNVIDIA GeForce 7600 GT(256MB)、オーディオはIntel D975XBXに搭載されているIDT(旧SigmaTel)のオンボードオーディオ(Dolby Digital Live対応)、TVチューナはノバック製のDual TV2というデュアルチューナカードを利用している。
まずインストールするにあたり、Windows Vistaに向けていくつかのアップグレードを施すことにした。もともとこのマシンはWindows XP MCE 2005(Update Rollup2)向けに自作したPCで、それなりにスペックが高いマシンとなっていたのだが、それでもメモリは1GB(512MB×2)であり、Windows Vistaを導入するにはやや物足りなかった。そこで、1GBのメモリを2枚追加して、合計で3GBにすることにした。 また、このマシンの一般的なPCとは異なる特殊な事情として、オンボードのシリアルATAコントローラ(SiliconImage SiI3114)を利用したRAID 5と、PCI Express x1のSiliconImage SiI3132というシリアルATAコントローラにeSATAの外付けRAID 5が接続されている。これらのドライブには、筆者宅のコンテンツ(音楽やビデオなど)が入っているので、これらの2つのRAID 5ドライブもきちんと認識される必要がある。 インストールは、DVD起動のクリーンインストールを行なった。利用したのは、DSP版のWindows Vista Ultimateで、メモリとセットで購入したものだ。インストール自体は何の問題もなく行なうことができた。DVDをDVDドライブに入れて、起動し画面の指示に従ってライセンス条項に同意したりプロダクトIDを入力するぐらいだ。 今回は、ICH7-DHのシリアルATAのモードをAHCIにしていたのだが、ドライバはすでにWindows Vistaが持っているため、特に追加のドライバをFDDで導入したりという面倒なプロセスもなくなっていた。なお、余談になるがWindows Vistaのインストーラは、追加のATAドライバはFDDだけでなくUSBメモリなどでも導入ができるようになった。それだけのためにFDDをつないでいたユーザーには朗報といえるだろう。 ●1,360×768ドットという“変な”解像度が使えずビデオカードを交換 インストール後、認識されなかったのは前述のSiI3114とSiI3132、そしてノバックの「Dual TV2」というTVチューナの3つだった。それ以外のデバイスに関しては標準で認識され、特に問題なく利用されているように見えた(なぜ“利用されているように”だったかは後述)。SiI3114/3132の問題は、SiliconImageのWebサイトにあがっていたドライバを利用することで問題なく利用することができた。 ただし、しばらく使っていると、再起動時にeSATAのRAID 5ドライブを電源ONにしていると、途中でブートプロセスが停止するというトラブルが出るようになった。しばらくは、電源ON時にはeSATAのドライブをOFFにして、Windows Vistaがブートしてから電源ONにすることにしていたのだが、しばらくするとWindows Updateで最新のドライバが公開されて、それを当てると問題なく動作するようになった。 ノバックのDual TV2に関しては、Windows Vista用のドライバは公開されていなかったのだが、Windows XP MCE 2005用のドライバをそのまま利用することができた。これを導入したところ、特に問題なく動作している。ノバックのWebサイトで確認すると、外部入力は利用できないなどの制限はつくようだが、ベンダ側でもWindows XP MCEのドライバで動作すると確認しているようだ。 だが、問題は別のところにあった。最大の問題はGeForce 7600 GTが、1,360×768ドットに設定できなかったことだ。筆者宅のリビングでPCのディスプレイとして利用しているシャープのアクオス(LC-32GD1)は、PC接続時の解像度が1,360×768ドットで、Windows XPの時にはNVIDIAの最新のドライバを利用すると問題なく表示できていた。 ところが、Windows VistaにOSを変更し、NVIDIAのWebサイトで公開されているドライバ(ForceWare Release 95、Version 97.46)を導入してみたところ、1,360×768ドットでは問題が発生するようになってしまった(筆者注、原稿執筆時点ではこのドライバが最新だったが、現在ではβリリースとして、100.59という、より新しいドライバが公開されている)。 そもそも、1,360×768ドットという解像度は標準でサポートされておらず、NVIDIAのForceWareに付属してくるカスタム解像度の設定ツールを利用する必要がある。だが、Windows Vistaのドライバには、このツールがなくなってしまい、かつその代わりになるNVIDIA Control Panelにもその機能がまだ実装されていなかったのだ。1,360×768ドットという“困った”解像度の液晶TVを持つ筆者としてはこの機能を愛用していたのだが、設定がなくなってしまったのは実に残念で、ぜひ将来のリリースでの復活を期待したいところだ。 もっともこの問題は、Entech Taiwanの「PowerStrip」を利用することで、代用できる。そこで、PowerStripで1,360×768ドットという解像度を作り、設定してみることにした。その結果設定できたのだが、1,360×768ドット/60Hzという解像度に設定してみたところ、なぜかリフレッシュレートが85Hzに設定されてしまうなど、きちんと動作させることができなかった。 結局どうしようもなくなったので、AMD(旧ATI Technologies)のRadeon X1650を搭載したビデオカードを購入し、AMDのWebサイトで公開されているドライバ(Catalyst 7.1)を導入したところ、問題なく利用できた。ただ、AMDのドライバにはカスタム解像度を設定するツールなどが用意されていないので、1,360×768ドットの解像度を作るのにもPowerStripを利用した。こうした解像度設定ツールは筆者のように1,360×768ドットなどの変な解像度のディスプレイを持っているユーザーには必須といえるツールなので、ぜひともAMDのドライバにも実装してほしいものだ。
●Windows VistaとCore 2 Duoの組み合わせなのに、ViivとDDL使えず 筆者の自作PCでは、もう1つ別の問題も発生している。それが、IntelのViiv Technologyが使えていないことと、Dolby Digital Liveが使えていないという2つの問題だ。これらは、IntelのマザーボードであるIntel D975XBXに起因する。 IntelのViiv Technologyを利用するには、Viiv Softwareと呼ばれる追加のソフトウェアを導入する必要がある。Windows VistaではViiv Technologyの最新版となるバージョン1.6を導入する必要がある。ところが、これがくせ者で、公開されているのは既存のXP用のバージョン1.5に対するアップデートで、筆者のようにWindows Vistaを新規インストールしたユーザーは利用できないのだ。つまり、現状ではViiv Technologyを利用したいユーザーは、まずWindows XP環境でViivを利用できる環境を整えて、そこにWindows Vistaをアップグレードインストールするということのようだ。 筆者もそうだが、おそらく自作PCユーザーのほとんどは、Windows Vistaをアップグレードインストールするよりは、DVD起動のクリーンインストールを行なっているのではないだろうか。既存のOSにアップグレードインストールを行なうのは、確かにバックアップなども不要など楽であるものの、結局後で何か不具合が出るなど、もう一度クリーンインストールしなければならない事態を過去のOSアップグレードで何度か体験し、結局はクリーンインストールこそが安定環境の近道であることを知っているからだろう。 そうした自作PCユーザーが相手のマザーボードビジネスであるはずなのに、アップグレードインストールしかサポートしません、というのはちょっとあんまりなような気がする。ぜひとも、Intelには新規インストールにも対応したViiv Softwareを公開してほしいものだ。 もう1つの問題は、Intel D975XBXに搭載されているオンボードのIDTのドライバがDolby Digital Live(DDL)をサポートしていないという問題だ。Intelのマザーボードに搭載されているIDTのオンボードオーディオは、他形式のマルチチャンネル音声を、ドルビーデジタル形式の5.1ch音声(AC3)にリアルタイムエンコードするDDLという機能を備えている。 たとえば、Windows Media Audioなど、一般的な外部アンプがサポートしない形式のマルチチャネル音声を、AC3に対応したアンプで再生したいなどのニーズに応える機能なのだが、この機能が現状のドライバでは対応していない。筆者は、WMA形式の5.1ch音声を持つWindows Media Videoの再生などにこのDDLの機能を愛用していたのだが、こちらも利用できない状況が続いている。 この2つに関しては、明らかにWindows XP時代よりも後退してしまっているのが、今のところの筆者としての不満になっている。どちらもドライバのアップデートで済む問題だと思うので、Intelには早急に対応してほしいと思う。
【表2】筆者宅リビングPCのWindows Vistaインストール後状況
●さすがのWindows Vista Capable PC 次にWindows Vistaをインストールしたのは、レノボのThinkPad T60(2007-79J)だ。これは筆者のメインマシンで、2006年の2月に「T60」シリーズの最上位機種として発表された製品だ。とはいえ、購入したのは、2007年の1月初旬で、International CESへ出張する直前に、メインマシンとして使っていたThinkPad T42が突然壊れてしまい、急遽購入した製品だ。一応Windows Vista Capableのシールも貼られており、問題なくWindows Vistaも動きそうだ。
【表3】ThinkPad T60(2007-79J)のスペック
このマシンにもDSP版Windows Vista Ultimateを160GBのHDDと同時に購入してインストールした。 まず行なったことは、新しいHDDにWindows XP環境で作成しておいたリカバリディスクを利用して、環境をリカバリすることだ。2003年あたり以降のThinkPadシリーズでは、Predesktop Areaと呼ばれるバックアップとリカバリ用の特別の領域がHDDの最後の領域に格納される。HDDを交換した場合、もちろんこうした領域は新しいHDDには用意されていないので、必ずその製品用のリカバリディスクを利用してリカバリを行ない、この領域を作っておく必要があるのだ。 ただし、リカバリ作業を行なうと、Windows XP環境が復旧されてしまう。筆者は、完全に新規インストールしたかったので、まずWindows XPの起動CDを利用してブートしWindows XPのインストーラの機能を利用してHDD上のC:ドライブを削除してから、Windows VistaのDVDを利用してブートし、完全に新規のHDDにインストールするのと同じ状況でインストールを行なった。 インストール後にはレノボのWebサイトに公開されているドライバを、次々と導入していった。ThinkPadシリーズの場合、レノボが自社のソリューションとして提供している、ThinkVantageと呼ばれるユーザビリティを向上させるさまざまなソフトウェアがバンドルされている。指紋認証やバックアップ、TPMチップによるより強固なセキュリティなどを利用するには、それらに対応したドライバやソフトウェアなどが必要になるのだが、ありがたいことにレノボのWebサイトではそれらがすべて公開されているのだ。 これはWindows Vista CapbleなPCだけでなく、Windows Vista Capable以前のPC用にも公開されており、それらを利用することで、やや古めのPCでもWindows Vistaを導入しても、Windows XPと同じようなThinkVantageの機能を利用することができる。PCベンダによっては、Windows Vista CapableなPCにだけVista用のドライバやソフトウェアを公開しているところも少なくないのに、それによりも古いPCを含めてドライバなどの提供を行おうというレノボの姿勢は高く評価したいと思う。 またノートPCで問題になるWindows Aeroだが、このT60の場合、GPUにはAMDのMobility Radeon X1400が搭載されている。ビデオメモリは128MBだが、HyperMemoryの機能が利用可能で、メインメモリの一部もビデオメモリとしても利用することができる。筆者の自宅環境は、T60のディスプレイ(1,400×1,050ドット)と外付けディスプレイとしてDellの2407WFP(1,920×1,200ドット)をDVI接続してデュアルディスプレイ環境で利用しているのだが、前回の記事で説明したとおり、この環境では256MBのビデオメモリが必要になる。しかし、HyperMemoryの機能のおかげで、こうした環境でも問題なく利用することができた。 なお、これらのWindows Vista用のドライバは筆者は手動で導入したが、System Updateという自動のドライバインストールツールを利用すると、それらのインストールは自動で行なうことができる。なお、Windows XPまでは“ソフトウェア導入支援”というツールが用意されており、こちらを利用しても自動インストールができていたが、このWindows Vista版はまだ提供されていないので、System Updateを利用する必要がある。 概ね問題のなかったが、筆者のThinkPad T60では、いくつかの問題が発生した。「Client Security Software」というTPMチップを活用するセキュリティソフトウェアでユーザー登録がうまくいかず、Windows Vistaを再起動するたびにユーザー登録のダイアログがでてくるという不具合のほか、米国のLenovoサイトに登録されていたバックアップソフトウェアの「Rescue and Recovery」も、外付けUSB HDDをブート可能にする機能が正常に動作しない(ブート可能にできない)こと、Access Connectionsというネットワーク切り替えツールをインストールするとWindowsが全体的に不安定になるという不具合が出ている。 これらの問題は筆者の環境だけの問題かもしれないのだが、仕方ないのでClient Security SoftwareとAccess Connectionsはアンインストールして利用している。その結果としては特に問題なく安定して動作しているし、実際この原稿もVistaをインストールしたマシンで書いており、日常の業務などは何の問題もなくこなせている。
【表4】ThinkPad T60(2007-79J)のWindows Vistaインストール後状況
●何の問題もなくインストールできたMP945-VX AOpenのMP945-VXは、Core Duo/Core 2 Duoが利用できるミニPCで、筆者宅ではCore Duo T2400(1.83GHz)と組み合わせて利用している。チップセットはIntel 945GM Express+ICH7M-DH、メモリは1GBで、GPUはIntel 945GMに内蔵されているGMA 950を利用している。
【表5】AOpen MP945-VXのスペック
インストールしたのはWinodws Vista Home Premiumのアップグレード版で、もともとWinodws XP Media Center Editionが入っていたPCだったので、これにアップグレード版を利用して前回紹介した“ちょっと工夫がいる”DVD起動クリーンインストールでインストールした。 余談になるが、前回の“抜け道”的DVDクリーンインストールの方法だが、前回も説明したように、きちんとアップグレード対象のOSを持っている必要がある。ライセンス条項を読む限りではライセンス対象のOSがHDDにインストールされている必要はないように読めるが、必ずアップグレード対象のOSのライセンスを所有している必要があり、かつそのアップグレード対象のライセンスはWindows Vistaへのアップグレード後には利用することができない。 技術的には、アップグレード対象のOSを持っていなくても結果的にインストールすることはできてしまうが、その場合にはユーザーがライセンス条項に違反したことになり、そうした利用法をした場合にはWindows Vistaのライセンスそのものも無効となってしまう。あくまで、ライセンス条項の規定を守って利用している場合のみライセンスは有効ということになるので注意してほしい。 また、前回記載した方法は、あくまで“抜け道”であるので、今後のリリースでできなくなる可能性もある。ライセンス条項上は問題ではないとしても、マイクロソフトの正規な使い方ではないので、マイクロソフトも小売店もサポートすることができないのだ(決してマイクロソフトや販売店などに問い合わせたりしないようにお願いしたい)。その結果利用できなくなったとしても、文句はいえないので、あくまで現時点での“抜け道”的なやり方であるということを繰り返しておきたい。 話がそれたが、MP945-VXではWindows Vistaをインストールしたあとにやったことは、RealtekのHDオーディオコーデックのドライバをインストールしただけだ。AOpenのWebサイトにドライバ(R1.55β)がすでにアップロードされており、それをインストールすればオーディオに関しても問題なく音がでた。ただし、MP945-VXもViiv Technology対応なのだが、前述の理由でViiv Softwareのインストールはできなかった。 Viivのインストールができなかったという点を除けば、MP945-VXは何の問題もなく、Windows Aeroの3D表示もきちんとできている。
【表6】AOpen MP945-VXのWindows Vistaインストール後状況
●ビデオカード交換が難しくWindows Aeroに対応させることが難しいFMV DESKPOWER H 富士通のFMV DESKPOWER H(H70J9)は、2004年に冬モデルとして発売されたスリムケースを採用したデスクトップPCで、専用の19型ディスプレイが付属していた製品だ。2007年の春モデルとして発表された「FMV-Teo」のご先祖様にあたる製品といえる。CPUはPentium 4 3GHz(HTテクノロジ対応)、チップセットはIntel 915G Express、メモリは512MB、GPUはIntel 915G内蔵のIntel GMA900を利用するというスペックの製品だ。
【表7】FMV DESKPOWER H(H70J9)のスペック
このFMV DESKPOWER HはスリムデスクトップPCと液晶ディスプレイがセットになった製品なのだが、液晶ディスプレイと本体の接続は専用の30ピンコネクタで接続されているという特徴がある。この30ピンコネクタは、デジタルのディスプレイ出力のほか、オーディオやUSBなども内蔵しており、一般的なDVI端子などは互換性がない。このため、ビデオカードを増設して交換したい場合には、ディスプレイを別のモノに換えるか、玄人志向から発売されている変換アダプタなどを利用して、DVIコネクタを変換する必要がある。 このFMV DESKPOWER H(H70J9)のGPUは、すでに説明したとおりIntel 915Gに内蔵されているIntel GMA900で、ハードウェアのバーテックスシェーダ2.0に対応しているのだが、Windows Aeroには対応していない。実際、Windows Vista Home Premiumを導入してみたのだが、やはりWindows Aeroに設定することはできなかった。そこで、ビデオカードを交換するかと考えてみたのだが、前述の通り、交換するにはディスプレイを交換するか、変換コネクタを購入する必要がある。前者の選択肢を検討して、19型ディスプレイを購入すると安価なモノで2万円、後者の選択しを検討すると、変換コネクタの購入に1万円、あいているPCIスロット用のビデオカードにやはり1万円程度と、どちらにせよ2万円程度のコストがかかることになる。 こうしたメーカー製PCをアップグレードする際には、マイクロソフトが提供する「Windows Vista Upgrade Advisor」というソフトが非常に役に立つ。はっきり言って筆者も実際に実行するまでは“あんまり役に立たないんだろうな”と思っていたのだが、実は結構実用的だ。インストールした、PCをスキャンすると、Windows Vistaへアップグレード時に問題になるソフトウェアなどを見つけ出し、アンインストールする指示を出してくれるのだ。 FMV DESKPOWER H(H70J9)の場合、DVD-RAMドライバとNorton Anti Virus 2004が検出され、それらをアンインストールしたほうがよいと指示がされた。また、システムがWindows Aeroと互換性があるかなどもチェックすることができるので、Windows Aeroに対応したSKUにしようかどうか迷っている人であれば、これを参考に選ぶということも可能だ。Windows Vistaにアップグレードしようと考えているのであれば、ぜひともインストールすべきだろう。
●TVチューナが入ったメーカー製PCは、必ずWindows Vista用のソフトウェアの入手を このFMV DESKPOWER H(H70J9)にWindows Vistaをインストールした後で大きな問題となったのは、TVチューナカードのドライバなどが公開されていないことだ。富士通では、2006年春モデル以降のPCに関しては「Windows Vista 導入アシスタントディスク」の有償配布(4,800円)を行なっており、これを利用することでWindows Vistaへ確実にアップグレードすることができる。それ以外のPCに関しても、動作状況などをWebサイトで公開している。これ自体、アップグレードを行なうにあたり非常に助かる資料なのだが、だが、この2004年冬モデルのFMV DESKPOWER H(H70J9)の場合、特にWindows Vista対応のドライバなどは公開されていないのだ。
特に困るのは、TVチューナボードのドライバで、このFMV DESKPOWER H(H70J9)にはAverMediaのM180というアナログTVチューナボードが採用されている。しかし、標準で導入されているのは、松下電器のTVチューナ用ソフト「TVfunSTUDIO」のドライバで、Windows Media Centerのドライバではない。このため、Windows Vistaにアップグレードしても、Windows Media CenterからTVチューナを利用することができないのだ。 しかも、TVfunSTUDIOそのものも、Windows Vistaでは動作すらしないし、Windows Vista用のバージョンも提供されないので、Windows Vistaにアップグレードしたあとは、TVチューナ機能が利用できないという、OSをアップグレードしたはずなのに、機能はダウングレードしてしまうのだ。 ちなみに、M180自体は、Windows Media Centerに対応可能で、Windows Media Center用のドライバさえ提供してもらえればWinodws Media CenterからTV機能を利用することができるはずなので、ぜひとも富士通に対応していただきたいものだ。 なお、FMV-DESKPOWER Hがこのような状況であったので、それよりも前の2003年モデルであるVAIO RZのアップグレードは見合わせることにした。VAIO RZのTVチューナの再生ソフトであるGiga Pocketもオーバーレイを利用するタイプのソフトウェアであるので、おそらく同じような問題が発生すると予測できたからだ。
【表8】FMV DESKPOWER H(H70J9)のWindows Vistaインストール後状況
●ハードウェアベンダ各社には早急にWindows Vista対応ソフトの提供を望みたい こうした問題は、富士通のPCだけに起こる問題ではない。これまで日本のTVチューナボードは、ほとんどがベンダが独自のソリューションとして展開してきたため、ほとんどのTVチューナボードはWindows Media Center用ではなく、専用のアプリケーション用となっている。そうしたボードの多くは、オーバーレイモード表示で特殊な処理を行なっていることが多く、オーバーレイ表示には対応しないWindows Aero環境ではそのままでは利用できない場合が多い。そのほかにも、オーディオ周りも若干異なっているので、その関係で使えないソフトウェアも少なくないようだ。 また、メーカー製PCには、地上デジタル放送やワンセグチューナなど、Windows Vistaでは標準ではサポートされないTVチューナが入っている場合がある。これらに関しても、Windows Vistaで動作するドライバと再生ソフトウェアが必要になる場合がほとんどなので、これらが入ったPCをアップグレードするのであれば、メーカーのWebサイトを調べてそれらのVista用ソフトウェアが提供されているか、確認できてからにしたほうがいいだろう。それが入手できない場合には、筆者の例のように機能がダウングレードになってしまう場合があるので、Windows Vistaのアップグレードは見合わせた方がいいだろう。 各ハードウェアベンダのサイトなどをチェックしていて思うのは、みな一様にWindows Vistaへの対応が遅いということだ。確かに、Windows Vistaではグラフィック周りに大きな手が入れられていて、そのためにTVチューナのソフトウェアに大きな影響があることは理解している。あるベンダの関係者と話をしているときに、「Windows Aeroでオーバーレイが利用できないことをマイクロソフトに通知されたのはかなり遅い時期だった。正直言って対応が後手後手に回ってしまっている」という話を聞いたことがある。マイクロソフトもこのあたりのアピールがベンダに対して足りなかったのかもしれないし、ベンダ側にもいろいろ事情はあるのだと思う。 しかし、だからといってWindows Vistaの正式リリースをすぎた今でも、対応のソフトウェアを用意できないのはやはり問題がある。これまで、そうしたベンダは、その独自のソフトウェアの優位性を、たとえばマイクロソフトの標準ソリューションであるWindows Media Centerなどに比べて優れていると主張してきたはずだ。ところが、Windows Vistaのリリースでは、そうした標準のソリューションを利用してきたベンダは問題なくVistaへアップグレードでき、独自のソフトウェアを利用しているベンダはVistaへアップグレードできないというのでは、何かが間違っていると思うのは筆者だけではあるまい。そこで、各ベンダには、ぜひとも早急にWindows Vista用のソフトウェアの提供を希望したい。それがメーカーとしての責任であり、ユーザーの期待に応えることなのだから。 ○TVチューナカードベンダ Windows Vistaサポート状況Webサイト一覧 ●メモリ、GPU、CPUに加えて、TVチューナの動作可否もチェックしよう 以上のように、4台のPCに関してインストールを行なってきたが、注意が必要だと感じたのはTVチューナカードだ。前回の前編で筆者はメモリ、GPU、CPUに注意を払いたいと説明したが、やはり日本ローカルな問題としてTVチューナ周りのチェックもWindows Vistaへアップグレードする上で大きな問題だといえるだろう。 従って、今後Windows Vistaへアップグレードすることを検討するのであれば、 (1)メモリの容量 という4つをよく吟味してからアップグレードしてほしいと思う。TVチューナカードは4番目の条件としてあげたが、上の3つの要件とTVチューナカードが大きく異なるのは、(1)~(3)までの要件はWindows Vistaを快適に使えるかどうかで、前回あげた条件を満たしていなくても快適ではないかもしれないがWindows Vistaを利用することができるだろう。しかし、(4)のTVチューナカードは、それらがWindows Vistaに対応していなければ全く機能自体が利用できないという点が大きく異なる。 では、どうするかと言えば、そのTVチューナのベンダあるいはPCベンダのサイトにで以下の2つの点をチェックしてほしい。 (1)Windows Media Center対応のドライバがあるか (1)があれば、専用ソフトウェアは使えないがWindows Media Centerを利用したテレビの録画/再生機能が利用できる。これに対して、(2)があれば、XPと同じTV環境が利用できるだろう。これら2つのどちらかを満たさないのであれば、Windows Vistaではテレビ機能が全く利用できなくなるので、どうしてもTV機能を利用したいユーザーで、(1)も(2)も満たせないTVチューナしか持っていない場合には、(1)か(2)を満たすTVチューナカードへの交換を検討するといいだろう。 また、やはりアップグレードインストールは大変で難しいというのも、もう1つの感想だ。確かに、現在の環境を引き継げるアップグレードインストールは一見魅力に見えると思うが、その後“はまる”可能性が高いことを考えると、やはりデータをバックアップしてのクリーンインストールが“勝利の方程式”だと思う。 今回、FMV DESKPOWER H以外の3台はDVD起動のクリーンインストールを行ない何の問題もなく動作したのに対して、アップグレードインストールを行なったFMV DESKPOWER Hでは、サスペンド/レジュームがうまくできなくなったりなどのの問題も出た(XP用の電源管理ツールをアンインストールしたらきちんとできるようになった)。 そうしたことからも、安定した環境で新しいOSを使いたいと思うのであれば、アップグレードインストールではなく、DVD起動のクリーンインストールを筆者としては強くお奨めしたい。従って、購入するパッケージも、通常版か、何らかのハードウェア(メモリやHDDあたり)とのセットでDSP版を選択するというのがよいのではないだろうか。 インストールに関してはひとまず、これで終わりにするが、次回はWindows Vistaを使いこなすポイントなどについて紹介していきたいと思う。
□関連記事 (2007年2月14日) [Reported by 笠原一輝]
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