Intel Developer Forumなどの講演で、2007年第1四半期の投入が予告されていたメインストリーム向けのクアッドコアCPU「Core 2 Quad」が、新年早々発表された。さっそく本製品のベンチマーク結果を紹介したい。 ●2.4GHzのQ6600はTDP105Wへ 今回テストするのは、Core 2 Quadシリーズ最初の製品となる「Core 2 Quad Q6600」である(写真1)。すでに発売されているクアッドコアCPU「Core 2 Extreme QX6700」と比較すると、CPUの裏面にも違いがなく、CPU-Zの結果を見てもステッピングに差はない(写真2、画面1~2)。つまり、コア自体はまったく同じものと考えていいだろう。
その違いは表1にまとめたとおりだが、クロックが異なる点と、それに伴いTDPが引き下げられた点となる。
【表1】Core 2 Quad Q6600スペック
TDPが105Wに引き下げられたとはいえ、Core 2 Duoの65Wに比べれば大きく引き上げられた格好となるし、Pentium Dでも末期には多くのモデルが95Wに設定されていたことを考えると、メインストリーム向けとしてはかなり高いTDPとなっている。 もう1つ、表に記載していないCore 2 Extreme QX6700との違いが、対応チップセットである。Intel製チップセットに限っての話だが、Core 2 Extreme QX6700は正式にはIntel 975Xのみがサポートされていた。だが、Core 2 Quadはメインストリーム向け製品であるので、当然ながらIntel 965シリーズでもサポートされることになる。 実際にはIntel 965シリーズを搭載したマザーボードでもCore 2 Extreme QX6700をサポートする製品が少なくなかったが、Core 2 Quad Q6600では、より多くの製品でサポートされることになるだろう。 ●クロックの差が明確に表れたベンチマーク結果 それでは、Core 2 Quad Q6600のベンチマーク結果を紹介したい。テスト環境は表2のとおりで、今回はCore 2シリーズの上位製品を揃えてテストを行なっている。
【表2】テスト環境
まずは、CPUの演算性能を見る「Sandra XI」のProcessor Arithmetic Benchmark」と「Processor Multi-Media Benchmark」である(グラフ1)。2.66GHz動作のCore 2 Extreme QX6700に比べて、2.4GHzで動作するCore 2 Quad Q6600は計算上でおよそ10%遅い速度ということになるが、結果もこれを反映したものといえる。ちなみに、クロック比よりも若干良いスコアではあるのだが、この程度なら誤差の範囲と見ていいだろう。
続く、「PCMark05」の「CPU Test」(グラフ2、3)も、結果は似たような傾向を示しており、Core 2 Extreme QX6700に比べて約1割ずつ低いスコアが出ている。
また、デュアルコア2製品との比較においても、4タスク同時実行テストでクアッドコア両製品がアドバンテージを発揮する以外はクロック順のスコアとなり、高いクロックの製品がラインナップされている分デュアルコアの優位性が目立つという傾向も過去に行なったテストと同様といえる。 続いてはメモリ性能測定のために実行した、Sandra XIの「Cache & MemoryBenchmark」と、「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version3.5」のCache & Memory Benchmark(レイテンシの項のみ)の結果である(グラフ4、5)。
この結果も、Sandra XIのキャッシュの範囲内でスコアが約2倍に跳ね上がっているのが特徴的だが、メインメモリのアクセス速度については、クアッドコアとデュアルコアではっきりした差が付いている。このあたりはFSBを介して2つのダイをつないでいることによる弊害だろう。 次は実際のアプリケーションを利用したベンチマークの結果である。テストは、SYSmark 2004 Second Edition」(グラフ6)、「Winstone 2004」(グラフ7)、「CineBench 9.5」(グラフ8)、「動画エンコードテスト」(グラフ9)を実施している。
こちらの結果は、マルチスレッド対応アプリケーションであるか否かで、大きく結果が分かれることとなった。CineBench 2003のマルチCPUレンダリングや、TMPPGEnc 4.0 XPress、DivX、MainConceptのH.264エンコーダといった、論理CPUに合わせてスレッドを作ってくれるようなアプリケーションではCore 2 Extreme X6800すら上回る性能を見せるものの、そうでないとクロックどおりCore 2 Duo E6700にも劣る性能となる。 また、SYSmark 2004にしても、Internet Content Creationの一部ではクアッドコアの効果が表れているテスト内容も見られるものの、Core 2 Extreme X6800とのクロック差を逆転するに至るほどではない。あまり嬉しくない結果ではあるが、メインストリーム向け製品という1段下のセグメントである製品として、うまくパフォーマンスが切り分けられた印象を受ける。 また、次に示す「3DMark06」の「CPU Test」も、このアプリケーションベンチマークと同様の結果といえる(グラフ10)。そのほかの3Dアプリケーションのベンチとしては、「3DMark06」(グラフ11)、「3DMark05」(グラフ12)、「3DMark03」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ15)を掲載しているが、CPU Testの結果も反映される3DMark06以外は、クロックの影響のほうが大きいことがはっきりと見て取れる。また、クロックが同等の場合は、デュアルコアのほうが性能が良い傾向も見せている。
この3DMark06にしても、Core 2 Extreme X6800を上回る性能を見せたのは、ビデオカード側の負担が大きい高解像度のテストのみだ。高解像度ではビデオカード側で行なうべき処理の性能が頭打ちとなり、結果的にCPU Testで出た差がトータルスコアに強く反映されたことになる。 さて、最後に消費電力のテストである(グラフ16)。まず目に留まるのはクアッドコアの消費電力の大きさだろう。Core 2 Extreme QX6700に比べれば下がっているものの、デュアルコア両製品とは大きな差が生まれている。とくにCore 2 Duoに合わせて環境を作った人がクアッドコアへの換装を検討する場合は、冷却や電源ユニットの面で注意を要したほうが良さそうである。
●Core 2 Quadという新しいブランド 全体の結果を見てみると、どの層を狙ったものなのか分かりにくさを感じる結果となった。Core 2 Extreme QX6700からクロックが下がったぶん性能が落ちるのは仕方ないし、デュアルコアのCore 2シリーズに比べて消費電力が上がってしまうのも、ダイが2つになっているわけだから仕方ないといえる。 ただ、価格が851ドルとなっており、Core 2 Duo E6700とCore 2 Extreme両製品の中間に位置付けられる価格帯になる。搭載製品やリテール向けCPUも、メインストリーム向け製品のイメージとしては少々割高な価格となりそうな点が気にかかる。また、Core 2 Extremeのようなハイエンドに向けた製品であれば特定シーンで他を突き放すような性能が出るのは魅力だと思うが、メインストリームにこれが受けられるかも不安なところだ。 現在のCPUの選択ポイントとしては、“パフォーマンス”、“低消費電力/低発熱”、“価格”の3要素が重視されていると考えるが、Core 2 Quad Q6600は、トータルのバランスに優れる印象は受けず、かといって上位にCore 2 Extreme QX6700が控える状況では飛び抜けた性能を見せるわけでもない。 その意味では、クアッドコアのメインストリーム向け製品という位置付けではあるものの、まだまだハイエンド寄りのユーザー向け製品として捉えておくべき存在なのではないだろうか。例えば、ビデオカードであれば、ハイエンドセグメントにも複数がラインナップされ、最上位製品には劣るが、シェーダユニット数やメモリ帯域幅などでハイエンド製品としてのアドバンテージを保ちつつ、価格は抑えた製品が存在し人気を集めることが少なくない。Core 2 Quadというブランドも、現時点ではそうしたラインに位置付けて見たほうが妥当に感じられる。 ビデオカードの例に挙げた“ハイエンド製品ならではアドバンテージ”を”クアッドコアである点”とすれば、今回のベンチマーク結果では、確かにクアッドコアの効果が発揮される場面での性能は優れている。このアドバンテージを発揮できるアプリケーションを多用するユーザーであれば、Core 2 Extreme QX6700よりも多少なりとも安価に出されるCore 2 Quadは有力な選択肢になり得る存在といえる。 □関連記事 (2007年1月9日) [Text by 多和田新也]
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