Windows Vistaの最大の特徴は大きく変更されたユーザーインターフェイス(UI)だ。これ自体はユーザービリティの向上に直結するので反論するつもりは無い。ただその作り込みが中途半端。
例えば、一番表に出ている一階層目の画面などはほぼ全て変更されているものの、それ以降のパネルやメニューはWindows 9x(Windows 3.x?)時代のものがまだ多く残っている。せっかく一新するのであれば根こそぎ変えないと操作中に違和感をおぼえる。また、Explorerではアイコンのサイズがスケーラブルに変更可能であるが、コントロールパネルなど、Explorerに無関係な部分は相変わらずの固定アイコン。一般ユーザーにはこの区別は付き難く混乱を招く。基本的にアプリケーション依存になるが、せめて標準搭載のアプリケーションは全て対応すべきではないだろうか。
また、電卓など標準アプリケーションに入っているのも昔のまま。AppleのCMでクールなアプリケーション(笑)として挙げられているのをご存知の方も多いと思う。過去との互換性もあるので(別のアプリケーションから起動している可能性がある)変更が難しいのかも知れないが、どうせ変えるならとことんWindows Vista風にして欲しかった。
デザイン変更このパネル自体は3.xの頃から変わっていない。色やフォントをドラッグ&ドロップできても良さそうだ |
固定アイコンと可変アイコン手前のコントロールパネルのアイコンサイズは固定。奥のExplorerでは可変と、統一感が無い |
電卓これも3.x以前から存在する標準アプリケーション。何1つ仕様は変わっていない |
●好きになれない理由その3『意味不明のエディション』
Windows Vistaには5種類のエディションが存在している。Enterprise Editionは、ボリュームライセンスのみなので、実質は4つとなるが、これらの内容や価格の違いを明確に説明できる人は業界関係者でも少ないだろう。もともと筆者はWindows XPの時にHomeとProfessionalに分けること自体不満であったが(Media Center EditionとTablet PC Editionは後付なので仕方ないとしても)、またか! という感じだ。
- Windows Vista Home Basic Edition
- Windows Vista Home Premium Edition
- Windows Vista Business Edition
- Windows Vista Enterprise Edition
- Windows Vista Ultimate Edition
誰の眼から見てもユーザーのために分類したのでは無く、あくまでも同社の都合=利益からの面で多数のエディションを作ったのは明らかだ。内容を見ても、物凄く革新的な機能で分けているならともかく、細かい機能の切り売り。しかも利用者側から見ると、Home用途ならファイル単位の暗号化やモビリティは不要とされ、Business用途ならMedia Centerが不要とされるなど、その機能の有無が矛盾だらけだ。
更にエディションが違えば、メニューなどが変わり、サポートや教育、家や職場、学校での微妙な違いが発生し混乱を招く。そのコストはいったい誰が持つのだろうか。
●好きになれない理由その4『Mac OS Xと比較して何1つ新しいものが無い』
Windows 3.0以来Windows XPまではいち早くβ版をPCへインストールしていた筆者であるが、Windows Vistaに関してはごく最近まで試さなかった。理由は、徐々に内容や画面キャプチャが載るにつれ、その機能のほぼ全てがMac OS Xにはすでに搭載済みだったからだ。裏側にあるロジックまでは解らないが、少なくとも画面上から見えるものは、もう1年半以上前にTigerで体感したものばかり。真似してこうなったのか、時代の要求からこうなったのか、は定かではないものの、これでは興味が無くなってしまうのも当たり前である。
しかも去年(2006年)、Intel版Macが登場し、パフォーマンスを落とさずにWindows XPとMac OS Xとの行き来が可能になった今、それ以上の夢を見せてもらえないとWindows Vistaを触ってみたいという気分にならない。
DashboardMac OS XのDashboard。不要な時は隠れているので邪魔にならず、キー操作もしくはマウスを使い一発で呼び出せ、Desktopへオーバーラップする |
Windowsサイドバー名前の通り、Desktopのサイドに表示される。場所は移動できるものの、画面全体にオーバーラップはしない |
ヒラギノフォントかなり前のバージョンからMac OSに搭載されている。個人的にはメイリオフォントより見やすいと思う |
前回の記事を掲載後、これらの件についてブログでいろいろな意見を頂いた。いつもWindowsのバージョンアップ時には同じ事が発生するとの意見もあった。確かにその昔はET4000などアクセラレータを搭載しないグラフィックエンジンではWindowsの描画が遅く、S3などアクセラレータを搭載したグラフィックエンジンが爆発的に流行った。また、64MB、128MB、256MB……と倍倍ゲームで必要なメモリが増えていったのも間違いない。ただ、その頃と今とでは全く事情が違う。冒頭に書いたように、すでに普通のアプリケーションを動かすと言う意味では、十分なCPUパワーとメモリ空間を多くのPCが備えている。しかし、それ以上のスペックをOSが要求し、仮に満たしたとしてもご覧の程度の差しか無い。リソースへの投資が割に合わないと思われても仕方のない状態なのだ。
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