西川和久の不定期コラム

「Mac OS X 10.4 "Tiger"」登場




 ここのところMacネタが続いているが、今回は4月29日に発売されたばかりの「Mac OS X 10.4」、通称"Tiger"をご紹介する。200以上の新機能を搭載したと言われるこの10.4。Mac OS X 10.3とどこが変わり、何が増えたのかを中心に書いてみたい。

 インストールに関しては画面キャプチャが取れない関係で省略している。あらかじめご了承いただきたい。基本的にG4 Cubeへ新規インストールし、指示に従い入力しただけで非常に簡単だった。

Text by Kazuhisa Nishikawa



●注目のデスクトップ検索やDashboardなど機能満載!

 同社のホームページから"Tiger"で追加された機能を並べてみると以下のようになる。冒頭で書いた200以上の新機能の全ては見当もつかないが、この9つは特にわかりやすい部分だと思われる。

  1. デスクトップ検索「Spotlight」
  2. ミニアプリケーション群(ウィジェット)「Dashboard」
  3. RSSに対応したWebブラウザ「Safari RSS」
  4. ビデオコンファレンスシステム「iChat AV」
  5. 自動化ツール「Automator」
  6. H.264など新しいコーデックに対応「QuickTime 7.0」
  7. 煩雑に並んでいるアプリケーションへ瞬時にアクセス「Expose」
  8. いろいろな情報を他のMacへ同期する「.Mac Sync」
  9. 新しいUIに変わった「Mail」

 中でも注目株は、デスクトップ検索「Spotlight」だろう。デスクトップ検索を制するものは次世代を制するとまで言われるこの技術。現時点では2006年末に出荷予定とされるWindowsの次バージョン、「Longhorn」で採用される機能をいち早く搭載したことになる。いろいろニュースサイトを見ていると、どちらが真似した、的なことが話題になっているのが興味深い。大雑把に書くと機能自体の発表はMicrosoftが早い、でも実際搭載して出荷したのはAppleの方が早いと言う論点のようだ。その真意は不明であるが、今使えるのはGoogle Desktopと、このSpotlightになる。

 「Dashboard」は、Windwos 3.xの頃、Hewlett-Packardが販売していた同じ名前のプログラムランチャーがあった。車のダッシュボードに似せたUIで、機能的にはMac OS Xの「Dock」に近い感じだ。今回のDashboardは、キーを押した瞬間、デスクトップが半透明になり、その上に電卓などアクセサリー的な物が配置される仕掛けになっているのが目新しいところだろうか。他の部分もいろいろ機能追加され、Mac OS X 10.3 "Panther"より、さらに使いやすそうに(面白そうに)なっている。

 早速発売日の4月29日(金)の昼頃、ビックカメラ渋谷店に買いに行ったのだが、発売は18時からとなってて売ってもらえなかった。Windows恒例(だった?)の0時発売の場合は、翌朝にはあるので何とも思わなかったが、夕方18時からしか売れないのはちょっとどうかと思う。しかも世間はGW。もし18時以降に予定が入っていると買えないところだった。

●早速使ってみた

 18時過ぎに再度同店へ行き、無事"Tiger"をゲット。注意すべき点は、店頭にはDVD-ROM版しか存在しないことだ。CD-ROM版が欲しい場合、DVD-ROM版を購入した後、別途Appleへ申し込んで送ってもらうことになるらしい(有償)。早速事務所に戻ってインストールを開始。DVD-ROM版のメリットは、インストール中にディスクの入れ替えを行なう必要が無く、一気に最後まで行けることだろう。1時間もかからず"Tiger"が動き出した。以下、画面キャプチャを中心に紹介したい。

起動したところ
起動したところ
起動直後はPantherとほとんど違いは無い。Dockの右から4番目の「OSXvnc」は、"Tiger"標準ではない。前に記事で紹介したWindowsから操作できるRemote Desktop用のサーバーである。画面キャプチャ用に使用した
Spotlight
Spotlight
画面右上にあるこの虫眼鏡が、「Spotlight」である。インクリメントサーチになっており、1文字入力するごとに検索結果が絞り込まれていく。ただし、ネットワーク上のデータに関しては対応していない
D2Xで検索
D2Xで検索
キーワード 「D2X」の検索結果。興味深いのは、JPEG画像の検索。ここにある写真はD2Xフォルダ下にあるので表示されているのではなく、JPEGのヘッダ部分に埋め込まれているカメラ名を見つけている
Dashboard
Dashboard
左から2番目のアイコンが「Dashboard」である。システム起動時に同時に起動し常駐している。このアイコンをクリックすると、瞬時にデスクトップが半透明になり、ウィジェットが現れる
Dashboardのウィジェット
Dashboardのウィジェット
この画面が実際Dashboardへ切り替わった状態だ。もともと動いていた「iTunes」などが半透明になり、その上にカラフルなウィジェットが並んでいる。好みによりウィジェットの追加/削除が可能
ウィジェットのダウンロード
ウィジェットのダウンロード
日本のサイトには未だ無いが、アメリカのサイトへ行くと、既に何種類かのウィジェットが登録され、ダウンロードできる状態になっている。今後いろいろ開発され、数が増えればより便利になるだろう
新しくなったMail
新しくなったMail
メールクライアントは"Tiger"で一新された。実のところ、これまでのMailはあまり好きではなかったが、これなら常用したいと思う出来栄えだ。Spotlightと組み合わせることにより、メッセージの検索もより早くなった
Safari RSS/通常表示
Safari RSS/通常表示
SafariがRSS対応になった。設定パネルにはRSSの項目が追加されている。WebサイトがRSSに対応している場合、URLバーの右脇に[RSS]のアイコンが表示され、これをクリックするとRSS表示モードに切り替わる
Safari RSS/RSS表示
Safari RSS/RSS表示
同じページをRSS表示モードにしたところ。記事のリード部分だけ一覧表示される。興味のあるところだけ読む事が可能だ。ただページ製作側からすると、デザインや広告も含め通常表示で見て欲しいところか
Expose[F9]
Expose[F9]
「ウィンドウを整頓する」とは意味が違い、ウィンドウサイズや位置は保持したまま、この仮想画面に並んで表示される。アプリケーションを選ぶと、即座に元の状態へ戻り、選択したアプリケーションがアクティブになる
Automator
Automator
プログラミングを全く必要としない自動化ツールだ。Photoshopのアクションが近いだろうか。自動化したい手順だけを登録しておき保存できる。もちろん「AppleScript」も健在である
QuickTime Player 7.0
QuickTime Player 7.0
機能強化版の「QuickTime Player 7.0 PRO」対応の項目がメニューですぐにわかるようになった。ただ、今時フルスクリーン表示が有料版のPROのみ対応など、Windowsユーザーから見るとちょっと考えられない制限がある

検索するカテゴリ設定 いかがだろうか? 画面栄えする機能ばかりを意識的に並べてみた。また使用したマシンは、G4 Cube(PowerPC G4 450MHz / Memory 384MB / HDD 20GB)と、既にMacとしては遅い部類であるが、普通にインターネットやメール、iTunesやiPhotoなどを触って遊んでいる分には何もストレスを感じない速度で動いている。Mac OS Xは、バージョンが上がる度にチューニングが進み、体感的な速度も向上して来ているので、きっとこの"Tiger"もより速くなっているのだろう。

 注目のSpotlightは、既にGoogle Desktopを使っているので感動は薄かった。また、インクリメントサーチは英単語には有効であるが、日本語はあまりメリットを感じられない。かな漢字変換の確定する度に結果の表示が変わっても嬉しくないからだ。とは言え、あるのと無いのとでは大違い。確実に便利になったのは間違いない。右の画面キャプチャは、Spotlightで検索するカテゴリを設定するパネル。多くの情報から検索可能なことが解る。


●Mac OS X 10.3 "Panther"と違う点

 細かい部分はまだ触りだしてからあまり日が経っていないので不明であるが、インストールした瞬間に気が付いた相違点をあげてみたい。良い点が2つ、悪い点が1つある。

旧Mailクライアント
旧Mailクライアント
先のキャプションでも触れたが、こちらが旧Mailクライアントだ。かなりUIが違うことがおわかり頂けると思う。筆者的には使いづらくあまり好きではなかったで、新しいMailクライアントが入ったのは良い点だ
iPhotoは未収録
iPhotoは未収録
10.3では付属していた「iPhoto 2」が無くなった。現在「iLife」として最新版5が収録されているが、こちらは有料。バージョン2でも無いよりは十分使えるので、入れて欲しかった
X Serverが標準で組み込まれる
X Serverが標準で組み込まれる
Mac OS X 10.3では、インストール時に選択しないとX Window系のソフトウェアは入らなかった。"Tiger"ではDVD-ROMインストールということもあり、標準でロードされるのだろう

 筆者的には「iPhoto 2」が無くなったのは痛い。一般的にマシンを購入すればiLifeも入っているので気にならないと思うが、OSをアップデートして、これまで存在していたものがいきなり無くなっているのには面食らう。通常こういった場合、他に代用できるものが入るのが筋だと思うし、デジカメがこれだけ普及している現在、「iPhoto 5」はOS側にあってもいいのではないだろうか?(もしくはCCDRAW現像など機能強化版が有料)また、QuickTimeも有料版のPROとの差別化が内容的におかしい。再生面ではフルサポート、エンコードの一部をPRO版と分けるのが常識的だと思われる。せっかく"Tiger"で先進的な機能を満載しているにも関わらず、この2点はマイナス要因だ。

 余談になるが、iTunesでネットラジオを聞いていると、これまで回線状況などが悪いとき、音切れ(再バッファリング)することがあったのだが、Tigerになってから同じ局を聞いているのに、まだ1回も音切れを経験していない。すでに一週間以上流しっ放しだ。もしかするとTCP/IP関係のバッファリングをTigerで変更している可能性がある。勘違いでなければ嬉しい改善点と言えよう。


●総論

パッケージの中身。iWorkの体験版付属

パッケージの中身。iWorkの体験版付属

 以上、短期間であるが"Tiger"をインストールし、Mac OS X 10.3との違いなどをあげてみた。後半少し厳しいことを書いたものの、全体的には非常によくできたバージョンアップだと思う。多分近々、Mac miniに"Tiger"をプリロードしたものが出ると思うので、それを待ってMac miniを買う予定だ。

 しかし、最近Macネタは非常にアクセス数が多い。Longhornは一部の関係者しか使えず、64bit版は一般用途には無関係……など、Windows関連にあまり動きが無いからだろう。ある意味、Longhornが出荷される(予定の)2006年末までがApple、そしてMac OS Xの勝負の期間かも知れない。

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□Mac OS X 10.4の製品情報
http://www.apple.com/jp/macosx/
□関連記事
【4月13日】アップル、Mac OS X 10.4 "Tiger"を29日発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0413/apple.htm

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(2005年5月13日)

[Text by 西川和久]


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