山田祥平のRe:config.sys

うそつきVista




 検索結果の確からしさというのは、いったい何に依存するんだろうか。おそらくそれは、絶対にそこにあるはずだというユーザーの信念が左右するのだと思う。どんなにたくさんの検索結果が出てきても、探しているものがそこに見つからなければ、その結果は役にたたない。もちろん、あるはずのものがヒットしないことも猜疑心を招き、本当に丹念に探しているのかという疑問を抱かせるのだ。

●キャンセルされた機能を代替する

 12月にインストールしたVista環境が、それなりに安定して動くようになったので、暮れにクリーンインストールをやり直して環境を作り直した。大きな問題さえ起こらなければ、このまま半年以上はそのまま使い続けることになるだろう。

 この正月は、ずっと、Vistaの挙動を確かめながら過ごしていた。あとは、ロジクールのマウスドライバやHPのプリンタドライバのVista版が登場するのを待ってインストールすれば、以前のXP環境にほぼ近いものができあがる。あともう少しだ。

 Vistaに搭載されるはずだった機能のうち、キャンセルされたものはたくさんある。WinFSなどはその代表的な例だが、もっと具体的なものとしては「PC間の同期」という機能がなくなったのは残念だ。2006年の6月頃にリリースされた「Windows Vista製品ガイド」の機能一覧表には載っていたのだが、いつの間にかフェードアウトしてしまっていた。

 機能名をそのまま理解すれば、複数台のPCを同じ状態に保つためのものと考えていいだろう。たとえば、複数台のPCを持つユーザーが、その環境をネットワーク経由などで同期できるにちがいない。デスクトップPCとノートPCの同期などでも重宝するはずだ。これは便利そうだと思っていた。

 ないものねだりをしていても仕方がないので、それなりに使いやすくなったファイルの同期機能を使って、必要なデータフォルダを同期するように設定することにした。Vistaでは、フォルダツリーの構造が変わり、システムドライブのルートにある「ユーザー」というフォルダにアカウント名を持つフォルダが作られ、その下が実質的なユーザーフォルダのルートとなる。デスクトップ、ドキュメント、ピクチャ、お気に入りといったフォルダが、ユーザーフォルダの中に用意され、それぞれのフォルダはプロパティを開くと場所を指定することができるようになっている。すなわち、フォルダ位置のリダイレクトができるのだ。どこにリダイレクトしても、アプリケーションからはユーザーフォルダ下のフォルダに見えるので問題は起こらない。ここで、ネットワーク経由で別のコンピュータのフォルダを指定すれば、常にオフラインで使うように設定され、結果として、同期が行なわれ、フォルダ内容は同一に保たれる。

 だが、この同期機能を使っても、WindowsメールやWindowsカレンダーのファイルが同期されるわけではない。ユーザーフォルダには、AppDataという名前の隠しフォルダがあり、その中に、Roaming、LocalLow、Localという3つのフォルダが用意され、さらにその中に、アプリケーションごとのデータが格納されるようになっている。そして、このAppDataは、場所をリダイレクトすることができない。だから、メールや予定の同期ができないわけだ。

●インデクサーが追跡しないリダイレクト先フォルダ

 手元の環境では、リダイレクトの機能を使い、ドキュメントをネットワークフォルダに、ビデオをEドライブに、ピクチャをFドライブに用意したフォルダを設定した。Outlookのメールや既存ファイル約20万件のインデックス作成は、翌朝完了していた。Pentium MのノートPCでは2昼夜程度かかっていたのを考えると、雲泥の差だ。プロセッサはもちろん、HDDの速度も影響しているのだろう。

 Vistaのスタートメニューからは「ファイル名を指定して実行」がデフォルトではなくなってしまった。でも、スタートメニューには検索ボックスが用意されているので、そこに実行したいファイル名や、開きたいネットワークフォルダのUNCを入れればいい。

 検索結果がおかしいことに気がついたのは、録画しただけで見ていないTV番組を見ようと、その番組名を検索フォルダから検索したときだ。あるはずのファイルが検索にヒットしない。デジカメ写真はどうかと確認すると、これまた検索結果に現れない。

 コントロールパネルを開き、インデックスのオプションを開くと、インデックスを作成する対象を確認できるのだが、そこにはローカルディスクとしてCドライブが対象となっている。ツリーをたどっていくと、自分の名前を持つユーザーフォルダ内は検索対象だ。でも、そこには、ローカルドライブにリダイレクト指定したフォルダが存在していないのだ。ドライブはD、E、Fとあるがチェックはついていない。だから、検索対象からはずれていたのだ。リダイレクトはアプリケーションさえ騙すのだから、リダイレクトされたフォルダを追跡してインデックス作成対象にするのが当然だろうと思うのだが、Vistaはそこまでの配慮はしてくれないようだ。ちなみに、オフラインファイルはインデックス作成対象なので、ネットワークフォルダにリダイレクトしたフォルダは、きちんと対象に入っている。

●こうしてVistaはウソをつく

 さらに、Vistaのフォルダオプションには検索タブが用意され、そこで、検索に関するさまざまな挙動を指定することができる。コントロールパネルのインデックスのオプションで、この挙動を指定できないのはどうかと思うが、きっとこれは、検索機能の仕様変更の影響によるちぐはぐさなのだと思う。

 それはともかく、ここでは検索方法として「自然語検索を使用する」を指定することができる。ここからはヘルプを参照できないが、コントロールパネルのインデックスのオプションからは詳細なインデックスのヘルプを参照でき、そこにファイル検索に関するヒントが記載されていた。それを見ると、「まるで相手に話しかけているような自然な方法で検索を実行することができます」とある。例として、

自然言語検索を使用しない自然言語検索を使用する
kind:アーティスト :(Beethoven AND Mozart)Beethoven と Mozart による音楽
kind:ドキュメント作成者 :(Charlie OR Herb)Charlie または Herb によるドキュメント


が挙げられているほか、

今日送信された請求書の電子メール
先月修正されたドキュメント
評価が **** のブルース
2006 年 7 月に撮影された花の画像

といったキーワードでの検索ができるようになると書いてある。本当にそれができるなら便利かもしれないと、さっそく自然言語検索を使うように設定して、いろいろと試してみた。

 その結果は、惨憺たるもので、ちっともヒットしない。とにかくあるはずのファイルが見つからず、なぜ、このファイルがそこにあるのか理解できないものも少なくない。Vistaはどうしてこんなウソをつくんだろう。

 もしかしたらと思って、インターネットで探してみると、英語版のヘルプが見つかり、日本語版のヘルプは、ほぼその直訳であることが判明した。

 英語では、自然言語検索のことを“natural language search”と呼び、下記のような例が挙げられていた。

e-mail from bill sent today
documents modified last month
blues music rated ****
pictures of flowers taken July 2006

 日本語のヘルプと同じ例だ。そして、英語で検索すれば見事に結果がマッチする。このような状態のビルドを日本語版RTMとして出荷してしまったのは残念だ。少なくとも、できないならできないで、機能を無効にしておくべきではなかったか。さらに、ヘルプにも日本語ではできないと明記するべきだった。

 評価のための評価では、なかなか見つからなかった不具合も、日常の環境で使い続けてみると、いろいろな問題点が洗い出されてくる。だからといって、いつになるのかわからないサービスパックがリリースされるまで、導入を控えようとは思わない。特に、コンシューマは、店頭で販売されるPCを購入する際には、1月末以降はVistaを選ばざるを得ない状況に近くなる。そういう意味では、コンシューマを巻き込んだ本格的なβテストが始まるということなのかもしれない。テスト期間が少しでも短いことを祈りたい。

□natural language searchヘルプ(英文)
http://windowshelp.microsoft.com/Windows/en-US/
help/73106209-6df0-432a-8cb7-df5d8ce02ec61033.mspx

□関連記事
【2006年12月22日】【山田】年越しVistaのまあだだよ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1222/config139.htm
【2006年11月24日】【山田】Vistaコードコンプリート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1124/config134.htm
Impress Watch Windows Vista特集サイト
http://www.watch.impress.co.jp/headline/vista/

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(2007年1月5日)

[Reported by 山田祥平]


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