Blu-ray DiscやHD DVDなどの次世代DVDディスクが登場し、PC/家電の世界ともに、フルHD対応というキーワードに注目が集まるようになってきた。PC用の液晶ディスプレイも、数年前までは17型程度のSXGA表示(1,280×1,024ドット)対応製品が主流であったが、最近は、23型以上の大型液晶ディスプレイの割合が増えており、解像度もWUXGA表示(1,920×1,200ドット)対応製品が珍しくなくなっている。 今回取り上げるナナオの「FlexScan S2411W」(以下S2411W)も、WUXGA表示対応の24.1型ワイド液晶ディスプレイであり、2005年秋にレビューした「FlexScan S2410W」(以下S2410W)の後継製品である。 ●独自の「ArcSwing2スタンド」により高さやチルト角を変更可能 最近は、ノートPCのワイド液晶化が急速に進み、すでに半数以上の製品がワイド液晶を採用している。液晶ディスプレイは、まだアスペクト比が4:3の製品が主流だが、アスペクト比16:10などのワイド液晶の割合が増加しつつある。2007年1月30日に発売されるWindows Vistaでは、ガジェットを格納するためのサイドバーと呼ばれる領域が画面の端に用意されているので、ワイド画面のほうが使いやすい。Vistaの登場は、ディスプレイのワイド化をさらに後押しするであろう。 S2411Wの筐体デザインは、前モデルのS2410Wと同じだが、直線を生かしたシンプルなデザインには好感が持てる。もちろん、サイズや重量などもS2410Wと同じだ。ボディカラーは、今回試用したブラック以外にホワイトシルバーも用意されている。S2411Wは、独自の「ArcSwing2スタンド」を採用しており、高さやパネル角度(チルト角)を自由に変更できることが特徴だ。ArcSwing2は、チルト機構と弓形のレールを組み合わせることで、円弧に近い軌跡を描いてディスプレイが動くため、目と画面の距離を常に一定に保てることが特徴だ。画面を斜め下の位置にすれば、書類や雑誌を手元で読むような自然な姿勢で利用することができる。上下の昇降幅は95mm、チルト角は上60度/下5度の範囲で独立して変更可能だ。また、台座部分には、左右のスイベル機構が組み込まれており、左右172度の範囲で回転できる。 額縁サイズも比較的狭く、24.1型ワイド液晶ディスプレイとしては設置面積も狭い。電源回路を内蔵しているので、ACアダプタは不要だ。また、背面にはケーブルホルダーが用意されており、ケーブルをすっきりとまとめることができる。
●HDCP対応のDVI-I端子を2系統装備 入力端子としては、DVI-I端子(HDCP対応)を2系統装備しており、アナログ出力にもデジタル出力にも対応する。S2410Wでも、DVI-I端子を2系統装備していたが、著作権保護技術のHDCPには非対応であった。この点は、S2411Wの大きなアドバンテージといえるだろう。HDCP対応でないと、地上デジタル放送や著作権保護された次世代DVDなどのハイビジョンコンテンツをデジタル出力で再生することができないためだ。 接続ケーブルも、DVI-DVIケーブルとD-Sub15ピン-DVIケーブルの2本が付属する。また、付属のUSBケーブルでPCと接続することで、PCから画質などの調整が可能な「ScreenManager Pro for LCD」を利用できるようになるほか、2ポートのUSB Hub機能も内蔵している。このあたりの仕様については、S2410Wと同じである。ただし、スピーカーは内蔵していない。
●コントラスト拡張機能の搭載によりコントラスト比3,000:1を実現 S2411Wは液晶ディスプレイとしての基本スペックも、S2410Wに比べて向上している。S2410Wのコントラスト比は1,000:1であったが、S2411Wではパネルスペック自体は同じ1,000:1だが、内蔵ASICによって映像信号をリアルタイムで解析し、映像に応じて明るさ、ゲイン、ガンマなどを適切に補正する「コントラスト拡張機能」が搭載されている。コントラスト拡張機能をONにすることで、動画表示時のコントラスト比を3,000:1まで拡張することが可能だ。こうした技術は、最近の液晶TVやプロジェクターなどでは採用している製品が多いが、PC用ディスプレイではまだほとんど見かけない。 最大輝度は450cd/平方メートルで、S2410Wと同じだが、PC用ディスプレイとしてはトップクラスの数値であり、十分すぎるほどの明るさである。VA方式の液晶パネルを採用しているため、視野角は水平、垂直ともに178度と広く、色再現性も高い。液晶パネル自体も1,677万色表示のリアルフルカラー対応である。
●オーバードライブ回路搭載で、中間階調部での応答速度6msを実現 さらに、動画表示性能を高めるために、液晶TVなどに搭載されているオーバードライブ回路を装備していることも魅力だ。オーバードライブ回路は、通常よりも電圧を高め(または低め)にかけることで、中間階調での応答速度を改善する技術である。このオーバードライブ回路にもさらに磨きがかかっており、中間階調部での応答速度はS2401Wの8msから6msに向上している。高速であり、DVD-Videoなどの動画再生や動きの速いアクションゲームなども、残像が気になることはない。 表示解像度はWUXGAで、XGA表示(1,024×768ドット)に比べて、一度に画面に表示できる情報量は約2.9倍にもなる。
●静電容量式のタッチセンサーを採用 S2411Wでは、ディスプレイ下部に静電容量式のタッチセンサーを8つ(電源スイッチも含む)装備しており、OSDを利用して画質調整などが可能だ。ボタンが目立たず、すっきりしている。タッチセンサーは、感度が高すぎたり、低すぎたりして操作しにくいこともあるが、S2411Wのタッチセンサーは、操作しやすい。 画質調整機能は豊富で、輝度や色温度、ガンマ、色の濃さ、色合い、ゲインなどを自由に変更できる。色温度は、4,000K~10,000Kの範囲で500K刻みと、9,300Kの14段階に設定可能だ。また、光の3原色であるRGBとその加法色(YCM)を別々に、色相、彩度を調整できる6色独立調整機能も搭載するなど、こだわりが感じられる。また、S2410Wと同じく、表示する画像に適した表示モードをワンタッチで切り替えられるFineContrast機能も搭載している。FineContrast機能では、「Text」「Picture」「Movie」「sRGB」「Custom」の5種類の表示モードが用意されており、OSDを開かずに左右キーを押すことで、モードを変更できる。なお、表示モードによって、調整可能な項目は異なる。
●アスペクト比を保ったままの拡大や実解像度表示も可能 S2411Wは、WUXGAのワイドフォーマットに対応しているが、ビデオカードの設定やアプリケーションによっては、アスペクト比4:3の解像度で出力されることもあるだろう。その場合、実解像度で表示するか、アスペクト比を保ったまま拡大するか、あるいは強制的にフルスクリーンで表示するか(アスペクト比が変わるので、表示は横長に伸ばされる)を選択可能だ。低価格な液晶ディスプレイでは、強制的にフルスクリーン表示されてしまうことが多いが、そのあたりはさすがにナナオの製品だけあってよく考えられている。また、デジタル接続時は、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)の等倍表示(ドットバイドット表示)も可能だ。 また、液晶TV「FORIS.TV」で培った輪郭補正機能も搭載しており、ソフトからシャープまで-3~+3の7段階から選択できる。さらに、実解像度表示やアスペクト比を保ったままでの拡大表示時の余白のグレースケール輝度も変更できるなど、細かな点まで配慮が行き届いている。 S2411Wでは、付属のUSBケーブルで本体とPCを接続し、専用ユーティリティ「ScreenManager Pro for LCD」を利用することで、PCから画質の設定などを行なうことが可能になる。ScreenManager Pro for LCDを使えば、あらかじめ指定しておいたアプリケーションの起動によって、自動的に表示モードを変更させるAuto FineContrast機能が利用できるほか、ディスプレイの電源を自動的にON/OFFさせるタイマー設定機能なども用意されている。また、ScreenMangaer Pro for LCDを利用すると、画面の中で、動画部分だけを明るく表示する「WindowMovieモード」を選ぶことも可能だ(Windows 98 SE/Me/2000/XPのみ対応)。
●次世代DVDのHDコンテンツを再生するのに最適な製品 旧モデルのS2410Wも、高品位な液晶ディスプレイとして人気を集めたが、S2411Wでは、新たに著作権保護技術のHDCPに対応したほか、コントラスト拡張機能を装備するなど、さらに製品としての完成度が向上している。中間階調部での応答速度も8msから6msに向上しており、動画表示時の残像もほとんど気にならないレベルになった。直販価格は139,800円だ。次世代DVDのHDコンテンツを画質を損ねずに鑑賞したいという人や、現在使っているディスプレイの解像度が足りなくなってきたという人にお勧めしたい。 □ナナオのホームページ (2006年12月13日) [Reported by 石井英男]
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