Mac miniの登場以降、ベアボーンPCとしてMac miniライクの超小型デスクトップがいくつか登場し、何度か話題となってきた。今回取り上げるエプソンダイレクトの「Endeavor ST100」も、Mac mini級の非常に小型なボディを特徴とする省スペースデスクトップである。 ●レイアウトフリーの超小型ボディ エプソンダイレクトから登場した省スペースデスクトップ「Endeavor ST100」(以下ST100)は、何と言ってもその超小型ボディが大きな特徴となっている。 本体サイズは、185×195mm×75mm(幅×奥行き×高さ)と、省スペースPCの中でも群を抜いてコンパクトだ。Mac miniと比較すると若干大きいものの、マウスパッドとほぼ同じ底面積しかない。同社の省スペースPCである「Endeavor AT960」と比較しても、設置面積で3分の1ほど、容積では実に4分の1以下ほどしかなく、ST100のコンパクトさは際立っている。 このサイズなら、デスク上で本当の意味で好きな場所に設置できるだろう。例えば、ディスプレイの後ろの狭いスペース、電話の下などのデッドスペースを有効に活用できる。もちろん、横置きだけでなく縦置きにも対応しており、縦置きにした場合には、より小さな底面積となる。本棚の隅に置くといったことも容易だ。 本体デザインも、非常にシンプルだ。カラーは白を基調として、光学ドライブのスロットや排気口の部分がシルバーとなっており、非常にスマートで落ち着いたイメージだ。これなら、ビジネス向けとしても、また家庭で利用するマシンとしても、全く違和感なく受け入れられるだろう。
●モバイル向けのチップセットやパーツを利用 ST100は、内部パーツにモバイルPC向けのパーツを利用することによって、優れた省スペース性を実現している。 マザーボードは、チップセットとしてAMD(旧ATI)製のRadeon Xpress 200Mを搭載する、ASUSTeKの「YNRC-BR」という、Mini-ITX仕様のマザーボードを搭載する。Radeon Xpress 200Mは、Radeon X300相当のグラフィックスコアが統合されており、DirectX 9ベースの描画機能が提供される。ビデオメモリはメインメモリの一部を利用し、最大128MBまで確保可能となっている。 Radeon Xpress 200Mは、もともとモバイル向けのチップセットであり、このマザーボードに用意されているCPUソケットも、Core Duo向けのSocket 478となっている。搭載できるCPUは、Socket 478タイプのCore 2 Duo、Core Solo、Celeron Mとなる。 メインメモリは、PC2-4200 DDR2 SDRAMを最大2GBまで搭載可能。マザーボードにはDIMMソケットが2本用意されている。 【お詫びと訂正】初出時、搭載メモリについて「デュアルチャネルに対応し」と記載しておりましたが、デュアルチャネルには対応しておりません。お詫びして訂正させていただきます。 オンボード機能としては、1チャネルのIDEポートと1チャネルのシリアルATAポート、Ethernet(Realtek製RTL8101L)、チップセット内蔵のHDサウンド機能などが用意されている。また、セキュリティチップ(TPM)も搭載されており、ビジネス用途で求められるセキュリティ性も申し分ない。 背面のコネクタ類は、キーボード/マウス用のPS/2コネクタ、USB 2.0コネクタ×4、Ethernet、ミニD-Sub15ピン、HDサウンド関連の音声入出力端子が用意されている。また、本体前面にはUSB 2.0コネクタ×2とヘッドフォン端子が用意されている。 内蔵されるHDDは、ノートPC向けの2.5インチシリアルATAドライブ。また、光学式ドライブは、スロットローディング方式のノートPC向けスリムドライブとなる。HDDは最大160GBのドライブを選択可能。また光学ドライブは、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブまたは±R DL対応のDVDスーパーマルチドライブ、または非搭載を選択可能となっている。 機能面は、必要となるものが一通りオンボードで用意されている。ただし、拡張性は残念ながらかなり低くなっている。マザーボード上には、PCIスロットが1スロット用意されているものの、ACアダプタを接続し、マザーボードやHDD/光学式ドライブなどに供給する電源に変換する電源回路が取り付けられており、PCIスロットは利用できない。また、外部コネクタとしてもUSB 2.0コネクタ以外には拡張用コネクタはない。そのため、拡張性に関しては、ある程度妥協の必要があるだろう。
●高い静音性、省電力性を実現 ST100は、モバイルPC向けのパーツを利用することによって非常にコンパクトなボディを実現しているが、それに伴う高い省電力性に加え、優れた静音性が実現されている点も特徴となっている。 CPUだけでなく、チップセットやHDD/光学式ドライブなどもモバイルPC向けのものが搭載されているため、CPUにCore 2 Duo T7600(2.33GHz)、メインメモリを2GB、160GBのHDD、DVDスーパーマルチドライブを搭載したハイエンド仕様でも、定常時25.4W程度の消費電力となっている。電力は付属のACアダプタによる供給となるが、その容量も90Wでしかない。 また、ST100には空冷ファンが1基のみ搭載されている。CPUにはヒートシンクのみが取り付けられており、その真上に空冷ファンが配置される。利用されているファンは、ファンに対して水平方向に風を吹き出すブロアファンで、本体背面に向かって内部の空気を排出するようになっている。また、本体側面には吸気用のスリットが用意されており、CPUだけでなく、ケース内部の熱を効率よく排出できるように、内部のエアフローも工夫されている。 電源をONにした瞬間は、ファンがフル回転数で回転するために、かなり大きな騒音が発生するが、それもほんの一瞬で、すぐに回転数が落ちる。その後は、ファンの回転数が上がることはほとんどなく、約22dBという非常に優れた静音性が実現されている。これは、空冷ファンを搭載するノートPCとほぼ変わらないほどの騒音でしかない。しかも、ベンチマークテストを実行しているような高い負荷がかかるような場面でも回転数が大きく上がることはなかった。マシン利用時に騒音に悩まされることはほとんどないと言っていいだろう。
●パフォーマンスはノートPC相当、省スペース性に魅力を感じるならお勧め 今回も、パフォーマンスを検証するため、いくつかのベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark03」、「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ。測定は、電源オプションプロパティの電源設定を「常にオン」に設定して測定している。 試用機には、CPUがCore 2 Duo T5500(1.66GHz)、メインメモリが512MB(512MB DIMMモジュール1枚)、80GB HDD、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブがそれぞれ搭載されていた。この構成の場合、価格は91,875円となる(11月29日現在)。 結果を見ると、Core 2 Duoの中でもローエンドに位置するT5500を搭載し、メインメモリもシングルチャネル動作であったこともあり、特に3D描画能力はやや結果が悪い。良くも悪くも、パフォーマンスはノートPC相当と考えていいだろう。とはいえ、ビジネスシーンで広く利用されるアプリケーションやWebブラウザの利用でパフォーマンスが問題になることはまず考えられず、省スペースデスクトップとして必要十分なパフォーマンスが発揮されていると言っていいだろう。 もちろん、パフォーマンスはCPUの種類やメインメモリの搭載量などによっても変わってくるため、今回の結果がST100のパフォーマンスを完全に示しているわけではない。 拡張性がUSB 2.0以外に全くなく、標準で用意される機能のみで活用しなければならないため、機能面に関してはある程度の妥協が必要だ。また、LANがGigabit Ethernet対応ではなかったり、DVI出力が用意されていない点など気になる部分もある。とはいえ、CPUにはデュアルコアCPUであるCore 2 Duoが搭載でき、DirectX 9対応の描画機能やサウンドなど、最低限必要となる機能は全て搭載されているため、高い3D描画能力を必要とするようなソフトを利用しない限り、パフォーマンスが問題になるようなことはない。 そして何より、他の省スペースデスクトップには真似のできない、非常に優れた省スペース性や静音性の高さは、拡張性やパフォーマンスの不利を補って余りある特徴である。しかも、価格は59,800円からと安価で、コストパフォーマンスも申し分ない。必要十分なパフォーマンスが確保されているうえで、省スペース性に優れたデスクトップを探している人にお勧めしたいマシンである。
【表】ベンチマーク結果
□エプソンダイレクトのホームページ (2006年12月4日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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