笠原一輝のユビキタス情報局

見えてきたSanta Rosaの全貌
〜シングルコア動作時にクロックアップする機能を追加



Santa Rosaプラットフォーム

 Intelは、次世代のモバイルプラットフォームとして開発コードネーム“Santa Rosa”(サンタロサ)を開発しており、2007年の第2四半期にリリースすべく、すでに開発は最終段階に突入している。すでにOEMベンダのレベルでも、Santa Rosaに対応したプラットフォームの開発が進んでおり、何事もなければ2007年の4月頃にはエンドユーザーの手元にSanta Rosaに対応したノートPCが届けられることになる。

 すでに明らかになっているように、Santa Rosaは800MHzのFSBに対応したCore 2 Duoプロセッサ(開発コードネーム:Merom)と、Intel 965xMチップセット(開発コードネーム:Crestline)、無線LANモジュールのIntel Pro/Wireless 4965AGN(開発コードネーム:Kedron)の3つのコンポーネントから構成されているほか、オプションで“Robson”と呼ばれるHDDのキャッシュメモリとして利用できるフラッシュメモリを搭載できるなどの特徴を備えている。

 OEMメーカー筋の情報によれば、Santa Rosaには、それらに加えて“IDA”(Intel Dynamic Acceleration)と呼ばれる新しい機能がCore 2 Duoに追加されるなど、さらなる隠し球も用意されているようだ。

●シングルスレッドに1つのプロセッサコアの周波数を引き上げるIDA

 Santa Rosaで採用されるCore 2 Duoプロセッサは、現行のCentrino(Napaプラットフォーム)用として利用されているものと同じ開発コードネーム“Merom”と呼ばれるものなのだが、FSBは現在の667MHzから800MHzに引き上げられる。これにより、熱設計消費電力(TDP)が34Wから35Wへと若干引き上げられる。

 主に違いはこの2点だと思われていたのだが、Santa Rosa用のMeromにはもう1つの隠された新しい機能が用意されていた。それがIDAと呼ばれる機能だ。

 IDAの仕組みはこうだ。2つあるCPUコアのうち、1つがC3ステートかそれ以下のステートに移行し(つまりスリープ状態に入ったとき)、かつOSないしはアプリケーションがシングルスレッドの動作などの1つのコアだけで実行するのに適した状態にある時に、プロセッサはIDAモードへ移行する。IDAモードが有効になると、もともとの最高周波数よりも1つ上の最高周波数で動作させられることになる。

 そうなると、もともとプロセッサが想定している熱設計消費電力を超えてしまうのではないかという心配もでてくるが、実際にはもう1つのCPUコアはC3以下のモードになっていて、発生している消費電力はいわゆる漏れ電力(リーケージ)のみとなるので、片側のCPUコアがより高い周波数になることで発生する消費電力とスリープ状態のCPUコアの消費電力を足しても、35W以下になるように設計されるという。つまり、OEMベンダはプロセッサの消費電力が常に35W以下になるように設計しておけば、特に何も追加コストなしでIDAを使うことができる。

 このIDAのメリットは、言うまでもなくシングルスレッド時の性能が向上することだ。Core 2 DuoやCore 2 Extremeのようなデュアルコア/クアッドコアの弱点は、シングルコアのCPUに比べてクロック周波数を下げなければいけないので、シングルスレッド時の性能がシングルコアのCPUに比べて落ちてしまうことがあることだ。しかし、このIDAを利用することで、そうした弱点をカバーすることができる。

【図】IDAの仕組み(※別ウィンドウで開きます)

●従来はTurbo Modeと呼ばれていたIDAは、ほとんどのSKUで採用

 なお、このIDAを利用するには、他のアプリケーションがアイドルモードにあり、かつアプリケーションがシングルスレッドか、IDAに対応したコードでかかれたマルチスレッド対応アプリケーションである必要がある。つまり、OSやアプリケーションが、普通にマルチスレッド処理を行なおうとしている場合、IDAの機能はキャンセルされて、通常のデュアルコアモードへと移行する。もちろん、その方が高い処理能力を発揮できるからだ。従って、IDAを利用できるシーンはかなり限定されたものになると考えるのが妥当だが、例えば、シングルスレッドがほとんどのオフィスアプリケーションや3Dゲームの利用がメインであるというユーザーには意味があるだろう。

 ちなみに、Intelに近い関係者によれば、IDAはもともとTurbo Modeと呼ばれていた機能が元になっているという。Turbo Modeとは、CPUの熱設計を40W以上に設定し、通常は35Wで利用するものの、机の上などでACアダプタ経由で利用する場合、つまりデスクトップPCとして利用する場合にだけ42WのTDPに枠を拡大しプロセッサの周波数を引き上げるという機能だった。

 ただし、このTurbo Modeはいくつか用意されるMeromのSKUのうち、一番上のSKUにのみ有効だったのに対して、IDAではメインストリーム向けのすべてのSKUに対応していること、またTDPの枠は42Wに拡大されることはなく、通常モードと同じ35Wで利用されるという違いがある。おそらくIntelとしては、Napa用のMeromとSanta Rosa用のMeromの違いがFSBだけになってしまうので、ユーザーに差が無く見えてしまうことをおそれ、このIDAを一番上のSKUだけでなくメインストリーム向けのSKUに拡大したのではないだろうか。

 このIDAの機能は、ノートPCでも有効だが、そのままデスクトップPCにも利用することができる。例えば、シングルスレッドのものがほとんどの3Dゲームなどでは、かなり有益になるのではないだろうか。そうした意味では、デスクトップPC向けのCore 2 Duoでも採用を期待したいところだが、今のところOEMベンダなどに対してはデスクトップPCでもIDAを採用するなどの説明は行なわれていない。しかし、EIST(拡張版Intel SpeedStep Technology)などが、最終的にデスクトップPCにも拡大されたように、IDAも将来的にデスクトップにという動きは当然予想されるのではないだろうか。

【表1】Santa Rosa向けMeromのSKU構成(筆者予想)
 プロセッサ・ナンバクロックFSBL2キャッシュIDA対応
通常電圧版T77002.4GHz800MHz4MB
T75002.2GHz800MHz4MB
T73002GHz800MHz4MB
T71001.8GHz800MHz2MB
低電圧版L75001.6GHz800MHz4MB
L73001.4GHz800MHz4MB
超低電圧版U76001.2GHz533MHz2MB
U75001.06GHz533MHz2MB

●1GBと512MBの2つのSKUが用意されるRobson

 Santa Rosaでは、Robsonと呼ばれるフラッシュメモリがオプションとして用意される。このRobsonは、ノートPCのマザーボード上に実装され、HDDのキャッシュのような形で利用されることになる。

 OEMベンダ筋の情報によれば、Robsonには1GB、512MBという2つのSKUが用意される。Santa Rosa投入時にはまず上位SKUの1GBが投入され、その後第2四半期中に512MBが投入されることになるという。OEMベンダへの提供方法は2つあり、マザーボードに直接実装するキット形式での提供と、マザーボードにはコネクタを介して提供するモジュール形式での提供がある。前者はサブノートやミニノート用で、後者はBTOベンダ用などと考えるとわかりやすいだろう。

 なお、RobsonはRobsonのコントローラ+フラッシュメモリという形で提供されるが、他社のフラッシュメモリを使いたいOEM用に、コントローラだけという提供方法も用意されている。

 気になる価格だが、OEMベンダレベルではコンポーネントだけで1GBモデルで20ドル前後、512MBモデルで15ドル前後、モジュールの場合にはそれに+4ドルという設定になっているようだ。従って、ノートPCで実装した場合には、リテール価格で6〜10ドル程度の差となって現れてくることになるだろう。

●チップセットの熱設計消費電力は日本のOEMベンダにとっては頭痛の種に

 チップセットのCrestlineことIntel 965は、リリース時には2つのSKUが用意される。それがGPU統合型チップセットのGM965、単体型のPM965だ。OEMメーカー筋の情報によれば、第3四半期には外部GPUをサポートしないGL960も追加される予定であるという。

 モバイル向けのIntel 965シリーズは、その型番からもわかるように、基本的なダイはデスクトップ用のIntel 965と同様だ。デスクトップPC向けのIntel G965は、熱設計消費電力が28Wにも達するため、そのままではノートPC用としては使えない。そこで、モバイル用として、電圧を1.05Vに下げる(デスクトップ用は1.25V)ことで、消費電力を抑えている。表2は、OEMメーカー筋の情報を元にしたIntel GM965のTDPだが、内蔵GPUの動作周波数により消費電力が異なっている。500MHz時には13.5Wなどと、ノートPC用としては高めになっている。

 もともとCPUのTDPが35Wである通常版のCPUと組み合わせて利用する場合には、それでもギリギリ許容範囲と言えなくはないのだが、問題は15Wや10WといったもともとCPUの消費電力が低い低電圧版や超低電圧版と組み合わせて利用する場合には、CPUと同じぐらいの消費電力になってしまうので、熱設計上かなり厳しいことになる。

 もう1つの問題は、Intel 945シリーズで用意されていたGMSのSKUが用意されていないことだ。GMSはパッケージを小さくすることで、超低電圧版のCPUと組み合わせて利用した場合、マザーボードの基板を小さくできるため、特に日本のPCベンダを中心に利用されてきた。だが、Intel 965シリーズでは、ダイサイズがかなり大きくなってしまっているため(別記事参照)、おそらくGMSで採用している小型のパッケージに入れることができなかったのではないだろうか。この問題は、デュアルコア版の超低電圧版のTDPが10Wで、従来の5W版が用意されていないことと合わせて日本のOEMベンダにとっては大きな問題で、今後Intelが解決しなければならない課題の1つだと言えるだろう。

【表2】GM965の熱設計消費電力(筆者予想)
CPUFSBGPUコアクロックメモリTDP
通常版800MHz500MHzDDR2-667/デュアル13.5W
通常版800MHz400MHzDDR2-667/デュアル12W
低電圧版800MHz320MHzDDR2-533/デュアル10.5W
超低電圧版533MHz267MHzDDR2-533/デュアル9.5W

●2007年には新しいブランドCentrino Proを企業向けに投入

 プラットフォームレベルでは、いくつかの新しい戦略が追加される。まず、企業向けのvProとCentrinoとの整合性の問題が、解決される。OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは来年の第1四半期に“Centrino Pro”と呼ばれる新しいブランド名を追加する。

 Centrino Proでは、従来のCentrinoの条件(デュアルコアCPU、チップセット、無線LAN)に加えて、AMTやVTなどをBIOSレベルでサポートしている必要がある。条件としては、vProにかなり近いものになっている。つまり、IntelとしてはデスクトップPCはvProで、ノートPCはCentrino Proでと使い分けていくという。

 また、コンシューマPC向けには、2007年の第3四半期にノートPC向けにもViivソフトウェアが提供されることになった。Viiv Technologyに対応させるためには、ViivソフトウェアをPCにインストールする必要があるが、現在利用されているViivソフトウェア v1.5も、Windows Vistaに対応したv1.6もノートPCには対応していなかった。このため、Viivの条件(デュアルコア、チップセット、IntelのLANチップなど)を満たしていても、ノートPCはViiv Technologyを利用することができなかったのだ。そこで、2007年の第3四半期にリリースが予定されているv1.7で、ノートPCの対応をすることになるという。

 ただし、Viivソフトウェアを搭載したノートPCがCentrinoブランドになるのか、それともViivブランドになるのかは、今のところわかっていない。

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【10月27日】インテル、クアッドコアやSanta Rosaの展開方針を解説
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【6月12日】【海外】Broadwaterを前面に押し立てたIntelの狙い
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【1月16日】【笠原】Intelの次世代プラットフォーム“Santa Rosa”
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0116/ubiq145.htm

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(2006年11月30日)

[Reported by 笠原一輝]


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