一般コンシューマ向け外付けストレージの分野で、これまでありそうでなかったのが、直接接続タイプのRAID 5ストレージだ。直接接続というのは、個々のPCにぶら下げるタイプのこと。ネットワーク接続型のように、複数のホストで共有することを前提にした製品ではない。 なぜなかったのか。その理由は定かではない。コンシューマ向けPCが備えるUSB 2.0やIEEE 1394では、RAID 5に見合う帯域が確保できなかった、ということも考えられるが、それが理由なら、実効帯域がそれ以下になるネットワーク接続型でなぜRAID 5が先にサポートされたのか、ということにもなる。 おそらくは、直接接続型ストレージの市場では、RAID 5をサポートすることによる価格の上昇をカバーできないと、単純に考えられていたのではなかろうか。ぶっちゃけて言えば、外付けHDDでこの値段はないでしょ、と考えられていたわけだ。 それがここにきて直接接続型ストレージでRAID 5をサポートした製品が、バッファローから登場してきた。4台のHDDを内蔵した「HD-QSU2/R5」シリーズで、計1TBの「HD-Q1.0TSU2/R5」(83,580円)と、2TBの「HD-Q2.0TSU2/R5」(156,345円)の2モデルだ。 登場の背景は色々なことが考えられる。先行して販売されたネットワーク接続型でRAID 5の利便性が広まったこと、ノートPCの普及に加えデスクトップPCの省スペース化(小型化)で、内蔵ストレージを拡張することの難しいPCが増えていること、ビデオの録画、編集など容量と速度(帯域)の両方を必要とするアプリケーションが普及したこと、などだろうか。RAID 5の外付けストレージに十分な帯域を提供可能なeSATAの登場も、直接接続型RAID 5ストレージの登場を、ちょっぴり後押ししているのかもしれない。 ●RAID 0/1/5、JBODと豊富な対応 さて、ここで紹介するのは、上述した2モデルのうち、1TBモデル(HD-Q1.0TSU2/R5)の試作機だ。PCとの接続インターフェイスはUSB 2.0とeSATAの2通りだが、両方を同時に利用することはできない。4台のHDDで、RAID 5に加え、ストライピング(RAID 0)、ミラーリング(RAID 1)、スパニング(JBOD)、通常(4台個別に使用、ただしUSB 2.0使用時のみ)の動作モードをサポートする。とはいえ、1台750GBのHDDもある今日この頃、本機を利用するユーザーの大半は、バイト単価と冗長性のバランスのとれたRAID 5モードがお目当てのハズだ。工場出荷時設定もRAID 5になっている。 外観は、この種のデバイスとしては、ごく標準的な黒く四角いボディ。前面パネルも電源LEDとアクセスランプくらいでシンプルだ。背面には、電源コネクタと電源スイッチ、冷却ファンのほか、PC電源連動機能切り替えスイッチ、USB 2.0端子(Bコネクタ)とeSATAコネクタが用意される。PC電源連動機能をAUTOに設定しておくと、本機の電源がホストの電源に連動する(電源は内蔵)。
本機をUSB 2.0経由で接続している場合は、Windows標準の「ハードウェアの安全な取り外し」を利用して、PC起動中に取り外すことができるが、eSATA接続中はシステムをシャットダウンするまで取り外すことはできない。本機を製品添付のeSATAブラケット(マザーボード上のシリアルATAポートを外付け用のコネクタに変換する)経由でeSATA接続した場合、マザーボードのBIOS設定により本機をシステムの起動デバイスにすることも可能だが、この場合システムの起動中に取り外すことができないのは言うまでもない。
前面パネルは、故障の際のドライブ交換を考えて、下部のツメ2カ所を外すだけで簡単に取り外すことができる。内部に納められているのは4台のパラレルATAドライブで、ホットスワップには対応しない。ドライブのシャシーへの固定は、ドライブの片側に取り付けられたレールをネジ止めする形式だが、ネジをきつく締めても若干遊びがある(カタカタいう)。実際に設置して利用する分には大きな問題はないと思うが、輸送中にドライブに衝撃が加わらないのかちょっと気になった。 コントロール基板は、MediaLogic製のRAIDコントローラ「AMI-X」と、ATA-USB変換機能付きATAコントローラ「D8927TGC」をベースに、JMicronの「JM20330」でシリアルATA出力を加えるという構成のようだ。そのせいもあってか、RAID構成の変更や、4台のドライブを個別に利用する場合、インターフェイスはUSBでなければならない(eSATAから個別のドライブを利用する場合、1台目のドライブのみが見える)。
●ベンチマーク結果 直接接続型のストレージということで、性能が気になるところだが、シーケンシャルなリードとライトについては、比較的高速な印象だ。特に読み出しは高速で、RAIDの利点が冗長性だけでなく、性能面でも感じられる。書き込みについても、本来RAID 5ではパリティの計算とRAID構成ドライブに分散してパリティを書き込むオーバーヘッドで遅くなることが多いが、本機はかなり健闘していると思う。 ただ、オーバーヘッドのせいか、ランダムリード/ライトはそれなりというところ。これが災いして、PCMark 05のように、一般的なPCの利用を前提としたテスト、細切れなアクセスが多いテストでは、シングルドライブを下回る結果となっている。が、1台ドライブが故障してもデータを失わないで済む冗長性を考えれば、利用する価値はなおあると考えられる。ブートドライブ、アプリケーションインストールドライブは内蔵HDDにして、本機には動画をはじめとするデータや、ブートドライブのバックアップイメージを置く、といった使い方が良いかもしれない。
【表1】クライアントPCの構成
【表2】ベンチマーク結果
現在、モデルチェンジ期であることも含め、ネットワーク接続型のRAID 5ストレージの価格がだいぶ安くなっている。ネットワークで共有することの利便性を考えれば、ネットワーク接続型の方が利用価値が高いが、本機に比べれば性能的には劣る。また、直接接続型ストレージである本機は、ネットワーク関係の設定が不要で、誰でもつなげば利用できるという気軽さもある。このあたりに価値を見いだした上で、RAID 5の冗長性が欲しいというユーザー向けというところだろう。
□バッファローのホームページ (2006年11月21日) [Reported by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
|