日本HPは、ここ数年はビジネス向けPCにのみターゲットを絞り、コンシューマ向けPCはあまり積極的に展開していなかった。しかし、2006年に入り、方針を転換してコンシューマPCにも積極的に取り組みだしている。 今回取り上げる「HP Pavilion Notebook PC dv5200/CT」は、そうしたコンシューマ向けPCの1製品で、15.4型のワイド液晶を搭載しながら、最廉価なモデルで84,000円と安価な価格設定がされているのがポイントだ。 ●15.4型で1,280×800ドットのワイド液晶を採用 今回取り上げるHP Pavilion Notebook PC dv5200/CT(以下本製品)は、15.4型ワイドという今主流となりつつあるサイズの液晶を搭載したコンシューマ向けノートPCだ。
ワイド液晶は、ハリウッド映画や、一部の国内アニメなどの16:9の解像度で作られたコンテンツを閲覧する時に最適なほか、Excelなど作業にスペースが必要なアプリケーションを利用する際にも便利だ。 液晶はいわゆるツルツルやピカピカなどと言われるグレア液晶となっている。写り込みがやや気になるものの、発色などは鮮やかでコンテンツの再生用途に向いている。 解像度は、最近15.4型クラスでも見かけるWSXGA+(1,680×1,050ドット)やWXGA+(1,440×900ドット)ではなく、WXGA(1,280×800ドット)という解像度が採用されている。表示できる範囲はやや狭くなってしまうものの、文字の大きさを示す指標になるドットピッチは0.2585mmと大きめ(ちなみに15.4型のWSXGA+は0.20mm)で、大きな文字で見やすい。 GPUは、チップセットであるIntel 945GMに内蔵しているIntel GMA 950を利用している。ビデオメモリはメインメモリと共有で、最大128MBまで利用することができる。 ●本体を閉じても利用できる老舗ALTEC LANSINGのスピーカーを採用
本製品はコンシューマ向けPCということもあり、これまでのHPのビジネス向けPCには搭載されていなかったような機能も追加されている。例えば、スピーカーには、ALTEC LANSING製のスピーカーが採用されている。ALTEC LANSINGは日本のPCユーザーにはあまりなじみのないメーカーだが、米国では老舗のスピーカーメーカーとして、オーディオマニアに定評を得ている。 ユニークなのは、本体が閉じていてもきちんと音がでるようにスピーカーの位置に工夫がされていることだ。例えば、本体を閉じてキーボードとディスプレイを接続して利用しているというシチュエーションでも、きちんとスピーカーを利用できるのだ。 また、本体には、コンテンツを素早く再生するためのボタンも用意されている。キーボードの上に用意されている“DVD”ボタンを押すことで、DVD再生ソフトウェアが起動するし、“Q”とかかれたボタンを押すことで、10フィートUIの“QuickPlay”が起動し、動画や写真、音楽といったコンテンツを手軽に再生することができる。また、OSが起動していない時に、このQボタンを押すと、Windows上のQuickPlayと似たデザインのQuickPlayが起動してDVD再生や音楽ファイルの再生などが可能になる。 ●CPUはCore Duo T2500/T2300EかCeleron M 410を選択可能 もちろん、PCとしての基本機能はきちんと押さえられている。CPUはIntelのCore DuoないしはCeleron Mを選択できる。本製品は、直販サイト「HP Directplus」を通じて販売されており、購入時にWebサイトなどでスペックをユーザーが選択できるようになっているのだ。原稿執筆時点(8月上旬)ではCore Duo T2500/T2300E、Celeron M 410の3つの中から選択できる。 メインメモリはDDR2 SDRAMのSO-DIMMで、2スロットが底面に用意されている。標準状態では256MBのSO-DIMMが2枚装着されトータル512MBとなっているが、512MBが1枚という構成や1GB(512MB×2)、2GB(1GB×2)という選択も可能だ。2007年の1月に発売が予定されているWindows Vistaへのアップグレードに備えるのであれば、1GB以上の構成にしたいところだ。 HDDは標準では40GBとなっているが、ほかにも80/100/120GBの容量を選択できる。インターフェイスはシリアルATAが採用されており、HDD自体は本体底面にあるふたを外すだけで簡単にアクセスできる。このため、保証期間終了後にHDDをユーザーが自分で交換、ということも手軽に行なえる。特にHDDは壊れやすいパーツであるだけに、ユーザーでも手軽に交換できる設計はありがたい。
●無線LAN+Bluetooth 2.0という組み合わせを選択可能 光学ドライブは標準ではCD-RW/DVD-ROMコンボドライブが採用されている。これも購入時にDVDスーパーマルチドライブに変更可能だ。評価機には、LG電子製のDVDスーパーマルチドライブである「GMA-4082N」が搭載されていた。DVD±Rが最大8倍、DVD±RWが最大4倍、DVD+R DLが最大2倍、DVD-RAMが最大5倍、CD-Rが最大24倍、CD-RWが最大16倍で書き込みできる。 拡張ポートなどは本製品の左側面と右側面に用意されている。左側面にはミニD-Sub15ピン、Sビデオ出力、Ethernet、拡張ポート、USB 2.0×2、IEEE 1394(4ピン)、Type2 PCカードスロット×1、SDカード/MMC/メモリースティック(PRO)/スマートメディア/xD-Picture Card対応スロットが用意されている。なお、拡張ポート用の周辺機器などは用意されていない。HPのWebサイトによれば、将来の拡張用とされており、もしかしたら将来、対応する周辺機器が発売される可能性がある。 右側面にはオーディオ入出力ポート、ExpressCard/54スロット、USB 2.0×1、光学ドライブ、モデム、ACアダプタ接続ポートなどが用意されている。 無線LANはなしか、Intel PRO/Wireless 3945ABGのみ、Intel PRO/Wireless 3945ABG+Bluetooth 2.0という構成が可能になっている。Intel PRO/Wireless 3945ABGは、IEEE 802.11a/b/gのトリプル対応で、こちらを選択したときにはブランドがCentrino Duoになり、パームレストに張られるシールがCentrino Duoになる(なしを選択した場合には、Core DuoないしはCeleron Mのシールが貼られる)。Bluetoothは Ver2.0+EDRに対応しており、ソフトウェアスタックにはBroadcom 2.0対応スタックが採用されている。最近では携帯電話などでBluetoothに対応したものが増えているため、Bluetooth内蔵が選択できるのはうれしい。 なお、無線LANをOFFにできるボタンが、キーボードと液晶の間に用意されており、飛行機や病院など無線電波を出してはいけないところでは、ワンタッチでOFFにできる。 ●キーピッチは十分なキーボードだが、配列には再考の余地あり バッテリは6セルの10.8V/4Aのものが内蔵されており、バッテリの容量は43.2Whとこのクラスとしてはやや少ない容量だが、重さが2.99kgと常に持ち運ぶことを前提にしていないことを考えると、実用上は全く問題ないだろう。実際、メーカー公称のバッテリ駆動時間(JEITA測定法1.0準拠)では3.45時間と、家庭内で利用するには十分なバッテリ駆動時間が実現されている。 ACアダプタは、このクラスとしてはかなり小さくなっており、電源のアウトレットとACアダプタ本体の間のケーブルがやや太く取り回しが悪いことを除けばコンパクトで扱いやすい。
キーボードはキーピッチが19mm、キーストロークが2.5mm確保されており、文字入力は快適に行なえる。また、F4とF5、F8とF9の間にきちんとスペースがとられており、日本語変換でF8を多用するユーザーでも快適に入力することができるのは特筆できる。 ただ、1つ気になったのはエンターキーの右にPageUpやPageDownのキーが、Backspaceの右にHomeキーがきていたことだ。おそらく英語キーを日本語化するときにさまざまな制約からこうしたキー配列にせざるを得なかったのだと思うのだが、入力しているとEnterを押そうとしてPageUpを押してしまったり、Backspaceで文字を消そうとしてHomeキーで先頭に戻ってしまうということが多々あった。 PageUp/Down、HomeキーなどはFnキーとの組み合わせにしないで実装すると、そのトレードオフとしてこうなってしまうのは致し方ないのだが、できればEnterキーやBackspaceの右にはキーは置かないデザインにしてほしいモノだ。もっとも、これは物書きでキーボードを多用する職業の筆者だからこそ思うことであるので、さほど文字入力を高速で行なわない一般のホームユーザーであれば、そこまでこだわらなくてもよいかもしれない。
●Core Duo T2300Eを搭載したPCとしては標準的な性能を発揮 ベンチマークソフトを利用して、本製品の性能を計測してみた。利用したソフトはFutureMarkのPCMark05、3DMark03、スクウェア・エニックスが配布しているFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の3つだ。 結果は以下の通りで、本製品はCore Duo T2300、Intel 945GM内蔵のGMA 950利用というスペックから考えると妥当な結果と言える。3Dの結果は、もちろん単体型のMobility Radeon X1800を搭載するデルの「XPS M2010」には遠く及ばないが、GMA 950を利用している製品としては優秀な結果となっている。
【表】ベンチマーク結果
●最小構成で配送料、税込みで9万円を切る安価な価格設定が最大の魅力 以上のように、本製品は、飛び抜けて何か特徴があるわけではないが、15.4型という現在主流でコストパフォーマンスの高い液晶を採用するなど家庭向けのノートPCとして必要な機能は押さえており、かつCore Duoが選択できたり、120GBのHDDが選択できる点など、予算に応じてスペックをあげていくことができるのも、PCにかける予算に限りがある家庭などにはうれしい点と言えるだろう。 やはり本製品の特徴はその価格にあると思う。15.4型の液晶、Celeron M 410、512MBメモリ、40GB HDD、無線LANなし、OSはWindows XP Home Editionというスペックで84,000円(配送料、税込みで87,150円)という価格になっており、この価格でHPによる1年保証もついてくるのだから、コストパフォーマンスに優れていると言えるだろう。そうした、コストパフォーマンスに優れたノートPCを、低予算で購入したいというユーザーであれば検討してみる価値がある1台だ。 □日本HPのホームページ (2006年8月10日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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