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COMPUTEX TAIPEI 2006レポート

好調なチップセットビジネスを拡張するATI

会期:6月6日〜6月10日(現地時間)

会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3
   Taipei International Convention Center



CrossFire Xpress 3200 for AM2を搭載したSapphireのマザーボード。Socket AM2対応のATIチップセット搭載製品に関しては関連記事を参照いただきたい

 ATI Technologiesと言えば、もっとも有名なのはGPUベンダとしてだが、ここ数年はチップセットビジネスが急速な勢いで伸びている。特に、Windows Vistaでは3D描画性能が大きくクローズアップされているため、内蔵GPUの性能に注目が集まっており、強力なGPUコアを持つATIや、NVIDIAの統合型チップセットが注目されているのだ。

 ここCOMPUTEXでも、ATIは、Socket AM2のリリースに合わせて発表された「CrossFire Xpress 3200 for Socket AM2」や「Radeon Xpress 1100」シリーズなど、新しい製品を展示したほか、未発表のRS600などに関しても展示が行なわれた。躍進著しいAMDのチップセットビジネスの戦略を紹介しよう。


●すべてのデスクトップPC向けボードはCrossFire対応へ

 ATIのチップセット事業は、2005年記録的な売り上げを上げたという。その背景には、Intelが起こしたチップセットの供給不足という背景がある。このため、OEMベンダは、Intelの代わりにATIのRadeon Xpress 200をチップセットとして採用する例が続出したほか、Intelブランドのマザーボード(D101GGC、D102GGC2)にATIのRadeon Xpress 200が採用されるなど、チャネル向けのマザーボードでも採用例が相次いだのだ。

 また、AMDのTurion 64の躍進もATIのチップセット売り上げに大きく貢献している。2005年にAMDが発売した「Turion 64」は、IntelのCentrinoの競合製品として米国などを中心に採用が進んでおり、そうした製品にも多くにATIのRadeon Xpress 200が採用された。

 ATIは、5月に発表された「Turion 64 X2」(デュアルコアのTurion 64)にあわせて新製品を投入している。それが、開発コードネームRC485で知られるRadeon Xpress 1150と、その廉価版となるRC485CことRadeon Xpress 1100の2製品だ。基本的にはRadeon Xpress 200と同じ内蔵グラフィックスコアを採用しているが、Radeon XPRESS 1150は内蔵グラフィックスのエンジンクロックが400MHzに引き上げられているという。

 だが、唯一ATIがあまり強みを発揮できていない部分がある。それが、リテール向けのマザーボードだ。現在ハイエンドのマザーボードは、イコールマルチGPUソリューションのためのマザーボードということになっている。ATIでは、すでにRD580ことCrossFire Xpress 3200をAMD向けに投入しており、Socket AM2のリリースにあわせてCrossFire Xpress 3200のAM2版を投入した。しかし、NVIDIAのnForceシリーズに比べると搭載製品が少ないのも事実で、今後リテール向けの製品でも巻き返しを狙っている。

ATI インテグレーテッド・マーケティング ディレクター ルーベン・ソラヤ氏

 そこで、ATIでは「今後デスクトップPC向けの製品は、すべてCrossFire対応にする。競合他社の製品では、マルチGPUに対応しているのはハイエンド製品だけだが、弊社の製品はすべてのセグメントでCrossFireをサポートする」とATIのルーベン・ソラヤ氏(インテグレーテッド・マーケティング ディレクター)は語る。NVIDIAがハイエンド製品(nForce 590 SLIはnForce 570 SLI)でのみSLIをサポートしているのに対して、ATIはローエンドも含めてすべてのデスクトップPC向けマザーボードでCrossFireをサポートし、X1600やX1300などとの組み合わせで安価にマルチGPU環境を提供していこうという戦略だ。



【表】ATIの現行チップセット
 CrossFire Xpress 3200
for AM2
CrossFire Xpress 3200CrossFire Xpress 1600Radeon XPRESS 1150Radeon XPRESS 1100Radeon Xpress 200 CrossFireRadeon Xpress 200 for Intel
開発コードネームRD580RD580RD485RS485RS485CRD480RS400
CPUAMDAMDAMDAMDAMDAMDIntel
ソケットSocket AM2Socket 939Socket 939Socket AM2/Socket S1Socket AM2/Socket S1Socket 939/754LGA775/Socket 478
CrossFire2×162×162×8--2×8-
PCI Expressx16、x16、x4x16、x16、x4x8、x8、x4x16、x4x16、x4x8、x8、x4x16、x4
内蔵GPU--内蔵(PS4P)内蔵(PS4P)--内蔵(PS4P)
サウスブリッジSB600SB600/SB4xxSB600/SB4xxSB600/SB4xxSB600/SB4xxSB600/SB4xxSB600/SB4xx

●Express Routeと呼ばれるPCI Expressの自動オーバークロックに対応したRD600

 さらに、ATIでは、Intel向けのハイエンド向けチップセットとして、RD600ないしはRS600の開発コードネームで知られる製品をまもなく投入する。内蔵GPUなしがRD600、ありがRS600になる。

 RD600/RS600の最大の特徴は、Intelの新しいCPUとなるCoreマイクロアーキテクチャに対応することだ。FSBは1,066MHzとなり、Core 2 Duo、Core 2 Duo Extreme、さらには開発コードネームMeromで知られるCore 2 Duoのモバイル版に関してもサポートする。メインメモリはDDR2に対応しており、「1,066MHzにオーバークロックされたDDR2にも対応したい」(ソラヤ氏)など、ハイエンド向けの製品として意欲的な仕様になっている。

 NVIDIAがCorsairなどと始めたEPPについては「EPPはリリースしているメモリベンダがまだ少ない。ただ、今後対応ベンダが増えてくれば実装するのは容易なので、対応していくこともあり得る」(ソラヤ氏)と述べた。

 さらに注目なのは、RD600にはExpress Routeと呼ばれるPCI Expressの自動オーバークロック機能が用意されていることだ。NVIDIAのnForce 590 SLIには、GeForce 7900 GTXをSLIで利用すると、その2つのGPU間を結ぶPCI Express x16とHyperTransportがクロックアップされるというLinkBoostという機能が用意されている。Express Routeはその対抗といえるだろう。

 「弊社のExpress Routeは3つの点でアドバンテージがある。1つは、競合他社のソリューションでは、他のI/Oも利用するHyperTransportのバスを経由するため、性能の低下が発生する可能性がある。2つめとして、弊社のPCI Expressはどちらもノースブリッジに接続されており、プロトコル変換にかかるオーバーヘッドもない。最後に、X1000シリーズ以降のGPUであればどんなGPUにも対応できる」(ソラヤ氏)と利点をアピールした。

 ソラヤ氏によれば、Express RouteによるPCI Expressのオーバークロックは、BIOSが自動でGPUを検知し、そのGPUに合わせて自動設定で行なわれるという。すでにATIのGPUをCrossFire環境で利用しているユーザーには、非常に気になる機能だろう。

 ただし、RD800では、PCI Expressは合計で20レーンのみのサポートとなるため、2×8、1×4という組み合わせのサポートになる。この点ではnForce 590 SLIやAMD向けのCrossFire Xpress 3200に比べるとやや劣ることになるが、「2×16の性能が生かせるかどうかは解像度やゲームに依存する。多くの場合は2×8で問題のないことが多く、それよりもExpress Routeでクロックアップできるメリットの方が大きい」(ソラヤ氏)とのことだった。

Express Routeを利用すると、2つのPCI Expressバスが自動的にオーバークロックされる(ソラヤ氏の手書きのメモより筆者作成)(※別ウィンドウで開きます)

●デザインが難しいHDMIに容易に対応できるRS600

 グラフィックスを統合したRS600の大きな特徴は、ATIの統合型チップセット(IGP)としては初めてATIのビデオ再生高画質化技術であるAVIVOに対応したことだ。AVIVOはMPEG-2再生時にインタレース解除を高品質で行なうなどの特徴を持っており、PCにおけるビデオ再生の表示品質を引き上げる効果がある。

 なお、気になるGPUの仕様だが、「4パイプラインで、シェーダモデル2.0に対応する」(ソラヤ氏)とだけ述べ、ハードウェアのバーテックスシェーダが搭載されているかなど、詳しい仕様についての言及は避けた。ただし、ソラヤ氏はRS600の内蔵GPUが、Windows Vistaをターゲットにしていると述べ、Vistaを利用するのに十分な性能を備えていると明らかにした。なお、OEMベンダ筋の情報によれば、ATIはRS600の内蔵ビデオ性能が、Radeon Xpress 200の倍近い性能を発揮すると説明しているとのことなので、かなり期待できそうだ。

 また、RS600には、標準でHDMI(High Definition Multimedia Interface)ポートを実装することが可能になっている。HDMIは大画面テレビと次世代DVDなどコンテンツ保護を必要とするような機器との接続に利用される接続ケーブルで、HD解像度のビデオを保護しながら大画面テレビなどに送ることができる。さらに、HDMIでは1本ケーブルでオーディオを送信することも可能になっている。

 HDMIを実装するには、コンテンツ保護を実現するため、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)と呼ばれるコンテンツ保護の仕組みをビデオカード側が持っている必要がある。具体的には、GPU内部もしくは外部チップにHDCPの暗号化(厳密にいうと暗号化ではないのだが、目的は同じなので、ここでは暗号化としておく)に利用する鍵を封入し、ビデオドライバでMicrosoftが提供するCOPP(Certified Output Protection Protocol)というスキームに対応している必要がある。

 現在日本などで提供されているPCに採用されているHDCP/HDMI対応ビデオカードは、ほとんどがSilicon Imageなどが提供する外部チップにHDCPの鍵を封入している。これに対して、RS600にはチップ内部にHDCPの鍵を封入しており、特に外部チップを利用せずにHDMIを実装することができる。

単体カードのHDMI実装とRS600におけるHDMI実装の違い

 また、もう1つ重要なことは、オーディオとの同期問題だ。すでに述べたように、HDMIではビデオとオーディオを1本のケーブルに載せてテレビなどに送信する。このため、PC上ではそれぞれ別のストリームとして処理されているオーディオとビデオをHDMIのトランスミッタレベルでマージする必要がある。このとき、同期をとるのが大変難しく、ビデオカードとオーディオチップの組み合わせごとにチューニングを行なって処理しているような状況だ。

 そこで、RS600ではある工夫を行なっている。OEMベンダ筋の情報によれば、RS600はノースブリッジにHDオーディオのコントローラを内蔵しているという。このため、ビデオとオーディオの同期はチップ内部で可能になっており、OEMベンダは比較的容易にHDMIポートを実装することができるという。この点は、HDMIにあまりノウハウがないベンダにとっては大きなメリットといえ、特にIGPを採用することが多いノートPCにとってRS600はよい選択肢となるだろう。

ECSのRS600Mを搭載したLGA775マザーボード。HDMI出力を備えている RS600を利用したHDMIの出力デモ。安価にHDMIの実装が可能であるのがRS600の魅力

●Yokohamaで安定したTurion 64 X2プラットフォームをODM/OEMベンダに提供する

 ATIはAMDと協力して“Yokohama”の開発コードネームで知られるモバイルプラットフォームのリファレンスデザインを開発している。これは、AMDとNVIDIAによる“Yamato”プラットフォームのATI版だ。IntelがCentrinoとしてプラットフォームでリファレンスデザインなどを提供していることへの対抗策だ。

 「Yokohamaによりバッテリ駆動時間は記録的に伸びている。我々の顧客がYamatoとYokohamaのバッテリ駆動時間を比べたところ大きな差が確認できている。また、ODM/OEMベンダにとっては開発期間を短縮できるメリットがある」(ソラヤ氏)という。

 もっとも、すでに述べたようにNVIDIAとAMDもYamatoと呼ばれるプラットフォームを開発し、提供している。「YokohamaはYamatoが対応していないディスプレイキャッシュを将来的に搭載することが可能だ。ディスプレイキャッシュはバッテリ駆動時間に非常に大きなインパクトがある」と述べ、Yokohamaの将来のバージョンにはディスプレイキャッシュと呼ばれるCPUで言えばL2キャッシュのようなキャッシュをGPU内部に搭載することで、メインメモリへのアクセスを減少させバッテリ駆動時間を延ばしていきたいという意向を明らかにした。

 現在のYokohamaプラットフォームは、RS485のコードネームで呼ばれるRadeon Xpress 1150がベースになっているが、このRS485はディスプレイキャッシュを内蔵していない。OEMベンダ筋の情報によれば、ATIはRS485の後継としてRS690を計画しており、RS485とはピン互換になるという。つまり、OEMベンダは現在のYokohamaプラットフォームに基づいてデザインをしておけば、新世代のRS690にそのまま移行できるのだ。

 RS690では、RS600と同じかそれより若干新しい内蔵GPUへ移行し、3D性能はRS485の倍になるという。さらに、AVIVOやHDMIのデザインにも対応し、さらにディスプレイキャッシュを内蔵したRS690DCというバージョンも用意されるという。また、RS690では21×21mm(幅×奥行き)という超小型パッケージも追加される見込みで、より小型のミニノートやサブノートPCのデザインにも有効になるだろう。

ATIのYokohamaプラットフォーム。今後AMDがTurion 64 X2を普及させる際の武器となるか。基盤上の“横浜”の感じがすてき? だ

●ノートPCも物理演算サポートを検討

ATI モバイルマーケティング担当ダレン・マクフィー氏

 最後に、モバイルマーケティング担当のシニアプロダクトマーケティングマネージャであるダレン・マクフィー氏とのQ&Aセッションも行なわれたので、その内容を下記にまとめる。

【Q】 NVIDIAはノートPCにもSLIを導入したが、ATIは同様にCrossFireを持ち込むのか。

【マクフィー氏】 我々も常に、デスクトップで開発した技術をノートPCにも導入することを考えている。しかし、NVIDIAのSLIノートPCは、廃熱やチップ面積などの問題から20型クラスの製品にのみ限られている。これはノートPCとしては大きすぎる。我々がCrossFireを導入するなら、もっと小型で持ち運び可能な製品を実現したいと考えている。

【Q】 CrossFireを導入するなら、物理演算にも対応していくのか。

【マクフィー氏】 もちろん、それも検討している。だが、それはまず、ノートPCでのCrossFireがどの程度普及するかに依存するだろう。また、対応ゲームがどの程度出てくるのかというのも重要な要素だ。これらを見極めた上で、展開していきたい。

【Q】 Windows Vistaでは、通常の画面でも3D技術を使うため、これまでのOSより消費電力が向上するが、これにはどうやって対処するのか。

【マクフィー氏】 半導体レベルでクロックゲーティングを用いて、チップ内部の細かなエリアでON/OFFすることで、消費電力を抑える。また、バッテリ駆動時はクロックを下げるという手段もある。

【Q】 ATIは今でもノートPCはTDPを3段階に分けた製品展開を考えているのか。

【マクフィー氏】 その通りだ。今現在では、10W以下、15〜20W前後、25〜50W程度のTDPで製品ラインナップを揃えている。1つここで補足したいのは、今後のCPUは既存製品よりもずっと消費電力が下がる。そのため、GPUとしては消費電力が上がっても相殺され、ノートPC全体では消費電力を同程度に維持できる。これはノートPC用GPUにとってありがたい状況といえる。

【Q】 MXMへの対抗について聞きたい。

【マクフィー氏】 まず、断わっておくがNVIDIAの提唱したMXMは我々のAXIOMと競合するものではない。AXIOMはモジュール化のデザインの1つに過ぎず、実装形態にはMXMも利用できる。つまり、AXIOMはMXMに含まれるものと考えていい。我々は、AXIOMを提供するが、ノートPCメーカーがMXMを使うか、それ以外のコネクタを使って実装するかは、ノートPCメーカーの判断だ。

【Q】 MXMを使ったノートPCでのGPUアップグレードは可能になるのか。CPUの場合は、TDPが異なってもユーザーが取り替えることも可能だ。

【マクフィー氏】 CPUソケットの場合、そこに差すのはIntelかAMDかのどちらかに決まっている。もし、GPUがATI製品のみであれば対応も可能だろうが、複数のメーカーがあるGPUでは、ユーザーによるアップグレードはほぼ不可能だ。基本的にはノートPCメーカーのBTO向けの存在となる。

Mobility Radeon X1600とHD DVDを搭載したAcer製ノートPC

【Q】 Windows Vistaや、HD DVD/Blu-ray Discなどの登場で、ノートPC向けでも独立したGPUへの需要が高まってきているが、チップセット内蔵GPUがこれらの状況に対応できるようになるのはいつ頃か。

【マクフィー氏】 基本的に内蔵GPUが単体GPUに追いつくのには2〜3年かかる。質問の場合も状況は似たものだろう。ただし、2〜3年後には、内蔵GPUでは対応できない新たな用途や処理が生まれているはずで、こういったサイクルは今後も続いていくだろう。

【Q】 内蔵GPUでのH.264のハードウェア再生支援はいつ頃実装されるのか。

【マクフィー氏】 現時点でH.264を必要とするコンテンツはほとんどない。登場は2007年以降で、そこから対応を検討していく。


□COMPUTEX TAIPEI 2006のホームページ(英文)
http://www.computextaipei.com.tw/
□COMPUTEX TAIPEI 2006レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/link/computex.htm
□関連記事
【6月7日】【COMPUTEX】COMPUTEX会場レポート【AMDプラットフォーム編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0607/comp04.htm
【3月2日】【多和田】ATIの最新ハイエンド環境「CrossFire Xpress 3200」&「Radeon X1900 CrossFire」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0302/tawada70.htm

(2006年6月12日)

[Reported by 笠原一輝/wakasugi@impress.co.jp]

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