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日立GST、垂直磁気記録の高信頼性をアピール
~2006年後半には1プラッタ40GBの1.8インチHDDを投入

「Travelstar 5K160」

5月17日 開催



 株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は17日、米国時間15日に発表された垂直磁気記録方式を採用した2.5インチHDD「Travelstar 5K160」の発表会を都内で開催した。

 Travelstar 5K160は、同社初となる垂直磁気記録方式を採用した2.5インチHDDで、すでに出荷開始されている。1プラッタあたり80GBの容量を実現し、容量は40GBから最大160GBのモデルが用意される。

 Travelstar 5K160は、性能アップ、低消費電力化、耐衝撃性の向上などを果たし、性能はPCMarkのベンチマークにおいて、他の垂直磁気記録方式HDDを18%以上上回るスコアを記録。面内記録方式HDDと比較しても6~29%上回っているという。また、動作時の放熱を抑えたり、Quiet Seekモードを用意するなど静音性にも配慮した。データ転送速度は内部最大で67.5MB/sec、サステインで47MB/sec。騒音はアイドル時22~25dB、シーク時24~27dB。

Travelstar 5K160の特徴 PCMarkのベンチマーク結果。一番左がTravelstar 5K160 従来製品「Travelstar 5K100」との比較

株式会社日立グローバルストレージテクノロジーズ取締役HDDプロダクト本部長 鈴木良氏

 発表会では、同社取締役HDDプロダクト本部長 鈴木良氏が同社の垂直磁気記録方式や製品を紹介。垂直磁気記録方式では、これまでの面内記録方式以上の信頼性を持っているとアピールした。

 まず、垂直磁気記録方式の歴史を解説。HDDは50年前の'56年に面内記録方式の製品が初めて誕生し、'75年に当時東北大学の教授だった岩崎俊一教授が垂直磁気記録方式を提唱。2000年に日立GSTが52.5Gbit/平方インチの実証を行ない、2004年に垂直磁気記録方式HDDのプロトタイプを製造してフィールド試験を開始。翌2005年には230Gbit/平方インチという容量を実現し、2006年の製品出荷開始へと至った。

 この間、順調に容量を伸ばしてきた面内記録方式も、2000年を過ぎたあたりから容量の壁に突き当たる。高密度化によってデータビットを構成する磁性粒子が小さくなり、室温でもデータの磁性方向が反転してしまい、データを消失する“熱ゆらぎ”が起こるようになった。垂直磁気記録方式では、データビットを垂直方向にすることで、平面にN/S極を並べる面内記録方式よりも容易に高密度化が可能になる。さらに、垂直方向にN/S極が配置されるため磁性体の体積が増加し、熱ゆらぎに強い構造となる。同社では、垂直磁気記録方式の記録密度の伸びは、年率40%を見込んでいる。

 同社が行なっている垂直磁気記録方式への取り組みは、製品の信頼性を比肩するものがないところまで高めること。独自の材料構成/磁性層製造プロセスによって耐腐食性を高めたディスクを製造し、書き込みヘッド素子の改良でエラーレートを業界最高レベルの水準とし、読み取りヘッドも新たな合金を採用して磁気の安定性の高いヘッド素子を開発。また、2万台以上の試作機による試験、数千台のストレス試験などを行ない、第1世代の垂直磁気記録方式HDDのフィールド試験では、エンドユーザーの不良ゼロを達成したという。

HDDの歴史 日立GSTの取り組み 垂直磁気記録方式のメカニズム

 この取り組み中で、読み取りヘッド素子に新合金を開発し、Travelstar 5K160に実装。今後の製品にも採用されていく。この読み取りヘッド素子は、イリジウム-マンガン-クロムによる合金を使用し、これまでのプラチナ-マンガン合金と比較して約2倍のデータ読み取り精度を実現したという。また、クロムを追加することで耐腐食性を高めている。

 このヘッド素子はルテニウム層を組み合わせて高磁界の中で熱処理を行なう新しいプロセスで製造され、温度/湿度の変化や衝撃など過酷な環境下におけるデータ読み取りの信頼性を向上させているとした。同社サイトでは、このヘッド素子の解説をFlashアニメーションで公開している。

イリジウム-マンガン-クロム合金の新型ヘッド素子 垂直磁気記録のディスクとヘッド

 続いて、Travelstar 5K160を投入した背景を説明。2.5インチHDD市場は2004年から2005年に44%増を記録し、今後も大きな成長が見込まれている。2006年以降は80GBモデル以上が主流となり、市場が大容量化を要求しているとして、今回の製品ではそれらのすべてをカバーできるラインナップを用意した。

 また、今後投入する製品を順次、垂直磁気記録方式とする方針を明らかにし、2006年後半に1.8インチHDDでも採用し、出荷開始する。容量は1プラッタあたり40GBとなる見込み。なお、3.5インチHDD「Deskstar」シリーズに関しては、4月に「T7K500」シリーズを発表したばかりということもあり、次のモデルから採用されるとのことだ。

2.5インチHDD市場は大きな成長を遂げている 日立GSTのラインナップは主容量帯をカバー 垂直磁気記録方式の1.8インチHDDも投入。なお、ビデオカメラやiPodのようなものが見えるが、あくまでもこれまで採用されたもののイメージということだ

□日立グローバルストレージテクノロジーズのホームページ
http://www.hitachigst.com/portal/site/jp/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.hitachigst.com/portal/binary/com.epicentric.contentmanagement.
servlet.ContentDeliveryServlet/JP_Public/aboutus/press_rsc/2006051702.pdf
(HDD)
http://www.hitachigst.com/portal/binary/com.epicentric.contentmanagement.
servlet.ContentDeliveryServlet/JP_Public/aboutus/press_rsc/2006051701.pdf
(ヘッド素子)
□製品情報
http://www.hitachigst.com/portal/site/jp/menuitem.2e33da50940d86d399558fe7eac4f0a0/
□関連記事
【5月16日】HGST、垂直磁気記録技術採用の2.5インチ160GB HDD
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0516/hgst.htm
【4月12日】日立GST、160GBプラッタ/最大容量500GBの「Deskstar T7K500」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0412/hgst.htm
【2005年4月5日】HGST、3.5インチ1TB HDDを実現する垂直磁気記録技術
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0405/hgst.htm

(2006年5月17日)

[Reported by yamada-k@impress.co.jp]

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