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HGST、3.5インチ1TB HDDを実現する垂直磁気記録技術
4月5日 発表 日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)は5日、垂直磁気記録技術を利用したHDDで230Gbit/平方インチの記録密度を実証したと発表した。2007年を目処に3.5インチで1TBの容量実現を目指す。 同日行なわれた発表会では同社 シニアダイレクタ、ワールドワイド アドバンストテクノロジ ラボラトリの高野公史氏が垂直磁気記録技術の原理や今後の展望などについて解説した。 垂直磁気記録技術は、HDDの円板面に磁気情報を垂直に配置することで、水平面内記録方式よりも同じ面積でより多くの情報を書き込むことを可能にした技術。同技術は'77年岩崎俊一教授が基本原理を提唱したもので、28年経てようやく実用化された。
現行の水平面内記録方式では、磁気データをディスク面に対して垂直に配置するため、磁極が反発し合い高密度化が困難である。例え記録媒体の膜厚を薄くし、磁極の反発を抑え高密度化が可能になったとしても、熱揺らぎの影響で記録磁化が消失してしまうといった問題がある。そのため、水平面内記録技術では150Gbit/平方インチ程度を超える記録密度を実現するのは困難とされ、近い将来に限界密度に達してしまうため、その代替技術の実用化が待たれていた。
今回同社が実用化した垂直磁気記録方式では、磁極を垂直に配置することで、隣接する磁性粒子が吸引し合い高密度に配置することができる。また、記録媒体の膜厚を充分に持たせることが可能で、記録磁化を安定化させることができる。 さらに、記録ヘッドと記録方式も変更され、従来のリング型記録ヘッドで漏れ磁束による媒体記録方式から、単磁極型記録ヘッドと裏打ち層で磁気回路を構成した磁界による媒体記録方式へ変更された。
これまで垂直磁気記録の実用化においては、結晶粒子間の磁気的な結合によるノイズと、裏打ち層によるスパイクノイズの発生が問題とされていたが、同社では点結晶粒の均一化と粒界の物理的な分離促進、裏打ち層の2層構造による反磁性結合とピン層の導入によりこれらのノイズを解消した。
同社では同技術を採用した2.5型HDDのフィールド試験を実行しており、記録密度88Gbit/平方インチの試作品が、数百台ほど作られた。今のところ問題はなく、2007年には230Gbit/平方インチのHDDが製品化される予定。それ以上のものに関しては、実証できていないが、まだ余裕があるとみており、少なくとも現行技術で300Gbit/平方インチは達成可能で、将来的には1Tbit/平方インチのものも実現可能だとしている。 また、読み取りヘッドに関しては、現行のGMRヘッドで数世代にわたり採用していく予定で、最低230Gbit/平方インチの密度まで対応できるという。ただしそれ以上の密度向上にはヘッドの開発も必要としている。 同社は2005年中に同技術を採用した2.5インチで120GB程度の製品を市場に投入する予定。また2007年をめどに、3.5インチで1TBの容量を持つ製品や、20GBの1インチMicrodriveを順次展開していく予定。
質疑応答では、他社との競合製品などについて質問がなされ、高野氏は、「米Seagateが同じレベルまで来ているが、我々はヘッドと記録媒体の両方を独自で垂直統合的に開発できるため有利」、「東芝は垂直記録方式を利用した0.85インチHDDを製品化しているが、容量が小さくなりHDDの大容量というメリットを生かせない。小型化は1インチのもので十分と考える」と答えた。 また、製品価格についても質問が及び、同氏は、「競合製品や容量で市場価格が決定されるので、従来製品に比べ、垂直磁気記録方式を採用したものが高くなることはない」と繰り返し強調した。 □日立グローバルストレージテクノロジーズのホームページ (2005年4月5日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
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