三浦優子のIT業界通信

Y5から始まるLet'snoteの10周年
〜高木俊幸事業部長インタビュー




パナソニックAVCネットワークス ITプロダクツ事業部 高木俊幸事業部長

 今年10周年を迎える松下電器産業のLet'snoteシリーズ。他社がAV機能を強化したPCを揃える中で、本来はAV機器に強い松下電器が、あえて機能をビジネスモバイルに絞り込み開発した特徴ある製品だ。4月25日の記者会見では、防滴機能をもったY5シリーズが発表され、キーボードに水をかけるパフォーマンスも行なわれた。

 Let'snoteシリーズを担当するパナソニックAVCネットワークスITプロダクツ事業部の高木俊幸事業部長は、「防滴機能はユーザーからのニーズによって生まれた機能」と説明する。こうした新しい機能を搭載しながら、軽量、長時間バッテリ駆動を実現するためには、「松下電器だけでなく、部品メーカーの努力が集約されたからこそ実現する。これぞ、日本ならでは」だという。

 高木事業部長にY5をはじめとした新製品の特徴と、もの作りへのこだわりを聞いた。


●「オフィス内でも使いたい」という要求によって生まれたY5の防滴機能

「Let'snote Y5」

−−今回の新製品発表会では、Y5シリーズがフィーチャーされていましたね。

高木 Let'snoteシリーズは、お客さまニーズありきで開発した製品なんです。まず、軽量、長時間バッテリ駆動というニーズに応えるため、2002年に960g、6時間駆動のLet'snote R1を発売しました。そこからスタートして、「もう少し画面を大きく」という声があって、Tシリーズが生まれ、「光学ドライブを搭載したモデルが欲しい」という声に答えてWシリーズが生まれました。

 それに対しYシリーズは、「出先だけでなく、オフィスで使うために、もっと画面の大きな製品が欲しい」ということで生まれた製品なんです。オフィスで使うということで、他の製品にはない、「飲み物をこぼしてしまって困った」という声をよく耳にしていました。そこで、今回、Y5に防滴機能を搭載したんです。

−−大丈夫とわかっていても、キーボードに水をかけるデモンストレーションは衝撃的でした。Y以外のシリーズへの防滴機能の搭載計画はないのですか。

高木 Y以外のシリーズは、持ち歩いて利用される人が多いようで、Yシリーズのように飲み物をこぼすというトラブルの割合が比較的少ないようです。今回、Y5で初めて防滴機能を提供し、お客さまの反応を見て他の製品に搭載すべきかどうか判断したいと思います。

−−W5やT5、R5は、Y5に比べサイズが小さいですよね。サイズが小さい分、防滴機能を搭載するのが難しいのでは、とも思いましたが。

高木 他のシリーズでも搭載は可能だと思います。ただ、コストや重量という点も考慮しなければなりません。

 Yシリーズについては、価値を認め、購入してくださる人がたくさんいると判断できたから、今回、防滴機能をつけた製品の発売に踏み切ったんです。他のモデルに関しては、「そこまではいらん」という方も多いかもしれませんし、反響を見ながら、機能を決定していきたいと思います。

ミニポートリプリケーター

−−今回、Y5向けに「ミニポートリプリケーター」というオプション製品が登場しました。これはどういった狙いで用意されたものなのですか。

高木 実は、海外向けのLet'snoteにはリプリケーターをつけて販売しています。オフィスで利用することが多いと、「社内では液晶モニターに接続して使っています」とか、「フルキーボードをつけています」とか、色々なものが接続されていることが多いんですね。そのため、1つ、1つ外すのが面倒だという声があって、一度に取り外しができるリプリケーターを用意したんです。Yシリーズはオフィスで利用されることが多いですから、ニーズ的にも合っていると判断しました。

●軽量化、長時間駆動への取り組みはまだまだ発展途上

−−バッテリ駆動時間の長時間化と、軽量化に対するこだわりは相変わらずですね。

高木 Let'snoteは法人ユーザー向け製品ですから、法人のお客さまの強烈な要求にあわせて新しい機能を搭載しています。応えてはいますが、まだまだ応えきれていないものがたくさんあるんですよ。その代表が、重量であり、駆動時間です。今回、R5ではバッテリ駆動時間11時間、T5では15時間、W5で12時間、Y5で9時間と従来製品に比べ、長時間化を実現しました。軽量化も積極的に進めていますが、長時間駆動と軽量化への要求はさらに応えていかなければならないと考えています。

−−現在の重量でも、まだ「重い」という声があるということですか。

高木 ご自身でノートPCを持たれていて、「もう十分軽い」と思われますか。

−−そうですねえ、朝、家を出る時には「軽い」と思っていても、あちこちで書類を頂いたり、夜になって疲れてくると、「もう少し軽ければ」と思うことはあります。

高木 同じことをお客さまから言われるんですよ(笑)。こちらとしては、精一杯軽量化を図ったつもりなのに、まだ重いのかとショックも受けるんですけど(笑)。

 理想としては、現在のLet'snoteシリーズからバッテリを取り外したくらいの重量にできればいいんじゃないかと思います。時間はかかりますが、理想に向けて頑張らなければなりません。

 バッテリ駆動時間についても、「一泊出張となると、ACアダプタを持って行かなければいけない」という声があります。一泊してもACアダプタを持たずに出かけられる駆動時間の実現が、1つの目標でもあります。

 それ以外にも、ワイヤレスLANの進化にどうやって歩調をあわせるかも考えなければなりませんし、インテルさんとの協力によってパフォーマンスをあげるための工夫や、省電力化もやっていかなければならない。

 「もっとタフにできないのか」という要求もあります。「机の上から落としても、壊れないPCが欲しい」と。誰かがACアダプタに躓いて、PCを落としてしまうといった場面があって、それをカバーするタフさが欲しいということなんです。落下テストはしていますが、「この高さから落としても大丈夫です。保証します」とは言えない。早く、「保証します」と言えるようになりたいですね。

 セキュリティへのニーズも高いです。ただし、セキュリティについては、お客さまごとに求められるセキュリティレベルに違いがあります。基本的には個別対応という形をとっています。

−−個人的には、ACアダプタをもっと軽量にしてもらって、気軽に持ち運びできるようにしたいと思いますが。

高木 そういう要望もよくいただきます。「携帯電話の電源と同じくらいのサイズや重量のものが欲しい」という声もありました。ただ、そのためのハードルは結構高いんです。40Wから60W程度のパワーをもちながら、小型化を実現するためには、「効率化」が欠かせない。100%効率なら携帯電話の電源と同じくらい小さくすることも可能ですが、現実としては100%効率は実現できていません。もう少し研究が必要ですね。

●法人向けでも引き続き量販店で販売

−−法人ユーザーからの反響を製品に反映している製品でありながら、Let'snoteは量販店でも販売しているという点が、他のメーカーの法人向けPCとは大きく違う点だと思いますが。

高木 量販店は重要なチャネルだと考えています。法人ユーザーも量販店で商品を見比べるということもあるでしょう。実際に持って重量を試すといったことは、商品が並んだ量販店でなければできませんから。SOHOなどの法人ユーザーにとっては、量販店こそPCを購入する場となっているでしょう。

−−量販店で販売されているので、法人以外のユーザーも気軽に購入できることがLet'snoteシリーズの魅力の1つだと思うのですが。

高木 個人ユーザーの皆さんにも支持を得ていることは大変有り難いことだと思います。これは、単なるホビーユースではないユーザーが増えている証拠だともいえると思います。ただ、そうはいってもLet'snoteは家族で初めて購入するPCに相応しい製品だとは思っていません。一般コンシューマユーザーが求めるニーズとは、ちょっと違う機能を追求してきた製品です。

−−2006年以降、インテルのプラットフォーム戦略を見ると、コンシューマ向け製品と、企業向け製品ははっきりと分離されていきます。Let'snoteは企業向け製品を採用することになると思うのですが、そうなっても量販店での販売は引き続き、行なわれていくのでしょうか。

高木 我々が採用するのは企業向けプラットフォームになることは間違いありませんが、そうなっても量販店での販売は引き続き行なっていきます。

●小型モバイルノートはMade in Japanならでは

−−昨年(2005年)、NECが「UltraLite」を発売したのに続き、富士通が「FMV LIFEBOOK Qシリーズ」を投入し、いよいよ軽量、長時間駆動のノートPC市場が賑やかになってきました。競合製品が増えたことはいかがですか。

高木 競合製品が増えたことで市場が広がるという意味ではプラスだと思います。これまでは比較対象となる製品が無かったわけですが、比較される製品が出てきたことで、商品開発により力を入れ、切磋琢磨していかなければならないと考えています。

 でも、ワールドワイドのPC市場が2005年で2億台強の規模がある中で、12.1型液晶サイズのビジネスモバイル市場は百数十万台程度しかないのですから、そんな小さい市場に参入してこなくてもとも思いますが(笑)。

−−Let'snoteの好調ぶりを見て、参入を決定したということではないでしょうか。

高木 記者会見の中で、2005年にはシェアナンバー1の座を獲得することができたというお話をしましたが、シェアは着実に少しずつ伸びてきたもので、急激な右肩上がりで伸びたわけではないんですけどね。

 ただ、1ついえるのは、当社も含めてこういう小型のモバイルノートというのは、日本のメーカーにしか作ることができない製品なんです。Let'snoteについても、当社だけでなく、部品メーカーさんの努力が集約された製品でもあるんです。だから、ユーザーの方は、「これこそMade in Japanといえる製品を使っているんだ」と思って、持ち歩いて欲しいですね。特に海外で利用する時には、これぞ日本ならではの物作りがあってこその製品を持っているんだと思って欲しいですね。

 ただ、その日本の優位がいつまでも続いていくとは限りません。製品開発というのは、2年先、3年先を見据えて進めています。今のうちに手をゆるめないで製品開発を進めていかなければ、「モバイルノートは日本が優位です」なんて言っていられない事態がやって来るかもしれない。そうならないように、頑張らなければなりません。

−−ところで、今年はLet'snote誕生から10周年にあたります。記念モデルの発売を用意しているそうですが。

高木 現在、色々な案がありまして、どれを採用するか社内で検討しているところです。どんなものが登場するのかは、現在の段階では、「乞うご期待」というところです。

 ただ、今回発表したY5シリーズが、Let'snote 10周年の製品第1弾ということになると思います。Y5シリーズを皮切りに、色々なイベント等もあわせて行なっていきます。

−−昨年末にお話をうかがった時には、「2006年のLet'snoteは、軽量だけに特化するとか、長時間だけに特化するといった、これまでにはないバリエーションの広がりが実現できる」ということでした。そういった製品はいつ頃登場しそうでしょうか。

高木 それはもう少し先、半年後くらいをご期待ください。

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(2006年4月26日)

[Reported by 三浦優子]


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