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Seagateトップエグゼクティブインタビュー【後編】
~Bill Watkins CEOが語る「Maxtor買収の目的と今後」



 前編に引き続き、Seagateのトップエグゼクティブインタビューをお届けする。今回は後編として、3つのインタビューをまとめて掲載する。

 まず最初は、Seagate Technologyのトップ(President and CEO)であるBill Watkins氏と、Executive Vice President and CFOであるCharles Pope氏へのインタビューからだ。ちなみに、Seagate Technologyは、アメリカの有名経済誌「Forbes」の1月9日号で「2006 Company of the year」に選出された。その名の通り、この1年で最も素晴らしい業績を達成した企業であると評価されたわけで、非常に名誉なことだ。その時の表紙は、Bill Watkins氏が飾っている。

 Bill Watkins氏とCharles Pope氏には、Seagateの製品ブランディングポリシーやMaxtor買収の目的、HDD業界の今後について、インタビューを行なった。

Seagate Technology, Executive Vice President & CFO Charles Pope氏(左)と、Seagate Technology, President & CEO Bill Watkins氏(右) 経済誌「Forbes」2006年1月9日号で、SeagateはCompany of the yearに選ばれた。表紙を飾っているのが、CEOのBill Watkins氏だ

●将来は全ての自動車にHDDが搭載されるようになる

-- Seagateの製品ブランディングや製品展開のポリシーについて教えて下さい。

Bill 我々は、たくさんのリテールブランドを持っています。しかし、ソニーやHPなどの大手OEMと協業するときは、OEMメーカーは自分のブランドを使います。例えば、ソニーは「Compactvault」という1インチのCFカード型HDDを出しています。それは完全にソニーブランドの製品ですが、中身はSeagateのHDDです。我々は、ワールドワイドでのグローバルなコンシューマブランドになろうとは思っていません。コンシューマブランドを確立するには、宣伝や広告などに多額の費用をかける必要があるからです。我々は、すでに評価を得ているメーカーと協業するという方針を採っています。

 この業界では、どんどんコンテンツが増大しています。そして、ユーザーはそのコンテンツをバックアップしたいと思っています。そうしたユーザーに対して、我々は「Mirra」というブランドで、バックアップが簡単にできるホームサーバーを発売しています。ただし、メインはOEMメーカーへの供給ということになります。

 コンシューマ市場では、コンテンツの拡大が起きています。今回のCESでは、ソフトウェアメーカーやポータルサイト事業者が基調講演を行なっていました。そうした企業は、音楽であれ、写真であれ、ビデオであれ、コンテンツをデジタル化することで、コンシューマがより多くのコンテンツを利用できるようにしたいと考えています。

 今回のCESでの注目テーマの1つが、コンテンツを電子的に移動、ないしは持ち運ぶということです。Googleは、ビデオのダウンロードサービスを始めましたし、Microsoftは部屋の中でコンテンツをいかに配信するかということを訴えています。こうしたコンテンツの拡大が我々にどう影響を与えるかというと、それを実現するためには、ストレージが必要だということです。そこに我々の役割があります。

-- つまり、“コンテンツあるところにSeagateあり”ということですか。

Bill その通りです。これはフラッシュメモリを使った機器についても当てはまります。例えばiPod nanoは1,000曲の音楽を保存できます。しかし、そのデータをバックアップしたいと思ったときには、HDDが必要になってきます。

-- 今年のCESでは、HDTVがホットな話題となっていますが、Seagateとしてはどう見ているのですか。

Bill 我々の観点からは、非常に好ましいことだと思います。というのも、より大容量のストレージが必要になるからです。HDTVのコンテンツを録画する方法は3つあります。1つはTV自体に録画機能を内蔵させる方法です。そしてもう1つが、TVとは別に、ビデオレコーダを組み合わせる方法。そしてもう1つが、今アメリカで非常にポピュラーな方法ですが、ケーブル放送や衛星放送のセットトップボックスの中にHDDを組み込んで、録画を行なう方法です。そのいずれの場合においても、HDDが使われることになるので、我々のビジネスになります。

-- 自動車へのHDD搭載についてはどうお考えですか。

Bill 私は将来、全てのTVに、HDDが内蔵/外付けを問わず繋がるようになると強く信じています。それと同じように、全ての自動車についても今後HDDが搭載されるようになるでしょう。ただし、自動車業界は動きの遅い業界ですので、それまでに5~6年はかかるでしょう。市場ではまず日本が牽引するのではないでしょうか。具体的な例を挙げると、例えば衛星ラジオ放送事業者は、衛星からのダウンロードを通じてコンテンツを車載HDDに録画するようなビジネスモデルを考えています。GPS機器のメーカーにしても、やはりHDDにデータを記録したいと考えています。単なる地図情報だけでなく、レストラン情報など、より多くの情報をHDDに格納しようとしているわけです。それから、車の後部座席に座る人向けに、ゲームや映画のダウンロードサービスを考えている企業もあります。

-- HDDにBluetoothを実装する予定はありますか。

Bill Bluetoothを実装する予定はありません。ワイヤレスUSB対応という方向に向かっています。今後外付けHDDはどんどんワイヤレス化していくでしょう。電源コードの問題は残りますが、それでもワイヤレスの方向に向かっていくでしょう。

●今後も革新を続けるためにMaxtorを買収した

-- Maxtorを買収した理由は何ですか。

Bill まず第一に、この業界は非常に競争が激しいです。Samsungや富士通、日立など、この業界には非常に大きなプレーヤーがいます。そういった中で勝ち抜いていくための鍵が、革新的であるということです。つまり、新しいテクノロジーを生み出し続けることです。そのためには、ファイナンス的なリソースも必要になってきます。それで我々は、スケールアップをするためにMaxtorを買収したのです。つまり、我々はもっと大きくなる必要があったのです。収益や売り上げを伸ばす必要があったのです。そうすることで、新しい技術に対して、投資を続け、革新を続けることが可能になります。

-- おっしゃるとおり、HDD業界は競争が激しく、HDDメーカーの統合が進んでいます。今後も寡占化が進み、メーカーの数が減っていくのでしょうか。

Bill HDD業界のプレーヤーは、富士通やSamsungなど、非常に巨大な企業です。私はそういったメーカーが合併することになるとは思いません。ただ、ここで一点申し上げたいのは、この業界で非常に重要な技術である、垂直磁気記録方式についてです。我々はその技術を持っています。我々は2.5インチの160GB HDDを垂直磁気記録方式を使って製品化しています。もし、垂直磁気記録を使わないと、同じコストで100GBのHDDしか作れないでしょう。その点から、もしこれまでに垂直磁気記録に対してあまり投資をしていないメーカーがあったとすると、次世代の製品が作れなくなるので、非常に困ったことになるでしょう。私の知る限り、東芝や富士通は垂直磁気記録方式を開発済みですが、Western Digitalに関しては、開発が遅れているようです。

-- 3.5インチHDDの容量がTBに達するのはいつ頃でしょうか。

Bill 我々は今、デスクトップ向けに500GBのHDDを出荷しています。おそらく2年以内にTBに達するでしょう。

-- 垂直磁気記録方式の採用についてはいかがですか。

Charles 我々は2006年1月に、ノート向けに垂直磁気記録方式を採用したHDDの出荷を開始しました。現在、開発中の2.5インチHDDもほとんど全てが垂直磁気記録を使ったものです。2006年末頃に出てくる2.5インチHDDは、製造終了製品を除いて、全てが垂直磁気記録を使ったものになるでしょう。

-- Maxtorブランドは、今後どうなるのか教えて下さい。

Bill リテール分野では、Maxtorブランドは非常にいい評判を得ています。完全に決定したわけではないのですが、おそらく基本的にはほとんどの製品はSeagateブランドになります。しかし、Maxtorブランドの製品も残すことになると思います。例えば、「OneTouch」のようなブランドです。ただし、これもまだ完全に決めたわけではありません。

●アジアパシフィック市場の重要性は今後も高まる

-- アジア市場をどのように見ていますか。

Bill 我々はアジアにも非常にコミットしています。たくさんの工場もアジアに持っています。Maxtorの買収によって得た中国の工場もそのまま継続させる予定です。製品の設計も、アジアでやることが多くなってきました。1インチのポケットHDDは、シンガポールで設計されたものです。

Charles 最近は、アジアの顧客との取引が非常に多くなってきました。製品の販売先がアメリカであっても、その製造をアジアでやっていることが非常に多いです。5年前は、アジアパシフィックの売り上げは全体の27~28%くらいだったのですが、今では約40%まで増えています。

-- 今後のコンシューマ市場についてはどう見ていますか。

Bill 今、コンシューマ市場では非常に面白い戦いが起きています。この市場には、今3つのグループがあります。1つは伝統的なコンシューマ企業、その多くは日本企業ですが、松下電器、三菱、ソニー、韓国のSamsungやLG電子など、そういった伝統的なコンシューマ企業は、アジアのメーカーが多いです。コンシューマ市場ではこういった企業が長らく支配してきました。

 しかし、最近になって、この市場は、私がITピープルと呼ぶ、IT系企業からの攻撃、侵略を受けるようになりました。例えば、AppleやDellですね。Dellのブースを見ていると、今はまるでTVメーカーのようです。Hewlett-Packardもそうです。彼らは、非常にローコストで競争力のあるノートPCを持って、この市場に入ってきました。その成功を元に、そのブランドを持ってコンシューマ市場に入り込もうとしています。伝統的なコンシューマ企業は、これまであまり競争にさらされてこなかったわけですが、こういった企業の侵略を受けつつあります。

 3番目のグループはODMメーカーです。ODMメーカーの多くは台湾や中国にありますが、自らのブランドというものは持っていないのが普通です。しかし、非常にコスト競争力が強く、魅力的な製品を作っています。こういったODMメーカーもコンシューマ市場に参入しつつあります。ただし、ODMメーカーとHewlett-Packardなどは協力関係にある場合もあります。この3者によって、非常にダイナミックな戦いが繰り広げられるでしょう。

●フラッシュメモリとHDDは違う分野で共存していく

-- フラッシュメモリは、HDDよりもバイト単価が下がるペースが速いので、将来、HDDがフラッシュメモリに取って代わられるようになるのではないでしょうか。

Bill フラッシュメモリは、容量と価格が比例します。例えば1GBが20ドルだとすれば、4GBは80ドル、8GBは160ドルというように上がっていきますので、スケールアップが難しいデバイスです。一方HDDは、プラッタ枚数を増やすことで容量を増やせますが、容量が2倍になっても単価は2倍にはなりません。フラッシュメモリは小さい容量では優位です。つまりフラッシュメモリはスケールダウンが得意で、HDDはスケールアップが得意なストレージなのです。したがって、フラッシュメモリは小さい容量帯では活躍する場面もあるでしょうが、ノートPCやデスクトップPCでHDDの代わりに使われることはまずないでしょう。

 ハンドヘルドデバイスでも、数年前までは全てフラッシュメモリを使っていましたが、最近はiPodのようにHDDを搭載したデバイスが増えてきました。Appleは、iPodに20GBや30GBといった容量が欲しかったわけですが、その場合、1.8インチHDDしか選択肢がなかったのです。携帯電話についても、メーカーは携帯電話でTV録画を実現したいと思っており、15GBや20GBといった容量が必要になります。その場合もやはりHDDでしか対応できません。

 つまり、フラッシュメモリがHDDに置き換わるというよりも、フラッシュメモリとHDDがそれぞれ違う分野で共存していくことになるでしょう。というのも、世界最大のフラッシュメモリメーカーであるSamsungもHDDを作っていますし、次に大きなフラッシュメモリメーカーである東芝もやはりHDDを作っています。日立も同様です。繰り返しになりますが、小さい容量ではフラッシュ、20GBを超える容量ではHDDという棲み分けがうまくできるのではないでしょうか。


 次に、Seagate TechnologyのSr. Vice President & General Manager, Consumer ElectronicsであるBrodie Keast氏と、Director of Global Consumer Storage MarketingであるRob Pait氏へのインタビューを掲載する。

 Brodie Keast氏とRob Pait氏には、今後有望と思われるデジタル家電分野や垂直磁気記録方式の採用ロードマップについて、インタビューを行なった。

●車載用として要求されるスペックを全て満たした「EE25」

Seagate Technology, Sr. Vice President & General Manager, Consumer ElectronicsのBrodie Keast氏(左)とSeagate Technology, Director of Global Consumer Storage MarketingのRob Pait氏(右)

-- 今回のCESのSeagateブースのテーマはなんでしょうか。

Rob 新製品発表をするつもりではありません。「アクティブストレージ」というコンセプトを伝えることがテーマです。アクティブストレージは、人によって使い方が異なります。例えば、映画業界で使われたりとか、DJがCDを持ち歩かずにストレージから再生しようといったニーズがあります。ストレージを使うことで、必要な時間を削減でき、問題も解決できます。そうしたニーズに対応するために、いくつかの技術的なデモンストレーションを行なっています。

 例えば、Mirraというホームサーバーです。Mirraを使うことで、家庭であれスモールビジネスであれ、コンテンツをバックアップできます。使い方もシンプルです。PCをホームシアターとして使うような方法もデモしています。また、製品ではなくて、将来的なコンセプトモデルも展示しています。外付けHDDの形で、リムーバブルでPCやTVなどに使えるデバイスや、車にストレージを搭載したコンセプトモデルも展示しています。

-- 車載用HDDについて教えて下さい。

Rob 2005年6月に「EE25」という車載用HDDを発表しました。Extreme EnvironmentでEEです。車載用のスペックを満たすには、湿度や揺れへの耐性もありますが、一番大事なのは温度範囲を広げることです。車載用のパーツは、HDDの内部コンポーネントも含めて、-30度~85度で動作しなくてはならないからです。他のメーカーも車載用HDDを出してますが、それらは一部のスペックしか満たしていません。しかし我々は、要求されるスペックを全て満たした製品を開発した最初のメーカーです。それにより、各自動車メーカーが、標準搭載品としてHDDを使えるようになりました。

 我々の製品が出るまでは、車載用HDDは標準搭載ではなく、サードパーティなどのアフターマーケットの製品でしたが、EE25は全てのスペックを満たしているので、標準パーツとして搭載できます。製品を売るだけでなく、我々は、自動車メーカーと提携して、自動車の製造工場にエンジニアやセールスマンを派遣しています。

 在庫管理システムも、これらの製品については変えました。PC業界であれば、在庫は4~5カ月分もあれば十分です。それくらい経つと次の製品が出てしまいますから。一方、自動車メーカーは、在庫のストックを6年とか、7年、10年といった長いスパンで置いておくことを求めています。そういう要望に応えられるように、在庫システムも改良しました。そういう意味において、車載用HDDについては、我々はHDDメーカーというよりも、自動車のサプライパーツのメーカーという立場になっています。

 これは、Seagateが今、変わりつつある方向性を示す1つの例です。顧客ニーズを的確につかんで、それにあったものを提供していかなくてはなりません。ちなみに、車載用HDDにかかわっているスタッフの数は20人くらいです。車載用HDDを重要視している理由は、家庭で楽しんでいるビデオや音楽などのコンテンツをそのまま車でも再生したいというニーズがあるからです。

●コンシューマ向け製品ではブランド名を重視

-- 「Barracuda」のようにブランドが付けられている製品もあれば、EE25のようにブランドがない製品もありますが、それはどうしてですか。

Rob コンシューマ向け製品ではブランド名を付けてますが、ブランドを付けるときに我々は考えるのは、誰がそのブランドを必要としているかということです。OEMメーカーは、ブランドはあまり気にしません。SeagateのHDDであればいいというような理解をしています。OEMメーカーは、ブランドよりも振動に対する耐性や消費電力などのスペックのほうを重視しています。EE25のようなOEM向け製品はコンシューマ向けには発売していませんので、ブランドは付けていません。もちろん、コンシューマ向けの製品ではブランドも重要だと考えています。最近の製品では、Mirraホームサーバーの認知度が上がっています。

-- HDDレコーダなどの家電製品もHDDを搭載するようになりましたが、Seagate Insideのようなブランディングキャンペーンはやらないのですか?

Rob 基本的にはやりません。もちろん、我々がリテールで我々のHDDを買ってくれる人に対して、重要なブランドであり続けたいとは思っています。しかし、OEMメーカーというのは、自分のブランドの製品を作りたがっています。我々はそうした意向に沿ってHDDを供給しています。

Brodie 基本的に消費者というのは、OEM製品の中にどのHDDが入っているというのを知る必要はありません。もちろん、リテール向けではブランディングは重要視していて、Mirraというホームサーバーでは、簡単にバックアップがとれる独自のソフトウェアを付けることで、より消費者に支持される製品を作りたいと思っています。

-- PC向けとコンシューマエレクトロニクス向けでHDDに違いはあるのですか。

Rob SeagateのHDDの製造ポリシーは、自動車業界と似ています。例えば、自動車メーカーは、昔はたくさんの製造ラインを持っていて、それぞれが別々の製品を作っていました。しかし、数年前から、自動車メーカーもプラットフォーム化を開始しました。あるプラットフォームをもとに、それをカスタマイズして提供することでコストを削減できます。Seagateでも今そういうことを始めています。1つの技術をもとにして、それをカスタマイズして、異なるマーケットに対して提供するというものです。

 2.5インチHDDを例に挙げると、ノートPC用では省電力や堅牢性、パフォーマンスが求められます。一方Microsoftに対しては、Xbox 360向けとして2.5インチHDDを提供しています。また、HDD内蔵TVを作っているメーカー向けには、TV用HDDを提供しています。そうした場面では、セキュリティが求められる場合もあります。さらにさっき言ったように、自動車向けHDDも提供していますが、そこでは、湿度や温度、振動に耐えることが要求されます。

-- Xbox 360以外のデジタル家電でSeageteのHDDが使われているものはありますか。

Rob Creativeは、1インチHDDのST-1を「Zen Micro」や「Zen MicroPhoto」で採用しています。それから、数多くのデジタルビデオレコーダメーカーがSeagateのHDDを採用しています。アメリカのメーカーだけでなく、日本のメーカーも使っています。また、韓国のHumaxの液晶TVがSeagateの「LD25」を使っています。MitacのGPS搭載ナビゲーション端末「Mio」でも1インチHDDが採用されています。この製品は大容量のHDDを使うことで、よりリッチなグラフィックの地図を利用できますし、MP3プレーヤーとしても使えることが特徴です。

●将来は映像を扱う全ての製品にHDDが搭載される

-- 今後HDDを搭載したデジタル家電ではどういった分野の製品が伸びると思いますか。

Brodie まず最初は、デジタルビデオレコーダです。特に、アメリカではほとんど全てのケーブルTV会社とか衛星TV会社が、HDコンテンツ向けのビデオレコーダとして、HDD搭載レコーダを重要視しています。アメリカでは、この市場が大きく成長しています。2番目はゲーム機です。Xbox 360のようにゲーム機にHDDを使うことで、さまざまなコンテンツが楽しめるようになります。3番目としては、MP3プレーヤーやポータブルメディアプレーヤーのようなハンドヘルドのデバイスです。将来は、自動車や携帯電話での普及が見込まれるでしょう。

Rob 今後は、ポータブルメディアプレーヤーも需要として見込まれます。ビデオをダウンロードしてきてそのデバイスに転送し、外に持ち運んで見るというデバイスです。アメリカのケーブルTV向けの映画配給会社Starzが、「VONGO」というサービスを発表しました。これは、ポータブルでセキュアなストレージにまずムービーをダウンロードします。OSは、Windows Mobileです。VONGAでは、例えば、ポータブルメディアプレーヤーとPC、ネットワーク対応ビデオプレーヤーというように、最大3つのデバイスまでそのコンテンツを保存できます。また、携帯電話でビデオを見るというようなものも今後出てくるでしょう。最初は短いビデオクリップですが、いずれは映画1本を丸ごと見るというのも出てくるのではないでしょうか。

Brodie コンテンツは今爆発的な勢いで増えつつあります。コンテンツを持っている人たちは、今どうやって新しい技術に載せようかというのを模索しています。今まで、コンテンツを提供していたのは専門のクリエイターでしたが、今は個人も、podcastingのようにコンテンツを提供し始めています。そういう個人が作ったコンテンツも、Webを介して、ポータブルメディアプレーヤーや携帯電話にダウンロードして持ち歩くようになるんじゃないでしょうか。将来は映像を扱うものなら、携帯電話からセットトップボックス、TVなど、全てのものにHDDが搭載されるようになると思います。容量が大きくなればより便利になります。

-- Xbox 360以外でHDDを使っているゲーム機はありますか。

Rob 現在、世界中で3つのゲーム機がHDD搭載を検討中です。

●2年後には個人向けHDDの全てが垂直磁気記録方式を採用する

-- 新しいインターフェイスを採用するには、Intelなどのチップセットメーカーとの協力が必要だと思いますが、そのあたりはいかがですか。

Rob 我々はIntelとは緊密に協力しています。例えば、Intelは次のチップセットで、eSATAに標準対応します。eSATAに対応すると、PCの背面にUSBとIEEE 1394のように、eSATAポートが付くようになります。そういうPCが出てきたら、我々も迅速に対応します。実際にeSATA対応HDDの製品化も進めていて、CESのブースでも500GBのものを展示しています。

 また、Intelが最近推進しているものとして、UWBがあります。我々も実際、過去数カ月、このプロジェクトについてIntelと協力してきました。その成果として、今回世界初のワイヤレスUSB対応HDDを開発し、ブースで展示しています。まだ製品化にはほど遠い形のプロトタイプにしかすぎませんが、あと半年もすれば、ワイヤレスUSBや他のUWB技術を採用した製品が出てくるでしょう。Intelのようなチップセットメーカーと協力して、それに対応できるようにしています。それだけではなくて、新しい技術を使って新しい市場を開拓できるように、我々自身からもチップセットメーカーに話を持ちかけています。

CES 2006で展示された500GB HDD(左)とワイヤレスUSB対応HDD(右)

-- 東芝やSamsungは0.85インチHDDを製造していますが、Seagateは0.85インチHDDには参入しないのでしょうか。

Rob いいえ。予定はありません。というのは、0.85インチでは容量が非常に限られてしまうからです。携帯電話メーカーが望む容量を実現するには、0.85インチでは足りないのです。そのサイズと容量ではフラッシュメモリのほうが有利です。もちろん、我々も携帯電話向けのHDDは考えています。それは、プラッタを小さくするのではなく、パッケージを小さくすることで、HDD全体のサイズを小さくするという方向です。技術的には非常に難しいことですが、今取り組んでいます。そうすることによって、小さなサイズで、より多くの容量を実現することに挑戦しています。

-- Seagateは、2.5インチHDDで垂直磁気記録方式を採用しましたが、今後、1インチHDDや3.5インチHDDでも垂直磁気記録方式を採用するのですか。

Rob もちろん、やります。HDDメーカーは、各社とも垂直磁気記録方式を採用する方向に向かっています。垂直磁気記録方式以外にこれ以上容量を増やす方法はありません。まずは、小型の製品から始めて行きますが、2年後くらいには個人向け製品は全て垂直磁気記録方式を採用しているでしょう。しかし、エンタープライズ向け製品ではもう少し先になるかもしれません。


 最後に、Seagate SingaporeのVice President and Managing Director Asia Sales and Marketing, Global Consumer Electronics SalesであるBS Teh氏へのインタビューを掲載する。BS Teh氏には、コンシューマエレクトロニクス向けHDDへの取り組みや1インチ以外の超小型HDDへの参入計画などについて、インタビューを行なった。

●コンシューマエレクトロニクス市場は多くのセグメントに分割できる

Seagate Singapore International Headquarters Pte Ltd, Vice President and Managing Director Asia Sales and Marketing, Global Consumer Electronics SalesのBS Teh氏

-- コンシューマエレクトロニクス向けHDDへの取り組みについて教えて下さい。

BS コンシューマエレクトロニクス(CE)市場とPC市場は、非常に異なっています。まず第一に、CE市場は1つではありません。例えば、ハンドヘルドであったり、ゲーム機であったり、ビデオレコーダであったりするわけです。それぞれのセグメントによって要求されるものは変わってきます。我々はCE市場をひとくくりにして見てはいません。いくつかのセグメントに分けて、それぞれの顧客とまず話し合いをします。例えば、ハンドヘルドの場合、顧客が要求してくるのは、まず軽さです。それから省電力であること、堅牢性も要求されます。一方、デジタルビデオレコーダの場合ですと、まず大容量が要求されます。それから、高速な転送速度です。

-- デジタルビデオレコーダでは、読み込み速度よりも書き込み速度が重要ということでしょうか。

BS 基本的には両方とも重要です。ここでより重要なのは、この場合、扱うのがストリーミングデータですので、実効転送速度が要求されるわけです。また、自動車向けHDDでは、振動や広い温度範囲への対応が重要な要素になってきます。このようにCE市場で使われるHDDは、PC向けHDDとは要求されるスペックが異なっています。

 CE向けという観点から見た場合、3年前の我々は8種類の製品しか持っていませんでした。当時はPC市場にフォーカスしていたからです。ところが現在ではCE向けとして30種類もの製品があります。これは、CE市場における各セグメントの要求に応えるためです。そのため、HDDメーカーにとって状況は非常に困難になってきています。

 また、研究開発に非常に多くの投資をする必要が出てきています。我々は研究開発に非常に多くの投資をしており、先ほども申しましたように、30種類ものたくさんの製品を持っているということで、非常に有利な立場にあります。我々は、30種類もの製品を効率よく製造するために、中国やタイ、シンガポールに複数の工場を持っています。しかもそれぞれの工場のラインは自動化されており、柔軟性を持って、異なる製品の製造をすることができます。そのため、顧客の要求にも迅速に対応することができます。

-- 今後は、デジタルカメラにもHDDが搭載されるようになるのでしょうか。

BS 我々は非常にたくさんの顧客とビジネスをしております。今年後半には、数多くのHDD内蔵デジタルカメラやHDD内蔵ビデオカメラが出てくると思います。市場はそういう方向に向かっています。

●現時点では1.8インチHDDや0.85インチHDDへの参入予定はない

-- 1.8インチHDDには参入しないのでしょうか? 1インチHDDよりも容量的には有利だと思うのですが。

BS 我々はCE市場全体に注力しています。一口にCE市場といっても、MP3プレーヤー、デジタルビデオレコーダ、ゲーム機などいろいろありますが、HDDが関わっている分野で、最も成長しているのはゲーム機関連です。もう1つはデジタルビデオレコーダです。デジタルビデオレコーダの中には、セットトップボックスも含まれます。今後2年間は、この2つが最も有望でしょう。

 また、自動車業界も非常に重要だと考えています。市場規模でいえば、年間6,000万台の自動車が販売されています。それに対してデジタルビデオレコーダは、年間数億台売れているので、規模からいえば自動車業界は小さいですが、それでも重要だと考えています。理由の1つとしては、コネクティビティというものが挙げられます。今回のCESのブースでもデモをやっていますが、今後は家の中にあるデータを自動車に持ち出して、いつでもどこでも好きなときにアクセスできるようになるでしょう。そういうことを見越して、自動車市場に参入しているわけです。

 現在、我々は1.8インチHDDは製造していませんが、さまざまな顧客と協議をしており、顧客の要求をつかもうとしています。顧客のニーズにあったものを今後も作る予定ですが、現時点では1.8インチHDDを製造する予定はありません。

-- 0.85インチHDDはどうですか。

BS 0.85インチHDDについては、あまり有効なソリューションだとは思っていません。なぜなら、容量が小さいからです。したがって、1インチもしくはそれ以上のサイズのHDDのほうが有効だと思っています。

□米Seagateのホームページ(英文)
http://www.seagate.com/
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【2005年6月9日】Seagate、垂直記録方式採用の2.5インチ160GB HDDなど
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(2006年2月7日)

[Reported by 石井英男]

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