39,800円のお掃除ロボット「ルンバ」レポート


●格安のお掃除ロボット

お掃除お手伝いロボット「ルンバ(Roomba)」
 二足歩行ロボットが動いているところは感動的だが、まだ手の届かない世界。商品として手に入るロボットといえばAIBOのようなペットや玩具が中心で、実用性をウリにするロボットはまだ少ない。

 通販業者の株式会社プライムが発売した“お掃除お手伝いロボット”「ルンバ(Roomba)」は珍しい例外だ。もともとは、米国iRobotの製品で、プライムは総発売元となっている。

 同種の製品は東芝からも販売されているが、ルンバの特徴は思い切った低価格にある。プライムでの通販価格は39,800円、送料と消費税を入れても42,735円だ。東芝の掃除用ロボット「ECL-TR1 トリロバイト」の実売価格が29万円前後なので、7分の1ぐらいにあたる。いったい、どういう仕組みなのか知りたくて買ってみた。



【追記】現在、ルンバはシリーズ構成を変更しており、価格も変化しています。最新機種の状況については下記のレビューおよび公式サイトをご覧ください。(2007年6月)

□家電製品ミニレビュー
iRobot「ルンバ・スケジューラー 5510」
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/column/2007/04/06/671.html
□ルンバ公式サイト
http://www.irobot-jp.com/


●意外に大きい本体、長い充電時間

 通販で届いたルンバは予想していたよりも大きかった。直径は35cmあり、レーザーディスクやLPレコードよりも大きい。見た目は、中ぐらいのホットプレートか体重計という印象だ。高さは8cmなので、幅が許せば、ソファの下などにも潜り込める。重さはぎりぎり片手で持てるぐらい重い。

 電源はACアダプタで、バッテリはニッケル水素と思われる。フル充電は12時間と長く、駆動時間は約45分とされている。約10畳の部屋の掃除に約40分かかるとされているので、半日で1部屋掃除できる計算だ。

【訂正】初出時にバッテリはニッカドと記載しましたが、iRobotのサイトではバッテリはニッケル水素となっています。なお、プライムの日本語マニュアルによれば、別売の充電器を使用すると2時間で充電可能になるとしています。


CDとの比較。意外に大きい 電源スイッチ(右)と充電用ACアダプタのコネクタ(左)
添付品類 マニュアル記載の使用上の注意と対策


●四角い部屋を丸く掃く

 掃除を始めるには、ルンバを部屋の真ん中に置いて、側面の電源スイッチを入れ、上面の起動スイッチを押す。起動スイッチは部屋の大きさに合わせて「S」、「M」、「L」と3つあり、それぞれ6、8、10畳にあたる。

 脳天気な起動音とともに動き出したルンバは、反時計回りに渦巻き状に移動を始める。部屋の隅から直線的に掃除をしていくものだと思っていたので、マニュアルを読んだ時にはとまどってしまった。動作が渦巻き状なので、ねらった部分だけを掃除させるような操作はしにくい。

 動作音は、最近の掃除機よりもうるさい。そばで電話はできないぐらいだ。

畳と比べると大きさがわかる ピカピカの使用前 1日使うとこれぐらい汚れる

行ってはいけない場所を指定する「ヴァーチャルウォールユニット」。最大4mの幅が指定できる
 センサーは少なく、3つしか見あたらない。階段から落ちないための段差センサー、物にぶつかったときバンパーを兼ねるショックセンサー、行ってはいけない場所を付属の「ヴァーチャルウォールユニット」で指定するためのビームセンサーだ。

 掃除しているところをみていると、物に当たっては跳ね返るの繰り返しで、わりと勝手気ままに動いている。ときどき中央に戻ると、また渦巻きを始める。家具などが置いてあって当たるときは、わりと遠慮なしにぶつかっているので、高価な家具などを置いている人には勧めにくい。

 壁を見つけると、本体脇の回転ブラシを活用しながら、できるだけ隅まで掃除しようとはしている。しかし、本体が丸いことと円運動を基本にしていることもあって、部屋の四隅などは掃除し残してしまう。文字通り、「四角い部屋を丸く掃く」わけだ。

 清掃作業が終了すると勝手に止まるが、起動スイッチを押すことで途中で止めることもできる。また、持ち上げると自動的に停止する。

ゴミカートリッジは容量が小さい 向こう側に見える先頭車輪が段差を感知する。中央がゴミの吸い込み口

 ゴミのカートリッジは簡単にはずせるが、容量が小さいので、毎回捨てることが推奨されている。六畳間を30分ほど掃除させたあとでは、ホコリや髪の毛を中心にそれなりに吸い込んでいた。

 ヴァーチャルウォールユニットは有効で、指定した場所にはルンバは立ち入らない。貴重な家具などの手前にセットしておいて手前で止めてしまい、隅は自分で掃除する方が安全かも知れない。

 なお、掃除できる床は、フローリング、畳、タイル、カーペットとされている。本体の駆動はゴムのローラーで行なうので、これが畳を痛めないかちょっと心配だった。実用上は問題なかったが、あまり気持ちのいいものではない。また、家具が多かったり、衣類などをちらかしたままだと、ひっかかってしまって掃除ができない。やはりフローリング床の広いリビングなどを想定した商品なのだろう。


●床が見える広いリビングが必須

 実用家電としてのルンバの評価は居住環境に大きく左右されるだろう。少なくとも6畳以上の家具の少ない空間があり、20分から40分連続する掃除機の音が近所の迷惑にならない程度の防音が必須条件と思われる。また、これぐらいのスペースがないと、床掃除のためにロボットを導入しようという気にはならないだろう。

 その一方で、わりとがさつに壁や家具に当たるので、家具を命の次に大切にしているような人にも勧めにくい。

 また、ルンバは完璧なロボットではなく、メーカーも言うように“お掃除お手伝いロボット”だ。やはり部屋の隅は苦手だ。ソファの下などの中央部分はルンバに任せて、周囲はフローリングワイパーでチャチャッと拭くぐらいの気持ちで買うと幸せになれると思う。


●実用性を重視したバランスのとれた商品

 ロボットとしてのルンバに目新しい機能や技術はないが、技術とコストと実用性のバランスの取り方がうまい。技術が先にあるのではなく、市場のニーズをとらえて考えられた製品だ。目的に対する機能の割り切り方がはっきりしている。

 ただ、掃除のアルゴリズムは、広い米国の家庭がターゲットで、部屋が狭くて家具が多い日本の住宅環境には向いていない。もっと直線的な動きをしてくれれば、どこを掃除するのかがわかりやすく、狭い部屋でも使いやすくなるが、根本から考え直さなければならないので、ほとんど作り直しになってしまうだろう。

 とりあえず、ロボットが欲しいぐらい広い部屋をお持ちの方と、自走式ロボットに興味のある方にだけお勧めしておきたい。

ムービー WMV形式
※音量を下げてご覧ください
机の上でも落ちずにルンバ(58秒/約1.8MB) 和室でルンバ(6分29秒/約11MB)
リビングでルンバ(5分49秒/約10MB) 狭い廊下でもルンバ(2分35秒/約4.7MB)

バーチャルウォールの向こうに行けないルンバ(1分10秒/2.1MB)

□プライムのホームページ
http://www.tv-shopping.co.jp/
□製品情報
http://www.tvshopping.co.jp/roomba/
□iRobotのホームページ(英文)
http://www.irobot.com/
□製品情報(英文)
http://www.roombavac.com/
□関連記事
【9月5日】東芝、国内で初めてロボットクリーナー「トリロバイト」を発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0905/toshiba.htm
【3月25日】松下、自律走行する家庭用掃除ロボットを開発
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0325/pana.htm

(2002年12月26日)

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