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ポストMeromとなる「Nehalem」と「Gilo」




●次世代CPUアーキテクチャが次々に登場

 Intelは、2006年後半の「Merom(メロン)」アーキテクチャに続き、「Nehalem(ネハーレン)」、「Gilo(ギロ)」と、今後数年間に続けて新CPUアーキテクチャを投入するつもりだ。コードネームは実際には変わっている可能性はあるが、CPUアーキテクチャの開発計画自体は存在している。今の計画の通りなら、Intelは2年程度の早いサイクルで、CPUアーキテクチャを刷新してゆくことになる。

 急ピッチのアーキテクチャ開発の背景には、IntelのCPU開発体制の変化がある。NehalemはPentium 4の開発チーム、GiloはPentium M/Meromの開発チームが担当する次世代アーキテクチャだからだ。

 モバイルCPUとして開発されたMeromが、デスクトップの「Conroe(コンロー)」やサーバーの「Woodcrest(ウッドクレスト)」などさまざまなファミリを持つように、NehalemやGiloも、ファミリを持つだろう。また、これまではCPUコア=CPUだったが、今後は、同じCPUコアアーキテクチャで、コア数やコアの種類(ヘテロジニアス型など)、周辺回路構成が異なるバリエーションが産まれていくと見られる。CPUコア開発とCPUプロジェクトは、分離されて行く方向にある。

IntelのCPU開発サイクル(推定)(別ウィンドウで開きます)
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●4〜5年サイクルのCPUアーキテクチャの開発

 Intelの場合、典型的なCPUの開発サイクルは4年だった(現在は伸びつつある)。Pentium(P5)/Pentium Pro(P6)時代には、Intelは2チームに並列にCPUアーキテクチャを開発させることで、開発サイクルの短縮を試みた。P5は米カリフォルニア州サンタクララで開発、一方、P6は米オレゴン州ヒルズボロで開発。2チームがオーバーラップして4年サイクルの開発を行なったため、P5は'93年、P6は'95年と2年サイクルでロールアウトすることができた。

 ところが、サンタクララのチームは、P5の後、P7の開発をスタートさせたものの、このプロジェクトが命令セットを刷新したIA-64アーキテクチャに変わってしまった。そのため、IA-32系CPUアーキテクチャの開発はヒルズボロだけに集中することになり、P6から次の2000年のNetBurst(Pentium 4)までは、5年の間が空いてしまった。1チームによる開発態勢に戻ったことで、CPUコアアーキテクチャの刷新は再び4〜5年サイクルになってしまったわけだ。

 そこで、Intelはアーキテクチャの中間リフレッシュを行なうことにした。P6アーキテクチャは、MMX/SSEのSIMD(Single Instruction, Multiple Data)命令拡張やL2キャッシュのオンダイ(On-Die)化でPentium III世代へとリフレッシュ。また、NetBurstは、64bit化とパイプラインの深化を図った「Prescott(プレスコット)」と、マイクロアーキテクチャを大幅拡張した「Tejas(テハス)」でリフレッシュをかける計画だった。ベースのCPUアーキテクチャは4〜5年サイクルで、途中に拡張をかけることで性能向上を維持しようという作戦だ。そのため、NetBurstは特に拡張性を重視したアーキテクチャとして設計された。

 NetBurstアーキテクチャにリフレッシュをかける一方、オレゴンチームはNetBurst後、すぐに次世代アーキテクチャ“Nehalem”プロジェクトをスタートさせた。IntelのWebサイトに2002年秋まで誤って公開されていたNehalemのメインアーキテクトDoug Carmean氏のインタビュー(現在は削除されている)では、同氏が2001年をNehalemのアーキテクチャ定義で費やしたと説明されていた。Nehalemは“Pentium 8”に当たる世代で、2004年に予定されており、設計はゼロから新規に始められていた(from scratch approach)。その後、Nehalemの計画はややずれ込み、2005〜2006年の登場へとスリップしたが、2003年まではNetBurstの後継の位置にはNehalemがあった。

 この時点のNehalemアーキテクチャについては、明らかになっていない。だが、高クロック&マルチスレッディング型のアプローチを取る予定だった可能性が高い。例えば、Intelは、2003年2月の「Intel Developer Forum(IDF)」で、2007年時点でCPUの動作周波数が10GHzに達するとビジョンを示している。時期を考えると、この時点で想定していたアーキテクチャはNehalemとなる。また、当時、CTOだったIntelのPatrick P. Gelsinger(パット・P・ゲルシンガー)氏(現Senior Vice President and General Manager, Digital Enterprise Group)は、CPU開発の方向がマルチスレッド化にあると強調していた。

●イスラエルでモバイル系CPUアーキテクチャを開発

 Intelは主流のCPUアーキテクチャをオレゴンで開発する一方、モバイル専用CPUの開発もスタートさせた。これは、新たにイスラエルの開発チームが担当することになる。Intelイスラエルは、まず、オレゴンで設計したCPUの派生品の開発からスタートした。同チームは「0.25μm版MMX Pentium(Tillamook:ティラムーク)」で成功を収め、次に「ノースブリッジ統合型Celeron(Timna:ティムナ)」を開発。TimnaはRDRAMインターフェイスを統合していたため、市場性がなくなりキャンセルとなったが、社内で開発力は高く評価されたという。そこで、次のモバイルCPUはイスラエルが担当することになった。

 当初、Intelはモバイル向けにPentium IIIを多少拡張したCPUを計画していたと言われる。しかし、イスラエル側は機能をどんどん強化し、結果としてほぼ完全に再設計した「Pentium M(Banias:バニアス)」が産まれる。'99年頃に開発がスタートしたと見られるBaniasは、予定より遅れて3年がかりの開発となり、2003年に登場する。

 イスラエルは、Baniasが一段落した頃から、第2ステージのモバイルCPU群の開発もスタートさせる。Banias系のデュアルコア「Yonah(ヨナ)」と、次世代モバイルCPUアーキテクチャMeromの開発だ。IntelのMooly Eden氏(Vice President & General Manager, Mobile Platforms Group)は、2002年春時点で、IntelはBanias後継のCPUを2世代開発していると明かし、マイクロアーキテクチャも拡張することを示唆した。少なくとも、Yonahまではすでにスタートしていたわけだ。

 また、2003年頃には、Meromではターゲットを、Pentium MがカバーするモバイルノートPCだけでなく、デスクトップ代替クラスの大型ノートPCも視野に入れるという情報も漏れてきた。Meromは、最初から、パフォーマンスをより高く設定していたことになる。

●NetBurst系の行き詰まりでCPU戦略を転換

 よく知られているように、IntelはNetBurst系のPrescott/Tejasで行き詰まった。CPUの消費電力=発熱の予想を上回る増大によって、パフォーマンスが頭打ちになり始めたからだ。また、CPU技術のトレンドは、「スレッドレベルパラレリズム(TLP:Thread-Level Parallelism)」を高める方向へと急転換、より並列性の高いTLPとしてマルチコアへと雪崩を打って向かい始めた。

 そのため、IntelはCPU開発計画の大幅な変更を余儀なくされた。マルチコア化を急ぐためには、よりコンパクトでパフォーマンス/ワット(電力)の高いCPUコアが必要だからだ。NetBurst/Nehalem系の高消費電力だがパフォーマンスも高いコアは、向いていない。結果として2004年春に、IntelはTejasをキャンセルした。Nehalemもその段階で仕切り直しとなったようだ。

 問題は、この変更によって、IntelのCPU開発サイクルに大きな穴が空いてしまうことだが、IntelはMeromをデスクトップCPU分野にも投入することでこの問題を解決する。デスクトップとモバイルでCPU開発を平行していたことが功を奏したわけだ。Tejasのキャンセル前からMeromがデスクトップの次のコアになるという情報も入っていたため、NehalemからMeromへの交代は、Tejasキャンセルより早い時期に行なわれた可能性もある。

 この戦略変更の結果、Meromはモバイルとデスクトップの両方にまたがる「ユニファイドアーキテクチャCPU」となった。モバイルとデスクトップを分けないという意味では、NetBurst以前の形に戻ったわけだ。しかし、これが定着した方向なのかどうかは、まだわからない。

●Nehalemはアーキテクチャの再定義へ

 一方、オレゴン側はNehalemプロジェクトを根本から見直し、アーキテクチャの再定義を始めたと見られる。少なくとも2004年後半は、Nehalemのアーキテクチャ定義を行なっていたようだ。

 これがわかるのは、Intelのアーキテクトの一人Andy Glew氏が、Web上のカリキュラムで、IntelのNehalemアーキテクチャチームに2004年夏以降に加わったと示しているからだ。Glew氏は、2002年夏から2004年夏までAMDに転社、K10アーキテクチャの定義に加わったあと、再びIntelに戻っている。少なくとも、2004年夏の段階では、まだNehalemはアーキテクトが必要な段階にあったということになる。

 2004年にアーキテクチャとなると、Nehalemの登場は4年サイクルとして2008年頃となる。すると必然的にプロセス技術は45nmとなる。通例のパターンだと、新プロセス技術は、まず枯れたマイクロアーキテクチャのCPUに適用され、次に新マイクロアーキテクチャのCPUが登場する。新アーキテクチャCPUの方がバリデーションに時間がかかるから、必然的にそうなる。Nehalemが出てくるとしたら、Merom/Conroe系の45nm版(Penryn?)の次となるだろう。

 Nehalemのアーキテクチャについては、まだ現状では一切わかっていない。マルチスレッドアーキテクチャ推進者のGlew氏が加わることから、マルチスレッドを発展させたアーキテクチャという路線は変わっていない可能性がある。また、インターフェイス回りでは、FSB(Front Side Bus)にシリアル伝送系のCSIを全面的に採用する可能性が高い。

●2つの事業部がそれぞれオーバーラップしてCPUを開発

 イスラエルチームは、Meromの後継として「Gilo(ギロ)」と呼ばれるCPUアーキテクチャのプロジェクトも進めている。Giloについては、2003年頃から名前が漏れていたが、その時点でも「GiloはMeromのもっと先のプロジェクト」(Intel関係者)と言われていた。Giloについても、Nehalem同様にプロジェクトが何回か見直しされている様子で、現在はNehalemの後に出てくることになっている。2009年までなら、プロセス世代は45nm、それ以降ならプロセス世代は32nmということになる。

 こうして見ると、Intelの開発体制は、デスクトップとモバイルそれぞれに特化したCPUを、2チームが個別に開発するのではなく、ユニファイドアーキテクチャCPUを交互に開発する形に変わったように見える。もしそうなら、P5/P6の頃の開発態勢に戻ったことになる。

 しかし、実態はそうとも言えない。Merom→GiloはIntelのMobility Groupが開発し、NehalemはDigital Enterprise Groupが開発と、開発を担当する事業部が2つに分かれているからだ。つまり、交互にアーキテクチャを開発するというより、2グループがそれぞれ開発するコアが、オーバーラップするという状況になっている。たまたま、Merom、Nehalem、Giloのスケジュールがずれて並んでいるのかもしれない。

 事業部が分かれていることは、Intelの両事業部が、それぞれどのCPUコアを使うかについて、まだオプションを持っていることを意味していると思われる。つまり、Nehalemがモバイル系に向いていないとなれば、Mobility GroupはNehalemを採用せず、Merom系を発展させてGiloまでつなぐことも考えられる。その逆に、Digital Enterprise GroupがGiloを採用しないこともありうるかもしれない。このあたりは、Intelの社内政治なのでよくわからない。しかし、事業部が分かれていることは、重要な意味を持つと推測される。

 NehalemとGiloの世代のCPUコアは、IntelのMany-core構想にも絡んでくる。Intelは、数10個のCPUコアを統合するMany-coreに、大型のシングルスレッド性能を重視したコアと、小型のマルチスレッド性能向けのコアの2種類を組み合わせる予定だ。小型コアは新規設計となる可能性が高いが、大型コアはその時点の既存コアの流用となると考えた方が自然だ。Many-coreのためだけに大型コアも開発するとしたら、開発労力が無駄にかかってしまうからだ。となると、時期的に考えればNehalemやGiloがMany-coreの中核になる可能性が高い。

 こうして概観すると、IntelのCPUアーキテクチャの長期ロードマップの輪郭が見えてくる。浮かび上がるのは、Intel内部が2つに分離して、競いながらCPU開発を進めている構図だ。

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(2005年12月28日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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