Microsoftがリリースを予定しているWindows Media Connectは、UPnPの技術を利用したホームネットワークソフトウェアのサーバー部分で、今年の1月にラスベガスで開催されたInternational CESで初めて公開された。 今回のWinHECにおいては、その詳細が明らかにされ、1月に発表されたホームサーバー機能に加え、「Windows Media DRM」というDRM機能も備えていることが明らかになった。 ただ、Microsoftの関係者によれば、1月の時点では今夏とされていた出荷スケジュールは、今年の終わり頃へ延期されてしまったことが明らかになった。 ●アクセスコントロール機能を備えるWindows Media Connectサーバー
Windows Media Connect(以下WMC)は、International CESのレポートでも紹介したとおり、ホームネットワークサーバーソフトウェアとなっている。 ユーザーは、WMCを自分のWindows XPが動作するPCにインストールすることで、ネットワーク上にあるDMA(Digital Media Adaptor)や他のPCなどにメディアファイルを公開することができる。今回WMCのセッションでは、次のようなメディアファイルがサポートされることが明らかにされた。 ・音楽:WMA、MP3、LPCM ユーザーはWMCのサーバー上で、公開するフォルダなどを指定することで、ホームネットワークに接続されたDMAや他のPCに対して公開が可能になる。今回のWinHECでも、ソニーのルームリンクなどのDMAからWMCにアクセスする様子がデモされていた。 WMCのサーバーソフトウェアでは、メディアファイルにアクセス可能なDMAや他のPCなどを、サーバー側で設定する。まず、UPnPに対応したDMAやPCを、WMCサーバーが動作するPCと同じセグメントのホームネットワークに接続する。すると、WMCサーバーの設定コンソールからDMAやPCを発見することが可能になり、そこからWMCサーバーへのアクセスの可否を設定する。 また、公開フォルダごとに閲覧可能なファイルを設定することも可能で、子供には見せたくないファイルは、子供が利用できる機器からアクセスできないようにする、という使い方も可能という。
WMCには、あまり語られていない別のメリットもある。というのは、WMCがすべてのWindowsに搭載されるようになると、WMCによりDMAの事実上の標準が決定する可能性があるからだ。 というのも、現在のDMAは、同じUniversal Plug and Play(UPnP)のプロトコルを利用しているものでも、仕様の解釈の違いから“方言”がある状態になってしまい、実用上問題となる場合があるからだ。 例えば、A社のDMAをA社のサーバーにつなぐと問題なく動作するが、B社のサーバーに接続するとビデオというカテゴリを見ているのに、音楽ファイルが表示されてしまい、その音楽ファイルを選択して再生しようとするとA社のDMAはそれがビデオファイルだと思って再生しようとするので、問題が発生する、などというケースもある。 これは、Universal Plug and Playではユーザーインターフェイスの部分の仕様がなく、DMAのUIは各社が独自に実装していることが原因で起こる問題だ。
WMCでは、こうした問題に対応するため、DMAに対してコンテンツのフィルターを設けることを要求している。これは、ビデオというカテゴリを選択している時には音楽ファイルは表示しないようにする仕組みで、前述のような問題を防ぐことができる。また、DMAは自分が再生できないファイルがある場合には、そのファイルをフィルタリングして表示しないことも要求される。 ただし、これでも解決できない問題もある。例えば、ビデオの拡張情報の問題だ。現在のTVチューナカードでは、録画時に番組名や内容などの拡張情報を独自ファイル形式で付加するものが少なくない。こうした拡張情報は、標準化されておらず、拡張情報をWMC経由でクライアントに表示する機能は用意されていないのだ。 ちなみに、MicrosoftはWindows XP Media Center Editionで、この問題を回避するためにDVR-MSと呼ばれるMPEG-2に拡張情報を格納するメタデータを付加した独自ファイル形式を採用しているため、Media Center eXtender(MCX)を利用する場合にはこの問題は解決済みだ。この点がMCXの大きなメリットの1つとなっている。 これは、WMCだけの問題ではなく、MPEG-2などのビデオファイルの抱える問題といえ、今後の課題ということになる。 ●Windows MediaのDRMサポート機能が追加
CESの時には語られていなかった新たな機能も明らかになった。この機能を利用することで、インターネットを経由して購入したWindows Media DRMで保護されているプレミアムコンテンツを、PCだけでなくTVなどで再生することが可能になる。 WMCでは、Windows Media 9でサポートされるWindows Media DRMがサポートされる。Windows Media DRMは、すでにWindows Media 9シリーズに導入されているDRM(Digital Right Management、デジタル著作権管理)機能で、まもなくDMA用の拡張が行なわれる予定になっている。 WMCには、このネットワーク機器用に拡張されたWindows Media DRMの機能が内蔵されており、DMA側が拡張されたWindows Media DRMをサポートしていれば、PCに格納されているWindows Media DRMで保護されているコンテンツを再生できるようになる。 Windows Media DRMではインターネット上にあるコンテンツサーバーからファイルを取得し、同時にライセンスサーバーから暗号化の解読に必要なキーを入手することで再生可能にしている。 拡張されたWindows Media DRMでは、ネットワーク機器は暗号化の解読に必要なキーをWMCサーバーから受け取り、それを利用して暗号の解読を行なうことになる。この際、DMA側にSビデオ端子などの映像出力が用意されている場合には、コンテンツ保護のため、CGMS-Aやマクロビジョンなどのコピーガード信号を付加することが要求される。 WinHECの展示会場ではDMA用のソフトウェアを開発しているDigital 5社のソフトウェアを利用したDMAが展示され、WMCを経由してPCに保存されているWindows Media DRMで保護されたコンテンツにアクセスする様子などがデモされていた。
MicrosoftはWMCとは別に、Media Center eXtender(MCX)と呼ばれる別のDMAのプランも持っている。多くの人が、WMCとMCXを混同しているようだ。目的は同じだが、その実装方法や利用条件が異なっている。 【表】WMCとMCXの違い
WMCとMCXの最大の違いは、OSとしてWindows XP Media Center Editionを必要とするかどうかだ。また、WMCがデバイスの発見、設定にUPnPを利用し、ユーザーインターフェイスやファイルの転送にはHTTPを利用しているのに対して、MCXではRemote UIと呼ばれる、サーバー側のWindows XP Media Center Editionのユーザーインターフェイスをそのままクライアントに表示するという点も大きな違いと言える。 では、実際の使い勝手という点で比較してみると、WMCの方はUPnPで接続するため、基本的にはUPnPに対応していれば、どのようなDMAでも接続できる。ただし、すでに述べたように機器ベンダ間でユーザーインターフェイスなどに若干の差違があるため、互換性の問題が生じやすい。 これに対してMCXの方はWindows XP Media Center Editionに対してリモートアクセスするような形で接続するため、使用感そのものはWindows XP Media Center Editionと全く同じだ。接続先のWindows XP Media Center Editionが動作するPCとほぼ同じ機能が利用でき、互換性の問題が生じにくい。 しかし、MCXでは必ずWindows XP Media Center Editionを必要とするので、Windows XP Media Center Editionが導入されたPCを持っていないユーザーには何のメリットもないし、Windows XP Media Center Editionではない他のWindows XPが動作するPCに保存されているメディアファイルは再生できない。 そこで、Microsoftでは、将来のバージョンのMCXでは、WMCのクライアント機能を統合していく。WinHECのMCXに関するセッションでは、2005年にはExtender v2という次世代のバージョンが用意されており、そこではWMCのクライアント機能が実装されることが明らかにされた。これにより、MCXクライアントがあれば、WMCにもMCXにも接続可能になる。 おそらく、将来はこれらの機能がTVに統合されていくことになるだろう。たとえば、ソニーはすでにメディアリンクスタジオと呼ばれるVAIO Mediaのクライアント機能を搭載したプラズマテレビを発売している。 現在ではVAIOにプレインストールされたVAIO Mediaサーバーにしか接続できないが、WinHECでも同じ機能を持つルームリンクがWMCのクライアントとして利用されていたことを考えると、これもWMCのクライアントとして使える可能性があると言える(ただし、ソニーは何もアナウンスをしていないので保証の限りではないが)。今後、UPnPのクライアント機能を内蔵するTVは増えていく可能性が高い。 なお、CESの時点では夏頃とアナウンスされていたWMCのリリース時期だが、WinHECの会場において今年の末に延期されてことが明らかにされた。MCXに関しても今年の末とアナウンスされており、実際に、これらが利用できるようになるのは年末商戦の時期となるだろう。 WMCの最初のバージョンのリリースはダウンロード形式で行なわれるが、Microsoftの関係者によれば将来のバージョンに関してはOS側に統合されていく可能性が高いという。今後はサービスパックやOSのリリース時などにWMCが標準で搭載されていくことになるだろう。
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(2004年5月7日) [Reported by 笠原一輝]
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