約1年ぶりに携帯電話を機種変更し、「P902i」を購入した。初めて使うパナソニック製端末だ。選んだ理由はたった1つで、Bluetoothを搭載している点だ。買ってから1週間が過ぎ、だんだん使い勝手がわかってきた。これでGSM携帯としても使えるのがベストなのだが、当面は、これ1台ですべての望みがかなえられそうだ。 ●携帯電話を手なずける 実は、春頃に、Bluetoothを使いたいばかりに、「F900iT」を持ち歩いていた時期がある。ノートPCの通信手段としての3G携帯に関する顛末は、当時の文章を読んでもらいたい。 その後、F900iTは、電話/メール端末としてのあまりの使い勝手の悪さ、処理速度の遅さ、本体重量などに耐えかねて、Bluetooth専用ダイアルアップ端末として普段持ち歩いているデイパックの中に入れっぱなしとなり、電話は前に使っていたものに戻してしまっていた。自宅に戻り、翌日に備えて充電しなければならない機材は少ない方がいいに決まっている。複数のデバイスのバッテリを管理するのは、やっぱりめんどうくさい。でも、さすがにこれではガマンしなければならないことが多すぎると思ったのだ。 新しく買った端末でできるはずのことで、ぼくがやりたかったことは、いくつかある。まず、当然、Bluetooth経由でのノートPCからのダイヤルアップインターネット接続であり、これに関しては簡単に設定ができた。F900iTは、ダイヤルアップサービスの待ち受けを、サイドボタンの長押しで開始できる点がよかったが、この端末にはそのような機能はない。PCを登録してペアリングし、メニューから登録機器接続待機を実行してダイヤルアップサービスを選択して待ち受け状態にする。ただ、この状態は電源を切っても保持されるので、サイドボタンの長押しなどで頻繁にBluetoothをON/OFFする必要はなく、不便は感じない。 もう1つやりたかったのは、録画しておいた朝7時からのニュース番組1時間分のムービーファイルをminiSDにコピーし、移動中に見るということだ。試行錯誤の結果、「携帯動画変換君」というフリーソフトウェアを使い、PCで録画した約2GBのMPEGファイルを、毎朝約10分かけてQVGA標準画質15fpsステレオの3GPPファイルに変換することにした。これでサイズは約100MBになる。最初は、実験提供中のSD-VIDEO形式に変換していたのだが、この形式ではしおり機能が使えないことがわかり、形式を変更した。また、3GP2形式で試した場合、再生できるファイルと再生できないファイルがあるようなので、最終的に、この形式に落ち着いたのだ。 しおり機能というのは、再生中の映像をなんらかの理由で再生中断するときに、どこまで見たかを覚えておかせるためのもので、この端末では、自在に設定できるしおりが2種類と、メールや電話の着信で強制的に中断された場合に、自動的にその位置を覚えておいてくれる復旧しおりが用意されている。この機能が使えないと、さっきまで見ていた位置の頭出しがたいへんだ。 こうしてできたファイルを、miniSDの\SD_VIDEO\PRL001というフォルダに入れておく。ファイル名はmol+数字3桁でなければならない。この規則にのっとったファイル名で、毎朝のニュース番組が特定のフォルダに毎日上書き生成されるようにレギュラー予約をしておくことにした。謎のようなファイル名だが、これは端末側でタイトル変更することができ、その情報は、miniSDの\PRIVATE\DOCOMO\TABLE\SD_VIDEOに、PRL001.TBLというバイナリファイルが置かれ、その中に記録されるようになっているようだ。 ●あれもしたい、これもしたい、でもどうすればいい 電車の中での移動中に携帯電話で画像ファイルを見るためには、音声再生についても考えなければならない。他人に迷惑がかかるため端末内蔵のスピーカーを使うわけにはいかないので、なんらかのヘッドフォンを接続する必要がある。iPodを持ち歩いているので、ヘッドフォンはいつも携帯している。一方、端末は平型のAV端子である。ショップで、その変換ケーブルを探して入手、それを使って接続した。特に問題はないが、ケーブルが長すぎるのが気になる。変換ケーブルは60cmもの長さがあり、それにヘッドフォンのケーブルが加わるため、とても取り回しが悪い。 これを何とかするために、Bluetoothを使おうと思い立った。手元にはロジクールの製品「Wireless Headphones for iPod」があるので、それを使ってワイヤレスで音声を再生しようとしたのだ。この製品はiPod専用ということで、ワイヤレスアダプタをiPod本体に取り付け、レシーバー内蔵のヘッドフォンとの間でデータを伝送して音楽を楽しめるというものだが、その通信にはBluetoothが使われている。メーカーとしては保証外の使い方だが、なんとかなるはずだ。ところが、この設定でかなり時間を費やした。 P902iでは、あらかじめ、接続する機器とのペアリングをすませて登録しておく必要がある。ペアリング時には認証パスコードの入力が求められるのだが、これは0000でOKだ。ところが、どうしてもペアリングができない。時間をかけていろいろと試しているうちに、原因は、ダイヤルアップサービスが登録機器からの待ち受けをしているのがいけないことがわかった。最初にダイアルアップ接続を設定してしまったのがアダとなったのだ。いったん待ち受けを取り消して登録、あらためてオーディオサービスでの接続を試みるとスンナリとつながり、音声をワイヤレス再生することができた。 すなわち、この端末は、同時に複数のサービスでの接続ができないらしく、Bluetoothでのワイヤレスオーディオを楽しむためには、ダイアルアップの接続待機を解除し、ヘッドフォンに対してオーディオサービスで接続要求を出す必要がある。つまり、音楽を再生しながら、PCからのダイアルアップ要求を受け付けることはできないのだ。したがって、ぼくの使い方では、待機を解除して、ヘッドフォンに接続、再生を楽しみ終わったら、再び、ダイヤルアップサービスの待ち受け状態に戻しておかなければならない。この一連の操作をいちいちメニューをたどりながらやるのはとてもめんどうだ。ケーブルのわずらわしさをガマンしてもAV端子を使ってつなごうかと思案中である。 SD-Audio機能も試してみた。こちらはパナソニックの「D-snap」などをすでに使っているので、PCには「SD-Jukebox」がインストールしてある。ソフトの使いにくさには閉口するが、これはガマンするしかない。まあ、最近買った数枚のCDをベタッと入れておくくらいの用途にはこれで十分だ。何千曲もの曲を自在にコントロールするような使い方は想定されてはいないようだし、miniSDではメディアの最大サイズに限界もあるので、こんなものかと、なかばあきらめ気分だ。 あとは、遅ればせながら、「おさいふケータイ」だ。これまで使っていた900i世代の端末では、この機能が搭載されていなかった。まず、Edyなどのiアプリを登録してICカードとして使えるようにした。端末にすべての機能が集中することを嫌う方も少なくないようだが、ぼく自身は、落としたときに遠隔ロックができる携帯に集中させておいた方が安心だと思う。遠隔ロックは、指定しておいた電話番号から設定時間内に設定回数の不在着信があったときに端末をオールロックし、同時にICカード機能もロックをするというものだ。 設定して、実際に機能させてみたところ、きちんとオールロックされたので安心、翌日、コーヒーショップで使おうとしても、どうしてもうまくいかずに、現金で払ったという失敗談もある。これは、オールロックの解除をしても、ICカードロックは解除されず、別に解除しなければならないという仕様になっているからだ。おかしいと思って、iアプリを起動して残高を確認しようとしたら、そのメッセージが表示されてロックが解除されていないことに気がついた。 ちなみに、ICカードロックの設定と解除はメニューキーの長押しで切り替わる。ポケットに入った携帯電話の情報を悪意のある第三者に吸い取られるのが不安なら、使う前にロックを解除し、使ったらまたロックするようにした方がいいだろう。来年からはJRにも乗れるようになるし、私鉄のパスネットとの統合も近い。ますます便利になるはずだが、ロック設定はともかく、ロック解除には端末暗証番号の入力が必要なので、改札すり抜け寸前にロック解除というのはちょっとめんどうくさそうだ。 ●頼りになるマニュアルが欲しい とまあ、この1週間は、かなりの時間を携帯と格闘することに費やしてきたわけだが、そのときに頼りになるのは、やはり取扱説明書だ。もちろん、インターネットで得られる情報も貴重なものだ。 それにしても、この取扱説明書は分厚いし、その割には知りたいことが書かれていないことも多い。それでも参照したいことはある。ドコモの場合、取り扱い説明書のPDFが公開されているので、ぼくは、そのファイルをminiSDに入れてある。PDFファイルに関しても、これまた謎の規格にのっとったファイル名としてPDFDC+数字3桁が必要で、しかるべきフォルダ、ぼくの場合なら、\PRIVATE\DOCOMO\DOCUMENT\PUD001に入れておくと、端末内蔵のAdobeリーダーを使って参照できる。この小さな液晶画面で必要箇所を探すのは至難の業だが、検索機能もある。それに、いざとなればノートPCで見ればいい。 ぼく程度のスキルでは、新しい携帯端末を購入して、思い通りの使い方ができるようになるまでに1週間程度の時間が必要だったわけだが、他のユーザーというのはどうなのだろうか。若い人たちは、もっとサクサクとやりたいことができてしまうのだろうか。 かつては、メールにしても、やっかいがられていたのに、今では、メールは携帯で十分だとするユーザーも増え、年配の方でもかなり気軽に楽しんでおられるようだ。極端な言い方をすれば、すでに、メール程度は使えないと人に迷惑をかける時代になっている。そのうち、ICカードなども同様の推移をたどるにちがいない。 どっちにしても、やりたいことをできるようにするためには、ある程度の学習が必要になる。取扱説明書を充実させることがよいとはいえないが、少なくとも、こういう時代である。何もわからない人と何台かの携帯電話を使い続けた人たちに同じマニュアルですませろというのは無理がある。なんらかの手だてを打たない限り、せっかくの便利機能が使われないままになる、あるいは、普及が遅れるといったことにもなりかねない。 さて、昨日買ってきたニコンの新型デジタル一眼レフカメラ「D200」に付属しているマニュアルの、従来にない分厚さに驚いている。残念ながらこちらはPDFも用意されていない。ぼくは、本当にこのカメラを使いこなせるようになるのだろうか。
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(2005年12月16日)
[Reported by 山田祥平]
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