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AOpenのMac miniライクPCを組み立てるAOpenの超小型PCキット「MP915-B」が、12月に入ってから店頭に登場している。 このキットは、6月のCOMPUTEX Taipeiで展示され、注目を集めていた製品で、約半年を経て、ようやく商品化されたものだ。 端的に言えば、Mac miniにインスパイアされたデザインのWindows PCである。 とりあえず購入して、組み立ててみたので、レポートをお届けする。キットの購入価格は46,800円だった。 ●まるで完成品のようなケースとマニュアル Mac miniに限らず、最近のアップル製品のパッケージングのうまさには定評のあるところだが、MP915-Bのパッケージもかなりがんばっている。さすがに大きさはMac miniのパッケージによりは、大きめだが、手提げのついた箱に、筒型の化粧カバーがついている。少なくとも、PCキット(いわゆるベアボーン)のレベルではない。やはり、お手本が良いと……、と思わざるを得ない。 外箱には、仕様を記した無粋な白ラベルが貼られている。これによれば、マザーボードは「i915GMx-F」、CPUとメモリとHDDがなく、光ドライブはスロットイン式のスーパーマルチと記されている。
箱を空けると、PC本体が現われるが、とても小さい。Mac miniとほぼ同じ大きさだ。本体の下には備品類を入れた箱が入っている。 ちなみに、かなりまともな装丁の日本語マニュアルが添付されているが、内容は完成品のPCを前提としたもので、PCキットという現状にはまったくそぐわない。なにしろ、組み立てに関する記述がまったくないのだ。 外箱やマニュアルなどのパッケージングを見る限り、実は完成品のPCとしての販売を予定していたが、なんらかの大人の事情により、PCキットに方針を転換したのではないかと推測される。いや、私には何も確かなことはわからないのだが、まぁ、そんな気分だ。 CDは、グラフィックスやサウンドなどのドライバ類と、NERO EXPRESSとPower DVDが入ったアプリケーションの2枚が付属する。
●発表時と微妙に異なる外観 実際に箱から出てきた本体は、COMPUTEXでの展示や広報写真とは異なるデザインとなっている。 具体的には光ドライブにイジェクトボタンが付き、電源スイッチ部分も青いLEDの透過スイッチとなった。また、AOpenのロゴも印刷からレリーフになり、角度によっては目立つものとなった。たったこれだけのことだが、大幅にMac mini感を減退させることに成功しており、双子から従兄弟ぐらいには違うものとなっている。きっと、このあたりにも大人の事情があるのだろう。 ちなみに、背面の排気口も、Mac miniの特徴である斜めにブレードの入ったものから、ハニカム状の網に変更されている。
●きびしいCPU制限
では、このキットとは別に必要な部品を紹介していこう。 CPUはCeleron M 360(1.40GHz)~380(1.60GHz)、およびFSB533MHz(Dothan)のPentium M 740(1.73GHz)まで、と制限がきびしい。つまりBaniasではダメで、Dothanのみということだ。 結局、46,800円のキットに見合う値段ということで、Celeron Mの370(1.5GHz)を選んだ。これは13,500円だった。 メモリは、533MHzのDDR2 S.O.DIMMが必要だ。スロットは1つしかないので、1GBにしたいところだが、2万円台の後半から3万円近くする。512MBだと1万数千円というところだが、ここはエイヤっと1GBにした。結局24,500円だった。 メモリが高かったので、2.5インチのHDDは手元にあった40GBのものを使用した。もともとは、ノートPCに入っていたもので、80GBに拡張したので余っていたものだ。ちなみに、新規に購入すると40GBが8千円前後、80GBが1万3千円ぐらいから、というのが相場だ。もちろん、高速型をえらぶとこの限りではない。今回は8千円として考えておこう。 結局、ここまでかかった費用は、46,800+13,500+24,500+8,000で、92,800円となった。これにOSとマウスやキーボードが必要なことを考えると、かなり良い値段のシステムといえる。ちなみに、Windows XPは、OEM版のHome Editionでも12,000円はする。 なお、同じ水準のMac miniは、81,770円なので、OSの違いなどを問わなければ、Mac miniの方がお買い得な印象であることは間違いない。 P> 余談だが、本機の筐体は熱くなりやすい構造であり、CPUクロックの制限は、熱問題ではないかと推測される。 ●ちょっと手間取った組み立て ケースは、底面に貼られているゴムの四隅に隠れたネジで止められている、とされているのだが、製品はネジ止めされておらず、かみ合わせで止まっているだけだった。ケースの開けやすさはMac miniよりずっと優れている。まぁ、完成品とPCキットは性格が違うので、比較してもしょうがない。
マザーボードは正方形に近い独自のものだ。チップセットは裏表に1つずつ配置されている。 S.O.DIMM用のメモリスロット以外に無線LAN用のmini PCIのスロットが用意されているが、いまのところアンテナキットが出ていないので、使い道がない。 ファンは1つだけで、CPUとチップセット用が一体となったクーラー部分を通風し、本体背面に排気する。吸気は本体底面から行なわれる。 光ドライブとHDDは、フタの裏に固定され、あまり風が通るようにも見えない。熱が出やすい高速型のHDDは使わないほうがよいと思う。 CPUとメモリは、ごく普通に組み付けられるのだが、HDDにはちょっと手間取った。 すでに取り付け済みの光ドライブを支えているマウンタを本体カバーからはずし、HDDを組み付ける。そこにIDE用のライザーボードを組み付けて、ネジ止めする。この状態でマウンタを本体カバーに取り付ける。
ここまでは簡単なのだが、ライザーカードはカバー側に、それを刺すコネクタのあるマザーボードはシャーシ側に泣き別れになっている。カバーをシャーシに組み付ける際に、正しい位置にあれば、ライザーカードのエッジが、コネクタに刺さるのだが、なかなか思うように入ってくれない。 組み立てガイドには「カバーを本体にかぶせ、垂直に押し込みます」とさらっと、書いているが、実は、ここが一番の難所だった。ともかく、入ってくれないと起動すらできない状態なので、各自奮闘するしかない。 もともと組み立てキットとして製品化されたのであれば、ここはケーブルにしていてもよい部分だろう。個人差はあるだろうが、私自身は、この作業をしているときに、この製品が本来は完成品として販売されることを目指していたことを確信するほど手間取った。 ちなみに、Mac miniでは、すべての部品はシャーシ側に組み付けるようになっており、いったんケースを開けてしまった後は、こういう苦労はない。このあたりは、もうちょっとうまく学んでほしいものだ。 ●Windowsのインストール ACアダプタと、キーボードとマウス、ディスプレイをつなぎ、電源スイッチをいれると、無事に起動した。 ACアダプタは、ノートPC用の流用とおもわれ、かなり小さい。最近、本体の割に大きいアダプタも多いので心配していたが、これならいいだろう。 また、PS/2端子はないので、キーボードとマウスはUSB用を用意しよう。USB端子は2つしかないので、1つでキーボードとマウスが使える無線タイプも向いているだろう。 ディスプレイ端子は、DVI-Iだが、D-Sub 15ピン(VGA)への変換コネクタが付属している。 なお、電源スイッチの青いLEDは、まぶしいほど明るい。自室で使い続けるには、ちょっと明るすぎると感じるほどだ。 Windows XPのCDを入れ、インストールを行なう。インストール自体は粛々と進むのだが、光ドライブはかなりうるさい。 また、本体に触れてみると、天板の部分が、とても熱い。温度計で表面温度を測ってみると43度もある、排気の温度は57度だ。やはり、ドライブまわりの廃熱は苦しいようだ。それでもCDへのアクセスがなくなると、温度は下がっていき、無事にインストールは終了した。 ドライバ類とアプリケーションをインストールして、一段落となった。 ●先達はあらまほしきかな かなり露骨にMac miniにインスパイアされた、この製品について、いろいろな受け取り方はあるだろう。 ここまでの感想をいえば、デザインや質感ではMac miniには劣るものの、なお魅力的だし、話題性もある。写真撮影をしていても、これほど人が集まってくるPCは最近では珍しい。この省スペース性を生かして、ワイド型の液晶TVなどと組み合わせても面白いなどと夢も広がる。 可能であれば、きちんとしたBTO製品として、完成品をどこかのメーカーが販売してほしいと思う。価格も下がるだろうし、客層も広がるだろう。 しかし、「MP915-B」をさわることによって、Mac miniの良さが浮き彫りになるのも真実だ。「先達はあらまほしきかな」である。 【編集部注】この記事の続編があります。こちらをご参照ください。 □AOpenのホームページ (2005年12月8日) [Reported by date@impress.co.jp]
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