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WPC EXPO 2005 Intel基調講演
会場:東京ビッグサイト 会期:10月26日~29日 入場料:2,000円(事前登録は無料) WPC EXPO 2005 2日目の基調講演は、米Intel副社長でデジタルホーム事業本部コンテンツ・サービス事業部長のケビン・コルベット氏である。 Intelは、このところ、家庭向けには、デジタルホームというコンセプトで製品を提供しており、特に2006年から開始されるデジタルホーム用プラットフォームブランドであるViivテクノロジに注力している。 基調講演のタイトルは「暮らしを変える、ビジネスが動く、デジタルエンターテインメント新時代とPCの未来」。 ビデオ上映から基調講演が開始されたが、それと同時にステージ中央からスモークとともにせり出してきたのは、IntelのGolden Gateプラットフォームのプロトタイプ。あとで聞いた話だが、ステージ上のほとんどのデモは、このマシンで行なわれたという。 Golden Gateは、Yonahを搭載したデジタルホーム用のプラットフォームで、コンパクトな筐体を採用している。 コルベット氏は、インターネットのブロードバンド化やPCの能力向上により、現在は「デジタルエンターティンメント」の時代を迎えているとした。ネットワークを介したコンテンツの配信により、いつでも、どこでも、PCを使って映画などのコンテンツを楽しむことが可能になるという。 そのときに重要となるPCの機能は、コンテンツに簡単にアクセスするためのユーザーインターフェイスだという。その具体例として同氏は、Hillcrest Labsで開発中のメディアコンテンツ用シェル「HoME」のデモを行なった。これは映画や音楽、静止画などを段階的に表示するもので、DVDやCDのパッケージ写真から選んだり、アーティストや出演者、監督といった項目で選べるようになっている。また、1つの作品を選べば、同じ出演者、監督、あるいは映画からサウンドトラックCDといった関連付けによりコンテンツを選択していくことも可能だ。ただ、このデモは、実際に動作しているシステムではなく、デモ専用のプログラムということだった。 コルベット氏は、大量のコンテンツを揃えることも必要だが、そのまま見せても、その数にユーザーが圧倒されてしまって、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。そのためにも使いやすいユーザーインターフェイスは重要であると説いた。
2005年時点で、映画は、興行収入よりもDVDなどのパッケージ販売のほうが大きな売上げを占めている。Intelは、2008年頃には、これに加えてオンライン配信からの収入がDVDと同等以上になると予測している。 コルベット氏は、デジタルホームによるオンラインコンテンツ配信は、消費者だけでなく、ネットワークプロバイダ、コンテンツ所有者、そして広告主にとっても有効なものだと述べた。 ネットワークプロバイダは、加入者に対してコンテンツを提供するというサービスを行なうことで、付加価値をつけることができると述べ、今度は、プロバイダが提供するコンテンツサービスの例を見せた。これは、架空のプロバイダが行なっているサービスの例であるが、技術的には、現在あるもので構築可能なものだという。 また、コンテンツ所有者に対しては、デジタルホームが普及すれば、オンラインでの配信が増え、その分の売上げが見込めるとした。 広告主に対しては、デジタルホームを使うことでターゲットを絞った広告が可能な点、また、インターネット広告は、ユーザーがクリックして行なうもので、強制的に見せられるTVCMとは違うという。TVCMは、依然として巨大な広告費がかけられているものの、その視聴時間は短くなっている傾向にあるという。米国での調査によれば、録画した番組では、90%近くのユーザーがCMを飛ばして視聴するからだという。これに対して、インターネットの個人向け広告(個人嗜好に合わせた広告)は、現在では、広告全体からみると小さいものの、世帯当たりの視聴時間は長いという。これは、広告を見せられるのではなく、自分でクリックして積極的に見るからだという。 こうした特性を生かしたインターネット広告の例として、TVのようにスポンサー付きの番組の例を示した。これは、動画コンテンツの横にロゴをなどを入れ、興味があれば、これをクリックして、プレイリストなどに入れておき、あとから見るといったもの。
こうしたデモのあと、デジタルホームを実現するハードウェアとしてNECやソニーの現行製品について触れた後、ViivテクノロジやGolden Gateプラットフォームを紹介した。Viivは、Centrinoと同じプラットフォームのブランドで、デジタルホームを実現するシステムにロゴを発行する仕組みになっている。ただ、Viivでは、Windows Media Center Edition(MCE)が必須とされている。しかし、日本のPCメーカーの多くは、MCEを搭載せず、自社独自のシェルや録画システムを提供している。 この点について、基調講演後のQ&Aで質問したところ、ユーザーインターフェイスなどは、MicrosoftとOEMメーカーの間で協議して解決するべき問題であり、特にIntelとしては、現時点でMCEを搭載していないシステムにViivプラットフォームと認定することはないとのこと。特に日本だけ違う運用をすることもなく、世界同一のやり方でViivプロモーションを進めるようだ。 Viivプラットフォームでは、DTCP-IPに対応しており、コンテンツを家庭内ネットワークで共有できることを紹介した。Viivでは、DTCP-IPにより、ネットワーク内で共有を可能にしながら、コンテンツを不正コピーなどから保護することができる。なお、ViivプラットフォームでのDTCP-IPは、マイクロソフト自身が提供する予定になっているとのことで、特にIntel自身が提供するわけではないようだ。 また、Viivに対応しているコンテンツの例として吉本興業の「ZZZ.TV」を紹介。このデモは、MCE上で行なわれていた。Intelは、このサイトを運用するベルロックメディア(吉本興業の子会社)に出資している。Intelとしては、このようなコンテンツをテコにViivの普及を考えている。 なお、Viivテクノロジは、計画としては発表されてはいるが、正式にはスタートしていない。基調講演終了後のQ&Aでは、来年初めのCESでなんらかの動きがあるかもしれないとの「ほのめかし」もあった。デジタルホームの正式デビューとしては、これ以上インパクトのあるタイミングはなく、なんらかの発表が行なわれるのではないだろうか。 □WPC EXPO 2005のホームページ (2005年10月28日) [Reported by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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