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PCベンダーパネルディスカッション、6社の首脳がプレゼンテーション会場:東京ビッグサイト 会期:10月26日~29日 入場料:2,000円(事前登録は無料) WPC EXPO 2005の初日となった26日午後2時30分から、主要PCメーカー各社首脳によるパネルディスカッションが行なわれた。 テーマは、「パソコンが主役! デジタル・ルネッサンス」。 家庭内での情報機器の主役はPCであることを、PCメーカーの立場から、各社首脳が意見を述べる内容となった。 パネルディスカッションは1時間30分だったが、そのうち1時間15分を各社からの個別プレゼンテーションの時間とし、残りの約15分で進行役からの質問にメーカーが答えるというパターンとなり、ディスカッションを期待した来場者からは、やや肩すかしの感があったのは否めないだろう。 インテルは、マーケティング本部 阿部剛士本部長が、ユーザーの利用環境が多様化していることに触れ、インテルの基本的考え方が、かつてはCPUの性能向上ばかりにフォーカスしていたのに対して、現在は、デジタルホーム、デジタルエンタープライズ、モビリティ、デジタルヘルス、チャネルの5つに分けた展開と、用途指向プラットフォームの考え方へと移行しはじめていることを示した。 また、今後のマイクロプロセッサの進化においては、パフォーマンスの向上だけでなく、消費電力を重要視しているユーザーが増加しているとして、今後は1Wあたりのパフォーマンスという指標を重視するとコメントした。 一方、デジタルホームでは、家庭内のどこにいても好きな映画を自由に選択して見ることができたり、出張先からビデオを通じて子供との会話や、ゲームで遊べるといった近未来のデジタルホームの事例を紹介。DLNAやDTCP、WiFi、WiMAXが家庭内でのPCの利用を大きく変化させることになるだろうとした。
NECは、NECパーソナルプロダクツの代表取締役執行役員専務 高須英世氏が、今年の秋冬モデルのコンセプトや具体的な機能を示しながら、デジタルホームにおけるPCの利用環境を説明した。 高須執行役員専務は、「ネット映像の新しい楽しみ方が鍵になる」として、秋冬モデルで採用した「BIGLOBEストリーム(MG)」を利用したデモンストレーションを行なった。 BIGLOBEストリームで提供されているアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の1コマを見せながら、5,000本以上のコンテンツが配信され、これがリモコンによる簡単な操作で閲覧できることを訴えた。 また、来年には音楽配信サービスの開始や、コミュニケーションサービスの提供、簡易決済機能の採用によって、新たなネットサービスが可能になることにも言及した。 一方、WPC EXPOのNECブースでは、デザインコンセプトモデルやマルチメディアプレーヤーの試作品を展示していることを紹介。マルチメディアプレーヤーの利用シーンを表した短いビデオも放映した。
東芝は、執行役上席常務PC&ネットワーク社 能仲久嗣社長が登壇。「デジタル・ルネッサンスは、ノートPCが牽引する」として、ノートPC専業ベンダーとしての同社の強みを強調した。 能仲社長は、現行モデルにおいても、マルチメディア機能、デジタルAVネットワーク機能などを搭載していることに触れたが、むしろ聴講者の関心は、能仲社長が後半の時間を使って言及した次世代AVノートPCの話だった。 東芝が、ノートPCの発売以来、今年で20周年を迎えたことを示しながら、「過去20年に渡って、ノートPCのあり方そのものを変える提案を行なってきた」と前置きし、「今後も、東芝がそれをリードする」とした。 10月上旬に開催されたCEATECの東芝ブースで参考展示されたHD DVDドライブ搭載ノートPCおよび地上デジタルチューナ搭載PCが来年早々にも発売できることを示す一方、0.85インチHDD、NAND型大容量メモリ、燃料電池や急速充電が可能なバッテリ、CELLなどを、今後のノートPCに搭載していく方針を明らかにした。
富士通は、経営執行役常務 伊藤公久氏が、「'81年に、8bitパソコンの“FM 8”を発売して以来、富士通のPCは、AVとモバイルへの挑戦の歴史だった」と切り出し、エポックメイキングな製品を紹介。「まだまだ挑戦の余地はある。『できる』を超えた世界を提供したい」と、より利便性が高く、性能が高い製品を投入していく姿勢を強調した。 また、PCメーカーにとって、デジタル放送のコンテンツの取り扱いには高い障壁があることを示し、「この壁を、当社は独自の暗号化LSIの採用によって乗り越えた。美しい映像はPCが創り出すことが可能になった」と話した。 次世代DVDドライブの搭載についても言及したが、「当社としては、規格の統一を熱望している。ユーザーの混乱や、立ち上がりの遅れを招かないためにも、当事者の企業の方には、最後まで諦めずに規格の統一を検討してほしい」とエールを送った。 そのほか、PC事業と携帯電話事業を1つのグループでやっている数少ない企業であることを示しながら、このシナジーに取り組んでいること、日本で生産している“Made in Japan”にこだわっていることなどを強調した。
マイクロソフトは、マイクロソフトプロダクトディベロップメントリミテッドの藤井照穂プレジデントが、Windows XP Media Center Editionによって実現されるデジタルライフスタイルの世界について説明。今日から提供されている「メディアオンライン」の説明や、「Media Center Extender」によって、Xbox 360との接続が可能になることも紹介。すでに、リモコンを利用して、PCが簡単に操作できる環境が実現されていることを示した。 デジタルライフスタイルとともに、同社にとって、もう1つの柱となっているデジタルワークスタイルでは、次期Windows XPである「Windows Vista」や、次期Officeとなる「Office 12」を紹介。「来年のこのイベントが開催される頃には、お手元にお届けすることができる」とした。 Office 12では、「Office 97」以来のユーザーインターフェイスの刷新であることを強調し、会場では、そのユーザーインターフェイスを披露した。 ユーザーが実行したいというコマンドを簡単に探せること、ユーザーが求めるアウトプットを簡単に実行できること、ユーザーインターフェイスの刷新によって、ワークスペースを拡大できること、ドキュメントのライフスタイル全体を考えたものになっていることを、新ユーザーインターフェイスの開発コンセプトにしたという。
ソニーは、VAIO事業部門 石田佳久部門長が、「VAIO type X Living」および「Xビデオステーション」に集中して、説明およびデモストレーションを行なった。 石田部門長は、「これはテレビに接続することを前提に開発した機器」という、VAIO type X LivingおよびXビデオステーションの製品コンセプトを説明したあと、実際に、壇上でデモ機を披露。操作をしてみせた。 VAIO type X LivingおよびXビデオステーションでは、リモコンによる簡単な操作で、各種のコンテンツが閲覧できたり、録画できたりといったことが可能で、「地上アナログ放送8チャンネルを3週間丸ごと録画するといった使い方もでき、録画予約という概念が必要なくなる」などとした。 また、米国で発売している200枚のDVDチェンジャーを搭載したMCE搭載PCを披露。そこに格納されているDVDをリモコンを使って選択し、閲覧するといったデモも行なった。一方、石田部門長は、「ソニーはHDに積極的に取り組んでおり、PCはソニーが提供するHDのトータルソリューションにおいて重要な機器となる」と位置づけた。
6人のプレゼンテーションが終了したあと、いくつかの質問がパネラーに投げられた。 まず、「家庭でPCが主役であり続けるためにはなにがポイントか」との質問に対しては、NECパーソナルプロダクツの高須執行役員専務が「PCは、最新の技術を搭載し続けて、新たな利用提案を続けてきたことで、多くの人の仕事、生活において役に立ってきた。今後もこうした新たな用途提案が、主役であり続けることの条件」としたほか、ソニーの石田部門長が、「PCの良さは、見たいものをすぐ見られる、検索したいものがすぐに見つかるといった点である。例えば、近い将来には、聞きたい曲があるが、歌っている人も、曲名もわからないといった場合にもハミングすれば自然と検索してくれるということが実現されるようになるだろう。これを実現するにはPCが持つCPUパワーと、ソフトのパワーがないと実現できない。PCの能力をユーザーが使いやすいように引き出すことが大切だ」とした。 32型液晶搭載PCを出荷した富士通に対しては、その反響に対しての質問が飛び、伊藤経営執行役常務は、「購入者からは、PCでハイビジョンを見られること、録画できること、そして、大画面であり、インターネットも利用できるという点に評価が集まっている。リビングだけでなく、自分の部屋に置いている人もいる。平均的には2~3mの視聴環境が多いようだ。もっと大画面のものが欲しいという声もあり、今後、大画面化をどうするかを検討している」とした。 一方、東芝の能仲社長は、デジタル放送に関して、「今年末にはデジタルチューナを小型化でき、それを来年の製品に搭載できるようになる。今後は、上位機種だけでなく、中下位機種にも展開していきたい」とした。 また、インテルの阿部本部長は、「デュアルコアは一般の人にわかりにくいと言われるが、ブランド戦略とコンテンツの2つの柱で展開していく。ブランド戦略では、コンシューマPCの新たなプラットフォームとして、Viivテクノロジーを発表し、これによってデジタルホームを推進していく。コンテンツ戦略では、高いクオリティのものを全世界レベルで提供していく体制を作っているところだ」とした。 マイクロソフトの藤井プレジデントは、「PCは、やりたいことをもっと簡単にしていくことが必要。もっと、PCの方からお客に近づいていくことが必要だろう」とデジタルライフスタイルの実現に向けてのポイントを示した。 □WPC EXPO 2005のホームページ (2005年10月27日) [Reported by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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