三浦優子のIT業界通信

秋葉館 江尻達也店長インタビュー
「オリジナルMac周辺機器で固定客を獲得」




秋葉館全景
 秋葉原電気街の中央通り。遠くからでも目立つ黄色のビルがセンチュリー株式会社が運営する店舗「秋葉館」である。店舗名は青で書かれているので、遠くからでもよく目立つ。

 「ヨドバシカメラ出店の影響。うーん、うちの店にはあんまりないんじゃないかな」--秋葉原の中央通りにある秋葉館の江尻達也店長は首を傾げる。

 「店頭にはMac以外のPCでも使えるメディアなど、特価品やB級品、処分品など安価で手に取りやすい商品を置いているので、電気街に来る人が増えれば、購入者の数も増える部分は確かにある。実際にヨドバシカメラが開店した週末は、店頭に置いた商品が飛ぶように売れた。しかし、当社のメイン商材はオリジナルのMachintosh用周辺機器。ヨドバシカメラに来る客層とは客層が違っている」

 電気街にある店舗の中でも、他店にはない商品を揃えることで顧客を獲得する--これが秋葉館の戦略なのである。

●本体販売がメインではないMac専門店

秋葉館 江尻達也店長

 秋葉館が中央通りに店舗をオープンしたのは、3年位前になる。

 「中央通りに進出する以前は、裏通りで3店舗体制で店舗展開を行なっていた。しかし、店舗が違っても同じ商品を並べていたため、効率をあげるという狙いもあって中央通りに店を構えることになった」と江尻店長は説明する。

 現在の中央通りの店舗は、1階が周辺機器やメモリなどの製品売り場。2階はMac関連製品、3階はMac以外の中古PC、4階はプロレスグッズショップ、5階は航空関連製品の専門ショップとなっている。

 「4階、5階フロアは、PCとは全く関連のないビジネスとなっている。強いて共通点をあげるとすれば、他の店にはない専門性のある商材を置いて、顧客を集めているということくらい」という。

 この「他店にはない専門性のある商材」というのが秋葉館の最大の特徴となっている。

 「うちは、Mac専門店ではあるものの、Mac本体の販売がメインではない」と江尻店長は笑う。

 Mac専門店でありながら、本体の販売がメインではないというのは、アップルがMac専門店よりも量販店に照準を当てた製品群を揃えたためだ。

 「iMacはMacの売り上げを大きく伸ばした商品ではあったが、アップル側のチャネル戦略の影響で専門店は扱うことができない商材でもあった。そこでどういう施策をとっていくべきか見当した結果、Mac専門店ではありながら、アップルとは連携しないビジネスを展開することとなった」

 アップルとは連動しない方針は、苦肉の策でもあったが、「今から考えると最適の選択だった」と江尻店長は振り返る。

 iMacは大ヒット商品となったものの、利益率が極端に低い商品でもあった。「あそこで、iMacを売るために奔走するという道を選択していたら、おそらく現在の店舗は成立しなかったんではないか。アップルの言う通りにならない店を作ったからこそ、ヨドバシカメラとはバッティングしないビジネスができる」

 確かにヨドバシカメラ「マルチメディアakihabara」の1階には、アップル製品が多数並んでいる。同様にアップル製品の販売がメインだったら、規模の小さい秋葉館のビジネスにも大きな影響があったかもしれない。

 しかし、あえてアップルとは連携しないという方針をとったことで、秋葉館は他店にはない商品を揃えた独自の道を歩むMac専門店となったのである。

黄色に青の文字で遠くからもよく目立つ、秋葉館の看板 店前だけには特価商品が盛りだくさんに並んでいる Mac OS 9が稼働する中古Mac本体やそのアップグレードパーツも揃える

●オリジナル周辺機器拡充で商品知識が豊富に

 独自製品が多いMac用周辺機器は、カード類、メモリ類、ドライブ類がメイン。

 「FireWire対応の周辺機器を揃えているメーカーはほとんどない。秋葉館にはFireWire対応の機器が多数揃っているし、店員に質問をしてもらえばきちんと答えることができる。これは他店にはない大きな強みとなっている」

 オリジナル商品に関しては、全てテストして販売を行なっている。手間はかかるものの、「それだけ製品に対して詳しくなる」というプラスメリットも生まれる。

 オンライン販売を行なっているWebサイトについても同様で、商品紹介はかなり詳しい。

 「Webを見てもらえば、知りたいことはほとんどわかるような内容としている。内蔵のドライブのように、相当商品知識がないとどの商品を購入すればよいのかわからないようなものもある。そういった場合でも、商品説明を読んでもらえれば、問い合わせをしなくとも、どの商品を購入すればよいのかわかるような内容とすることを心がけている」

 店頭での販売の際には、店員がユーザーからの質問にきちんと応える体制を作ることも同店の特徴だ。ユーザーから寄せられる、「ビデオ編集をする場合、どの製品を利用すると、どれくらいスピードが違うのか」といったかなり細かい質問にも回答できる体制をもっていることが大きな強みだ。

 実際に、AppleStoreで秋葉館を紹介されたといって商品の問い合わせが入ることもあるという。

 「オリジナル商品に関しては、台湾などから部材を調達して、自分たちで作っているものもある。だからこそ、他店よりも安く、顧客からの質問にも応えることができる体制が出来上がった。商品ラインナップに関しても、要望に応えているうちに周辺機器のほとんどをカバーしてしまった。そういう店だということが知られているから、AppleStoreをはじめ、他のお店で当店を紹介してくれるようになったんだと思う」と江尻店長は分析する。

 それだけ専門性をもった品揃えで商売をしているだけに、iPodがきっかけで初めてMacを購入した初心者ユーザーが増加してもそれほど商売に影響があるわけではない。現在のメイン顧客は仕事でMacを利用している人だ。

 それだけに、「きちんと商品説明ができることは大きな強みとなっている」という。

 今後、MacはIntelベースとなるが、「そうなれば、さらにオリジナル周辺機器を揃えることができるチャンスになるのではないか。現在でも、USB対応周辺機器などで、実はMacでも利用できるのに、それを表記していないメーカーも多い。そういった商品についてもテストして、Macでも使えますという販売ができるのはうちの店だけだろう。Intelベースとなれば、そういう商売が増えていくはずで、それなりにビジネスチャンスは広がるのではないか」と見込んでいる。

 これだけの専門性があれば、「ヨドバシカメラの影響は少ない」というのも頷けるだろう。“秋葉館”の名前の通り、秋葉原らしい専門性をもった店舗である。

店内に入ると、オリジナル周辺機器がずらりと揃っている

□秋葉館のホームページ
http://www.akibakan.com/
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ヨドバシカメラ秋葉原出店関連リンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/link/yodobashi.htm

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(2005年10月13日)

[Reported by 三浦優子]


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