8月30日、ソニーからVAIOシリーズの秋モデルが発表された。新筐体を採用した製品が多く、ソニーの力の入れぐあいがよく分かる。その中でも特に注目の製品が、小型軽量2スピンドルノートPC「VAIO type T」である。 VAIO type Tの初代モデルは2004年9月に登場し、何回かマイナーチェンジが行なわれたが、今回登場した新VAIO type Tはフルモデルチェンジが行なわれ、さらに魅力的な製品へと進化した。今回は、そのVAIO type Tを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。 ●LEDバックライトの採用で、液晶ディスプレイの厚さは従来の半分に 今回登場したVAIO type Tは、通常のショップで販売される「VGN-TX50B/B」と、提携ショップや直販サイトのソニースタイルで、仕様を選んで購入できるVAIO・OWNER・MADEモデルの「VGN-TX90PS/TX90S」に大別できる。 VGN-TX50/Bは、CPUとして超低電圧版Celeron M 383(1GHz)を搭載しているのに対し、BTOメニューが用意されているVGN-TX90PS/TX90Sでは、より高スペックの超低電圧版Pentium M 753(1.20GHz)を選ぶこともできる(もちろん、Celeron M 383も選択可能)。 また、VGN-TX50B/Bでは、ボディカラーはブラックのみだが、VAIO・OWNER・MADEモデルでは、プレミアムブルー(Penitum M搭載モデルのみ、1,000台限定)やホワイトを選ぶことも可能だ。ここで試用したのは、超低電圧版Pentium M 753を搭載したVGN-TX90Sである。なお、試用機は量産品ではないため、量産品とは細部が異なる可能性もある。 VAIO type Tのサイズは、約272.4×195.1×21~28.5mmで、重量は約1.25kgである。従来のVAIO type Tのサイズは、約272×205×25~34mm、重量は約1.4kg(VGN-T72Bの場合)だったので、横幅はほとんど変わっていないが、奥行きが約10mm短くなっているほか、厚さもかなり薄くなっている。重量も約150g軽量化されており、2スピンドルノートPCとしては、トップクラスの携帯性を実現している。 このように、薄型化と軽量化を実現できた理由として挙げられるのが、ボディの素材にマルチレイヤーカーボンファイバーを採用したことと、液晶のバックライトにLEDを採用したことである。 マルチレイヤーカーボンファイバーは、カーボン素材を樹脂で固めた素材で、軽くて丈夫なことが特徴だ。従来のVAIO type Tでは、天板にマグネシウム合金を採用していたが(ソニースタイル限定のカーボンブラックモデルを除く)、新VAIO type Tでは、マルチレイヤーカーボンファイバーを採用することで、約3割の軽量化と約2倍の強度を実現している。また、底面には、通常のモールド樹脂よりも軽くて丈夫なカーボンモールドが採用されている。 また、LEDバックライトについても特筆したい。通常のノートPCの液晶ディスプレイでは、バックライトとして冷陰極管(蛍光管)が採用されているが、新VAIO type Tでは、白色LEDが採用されている。LEDの採用によって導光板を薄くすることが可能になり、液晶ディスプレイの厚さは従来の約半分である約4.5mmまで薄型化された。同時に、重量も約3割軽くなり、消費電力も削減されているという。 写真を見てもらえば分かるが、VAIO type Tの液晶ディスプレイは本当に薄い。これだけ薄いと強度が気になるところだが、フルフラット構造になったことやネジを使わずにキャビネットで挟んで固定していることなどによって、従来に比べて割れにくくなっているという。
●512MBのメモリをオンボードで実装 VAIO type Tでは、チップセットとしてグラフィックス統合型チップセットのIntel 915GMSを搭載している。Intel 915GMSは、DDR2やPCI Expressをサポートした最新モバイル向けチップセットであるが、Intel 915GMとは異なり、デュアルチャネルメモリアクセスはサポートされていない。 メモリ(PC2-3200)は512MBがオンボードで標準実装されているほか、DDR2対応SO-DIMMスロットを1基装備しており、最大1.5GBまで増設が可能だ。HDDは、1.8インチタイプのものが採用されており、店頭販売モデルでは60GB、VAIO・OWNER・MADEモデルでは60GB/40GBから選べる。今回試用したモデルでは、60GBのHDD(MK6006GAH)が搭載されていた。 光学ドライブとしては、DVD+R DL対応DVDスーパーマルチドライブを搭載している。なお、VAIO・OWNER・MADEモデルでは、DVD/CD-R/RWコンボドライブの選択も可能だ。光学ドライブのイジェクトボタンが小さくて押しにくいが、キーボード右上に、イジェクトボタンを含むAV操作ボタンが用意されているので、メディアを出し入れする際には、こちらのイジェクトボタンを利用すればよいだろう。 液晶ディスプレイのサイズは11.1型ワイドで、解像度は1,366×768ドットである。従来のVAIO type Tの液晶は、10.6型ワイドで解像度は1,280×768ドットだったので、横の解像度が86ドット増えていることになる。1,366×768ドットという解像度は、アスペクト比がハイビジョン液晶テレビなどと同じ16:9なので、DVD-Videoのタイトルなども画面一杯に表示できる。VAIO type Tの液晶は、クリアブラック液晶と呼ばれる光沢タイプの液晶で、輝度やコントラストが高く、色鮮やかな表示が魅力だ。
●VAIO・OWNER・MADEモデルでは英語キーボードも選択できる キーボードのキーピッチは約17mmで、キーストロークは約1.7mmである。ストロークはやや浅めだが、不等キーピッチもなく、キー配列も標準的で使いやすい。店頭販売モデルでは日本語キーボードモデルのみしか用意されていないが、VAIO・OWNER・MADEモデルでは、英語キーボードを選択できることも特徴だ。 キーボードの右上部には、AVモードボタンやAV操作ボタンが用意されている。AVモードボタンは、起動時/スタンバイ時に押すと、Do VAIOが起動し、電源オフ/休止状態時に押すと、インスタントモードで起動するようになっいる。 インスタントモードでは、DVD-Videoや音楽CDの再生、メモリースティックやSDメモリーカード内の写真のスライドショー表示が可能だ。 ポインティングデバイスには、インテリジェントタッチパッドが採用されている。パッドの表面にドットパターンが施されているのもなかなか面白い。パッドの操作性も良好である。 ●VAIOノートで初めてSDメモリーカードスロットを装備 筐体はコンパクトだが、USB 2.0×2、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイなど、よく使われるポート類は一通り装備している。 カードスロットとして、PCカードスロットとメモリースティックスロット(標準サイズとDuoに対応)を装備しているほか、SDメモリーカードスロットを装備していることも評価したい。従来のVAIOノートでは、SDメモリーカードスロットは装備しておらず、今回発表された秋モデルからの搭載となる。 ソニーはこれまで、自社の規格であるメモリースティックにこだわってきたわけだが、記録媒体としてメモリースティックを採用しているのは、ソニーのデジタルカメラやオーディオプレーヤーくらいで、他社から登場しているコンシューマ向けデジタルカメラの多くは、SDメモリーカードを採用している。これまでのVAIOノートでは、SDメモリーカードを直接読み書きできなかったが、VAIO type Tなら、直接SDメモリーカードをスロットに挿入できるので、SDメモリーカードを記録媒体として採用している製品との連携がより便利になった。 モデムやEthernetのほか、IEEE 802.11a/b/g準拠の無線LAN機能と、Bluetooth機能を搭載していることも嬉しい。Bluetoothは、最新のVer 2.0+EDR仕様に準拠しており、対応機器なら最大2Mbpsまたは3Mbpsでの通信が可能だ。無線LANやBluetooth機能をオン/オフするためのワイヤレススイッチも用意されており、航空機内や病院など、電波を出してはいけない場所で使う場合、素早く無線機能をオフにできるので便利だ。
●非接触IC「Felica」のリーダーライター機能を装備 VAIO type Tは、非接触IC「Felica」の読み書きが可能なFelicaポートが搭載されていることも特徴だ。従来も、一部の機種ではFelicaポートが搭載されていたが、今回発表されたVAIOノートの秋モデルでは、全機種にFelcaポートが搭載されている。 Felicaを採用したSuicaカードやEdyカード、おサイフケータイなどをFelicaポートに近づけることで、残高や利用履歴の表示が可能なほか、クレジットカードを使ってEdyのチャージを行なうこともできる。また、Felicaの固有IDを利用して、スクリーンセーバーのロック解除や住所、氏名、ID、パスワードなどを管理することもできる。 バッテリは7.4V、7,800mAhの大容量を誇り、Pentium M搭載モデルなら、最大約9時間駆動が可能だ。さらに、大容量バッテリーパックを利用することで、駆動時間は約14.5時間に延びる。バッテリ駆動時間も十分満足できる。ACアダプタもコンパクトで、携帯性は高い。
●モバイルノートPCとしての完成度は高い 参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのSYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。なお、MobileMark 2002は正常に動作しなかったので、省略している。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用にLet'snote T4やLet'snote R3、LaVie RX LR700/CD、VAIO type S VGN-S70B、初代VAIO type TであるVAIO type T VGN-T70Bの結果も掲載してある。 PCの総合的なパフォーマンスを計測するSYSmark 2002のスコアは、初代VAIO type Tに比べて、かなり向上している。Let'snote T4に比べて、Office Productivityが低いのは、1.8インチHDDを採用しているためであろう。3D描画性能を計測する3DMark2001 SEや3DMark03、Quake III Areinaなどの結果も、統合チップセットとしては優秀な結果だ。もちろん、単体のGPUを搭載している製品に比べると3D描画性能は低く、最新ゲームを快適に遊ぶには力不足だが、携帯性重視のモバイルノートPCにそこまで望むのは酷であろう。 【VAIO type T VGN-TX90Sのベンチマーク結果】
新VAIO type Tは、より薄く軽くなった筐体に、FelicaポートやBluetooth機能などを詰め込んだ製品であり、モバイルノートPCとしての完成度はさらに向上している。液晶ディスプレイの表示品位も高く、ポータブルDVDプレーヤーとして使うにも向いている。ボディの質感や全体的な使い勝手も優れているので、気軽に持ち歩けるモバイルノートPCを探している人には、お勧めできる。 □関連記事 (2005年9月1日) [Reported by 石井英男]
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