大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

Xbox 360発売まであと数カ月、その事業戦略を聞く
〜マイクロソフト 丸山Xbox事業部長インタビュー




マイクロソフト株式会社執行役兼Xbox事業部長 丸山嘉浩氏

 Xbox 360の年内発売まで、わずか数カ月となってきた。

 現時点では、正式な価格および発売日は明らかになっていないが、年内発売の予定から逆算して、近いうちにその詳細が明かされるだろう。有力なのは9月中旬に開催される東京ゲームショウ2005を前後したタイミングだろう。

 Xbox 360は、マイクロソフトにとっては、失敗が許されないプロジェクトであり、その中で、「ゲームコンソール市場のメジャーリーグ」と比喩される、日本での局地戦を担当するマイクロソフト日本法人が担う役割も大きい。マイクロソフト株式会社執行役兼Xbox事業部長の丸山嘉浩氏に、Xbox 360にかける意気込みを聞いた。




−−年内発売に向けての準備はどうですか。

丸山 年内出荷にある一定台数を確保するための生産フェイズに入ろうとしています。どれだけ年内に出荷できるかというのは重要な問題ですし、そこで日本にどの程度の台数が割り当てられるのかも重要なポイントです。ただ、私の立場からすれば、それ以上に力を注いでいるのが、Xbox 360の発売と同時に、日本で、どの程度のタイトルを取り揃えることができるか、という点です。ただ、これも最後の最後までどうなるかわかりませんから、今こそが正念場です。

−−安心できるのはいつごろになりますか。

丸山 ソフトは、当社の承認プロセスを通過してから生産へと移行しますから、少なくとも発売の1カ月前には承認プロセスを通過する必要があるでしょうね。承認プロセスでは、Xbox 360での決められたルールに準拠しているか、あるいはバグがないか、といった点をチェックすることになりますが、少ない修正で済むものであれば、なんとか間に合う可能性もありますし、これが大幅な修正を加える必要があると判断されると間に合わないということにもなりかねません。きっと、ギリギリまでやきもきすることになるでしょうね。

−−日本では、10タイトル以上が同時に出荷できそうですか。また、米国では25タイトル以上を揃えることができますか。

丸山 今、それに向けて努力しています。現行のXboxでは、発売時にソフトタイトルが揃えられなかったことが、大きな反省材料の1つとなっています。それが、その後のハード本体の売れ行きや、タイトルの品揃えにも影響した。Xbox 360は、その反省を踏まえて、3年ほど前から、ソフト開発メーカーに対して、このプラットフォームの上で安心してビジネスをしていただける仕組みを作ることをお約束し、開発ツールも早期から提供してきた。Xboxはいいタイトルがないという先入観が、多くのゲームユーザーにはあるのは知っています。しかし、今回は、それを払拭できるだけのタイトルが揃えられると自負しています。

−−現行Xboxの失敗の原因はなんでしょうか。

丸山 いくつかの反省点があります。1つは、プレイステーション2(PS2)の発売に比べて、約2年もの差があったことです。PS2は、2000年3月に発売となりましたが、Xboxは2002年2月です。すでにその時点で、PS2の累計出荷は800万台程度に達していましたから、マラソンで言えば、すでに折り返し地点を回っているようなものです。これではとても追いつくわけがない。

 そして、2つめの反省は、大幅に遅れた上に、実力がなかった。この実力がないというのは魅力的なタイトルが揃えられなかったという点です。Xboxは、製品化を決定してから出荷まで1年半の期間しかなかった。準備が万全ではなかったのです。ですから、ソフトタイトルも思うように揃わなかった。

 3番目には、デザインの問題があった。筐体のデザインも、インターフェイスデザインも、アグレッシブすぎたという反省があります。米国のフリーウェイを走るにはいいが、日本の道路を走るにはちょっと大きすぎるというように、なかなか日本では受け入れられなかった。

−−これらの反省点は解決されていると。

丸山 発売時期という意味では、次世代機であるプレイステーション3の来年春の発売予定よりも早く出荷できますから、その点はクリアしています。ただ、早く出したから勝てるわけではない。それは十分承知しています。早く出すことは必要条件であって、十分条件ではありません。マイクロソフトに求められているのは、早く出す、あるいは同時に出すのが最低限の条件であり、遅く出しては負けるということです。

 2つめのタイトルの問題は、開発ツールを1年以上前から提供してきましたし、これもソフトメーカーである当社の技術ノウハウをつぎ込んだ大変すばらしいツールが提供できたと考えています。ソフトメーカーの方々からも、マイクロソフトのツールの方が、品質の高いソフトを、短期間に開発できる、という評価をいただいています。また、マイクロソフトのビジネスの手法や、Xbox 360プラットフォームにおけるビジネスの可能性についても理解をしていただいています。

 先にも触れたように、発売時には日本では10タイトル前後が投入できますし、さらに、1年から1年半をかけて、継続的にビッグタイトルが投入できる。ロールプレイングゲームは、どんなハードでも発売までに時間がかかりますから、もう少し時間が必要となるでしょうが、それにもぜひ期待してもらいたいですね。

Xbox 360の外観は日本のデザインチームの意見を取り入れた

 3つめのデザインについてですが、筐体部分には、日本のデザインチームの意見が強く取り入れられています。これまでは部屋の中にはちょっと置きにくいデザインだと言われていましたが、今度のデザインは、日本のユーザーが自分の部屋に置いても違和感がないようなデザインを採用しました。また、インターフェイスも日本の意見が採用されています。例えば、Xbox Liveブレードの画面でもわかるように、ユーザーが直感的に使いやすいデザインとしました。日本でも、フォーカスグループによるテストを何度も行ない、その評価結果をこのインターフェイスづくりに反映させています。

−−今回の発売にあわせて「ハイデフエンターテイメント」という言葉を使っていますが、この意味がピンとこなかったのですが。

丸山 ハイデフエンターテイメントは、「ハイディフィニション・エンターテイメント」という意味なのですが、これだと長すぎる。また、ハイビジョン・エンターテイメントというと、なんだかNHKみたいですから(笑)、これもどうかと。それでハイデフという言葉を使ったのです。

−−ハイデフとハイディフィニションが一緒の言葉であるということが定着していませんね。そこにわかりにくさがあるのでは。

丸山 その通りです。ですから、マーケティングの観点から言うと、この言葉を定着させることまで含めてやらなくてはならない。私たちが提案するハイデフエンターテイメントとは、グラフィックのクオリティだけでなく、オンラインの要素や、このプラットフォームを利用したサービスやマーケットプレイスの提供も視野に入れている。ゲームにしても、単に、ステージをクリアして終わりではなく、さまざまなサービスを受けたり、これまでにない楽しみ方を立体的に体感できるようにしたい。遊び方のバリエーションを増やしたいのです。

 オンラインで、ゲームで使用するアイテムを購入できたり、新たなキャラクターを入手するといった遊び方もできる。ビデオチャットを使って、顔を見ながら4人で麻雀ゲームをやるということもできる。また、レースゲームも、最初は、オンラインでほかの人のプレイの様子を見て、やり方を学ぶ、あるいは達人の技を盗むということもできる。

 さらに、ソフトを小出しにして、分割して販売することもできる。そうすれば、ゲームのステージをクリアしたからすぐに売却してしまうという人も減るはずです。

 Xbox 360では、さまざまな可能性を用意しているのです。その上で、クリエイターには力を発揮してもらいたいし、それを購入して、ユーザーにはこれまでにない体験をしてもらいたい。

 アナリストは、エンターテイメント市場という言葉を使いますが、実は、この市場は、あるようでないのです。市場は自分で作るものなんです。面白いものが提供できなければ、エンターテイメント市場の規模はゼロです。しかし、面白いものを提供できればいくらでも広がる。DVDでも、ゲームソフトでも、従来は2本しか買わなかったものが、これは面白いと思えば3本買ってくれる。それだけで市場規模は1.5倍になる。そういう市場なんです。

 だから、面白いことを体験できる舞台とコンテンツが必要なのです。実は、私は、自分のことをXbox 360劇場の支配人だと思っているのです。

−−支配人ですか。

丸山 そうです。Xbox 360劇場には、スーパーサウンド、特殊な舞台装置、すばらしい照明が用意されている。ただ、これだけ揃っていても意味がない。その上で、最高のパフォーマンスが繰り広げられてはじめて意味を持つ。

 Xbox 360劇場にとって、最高のパフォーマンスとなるのはゲームソフトです。現行のXbox劇場も、いい装置を用意していたが、駅から遠かったり、専属の劇団がいなくて、劇場ならではの差別化が出せなかったという反省があった。だから、新劇場では、こうした問題をすべて解決した。Xbox 360劇場でしか見られない、専属の劇団も用意する。

 支配人としての仕事は、Xbox 360劇場の機能を紹介するだけでなく、どんなパフォーマンスが見られるのかということを多くの人に知っていただく努力です。そして、それを体験していただくことです。実際の劇場との最大の違いは席に限りがないということ。すべての人が特等席で楽しめる。これをぜひ感じてほしい。

−−米国ではWindows XP Media Center Editionとの連携利用も強力な武器になりそうですが、日本ではどうですか。

丸山 これも双方の機能があってはじめて価値が提供できるものですが、残念ながら日本では、Media Center Editionが、まだ普及段階にはありません。ただ、無線LANを利用し、家庭の中での利用提案をしていきたい。これもXbox 360の重要なプラスαの要素になる。今年秋に開催されるWPC EXPOでもなんらかの成果をお見せできると思います。年末に向けた提案を予定していますから期待してください。

−−Xbox 360が成功したと判断するのはどんなレベルですか。

丸山 やはり1つの目標は、一定の出荷数量となります。2ホリデーシーズン(=来年の年末商戦)を終わった2007年はじめに、国内でマーケットリーダーといえる数量を出荷していれば、存在感を発揮できると考えています。現行のXboxでは、3年で45万台の出荷ですから、これを遥かに越えなくてはなりませんし、ハードルは高いものだといえます。

 しかし、我々の相手は、次世代機だけではない。むしろ発売直後の今年の年末商戦は、PS2やプレイステーションポータブル(PSP)、ニンテンドーDSにいかに勝つかという大きなハードルがある。PS2は、製品寿命の最後に入ってきていますが、そのタイミングこそが、機能を生かし切ったソフトが登場してくる。どのハードも、すばらしいソフトが目白押しです。この中で、いかに勝っていくか、ということが最初の課題です。

 ただ、Xbox 360も、次世代の機能を生かして、最高のソフトを用意しています。しかも、今後も継続的に、そうしたすばらしいソフトを投入できる。さらに、ゲームソフトだけではないプラスαの使い方も提供できる。みなさんの期待を裏切らないものを提供しますから、ぜひ楽しみにしてください。


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【6月2日】【海外】Xbox 360のキーパースンJ Allard氏に聞く(前編)
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【6月3日】【海外】Xbox 360のキーパースンJ Allard氏に聞く(後編)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0603/kaigai185.htm
【5月13日】Microsoft、新ゲームコンソール「Xbox 360」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0513/ms.htm

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(2005年8月29日)

[Text by 大河原克行]


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