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ギガバイト「i-RAM」ファーストインプレッション
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9月下旬 発売
日本ギガバイトが9月下旬に発売を予定しているRAMディスク「i-RAM」のサンプル版を試用する機会を得たので、早速そのパフォーマンスのほどを検証してみたい。
i-RAM |
i-RAMはSDRAMを使用するRAMディスク。PCIバスのインターフェイスを持っているが、PCIバスからは電源を供給するのみで、データ通信にはシリアルATAを利用する。システムからも一般的なHDDとして認識されるため、シリアルATAとPCIスロットさえあれば、ドライバのインストールすら行なわずに利用できる。
通常DRAMのデータは電源を切ると消失するが、i-RAMでは、PCの電源を切っても、スタンバイ電源を利用することで、データを保持している。また、コンセントを抜いたり、停電などで完全に電源の供給が絶たれても、カード上のバッテリにより最大16時間データを保持できるとしている。
この製品が初めて披露されたのは6月に台湾で行なわれたCOMPUTEXで、その後も国内でプレス向け説明会や、ユーザー向けイベントなどで公開されたため、ご存じの読者も多いだろう。
実際、ギガバイトによれば、日本市場ではユーザー/ベンダー両者から大きな注目を集めており、COMPUTEXでの発表直後に発注を入れてきたベンダーもあるほどという。ユーザーとして、最も気になるのはその価格だが、現時点でも正確な価格は未定で、1万円は超える見込みという。
用途としては、基本的にSDRAMの高速性を活用した高速HDDということになるだろう。シリアルATAの転送速度の理論上限値は1.5Gbps(150MB/sec)。HDDでここまでの速度を出せるものはないが、メモリの速度はこれを遙かに超えているため、この理論値に近い性能を期待できるだろう。
また、静音PC用にと考える向きもあるかもしれない。CPU、ビデオカード、電源ユニットなどはファンレスの製品もあるが、組み込み用途向けのDisk On Chipなどを除いて、HDDだけは駆動部をなくすことが不可能だが、本製品ならそれが可能になる。低回転のAV向けHDDなどは駆動時の騒音がかなり抑えられているが、完全な「無音」PCを目指すなら、選択肢はこの製品ということになってくるだろう。
なお、冒頭にも述べたとおり、今回試用したのはサンプル版であり、製品版では性能や外観が変更される可能性があることを留意していただきたい。
メインコントローラはXilinxの「xc3s1000」 | カード背面 |
●取り付けは簡単だが注意点も
メモリを4枚取り付けた状態。1枚でも動作する |
それでは、取り付け面からこの製品を紹介してみたい。カード上にあるスロット/コネクタは、DIMMスロット×4、シリアルATA×1のみで、DIMMスロットにメモリを挿し、シリアルATAポートをマザーボードと接続し、後はPCIスロットに挿すだけだ。
利用できるメモリは容量128MB/256MB/512MB/1GB/2GBのDDRで、最大8GBまで搭載できる。とはいえ、現時点では2GBのUnbufferedモジュールはほとんど入手できないため、現実的には4GBが上限となる。メモリの組み合わせについては、異なるメーカー/チップ/容量/スピードを混在できるとしているが、今回は時間の都合でその検証は割愛した。
さて、実際にマザーボードに取り付けてみて気づくのが、メモリを装着すると、カードの厚みがPCI 1スロット分を超えてしまう点だ。最近のマザーボードでは、PCI Expressスロットを装備し、PCIスロットの数は減少傾向にある。今回使用したマザーボードもPCIスロットは2本しかない。
i-RAMを一番下のスロットに挿せば、上のスロットには別のPCIカードを挿すこともできそうだが、この場合i-RAMの廃熱に問題が出る可能性がある。さらに問題なのは、i-RAM自体は複数枚挿しに対応するにも関わらず、物理的にそれが不可能になってしまうことだ。
i-RAMを2枚利用することによって、i-RAMでRAID 0のストライプセットを組めば、搭載可能メモリ容量は2倍となり、転送速度のさらなる向上も見込める。もっとも、ここまでくるとそれだけで予算が10万円を超えてくるため、実際に利用するユーザー数は少ないだろうが、できることなら本製品はPCIスロットが3本以上のマザーボードで利用したいところだ。
もう1点注意したいのが、カードの長さだ。本製品の長さはおよそ22cmと、マザーボードの全幅に近い長さがある。そのため、マザーボードによってはカード右端がなんらかのインターフェイス/コネクタ類と干渉する可能性がある。
このように、メモリを装着すると、隣接するPCIスロットは利用できなくなる | カード長が長いため、マザーボード上のコネクタ類との干渉も注意が必要 |
これらの注意点を除けば、取り付け/インストールは簡単で、PCの電源を入れれば、BIOS上からもHDDとして認識されているはずだ。
BIOSでの認識画面 | 容量も正しく認識されている |
●期待通りの高速ぶりを発揮
それでは、ベンチマークを測定してみよう。検証環境は、Pentium 4 2.80GHz(HT対応)、DDR2-533 512MB×2、Intel 915Pチップセット(Gigabyte GA-8I915P-D Pro)、Windows XP Professional(SP2)。i-RAM用のメモリはDDR-400 1GB×4(CL3)の構成で、比較対象用のHDDはSamsung「SpinPoint P80 SP1614C」(160GB)を利用した。いずれもOSはクリーンインストールしている。
ここで、ベンチマーク結果の前に、OSのインストールについて述べておくと、i-RAMでも通常のHDD同様にWindowsをインストールできた。インストールにかかった時間は、HDDが約42分に対し、i-RAMは約37分。途中、ユーザー名など、手動で入力を行なったため、正確な比較ではないが、i-RAMの高速性はOSインストールにも当然のごとく活きてくる。ただし、サンプル版のためか、1回目のインストールが途中で失敗するという事態も起きた。これをして即座に本製品の信頼性が低いという結論にはならないが、製品版で再度検証してみたい。
本題に戻り、ベンチマーク結果だが、ドライブの素のアクセス速度を計測するHDBENCHでは、読み込み133,507KB/sec、書き込み123,522KB/secと、文字通りHDDとは桁違いの結果が出た。実効性能としては、シリアルATAが出せる最速の数字と言っていいだろう。
シリアルATAインターフェイスがボトルネックになっているのは明白で、3Gbps(300MB/sec)のシリアルATA IIに対応していないのが惜しまれるところだ。対応マザーボードの数や、コストの問題から現状の仕様に決定したものと思われるが、上位版としてシリアルATA II対応モデルも検討してもらいたい。
i-RAM | HDD | |
---|---|---|
Read | 133,507 | 50,768 |
Write | 123,522 | 59,020 |
Random Read | 125,953 | 16,844 |
Random Write | 61,207 | 25,396 |
PCMark05のHDDテストについても、XP Startup 103.360MB/sec、Application Loading 87.184MB/sec、General Usage 76.336MB/sec、Virus Scan 109.787MB/sec、File Write 107.674MB/secと、こちらもすばらしい結果が出ている。
i-RAM | HDD | |
---|---|---|
XP Startup | 103.360 | 7.367 |
Application Loading | 87.184 | 6.029 |
General Usage | 76.336 | 4.963 |
Virus Scan | 109.787 | 74.616 |
File Write | 107.674 | 55.003 |
●起動速度はアプリケーションで差が
続いて、OSおよびいくつかのアプリケーションの起動速度を計測してみた。計測は手動で行なっており、3回の平均値を掲載している。
OSの起動時間(BIOSのPOST画面表示後から計測)は、HDDの36.67秒から29.94秒と2割程度高速化された。システムのブートにはPOSTや、各種イニシャライズなどHDD以外の要素も多分に含まれるため、期待したほどは速くないといった印象を受ける。ただし、Windowsの旗と青いバーが表示される画面では、HDDではバーが6回程度左から右へと移動したのに対し、i-RAMでは2.5回程度しかかからなかった。
休止状態からの復帰時間(BIOSのPOST画面表示後から計測)は、HDDが9.75秒で、i-RAMが9.32秒と体感できる差は出なかった。一方、休止状態にしてからシステムが停止するまでの時間は、それぞれ6.87秒、5.30秒と起動時よりも大きな差が出た。
ここで留意したいのが、休止状態を有効にするとメインメモリ分のHDD容量(=約1GB)が待避領域として占有されてしまう。OSをインストールした直後のi-RAMの空き容量は約1.4GBで、休止状態を有効後は400MB程度になってしまう。こうなるとHDDとして現実的な利用は無理となるので、i-RAMにWindowsをインストールして、かつ休止状態を有効にしたい場合は、2枚以上のi-RAMを使うなり、OSのコンポーネントを削るなどの工夫が必要となってくるだろう。
Photoshop CSの起動時間は、HDDが13.10秒で、i-RAMが8.00秒。かなりの高速化が確認できた。
DOOM3(デモ版)におけるステージ1の起動時間も計測してみた。結果は、HDDが48.48秒で、i-RAMが48.34秒とほとんど同じ結果となってしまった。これはDOOM3のローディングシーンにおいて、データの読み込みよりも、データから地形や各種オブジェクトなどを生成する演算にほとんどの時間がかかっているためと思われる。
i-RAM | HDD | |
---|---|---|
Windows XP起動 | 29.94 | 36.67 |
休止状態からの復帰 | 9.32 | 9.75 |
休止状態選択から電源OFF | 5.30 | 6.87 |
Photoshop CS | 8.00 | 13.10 |
DOOM3 | 48.34 | 48.48 |
●アプリケーションのインストールおよびデータ保存先として有効
これらの結果から言えるのは、一口にロードと言っても、演算処理を多く伴うケースでは、i-RAMの効果は発揮しにくいということだ。逆に、時間の都合で今回はテストできなかったが、サイズの大きな動画や静止画の処理など、単純なデータの読み書きが頻発するケースでは、HDDに対して体感できるほどの性能差を得ることができるだろう。
OSの起動の高速化も可能だが、容量の制限を考慮すると、アプリケーションのインストール、およびデータの保存先、作業領域としての使い方がもっとも効果的だろう。静音/無音PC用途というのはやや無理がありそうだ。
バッテリは着脱できるが仕様は不明 |
Linuxで簡易サーバーというのであれば、HDDレスシステムの運用も可能だろうが、新手の製品だけにHDDと同等の信頼性があるのかどうかは不明で、この点についてはユーザーがリスクを承知した上で、試しつつ動かしていく必要があるだろう。
バッテリについてだが、公称では16時間持続となっているが、約13.5時間放置の後電源を入れてみたところ、データは完全に消えていた。満充電に達していなかった可能性があり、製品版では16時間程度データを保持できると思われるが、いずれにせよ長時間の電源断は可能な限り避けた方が良いだろう。
なお、今回はサンプル版ということで、簡単なベンチマーク測定のみとしたが、製品版を入手できた際は、RAIDでの検証や、他のチップセットとの互換性なども検証する予定だ。
□日本ギガバイトのホームページ
http://www.gigabyte.co.jp/
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(2005年8月19日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]