しばらく二足歩行ロボット関連の話題が続いてきたが、今回は、筆者が最近購入したノートPC「HP Compaq Business Notebook nx9030/CT」(以下nx9030/CT)のレビューをお届けする。 nx9030/CTは、Web通販サイト「Amazon」で販売されている日本HP製のノートPCで、Pentium M 725や512MBメモリ、15型液晶を搭載しながら、10万円を切る価格を実現した、コストパフォーマンスの高い製品だ。 なお、本誌では、昨年11月にAmazonで89,800円で販売されていた日本HPの「nx5000」のレビューが掲載されている。今回購入したマシンは、この製品の後継機的な存在といえるだろう。 ●EDiCube S150Hの後継としてnx9030を選択
今回、筆者がnx9030/CTを購入した理由は、妻が使っていたエプソンダイレクトの「EDiCube S150H」の後継機が急遽必要になったからである。 EDiCube S150は、2003年5月に発売された初代CentrinoベースのノートPCであり、SXGA+液晶搭載ながら17万円を切るコストパフォーマンスの高い製品であった。2年以上の間、特に問題なく使えていたのだが、先日、妻が目を離している隙に、10カ月になる娘がマウスケーブルを引っ張って、サイドテーブルから下に本体を落としてしまったのだ。 幸いなことに娘に怪我はなかったのだが、そのときの衝撃で、EdiCube S150が壊れてしまった。サイドテーブルの高さは60cm程度だったが、フローリングの床に落下してしまうと、通常のノートPCなら壊れてしまう可能性が高いだろう。 もともと2年以上使ってきたので結構ガタもきており、来年あたり買い換えようと話をしていたのだが、やはりノートPCがないのは困るということで、あまり贅沢を言わずに、価格重視で選ぶことにした。 今までSXGA+液晶を使っていたため、SXGA+液晶がほしいというのが当初の妻の希望だったが、SXGA+液晶搭載ノートPCだと、最低でも15万円程度になってしまう。そこで、SXGA+液晶はあきらめ、99,980円という低価格で購入できるnx9030/CTを選ぶことにした。 nx9030/CTは、AmazonのノートPC部門で売れ行き1位を記録している製品で、以前から注目していた。ちなみに、nx9030/CTは10%還元セール中であり、後日Amazonのギフト券で7,500円分が還元されるので、実質的には92,480円相当で購入できるわけだ。 ●低価格ながらPentium M 725を搭載、メモリも512MB標準装備択
今回Amazonから購入したnx9030/CTは昨年8月に登場した製品であり、決して最新のマシンというわけではない。日本HPの直販サイトでは、すでに後継のマイナーチェンジモデル「nx9040/CT」が販売されており、nx9030/CTの取り扱いは終了している。 しかし、nx9040/CTは、Pentium M 725/15型液晶/256MBメモリ/40GB HDD/CD-ROMドライブ/無線LAN無しという構成でも、日本HPの直販サイト価格で109,000円となる。 それに対して、Amazonで販売されているnx9030/CTは、Pentium M 725/512MBメモリ/40GB HDD/コンボドライブ/IEEE 802.11b/g対応無線LANという構成で99,980円であり、なかなかお買い得だ。 Amazonでは、パーツ構成が異なる同名の下位モデル「nx9030/CT(Celeron M 360J/14.1型液晶/256MBメモリ/30GB HDD/CD-ROMドライブ/無線LAN無し)」が69,980円で販売されていたのだが、リビングルームで使うには無線LANが必須であることと、どうせ買うのだから、以前よりCPU性能が高いほうがいいということで(EdiCube S150Hは、BaniasコアのPentium M 1.40GHzを搭載)、上位モデルを選ぶことにした。 ●チップセットは旧世代だが、スペック的には十分
24時間以内に発送ということであったが、その言葉通り、注文の翌々日には到着した。「nx5000」のレビューでは、巨大な梱包で送られてきたとのことだが、nx9030/CTでは、外箱などはなく、ノートPCの通常サイズの箱で送られてきた。 中身は、本体とACアダプタ、マニュアルが数冊、リカバリー用CD-ROMといったところで、いたってシンプルだ。nx5000では、光学ドライブが別の箱に入っていたとのことだが、nx9030/CTでは最初から光学ドライブが本体に内蔵されており、自分で装着する必要はない。
今回Amazonで購入したnx9030/CTは、CPUとしてDothanコアのPentium M 725を搭載している。FSBは400MHzで、実クロックは1.60GHzである。DothanコアのPentium Mは、BaniasコアのPentium Mに比べてL2キャッシュが2倍の2MBに増やされているため、同じクロックでも、より高い性能が期待できる。 チップセットには、グラフィックス統合型チップセットのIntel 855GMを採用。Intel 855GMは、PC2100メモリまでしかサポートしておらず、改良版のIntel 855GME(PC2700をサポート)や、後継のIntel 915GM(PC2-4200のデュアルチャネルをサポート)に比べると、スペック的にはやや見劣りする。しかし、3Dゲームソフトなどを除く、一般的なビジネスアプリケーションを利用する上で、性能に不満を感じる場面は少ない。 標準で512MBのメモリを装備していることも嬉しい。低価格なノートPCでは、メモリを256MBしか実装していないのが普通であり、Windows XPを快適に利用するには、メモリの増設が必須となる。512MBあれば、Windows XPも快適に動作する。 ただし、256MB×2という構成で実装されているため、SO-DIMMスロットの空きはない。512MB以上にメモリを増設する際には、標準で装着されている256MB SO-DIMMを外して、代わりに512MB SO-DIMMを装着することになる。 HDD容量は40GBで、特に大容量というわけではないが、水準はクリアしているといえる。光学ドライブとしては、CD-R/RW/DVD-ROMコンボドライブが搭載されている。DVDメディアへの書き込みができないのは残念だが、価格を考えれば仕方ないところだろう。
液晶ディスプレイとしては、XGA表示対応の15型TFT液晶を搭載している。バックライトの輝度は11段階に変更可能だ。表面に光沢のあるいわゆるツルツル液晶ではないが、仕事などに使うのであれば、映り込みが少ない、ノングレアタイプのほうが目も疲れにくい。 以前の14.1型SXGA+液晶に比べると、かなりドットピッチは大きい。もちろん、文字が大きく表示されるので、これはこれで見やすいわけだが、一度に画面に表示できる情報量はかなり少なくなってしまう。 nx9030/CTは、A4フルサイズノートPCなので、キーボードはゆったりしている。キーピッチは19.05mm、キーストロークは2.5mmと十分である。nx5000では、一番下の段のCTRLキーやWindowsキーの横幅がかなり狭くなっていて、窮屈な印象であったが、nx9030/CTでは、CTRLキーなどの横幅も通常のキーと同じサイズになっている。 ただし、以前使っていたEDiCube S150Hでは、最上段の右端がDELキーになっていたのだが、nx9030/CTでは、DELキーの右側にも、2つキーが用意されているため、妻は慣れるまでやや違和感があったようだ。また、キーボードの上部には、5つのワンタッチボタンが用意されており、アプリケーションをワンタッチで起動することが可能だ。 ポインティングデバイスとしては、上下スクロール機能付きのタッチパッドが採用されている。パッド上部にパッドの有効/無効を切り替えるボタンが用意されているのも面白い。パッドの上部には青色LEDが仕込まれており、パッド有効時には点灯する。
インターフェイス周りについても不満はない。ポート類としては、USB 2.0×2、IEEE 1394(4ピン)、外部ディスプレイ出力、Sビデオ出力などを装備しているほか、Ethernetと56kbpsモデムを搭載する。 カードスロットとしては、PCカードスロット(Type2×1)を装備する。PCカードスロットのフタもダミーカード方式ではなく、開閉式のカバーを備えているため、紛失する心配はない。ただし、SDメモリーカードなどを直接挿入できるスロットがないのは残念だ。 また、左側面に、音量調整ボタンとミュートボタンが用意されているのも便利だ。ミュートボタンには、中にLEDが仕込まれており、ミュート時にはオレンジ色に点灯する。 nx9030/CTは、IEEE 802.11b/g対応無線LAN機能を内蔵しているが、無線LANの有効/無効を切り替えるための無線LANスイッチと、動作状況を示す無線LANインジケータが用意されていることも評価できる。
バッテリは、11.1V、4,400mAhの6セル仕様で、公称約3.6時間(BatteryMarkによる計測)/約4.5時間(JEITA測定法1.0による計測)の駆動が可能だ。バッテリには、容量インジケータが用意されており、バッテリ単体でもどれくらい容量が残っているかがわかる。 nx9030/CTは、重量も約3.2kgあり、基本的にはデスクトップPC代わりに使われる製品である。バッテリ駆動時間はそれほど重要ではないが、これだけ持てば十分であろう。 ACアダプタのサイズは比較的小さい。また、ACケーブルとACプラグが付属しており、使い分けが可能なことも特徴だ。壁などのACコンセントに直接ACアダプタを差し込みたい場合は、ACプラグを利用すればよい。 プリインストールソフトは、ウイルス対策ソフトの「Norton Antivirus(60日試用版)」やCDライティングソフトの「RecordNow!」、DVD再生ソフトの「WinDVD」など、最低限のもののみだが、使わないソフトがたくさん付属していても邪魔になるだけなので、かえって好感が持てる。 ただし、出荷時の状態にリカバリーしようとすると、オペレーティングシステムCD(1枚)とDriver Recovery CD(全5枚)の合計6枚のCD-ROMを入れ替えなくてはならないのが面倒だ。しかも、アプリケーションが含まれているDriver Recovery CDは、1枚1枚にインストーラが入っており、それぞれ起動してやらないといけない。リカバリー作業はそう頻繁に行なうわけではないが、できればHDDリカバリやDVD-ROM 1枚でリカバリできるようにしてほしかったところだ。
参考のために、いくつかベンチマークテストを行なってみた。ベンチマークプログラムとしては、BAPCoのMobileMark 2002、SYSmark 2002、Futuremarkの3DMark2001 SEおよび3DMark03、id softwareのQuake III Arenaを利用した。 MobileMark 2002は、バッテリ駆動時のパフォーマンスとバッテリ駆動時間を計測するベンチマークであり、SYSmark 2002は、PCのトータルパフォーマンスを計測するベンチマークである。また、3DMark2001 SEや3DMark03、Quake III Arenaは、3D描画性能を計測するベンチマークだ。MobileMark 2002については、電源プロパティの設定を「ポータブル/ラップトップ」にし、それ以外のベンチマークについては、電源プロパティの設定を「常にオン」で計測した。 結果は下の表にまとめたとおりである。比較対照用に「EDiCube S150H」や「Let'snote T4」、「dynabook Qosmio E10/1KLDEW」、「LaVie RX LR700/CD」、「VAIO type S VGN-S70B」の結果も掲載してある。 MobileMark 2002のPerformance ratingのスコアは167であり、Let'snote T4やQosimio E10/1KLDEWとほぼ同程度である。以前使っていたEDiCube S150Hに比べると27ポイント向上しており、バッテリ駆動時のパフォーマンスは十分であろう。 また、バッテリ駆動時間を示すBattery life ratingのスコアは218分(3時間38分)である。EDiCube S150Hに比べると短くなっているが、前述したようにモバイル向け製品ではないので、特に問題にはならないだろう。 SYSmark 2002のInternet Content Creationのスコアは255と、かなり好成績である。Pentium M 740を搭載したLaVie RX LR700/CDにはさすがに負けるものの、EDiCube S150Hに比べるとはるかに高い(EDiCube S150Hはメモリ256MBで計測したスコアなので、そのあたりも不利となるが)。Office Productivityのスコアも同様に高い。マルチメディアアプリケーションやビジネスアプリケーションを使う際のパフォーマンスは十分である。 3Dベンチ系のスコアは、1世代前の統合型チップセットを採用しているため、かなり低い。3Dゲームソフトなどをプレイするには、本製品は向いていないだろう。 なお、nx9030/CTは冷却用にファンを装備しており、CPU温度が上昇すると自動的にファンが回転をはじめるが、騒音は比較的小さく、あまり気にならなかった。 【nx9030/CTのベンチマーク結果】
nx9030/CTは、スペック的には最新というわけではないが、それでも実用上は十分なパフォーマンスを持ったマシンだ。最大の魅力は、やはりその価格にある。512MBメモリと無線LAN機能を搭載しながら、10万円を切る価格を実現しており、コストパフォーマンスは非常に高いといえる。 筐体の作りもしっかりしており、無線LANスイッチやミュートボタンを装備するなど、使い勝手も優れている。この値段で、これだけのものが手にはいるのなら、買い得感は高い。ただし、マニュアルなどが簡素なため、全くの初心者というよりは、ある程度PCに慣れている人にお勧めしたい。 以前のEDiCube S150Hに比べて液晶の解像度は低くなったが、レスポンスはかなり高速になったため、妻も一応満足して使っているようだ。今度は娘に壊されないように、気を付けなくては。なお、床に落下して壊れたEDiCube S150Hだが、HDD自体は壊れておらず、HDDを取り外してUSB 2.0対応HDDケースに入れることで、必要なデータを救出できたのは幸いであった。 □製品情報
(2005年7月28日) [Reported by 石井英男]
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