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アイ・オーの外付けハイパーマルチ実力検証テスト
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DVR-UM16S |
この製品は、パナソニック四国エレクトロニクス株式会社(旧松下寿電子。以下、松下)の「SW-9585」ドライブを使用しており、DVD±R/RWとDVD-RAMに対応するうえ、DVD±Rの2層(以下DVD±R DL)にも対応する。現時点でもっとも対応範囲の広い製品だ。
バッファローによれば、同じドライブを使用している内蔵型製品はDVD±Rの16倍速書き込みが実現できたが、USBを経由する外付け型では実現できなかったという。
ご承知のように、DVDは外周部と内周部では書き込み速度が異なる。たとえば16倍速書き込みと言っても、正確にいえば「最大16倍速書き込み」であって、実際に16倍速で書き込みができる時間は限られている。12倍速書き込みが16倍速書き込みになっても書き込み時間自体がさほど短縮されない理由もここにある。
逆にいえば、ほんのちょっとでも16倍速で書き込んでいる領域があれば、16倍速を公称しても、なんら問題はない。したがって、メーカーが公称値に達しないからといって、発売を取りやめるのはかなり問題があったということを表わしている。
幸い、バッファローの告知ページには「NERO CD-DVD SPEED」で計測したグラフが掲載されている。それを見ると、12倍速を越え、16倍速書き込みができる領域に入ると急激に波形が乱れてしまっている。
ちなみに計測環境も公開されているが、マザーボードは「ASUS P5GD1」なので、チップセットはIntel 915P、I/Oを担当するチップはICH6Rだ。CPUはPentium4 2.8GHz、メモリ512MBと最上位クラスの環境ではない。実際のユーザーでは、まだSocket 478ベースのシステムが多いとは思うが、LGA775プラットフォームとしては妥当な環境と言っていいだろう。
ここで新しい疑問が出てくる。実は松下の「SW-9585」を使っている製品はバッファロー以外からも出ているのだ。より、正確に言えばバッファローに先行して発表し、「ハイパーマルチドライブ」という通称を付けたのも、株式会社アイ・オー・データ機器(以下、アイ・オー)なのだ。「DVR-UM16S」という型番の製品だ。
USB外付けの環境で16倍速書き込みができないのがドライブに原因があるとすれば、アイ・オーの製品にも同じ問題が発生するのではないだろうか。
さっそくアイ・オーに確認したところ、「弊社の製品は16倍速を実現しており、回収や発売中止の予定はない」という。
これは、ぜひ実際に確認してみたい。しかし、先週後半の段階では、「DVR-UM16S」は 店頭に並んでおらず、アイ・オーからテスト用の機材を借用した。
ついでに、アイ・オーが使用した計測用のPCも貸して貰えるというので、お言葉に甘えた。
テスト環境は以下の通り。計測ソフトは「Nero CD-DVD Speed Ver.3.8」を使用した。ドライブの到着が金曜日、計測用PCの到着が土曜日だったので、ややテスト環境に偏りがあることをお許しいただきたい。
簡単に紹介すると【1】はSocket 478のIntelチップ代表、【2】はLGA775のIntelチップ代表、という想定だ。ちなみにアイ・オーが送ってくれたテスト環境である【3】のみAthlon 64ベースでチップセットはNVIDIAだった。
【1】 | 【2】 | 【3】 | |
---|---|---|---|
CPU | Intel Celeron D 320 (2.4GHz) | Intel Pentium 4 540 (3.20GHz) | Athlon 64 3000+ (1.80GHz) |
チップセット | Intel 865G +ICH5 | Intel 915G Express +ICH6 | nForce4 SLI |
グラフィックス | NVIDIA GeForce FX 5200 (128MB) | ATI RADEON X600 PRO (256MB) | NVIDIA GeForce 6600 GT (128MB) |
メモリ | 512MB | 512MB | 512MB |
●DVD±R DL
最初に、転送速度の遅いDVD+R DLとDVD-R DLのテストを行なった。両方とも書き込み速度は4倍速なので、問題は生じないと思われたが、ドライブのテストを兼ねている。【1】で計測し、とくに異常がなかったため、他機種では省略している。
DVD+R DLのメディアはTDK製の2.4倍速対応品を使用した。計測の結果は、27分13秒。書き込み方式はCLVで、平均転送速度は3.95倍速。
DVD+R DLでは、互換性を高めるため、ブックタイプを「DVD-ROM」に変えて記録されている。
DVD+R DLテスト結果 |
DVD-R DLのメディアは三菱化学製の4倍速対応品。
計測の結果は27分48秒。書き込み方式はCLVで、平均転送速度は3.95倍速だった。
DVD-R DLテスト結果 |
●注目のDVD-R 16倍速テスト
では、いよいよ注目のDVD-Rのテストだ。
DVD-Rは16倍速ライトで、書き込み方式はZ-CLV。メディアはTDK製の16倍速対応品を使用した。
書き込み時間は【1】が6分32秒、【2】が6分15秒、【3】が5分53秒だった。
計測時間からもわかるように、【3】を除くと、12倍速から16倍速に切り替わるあたりで波形が乱れてしまい、書き込み速度は16倍速には達していない。
【1】DVD-R テスト結果 |
【2】DVD-R テスト結果 |
【3】DVD-R テスト結果 |
●DVD+R
DVD+Rも16倍速ライトで、書き込み速度も同じZ-CLV。メディアはTDKの16倍速対応品を使用した。
書き込み時間は【1】が6分24秒、【2】が6分36秒、【3】が5分58秒だった。
DVD-R同様に、【3】以外の環境では16倍速に達していない。
【1】DVD+R テスト結果 |
【2】DVD+R テスト結果 |
【3】DVD+R テスト結果 |
●16倍速書き込みは確認できた。だが……
たしかに、アイ・オーが言うように16倍速書き込みができることは確認できた。しかし、それはAthlon 64+NVIDIAという環境でのことであり、それ以外の環境ではバッファローが告知したように16倍速書き込みを実現することはできなかった。一応、両社の主張とも正しかったということになる。
だが、市場の大半を占めるIntelの新旧プラットフォームでは、16倍速書き込みができなかったということの、意味は重い。トラブルの原因は、AMDおよびNVIDIAの技術力が優れていて、Intelの技術力が劣っていることが原因なのかもしれない。しかし、周辺機器メーカーとして、どちらのユーザーが、より多くこの製品を手にするかという可能性を考えれば、Intelプラットフォームでの速度低下の可能性だけでも告知するべきではないだろうか。
テスト結果のとおり、16倍速に達しなかったからといって、書き込みに問題が出るとか、書き込み時間が2倍になるというわけではない。ただ、ユーザーとしては、今回のように3台でテストすることすら、かなり難しい問題であり、メーカーの言うスペックを信じて購入するしかないのだ。たとえ実用上は、アンチウイルスソフトなどのちょっとした環境の違いで起こりうるような差異であっても、ユーザーに不利になるようなトラブルの可能性がわかっているのであれば、きちんと告知すべきだ。
また、あえて言えば、両社にドライブを提供しているパナソニック四国エレクトロニクスは、今回の問題を把握していないのだろうか。AMD+NVIDIA環境できれいな波形がでていること、内蔵型では問題が発生していないことから、原因はUSBとATAを変換するチップが入ることによるインターフェイス信号の干渉であると推測される。他の16倍速製品で同様の症状が出ていないことを考えれば、ドライブのファームウェアでも改善を図ることができる可能性はあるのではないだろうか。
周辺機器業界は1年前に、ルータのスループット競争と、USB 2.0対応製品の旧製品との速度比較で、スペック競争の果てに公正取引委員会から警告を受けたことがある。しかし、最近ではUSBフラッシュメモリのベンチマークに都合の良いマイナーなテストプログラムを使うなど、その反省を忘れているような事例が見られることも事実だ。もう一度、あの警告の反省を思い出してほしい。そして、自社のユーザーに恥じることのない、正確な情報提供を心がけてほしいと思う。
□アイ・オー・データ機器のホームページ
http://www.iodata.jp/
□DVR-UM16Sの製品情報
http://www.iodata.jp/prod/storage/dvd/2005/dvr-um16s/index.htm
□関連記事
【4月20日】バッファロー、「ハイパーマルチ」ドライブの外付けモデルを発売中止
-DVD±R書き込みが16倍速に達しなかったため(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050420/buffalo.htm
【1月24日】アイ・オー、DVD±R 2層/RAM対応「ハイパーマルチ」(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050124/iodata1.htm
【2004年4月8日】公取委、MOドライブ製品に関しバッファローに警告
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0408/buffalo.htm
【4月5日】バッファローの超高速USBメモリの実力
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0405/buffalo.htm
(2005年4月25日)
[Reported by date@impress.co.jp]