2004年6月のIntel 925X/915シリーズ登場以降、ビデオカードのインターフェイスのトレンドは、AGPからPCI Expressへと移行しつつある。そんな中、2月28日にATI Technologiesが「RADEON X850 XT」、「RADEON X800 XL」のAGP版を発表した。ここでは、AGP版RADEONの最上位モデルである「RADEON X850 XT Platinum Edition」の検証を行なっていきたい。 ●コア/メモリともにPCI Express版と同一クロックで動作 IntelがPCI Express対応チップセットであるIntel 925X/915シリーズをリリースして以降、ユーザーの使用率はともかく、製品のトレンドはPCI Expressへ急速に移行した。実際、それ以降に登場したGPUの多くはPCI Expressにネイティブ対応し、AGP版についてはGPUはブリッジチップを使って対応している。 しかしながら、今回取り上げるRADEON X850 XT Platinum Edition(以下RADEON X850 XT PE)は、AGPにネイティブ対応する。ただし、同時に発表された「RADEON X800 XL」のAGP版については、同PCI Express版にブリッジチップを搭載してAGP対応としている。 RADEON X850シリーズは0.13μmプロセスで製造され、RADEON X800シリーズをベースとしている。RADEON X800シリーズには、もともとAGPネイティブ版がラインナップされており、RADEON X850シリーズのAGP版も歩留まりさえ向上していれば開発にあたって大きな動きは必要なかっただろう。 一方、RADEON X800 XLは0.11μmプロセスである。これまでにAGPインターフェイスを持った同社製品ではリリースされていないプロセスとなる。ATIが今後このプロセスでAGPネイティブの製品をリリースするかは不明だが、AGPへの対応は変換チップを使っていくことになることを示唆している。 さて、RADEON X850 XT PEの外観だが、ぱっと見はPCI Express版と大きな違いはない(写真1)。AGP直下のスロットも占有してしまう大型クーラーも健在で、ブラケットは2段使用する(写真2)。
ただ、細かい点を見ると、PCI Express版とは異なる点もある。1つは入出力インターフェイスで、PCI Express版がデュアルDVIの構成だったのに対し、AGP版はD-Sub15ピン+DVIの構成になっている(写真3)。また、ビデオカードへ直接電源供給が必要な点は変わらないが、PCI Express版は6ピンのコネクタが利用されるのに対し、AGP版は光学ドライブなどで使われるペリフェラル用の電源コネクタが使用される(写真4)。 コアとメモリの各動作クロックだが、3DMark05のSystemInfoを参照してみると、コア540MHz、メモリ587.3MHz(のDDR動作で1,174.6MHz)となっており、PCI Express版とまったく同じスペックで動作している。 ●GeForce 6800 Ultraを上回るパフォーマンス では、本製品のパフォーマンスをベンチマークで検証してみたい。テスト環境は表の通り。今回比較対象として用意したのは、同じAGP接続のハイエンドビデオカードである「GeForce 6800 Ultra」のAGP版リファレンスボートだ。 加えて、環境が異なるため参考程度とはなるが、同じRADEON X850 XT PEを搭載したPCI Express版のリファレンスボードも利用している。
それでは順に結果を紹介していきたい。まずは3DMark05である(グラフ1)。ここで見られる傾向は、何のフィルタも適用もしない状態ではRADEON X850 XT PEが高速だが、4xAAや8x異方性フィルタを適用するに従ってGeForce 6800 Ultraが良好なスコアを示すという点だ。ただ、この傾向は(ベンチマークソフトである)3DMark05だけのものであり、「こうした傾向も見られる」程度に見ておいた方が良い。
次に3DMark03の結果(グラフ2)だが、ここでは3DMark05で見られたようなフィルタによるパフォーマンスの傾向差が現れず、RADEON X850 XT PEが安定した強さを見せている。AquaMark3の結果(グラフ3)も3DMark03とほぼ同様の傾向だ。
DOOM3(グラフ4)では、ここまでの結果には見られない傾向を見せている。それは4xAAのみを適用した状態ではRADEON X850 XT PEが強いが、そのほかの条件ではGeForce 6800 Ultraが良好なスコアを示しているのだ。もっともDOOM3がGeForce 6シリーズに最適化されているのは周知のとおりで、RADEON X850 XT PEが上回る条件がある、という点の方を注視すべきだろう。 また、AGP版では4xAAのみを適用した場合ではスコア低下が小さいのに対し、PCI Express版ではAAのみを適用した場合でもスコアが大幅に下がるという結果にもなっている。おそらくはドライバのクセだと思われるが、同じアーキテクチャのチップを使っているものの、こうした傾向差が発生し得ることは覚えておくと良いだろう。
FINAL FANTASY Official Benchmark 3(グラフ5)は、GeForce 6800 Ultraが安定して良好なスコアを出している。とくに1,024×768ドットでAAや異方性フィルタを適用したときのスコアは差が開いている。
逆にUnreal Tournament 2003のFlyby(グラフ6)については、高解像かつAAやフィルタを適用した場合、GeForce 6800 Ultraが徐々にスコアを落としていく傾向が見られ、FINAL FANTASY Official Benchmark 3とは逆の結果を見せている。このあたり、得手不得手を見せる最近のビデオカードドライバらしい結果ともいえ、使用するゲームに応じたビデオカードの選択が必要であることを示している。
Unreal Tournament 2003のBotmatchの結果(グラフ7)は、ほぼ横並びとなった。明らかにCPU側がボトルネックになった結果であり、このクラスのCPUとビデオカードの組み合わせなら、かなり高い描画クオリティの設定を施してもプレイに支障がないといえる。
●ハイエンドのAGP製品として貴重な存在 結果を見ると、得手不得手は多少あるものの、対抗となるGeForce 6800 Ultraを上回るといって差し支えないレベルの製品だ。つまり、現行のAGP対応ビデオカードとしては最高の性能を持つことになる。 PCI ExpressはAGPより帯域幅で優位性があるが、今回の結果を見ると、AGPを使ったビデオカードでも帯域がボトルネックになっている様子は見えず、3D描画性能には伸びしろがあるようだ。現在AGP対応のチップセットを利用している人もまだ、新しいビデオカードへ変更することでパフォーマンスアップが図れると言える。 ATIでは今後もAGP版の製品を投入していくとしており、今回の製品は現在使っているAGP環境を延命させたいと考えている人とって、これ以上ない朗報となったのではないだろうか。 □関連記事【4月1日】ATI、AGP版「RADEON X850 XT/X800 XL」 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0301/ati.htm 【2004年12月22日】【多和田】ATIのPCI Express向けハイエンドGPU第2弾「RADEON X850 XT PE/X800 XL」 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1222/tawada40.htm (2005年4月4日) [Text by 多和田新也]
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