このMac mini、最大の魅力は価格とハードウェア構成、そして設置面積は音楽CDのケースを一回り大きくした程度、厚みは音楽CDのケース約6枚分+αの超小型サイズであることだ。CubeタイプのPCはずいぶん前から流行っているものの、このサイズは筆者の知る限りWindowsマシンとしては存在しない。簡単に最小構成モデルのスペックをおさらいすると、
- サイズは165×165×50mm(幅×奥行き×高さ)
- 1.25GHzのG4プロセッサ/メモリ256MB
- 40GB HDD、スロットローディング方式のDVD/CD-RWコンボドライブを搭載
- インターフェイスはUSB 2.0×2、FireWire、Ethernet、56Kモデムなど
- グラフィックはATI RADEON 9200(32MB DDR SDRAM、AGP 4X対応)/DVI出力(VGA変換コネクタ付き)
- キーボードとマウスは付属しない。USBタイプを流用
- 以上で58,590円
といった感じだ。1つ上のモデルだと、CPUが1.42GHz、HDDが80GBで70,140円となるので最小構成モデルの方が割安感はあるだろう。キーボードとマウスを含まない割り切り方も潔い。その辺にあるWindows用のものを使って欲しいというスタンスだ。
●早速使ってみた
今回筆者の手元に届いたMac miniは、この分解記事で使われたものだ。てっきり初期段階のセットアップは終わっていると思っていたが……起動してビックリ。何も設定されていない状態でウィザードが動き出した。分解はしたものの、新品同様だったわけだ。また、手元にあるG4 Cubeは1つ古いMac OS X 10.2が入っているので、Mac OS X 10.3を使うのは今回が初めて。パフォーマンスも含め、OSやソフトは使い勝手がかなり良くなっている。以下、画面キャプチャを中心にMac miniを紹介したい。
起動直後いきなりUpdate箱から本体を出して設置、電源を入れ、初期起動のウィザードが終わり、やっとMac OS Xが起動したと思ったら……既にこれだけのアップデータが出ている |
iTunes 4.7「iTunes」は主にネットラジオ再生専用に、毎日使っている。BGMとして聞くにはメディアの入れ替えも無く楽である。128kbps MP3のストリームは局によってけっこういい音がする |
iPod shuffleとの連動編集部から本体と同時に「iPod shuffle」も送ってもらった。驚くほど小型軽量。音質もこれで聞くのなら問題無い。気楽に持ち出せ非常にいい感じだ |
iPhoto 5「iPhoto 5」から簡単な画像補正機能がついた。試しに何枚か自動補正してみたが、オートの割にはうまくできている。その変化はPhotoshopの自動レベル補正的か? |
iDVD 5DVDのオーサリングソフト。筆者は全く使わないので、その詳細は同社のHPなどを見て欲しい。映像に限らず、他のiシリーズと連動して写真や音なども対応している |
iMovie HD動画の編集ソフトである。昔VX-1000が出た頃はやっていたが、最近では全く触らなくなってしまったジャンルだ。これも申しわけないが同社のHPなどを参考にして欲しい |
iWork/Pages「iWork」は別パッケージとして8,190円で売られている。「Pages」はページレイアウトソフトだ。意外にもWordのファイルを結構な精度で読み込む |
iWork/Keynote 2「Keynote 2」はプレゼンテーションソフト。Pagesと同じく、PowerPointのデータをかなり高いレベルで読み込む。iWorkでExcelに相当するものは今のところ無い |
NeoOffice/JOpenOfficeのMac OS X版、「NeoOffice/J」。現在β版であるがそれなりに動く。iWorkに無い表計算が必要であればこれを使えばいいだろう |
iTunes、iPhoto、iDVD、iMovie HDをまとめた「iLife」と呼ばれるソフト群は、Mac miniにもれなく付属する。もちろんWebブラウザやメーラー、DVD Playerも標準搭載。MS Worksに似たApple Works 6も入っている。「とりあえずこれだけあれば、家ですぐ使えるでしょう!」セットだ。この辺のマーケティングはなかなかうまい。もちろんWindowsマシンでもプリインストールのアプリケーション群で同じことができるが、多くの場合、メーカーはバラバラ。インターフェイスの統一感はiLife/iWorkの方が何枚も上手である。この点は1社で全てを作りこんでいるアップルの強みであろう。
●Mac OS Xのネットワーク環境
筆者の周りで「Mac miniが欲しい」と言っている人達は、かなりの割合で、部屋でサーバー用途としても使うといった話題が出る。確かに静かでコンパクト、しかもUNIXがプリインストールされているマシンと考えれば最安値。あまっているパワーを裏でサーバー用途に使うのもありだ。今回は紹介しないが、X11 for Mac OS Xを使えばAquaと同居しながらX Windowアプリケーションも動く。興味のある人は別途調べて欲しい。
SMBを使ってWindowsへ簡単接続LinuxでもおなじみのSMBを使ったWindowsネットワークへの接続。ネットワークを開くとワークグループ名が出るのでID/パスワードを入力すれば簡単にマウントできる |
Remote Desktop ConnectionMac OS Xをクライアントにして、Windowsマシンへリモートアクセスできる。供給元はMicrosoft。サーバー側はRemote Desktopに対応しているWindowsであればOKだ |
OSXvncこれは逆にWindowsからMac OS Xへリモートアクセスする。vncサーバーをMac側で動かし、Windowsから接続すれば簡単にMac OS Xを操作できる |
Apache/Perl/PHPは標準搭載Mac OS XのベースはBSDなのでApache、Perl、PHPなどは標準搭載だ。Windowsでこれだけの環境を作り込むとなると結構敷居が高い |
MovableTypeもすぐ動くBlogの引越しで紹介した、Blogエンジンで有名なMovable TypeもApacheのCONFファイルを少し触ればすぐ動く。パフォーマンス的にもワンユーザーであればまったく問題無い |
1発起動のCMS、Plone前々回紹介できなかった1発起動のCMS、Plone。パッケージを展開してインストーラを動かすだけ。Zope込みの上位レイヤ的な存在なので、COREBlogもそのまま動く |
画面キャプチャはOSXvncを使ってWindowsからMac miniへアクセスし取り込んだ。描画速度の関係で、アプリケーションをサクサク使うのはちょっとつらいものの、iTunesの操作や、サーバー系の設定程度であれば問題無く操作できる。Windows環境が多い部屋の中にMac miniを1台置くなら、なかなか便利な手法である。
Mac OS XとWindows、これら全く性格の違う画面を見ると、Mac OS Xの面白さが良くわかる。Mac OS Xは表から見るとユーザーフレンドリーな一般向けのデスクトップOS。しかしベースはUNIXで動くサーバーそのものと言えよう。そのOSをどう料理するかはユーザー次第と言うことだ。デジタルHUBとして家庭に入り込むには、二面性をうまくまとめたシステムが必要だと思われる。この辺のバランスはWindowsよりMac OS Xに軍配があがる。
また、Windowsから離れてしばらくMac OS Xを使った後、Windowsへ戻ると、とにかく目が疲れる。メニューなど常に出ている文字の多さがその疲れの原因のようだ。また、Windowsと違って、小さいポイントの日本語も含め、全てのフォントがスムージングされているのも楽な理由の1つだろう。技術的には、ビットマップの無いフォントへ入れ替えるだけで可能なので、この点はWindowsでもぜひ用意してほしいものだ。
さて、タイトルに“PC”と書いたのには意味がある。Macだけでなく、こんなPC「も」欲しいのだ。
メーカーの人と軽く話をしたところ、技術的な問題としては熱、そして現実問題として価格が厳しいそうだ。熱に関してはCPUを選べば何とかなるものの、現状ではパフォーマンスが悪くなる。価格に関してはWindowsのライセンス料を加味してこの値段になるようにハードウェアを設計するのは無理があるとのこと。あのPC一筋だった元麻布さんまでMac miniを買うとは、それだけ魅力的な証拠であろう。
筆者も含め、最近PCに興味を失いかけている連中がこぞって欲しがるマシンがMacとは、PCベンダーはいろいろな面で考え直す必要があるのではないだろうか。アップルはMac miniだけでどれだけシェアを押し上げるのか? 非常に興味のあるところだ。
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