西川和久の不定期コラム

こんなPC欲しかった!! 「Mac mini」登場


Mac mini

 筆者は「G4 Cube」を使っているものの、あまりMac関連のニュースは追いかけていなかった。たまたま1月12日に、「Mac mini」の発表記事を見てビックリ! 昔から「iMacをディスプレイ無しにして弁当箱のようなの出ないかな?」と言っていただけに、Mac miniはまさに欲しかった形である。

 その日に編集部へ連絡し、レビューを書くことになった。ハードウェア的な話は既に掲載されているので、ソフトウェア的な話に的を絞って書きたいと思う。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●このサイズ、このスペックで驚きの58,590円!

 このMac mini、最大の魅力は価格とハードウェア構成、そして設置面積は音楽CDのケースを一回り大きくした程度、厚みは音楽CDのケース約6枚分+αの超小型サイズであることだ。CubeタイプのPCはずいぶん前から流行っているものの、このサイズは筆者の知る限りWindowsマシンとしては存在しない。簡単に最小構成モデルのスペックをおさらいすると、
  1. サイズは165×165×50mm(幅×奥行き×高さ)
  2. 1.25GHzのG4プロセッサ/メモリ256MB
  3. 40GB HDD、スロットローディング方式のDVD/CD-RWコンボドライブを搭載
  4. インターフェイスはUSB 2.0×2、FireWire、Ethernet、56Kモデムなど
  5. グラフィックはATI RADEON 9200(32MB DDR SDRAM、AGP 4X対応)/DVI出力(VGA変換コネクタ付き)
  6. キーボードとマウスは付属しない。USBタイプを流用
  7. 以上で58,590円

 といった感じだ。1つ上のモデルだと、CPUが1.42GHz、HDDが80GBで70,140円となるので最小構成モデルの方が割安感はあるだろう。キーボードとマウスを含まない割り切り方も潔い。その辺にあるWindows用のものを使って欲しいというスタンスだ。

●早速使ってみた

 今回筆者の手元に届いたMac miniは、この分解記事で使われたものだ。てっきり初期段階のセットアップは終わっていると思っていたが……起動してビックリ。何も設定されていない状態でウィザードが動き出した。分解はしたものの、新品同様だったわけだ。また、手元にあるG4 Cubeは1つ古いMac OS X 10.2が入っているので、Mac OS X 10.3を使うのは今回が初めて。パフォーマンスも含め、OSやソフトは使い勝手がかなり良くなっている。以下、画面キャプチャを中心にMac miniを紹介したい。
 
起動直後いきなりUpdate
起動直後いきなりUpdate
箱から本体を出して設置、電源を入れ、初期起動のウィザードが終わり、やっとMac OS Xが起動したと思ったら……既にこれだけのアップデータが出ている
iTunes 4.7
iTunes 4.7
「iTunes」は主にネットラジオ再生専用に、毎日使っている。BGMとして聞くにはメディアの入れ替えも無く楽である。128kbps MP3のストリームは局によってけっこういい音がする
iPodとの連動
iPod shuffleとの連動
編集部から本体と同時に「iPod shuffle」も送ってもらった。驚くほど小型軽量。音質もこれで聞くのなら問題無い。気楽に持ち出せ非常にいい感じだ
iPhoto 5
iPhoto 5
「iPhoto 5」から簡単な画像補正機能がついた。試しに何枚か自動補正してみたが、オートの割にはうまくできている。その変化はPhotoshopの自動レベル補正的か?
iDVD 5
iDVD 5
DVDのオーサリングソフト。筆者は全く使わないので、その詳細は同社のHPなどを見て欲しい。映像に限らず、他のiシリーズと連動して写真や音なども対応している
iMovie HD
iMovie HD
動画の編集ソフトである。昔VX-1000が出た頃はやっていたが、最近では全く触らなくなってしまったジャンルだ。これも申しわけないが同社のHPなどを参考にして欲しい
iWork/Pages
iWork/Pages
「iWork」は別パッケージとして8,190円で売られている。「Pages」はページレイアウトソフトだ。意外にもWordのファイルを結構な精度で読み込む
iWork/Keynote 2
iWork/Keynote 2
「Keynote 2」はプレゼンテーションソフト。Pagesと同じく、PowerPointのデータをかなり高いレベルで読み込む。iWorkでExcelに相当するものは今のところ無い
NeoOffice/J
NeoOffice/J
OpenOfficeのMac OS X版、「NeoOffice/J」。現在β版であるがそれなりに動く。iWorkに無い表計算が必要であればこれを使えばいいだろう

 iTunes、iPhoto、iDVD、iMovie HDをまとめた「iLife」と呼ばれるソフト群は、Mac miniにもれなく付属する。もちろんWebブラウザやメーラー、DVD Playerも標準搭載。MS Worksに似たApple Works 6も入っている。「とりあえずこれだけあれば、家ですぐ使えるでしょう!」セットだ。この辺のマーケティングはなかなかうまい。もちろんWindowsマシンでもプリインストールのアプリケーション群で同じことができるが、多くの場合、メーカーはバラバラ。インターフェイスの統一感はiLife/iWorkの方が何枚も上手である。この点は1社で全てを作りこんでいるアップルの強みであろう。
 

●Mac OS Xのネットワーク環境

 筆者の周りで「Mac miniが欲しい」と言っている人達は、かなりの割合で、部屋でサーバー用途としても使うといった話題が出る。確かに静かでコンパクト、しかもUNIXがプリインストールされているマシンと考えれば最安値。あまっているパワーを裏でサーバー用途に使うのもありだ。今回は紹介しないが、X11 for Mac OS Xを使えばAquaと同居しながらX Windowアプリケーションも動く。興味のある人は別途調べて欲しい。
SMBを使ってWindowsへ簡単接続
SMBを使ってWindowsへ簡単接続
LinuxでもおなじみのSMBを使ったWindowsネットワークへの接続。ネットワークを開くとワークグループ名が出るのでID/パスワードを入力すれば簡単にマウントできる
Remote Desktop Connection
Remote Desktop Connection
Mac OS Xをクライアントにして、Windowsマシンへリモートアクセスできる。供給元はMicrosoft。サーバー側はRemote Desktopに対応しているWindowsであればOKだ
OSXvnc
OSXvnc
これは逆にWindowsからMac OS Xへリモートアクセスする。vncサーバーをMac側で動かし、Windowsから接続すれば簡単にMac OS Xを操作できる
Apache/Perl/PHPは標準搭載
Apache/Perl/PHPは標準搭載
Mac OS XのベースはBSDなのでApache、Perl、PHPなどは標準搭載だ。Windowsでこれだけの環境を作り込むとなると結構敷居が高い
MovableTypeも直ぐ動く
MovableTypeもすぐ動く
Blogの引越しで紹介した、Blogエンジンで有名なMovable TypeもApacheのCONFファイルを少し触ればすぐ動く。パフォーマンス的にもワンユーザーであればまったく問題無い
一発起動のCMS、Plone
1発起動のCMS、Plone
前々回紹介できなかった1発起動のCMS、Plone。パッケージを展開してインストーラを動かすだけ。Zope込みの上位レイヤ的な存在なので、COREBlogもそのまま動く

 画面キャプチャはOSXvncを使ってWindowsからMac miniへアクセスし取り込んだ。描画速度の関係で、アプリケーションをサクサク使うのはちょっとつらいものの、iTunesの操作や、サーバー系の設定程度であれば問題無く操作できる。Windows環境が多い部屋の中にMac miniを1台置くなら、なかなか便利な手法である。

 Mac OS XとWindows、これら全く性格の違う画面を見ると、Mac OS Xの面白さが良くわかる。Mac OS Xは表から見るとユーザーフレンドリーな一般向けのデスクトップOS。しかしベースはUNIXで動くサーバーそのものと言えよう。そのOSをどう料理するかはユーザー次第と言うことだ。デジタルHUBとして家庭に入り込むには、二面性をうまくまとめたシステムが必要だと思われる。この辺のバランスはWindowsよりMac OS Xに軍配があがる。

 また、Windowsから離れてしばらくMac OS Xを使った後、Windowsへ戻ると、とにかく目が疲れる。メニューなど常に出ている文字の多さがその疲れの原因のようだ。また、Windowsと違って、小さいポイントの日本語も含め、全てのフォントがスムージングされているのも楽な理由の1つだろう。技術的には、ビットマップの無いフォントへ入れ替えるだけで可能なので、この点はWindowsでもぜひ用意してほしいものだ。

 さて、タイトルに“PC”と書いたのには意味がある。Macだけでなく、こんなPC「も」欲しいのだ。

 メーカーの人と軽く話をしたところ、技術的な問題としては熱、そして現実問題として価格が厳しいそうだ。熱に関してはCPUを選べば何とかなるものの、現状ではパフォーマンスが悪くなる。価格に関してはWindowsのライセンス料を加味してこの値段になるようにハードウェアを設計するのは無理があるとのこと。あのPC一筋だった元麻布さんまでMac miniを買うとは、それだけ魅力的な証拠であろう。

 筆者も含め、最近PCに興味を失いかけている連中がこぞって欲しがるマシンがMacとは、PCベンダーはいろいろな面で考え直す必要があるのではないだろうか。アップルはMac miniだけでどれだけシェアを押し上げるのか? 非常に興味のあるところだ。


●総論

これはちょっと使いづらい

これはちょっと使いづらい

 以上、Mac miniで実際何をするか、を考えながら画面を中心にご紹介した。基本的には筆者としては珍しくベタボメである。G4 Cube以来の絶対欲しいマシンだ!

 唯一気になる点があるとすれば、USBポートが2つとも本体の裏にあること。もちろんUSB HUBなどを使えばどうにでもなるが、そのままではiPodを挿すにしてもデジカメのデータを転送するにしても、裏に手を回してゴソゴソしなければならない。やはりUSBポートはフロントに1つ欲しかった。加えてS/PDIF OUTもあればベストか? 今後、もし新型のMac miniが出るのであればぜひ改善して欲しい部分である。

□アップルのホームページ
http://www.apple.co.jp/
□Mac miniの製品情報
http://www.apple.com/jp/macmini/
□関連記事
【1月31日】【元麻布】Bluetooth付き「Mac mini」を寝室用PCに
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0131/hot354.htm
【1月29日】Mac mini速報レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0129/apple2.htm
【1月12日】アップル、5万円台からの低価格Mac「Mac mini」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0112/apple1.htm

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(2005年2月23日)

[Text by 西川和久]


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