多和田新也のニューアイテム診断室

低価格PC路線に対するNVIDIAの切り札
「GeForce 6200 with TurboCache」




 NVIDIAが2004年12月15日に発表した「GeForce 6200 with TurboCache」。従来からバリュー向けにラインナップされていたGeForce 6200にTurboCacheと呼ばれるフレームバッファの共有技術を搭載させたものだ。GeForce 6200より、さらに安価なビデオカードを実現できる本技術の実力を見ていきたい。

●ローカルメモリとメインメモリの両方をフレームバッファとして使用

 GeForce 6200 with TurboCache(以下GeForce 6200 TC)については、すでに発表会レポートも掲載されているので、詳しくはそちらを参照いただくとして、ここでは製品の特徴をかいつまんで紹介しておきたい。

 GeForce 6200 TCは、従来のGeForce 6200にTurboCache Managerと呼ばれるフレームバッファ共有技術を盛り込んだビデオチップだ。NVIDIAがラインナップしているビデオメモリの容量は16/32/64MBと非常に少ないのが特徴となる。

 ローカルのビデオメモリは少ないものの、処理中にローカルメモリの容量が不足した場合にはTurboCache Managerにより、メインメモリの一部をフレームバッファとして使用する。これにより、実質128MBまたは256MBのフレームバッファを持たせることができる仕組みが最大の特徴となる。

 ローカルメモリとメインメモリの両方をフレームバッファとして利用する技術は、すでにATIのRADEON XPRESS 200内蔵のグラフィックコアが搭載しているが、この機能を、PCI Express x16対応の環境であればプラットフォームに依存せず利用できるのが、GeForce 6200 TCの魅力といえる。

 もちろん、ローカルのビデオメモリを小容量にできるということは、その分ビデオカード自体のコストダウンにつながることになる。実際、僚誌AKIBA PC Hotline!で紹介されているとおり、16MBや32MBのローカルメモリを搭載する製品が8,000円程度と、バリュー向けビデオカードのなかでも、さらに安価に販売されている。

 また、SLIを除けば上位のGeForce 6600等と同じ機能を有するのも特徴だ。とくに有用と思われるのが、GeForce 6200 TCと同じタイミングで正式発表されたPureVideoにも対応する点だろう。対応するForceWareとNVIDIA DVD Decoder、対応アプリケーションを組み合わせて使用すれば、GeForce 6シリーズのウリとなる動画再生のハードウェア支援や高画質化機能を利用できることになる。

 今回は、NVIDIAより借用したGeForce 6200 TCの16MB搭載モデルのリファレンスカードを使って検証を行なう(写真1、2)。カード自体は極めてシンプルで、裏面も含めてボード上に配置されたコンポーネントは少ない。リファレンスボードと、AlbatronのGeForce 6200(128MB)搭載製品「PC6200」を比較すると、若干小さめのサイズになっている(写真3)。実装パーツの観点でいえば、ロープロファイル化も容易ではないかと思われる。

 メモリは、表面にSamsungのDDR SDRAM「K4D263238G-GC2A」を1つ搭載するのみ(写真4)。ブラケット部はSビデオ、DVI、D-Sub15ピンが並ぶ一般的なレイアウトになっている(写真5)。

【写真1】GeForce 6200 with TurboCacheの16MB搭載版リファレンスボード。ファンレスとなっている 【写真2】裏面には目立ったパーツは実装されていない 【写真3】GeForce 6200搭載カードとの比較。搭載メモリがないぶんスッキリして見える。実際にボードの奥行きも若干短い
【写真4】搭載されるメモリはSamsungのK4D263238G-GC2A。16MBのDDR SDRAMで、最高700MHz(350MHz DDR)が可能なチップ 【写真5】ブラケット部はSビデオ、DVI、D-Sub15ピンの標準的なコネクタが並ぶ

●GeForce 6200との比較テスト、プラットフォームによる傾向差は?

 ここではGeForce 6200を比較対象にしたベンチマークテストを実施していきたい。使用カードやドライバは表1のとおり。GeForce 6200 TCのリファレンスカードには、ForceWare 71.20が付属しておりテストにも使用している(画面1)。ただし、このドライバはノーマル版のGeForce 6200には対応しておらず、そちらはテスト時点で正式に公開されているものとしては最新となるForceWare 66.93を使用している。

【表1】使用ビデオカード
ビデオチップ GeForce 6200 TC GeForce 6200
使用製品 NVIDIAリファレンスボード Albatron PC6200
ビデオメモリ 16MB(128MB) 128MB
Driver ForceWare 71.20 ForceWare 66.93


 なお、Coolbitを操作して動作クロックを確認してみたところ、GeForce 6200 TCは、2D/3D時ともコア300MHz、メモリ700MHz(画面2)。AlbatronのPC6200はコア300MHz、メモリ400MHzで動作することを確認している。

【画面1】GeForce 6200 TCのリファレンスカードに付属してきた、ForceWare 71.20のプロパティ画面。バージョン6x台とは微妙に画面構成が異なる 【画面2】Coolbitを立ててGeForce 6200 TCの動作クロックを確認したところ、2D/3Dともにコア350MHz、メモリ700MHzとなっている

 また、現行のプラットフォームで、メモリ周りのアーキテクチャに違いがあるのは周知の通りである。Pentium 4などではチップセットとメモリが接続されるので、メインメモリを参照する場合のルートはGeForce 6200 TC-ノースブリッジ-メモリとなる。対するAthlon 64などではCPUとメモリが接続されるわけで、GeForce 6200 TC-ノースブリッジ-CPU-メモリというルートでメインメモリが参照される形となる。このあたりの形態の違いがGeForce 6200 TCで影響するのかについてもテストするため、表2の通り、2つのプラットフォームを用意してテストを行なっている。

【表2】テスト環境
CPU Pentium 4 550 Athlon 64 3500+
マザーボード Intel D925XCV(Intel 925X) NVIDIA nForce4 Ultraリファレンスマザー
メモリ PC4300 DDR2 SDRAM 1GB(512MB×2) PC3200 DDR SDRAM 1GB(512MB×2)
HDD Seagate Barracuda 7200.7(ST3120026AS)
OS Windows XP Professional(ServicePack 2,DirectX 9.0c)


 それでは実際のテストを行なっていきたい。まず最初に、メインメモリをフレームバッファとして使用することに対する、システム全体への影響を見てみたい。グラフィック統合型チップセットでは、メインメモリの一部をフレームバッファとして使用することから、外部ビデオカードを接続した場合に比べパフォーマンスが落ちる傾向にある。GeForce 6200 TCでも似たようなことが発生しないかとチェックするためだ。

 提示するのは、「Sandra 2005」の「Cache&Memory Benchmark」から実メモリを使用したときのアクセス速度を見ることができる、256MBのブロックサイズを転送したときの結果(グラフ1)と、「SYSmark2004」(グラフ2)だ。

【グラフ1】Sandra 2005 Cache&Memory Benchmark 【グラフ2】SYSmark2004

 ご覧のとおり、Sandraのテストではほぼ同一の結果となった。このテスト、Athlon 64 3500+環境の結果が極めて低いのだが、おそらくnForce4 UltraリファレンスマザーのBIOSとWinchesterコアのAthlon 64 3500+の組み合わせの問題と考えられる。ただ、今回はあくまでGeForce 6200 TCとGeForce 6200を比較するのが主題であり、Pentium 4環境とAthlon 64環境の絶対差を見る目的ではないため、このままテストを行なっている。

 もう1つのSYSmark2004では、GeForce 6200環境に比べると若干低いスコアが出る傾向にあるが、GeForce 6200 TCのほうが良い結果もあるほど。誤差とも考えられる程度の差である。統合型チップセットを使うとこれらのテストで明確な差が出るが、GeForce 6200 TCでは見られない。

 今回のGeForce 6200 TCでいえば、16MBのローカルメモリを実装している。TurboCache Managerでは、“ローカルメモリでは不足した場合に”メインメモリをフレームバッファとして利用するわけで、単純なメモリ転送テストはもちろん、2Dでの処理がメインとなり、3Dテストでも大きなフレームバッファを必要としないSYSmark2004といったテストでは、実装されたローカルメモリで十分だったのだろう。

 つまり、必要なときにだけメインメモリを使うGeForce 6200 TCのようなアーキテクチャなら、事実上、3D描画時以外のときは外部ビデオカードを接続しているのと何ら変わらないパフォーマンスが得られるということである。

 以前、本連載でRADEON XPRESS 200のテストを実施した。このときの結果ではRADEON XPRESS 200も統合型チップセットの例に漏れず、外部ビデオカード接続時と内蔵グラフィックを使用した場合で性能差が表れていた。もし、RADEON XPRESS 200にローカルメモリを実装させたマザーボードが登場すれば、GeForce 6200 TCと同じような結果が見られるのではないかと想像される。

 さて、ここからは3D描画のテストを実施していきたい。まずは「3DMark05」である(グラフ3)。このテストでは、GeForce 6200の1,600×1,200ドット+4xAAのテストでエラーが発生し実施できなかったが、これはドライバの問題とのこと。結果は空欄となっているが、ご了承いただきたい。性能差を見てみると、GeForce 6200 TCはGeForce 6200に対して、明らかに性能が劣ることが分かる。

 また、1,024×768ドット+0xAAのときはGeForce 6200に対して約73%の性能となるが、1,600×1,200ドット+0xAAのときは約66%まで落ち込む。高解像度化やAAのサンプル数を増やしたことによる性能差の広がりは、この後のテストでも顕著に表れている。

 続いて「3DMark03」の結果であるが(グラフ4)、こちらは3DMark05以上にAAをかけたときの性能低下が大きい。3DMark05の1,024×768ドット時における性能差は4xAA適用時で約半分であるのに対し、3DMark03では90%近くも性能を下げている。

【グラフ3】3DMark05 【グラフ4】3DMark03


 このほかに行なった「AquaMark3」(グラフ5)、「Doom3」(グラフ6)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 3」(グラフ7)、「Unreal Tournament 2003-Flyby」(グラフ8)も、AA適用時のパフォーマンス低下がGeForce 6200以上に大きいのが目立つ。

 プラットフォームの差だが、全体に見るとAthlon 64 3500+環境のほうが、GeForce 6200と比較してGeForce 6200 TCを使ったときのパフォーマンス低下が少ない傾向にある。特に解像度が高く、AAを適用した場合のような高負荷のテスト条件でAthlon 64環境の優位性が見て取れる。Athlon 64環境のほうがビデオカード-メインメモリ間のルートが長く、そのぶんのレイテンシ増加が心配されたが、今回の結果を見る限り問題はなさそうだ。

【グラフ5】AquaMark3 【グラフ6】Doom3
【グラフ7】FINAL FANTASY Official Benchmark 3 【グラフ8】Unreal Tournament 2003-Flyby

●Intel/AMDの両プラットフォームで利用可能なバリュービデオカード

 この通りGeForce 6200 TCの3D性能は、GeForce 6200に比べると大幅に劣ることが見て取れる。とくにAA適用時において、その傾向が顕著だ。ただ、最初のテストで示したとおり、3D描画を行なわない(=大きなフレームバッファを必要としない)のであれば、GeForce 6200 TCでも大きな問題はない。

 3D描画で大したパフォーマンスが期待できないなら、TurboCache Managerを使わず、単に“16MBのローカルメモリを搭載したGeForce 6200”というラインナップを追加すれば良いようにも感じられるかも知れないが、あえてTurboCacheという機能を追加したのは、統合型チップセットへの対抗を睨んでいるからだろう。

 先にも少し触れたが、以前、RADEON XPRESS 200のテストを行なった。今回のテストよりも高クロックのCPUを使ってのテストだったが、その結果と比較するとGeForce 6200 TCのほうが優れた結果を出す傾向にある。この“統合型チップセットよりは良いパフォーマンスを出す”という事実をNVIDIAは欲したのだと思う。

 また、バリュークラスの製品において、競合のATIがリリースしているRADEON X300には「VIDEOSHADER HD」が実装されておらず、当然、同等のコアを搭載するRADEON XPRESS 200にも実装されていない。この点も、PureVideoに対応するGeForce 6200 TCが優位な点だ。

 現時点で統合型チップセットというカードを持たないNVIDIAにとって、低価格PCへの採用へ売り込みをかけられる製品がどうしても必要だったのは間違いない。メモリの価格も以前に比べて下がった今、ローカルメモリを少なくできることが劇的に製品価格に反映されることはない。だが、バリュークラスの製品にとっては、1円でもコストを下げることが重要な課題であり、意義がある。

 完成状態で発売される低価格PCのみならず、自作PCであってもとにかく安く作りたいというニーズはある。外付けビデオカードという立場は変わらず、コスト面、検証の必要性など、統合型チップセットに劣る部分は少なくないが、プラットフォームを問わず選択できる製品が登場したインパクトは決して小さいものではなく、このセグメントにおいて本製品がどこまで食い込めるか注目できる。

□関連記事
【2004年12月21日】NVIDIA、動画高画質技術「PureVideo」を正式公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1221/nvidia.htm
【2004年12月20日】NVIDIA、GeForce 6200 with TurboCache説明会
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1220/nvidia.htm
【2004年12月16日】NVIDIA、ターボキャッシュ搭載のGeForce 6200
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1216/nvidia.htm

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(2005年1月24日)

[Text by 多和田新也]


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