●LGA775プラットフォームの使い勝手 後編では、実際にLGA775プラットフォームの機材を試用したレポートをお送りしよう。 機材はマザーボードが、Intel 925Xを搭載した「Intel D925XCV」(写真6)と、Intel 915Gを搭載した「Intel D915GUXLW」(写真7)。CPUがPentium 4 560(写真8~9、画面7)とPentium 4 Extreme Edition 3.40GHz(写真10~11、画面8)である。 まず、CPUとCPUソケットのパッケージを見てみよう。すでにご存知の方も多いと思うが、LGA775ではCPU側にピンはなく(写真12)、ソケット側にピンが配置されることになる(写真13)。よって、これまでとはCPUの固定方法も変化している。その手順を(写真14~16)に示したが、LGA775のCPUソケットには金属のカバーが取り付けられており、これでCPUを押さえつけるように固定することになる。 また、CPUクーラーの固定方法も変更された。写真17は今回の機材に付属してきたCPUクーラーだが、4本の足が設けられている(写真では1本が隠れてはいるが)。この4本の足を、CPUソケットの周りに設けられた穴にはめ込むのである。そして、足に設けられた黒いパーツを押さえつけ、時計回りにねじることで固定される(写真18~20)。 なお、CPUクーラーの電源コネクタも4ピンのものへと変更された(写真21)。この4ピン目のコネクタはBIOS側からファンコントロールを行なうための信号線である。ただし、コネクタに設けられているガイドに沿って、従来どおり3ピンコネクタを持つファンを装着することもできるようになっている。 さらに重要な変更点が電源である。LGA775プラットフォームでは、これまで長く利用されてきた20ピンのATX電源コネクタではなく、24ピンのコネクタへと変更される(写真22)。なお、今回試用しているIntel製のマザーボードでは、ペリフェラル電源コネクタを装着することで、従来の20ピンATX電源コネクタを持つ電源でも利用できるようになっている(写真23、24)。しかしながら、こうした仕組みを持たないマザーボードの場合は電源の買い替えが必要となる。 次にDDR2 SDRAMモジュールだが、今回はMicron製のDDR2 SDRAMを試用している。従来のDDR SDRAMとパッと見の印象に大きな違いはないものの、端子部のピッチや切り欠きの位置が異なるため間違えて装着してしまう心配はない(写真25、26)。なお、このモジュールの仕様は(画面9)のとおりだ。
●クロックどおりの小幅なパフォーマンスアップ
それではパフォーマンス検証に移ろう。環境は表4に示すとおりである。今回PCI Express x16対応のビデオカードとして、NVIDIAのGeForce PCX 5300を搭載した、Albatronの「PC5300」を用意している(写真27)。これまでの環境とは明らかにグラフィック性能が異なるので、3D性能テストでは主にIntel 915Gの内蔵グラフィック性能との違いに主点を置くことにしたい。
そのほか、Intel 915G搭載マザーのD915GUXLWにはRAID機能が搭載されていないので、本環境のみRAIDを構築しないシリアルATA接続の環境となる。
●CPU性能 それではCPU性能から見ていくことにしたい。最初は「Sandra 2004」の「CPU Arithmetic Benchmark」(グラフ1)と、「CPU Multi-Media Benchmark」(グラフ2)の2つである。演算性能を見るテストでもあり、チップセット間の差はほとんどないのが自然であり、一部に成績のバラつきはあるものの、おおよそCPU別に成績が分かれている。 Pentium 4 560について見てみると、同じPrescottコアのPentium 4 3.40Eと比較して、一部テストでは1割前後も上昇しているものの、ほとんどが5~6%の上昇となっており、クロックどおりの性能向上と見て取れる。Extreme Editionの2製品については、Socket 478、LGA775間で目立った差は付いていない。こちらはコアもクロックも同じであり、演算性能がほぼ同じというのは納得の結果だ。 560とExtreme Editionを比較すると、Whetstoneテストではほぼ同等ながら、ほとんどがExtreme Editionが勝る結果。560のほうがクロックが上であることを考えても、相変わらずPrescottの演算性能は今ひとつの印象である。 続いて「PCMark04」の「CPU Test」の結果を見てみよう(グラフ3、4)。「Grammer Check」、「WMV Video Compression」のように、3.60GHzへとクロックが上昇したことでExtreme Edition 3.40GHz勢を上回るようになった結果も見られる。グラフ3のようにマルチスレッド環境テストの多くと、「DivX Video Compression」では3.60GHzのパワーがよく働いているものの、全体にはPrescottが強かったものが、順当に性能を伸ばしているに過ぎない印象ではある。 Athlon 64勢との比較をしてみると、3.40E GHzと良い勝負を展開していたFX-53や3800+だが、560相手には少々分が悪いところも見せている。
●メモリ性能 続いては、メモリアクセス速度である。DDR2 SDRAMへと変化したことでアクセス速度に変化が起こるかどうかが要チェックポイントである。テストはSandra2004の「Cache & Memory Benchmark」で、グラフ5に全結果と、グラフ6に一部の結果を抽出してグラフ化した。ちなみにグラフ5は線が重なって分かりにくい部分が多いが、これは「CPU毎に似た傾向のグラフとなる」点を見れもらえればOKである。 560と3.40E GHzはコアが同じであるため、キャッシュメモリ部分の速度推移はクロックに応じて持ち上げられた格好になっている。それでも、Extreme EditionがL2からL3に切り替わるタイミング(512KB)のテストで、性能が逆転している。 さて、肝心のDDR2 SDRAMとDDR SDRAMの速度であるが、グラフ6の256MBの結果を見て欲しい。560とIntel 925Xを組み合わせた環境で3MB/secを超えるアクセス速度を発揮しており、確かに効果は見られる。しかしながら、Extreme EditionとIntel 925X/915Gを組み合わせた場合は、ほとんど効果が表れていない。とくにExtreme EditionとIntel 915Gの組み合わせは、Intel 875P環境(つまりDDR SDRAM)にも劣る結果となってしまった。現時点ではBIOSのチューンも進んでいないためと思われるが、CPU次第では効果がある、という感じだ。 なお、Intel 925XとIntel 915Gの比較では、560、Extreme EditionともにIntel 925Xのアクセス速度が速い。メモリアクセスの最適化は間違いなく働いていることが確認できるといっていい。また、Intel 915Gに外部ビデオカードを挿した場合と、内蔵グラフィックを利用した場合の違いを見てみると、非常にわずかではあるが内蔵グラフィックを利用した場合のほうが速度を落ちる傾向にはある。これが実際のアプリケーションにどう影響するかは、次のベンチマークで見ていきたい。
●アプリケーション性能 次に実際のアプリケーションを使ったベンチマーク、「SYSMark2004」(グラフ7~9)、「Winstone2004」(グラフ10)、「TMPGEnc」(グラフ11)の結果を見てみたい。まずパッと見て分かるのは、Intel 925X環境の強さである。ほとんどテストで同一CPUのトップスコアをマークしており、この性能の良さは評価したい。 一方、Intel 915G環境とSocket 478環境の比較となると、560のほうはクロックが高くなっていることもあって全般にIntel 915G環境のほうが良好である。しかしながら、同クロックの比較となるExtreme Editionのほうは、多くのテストでLGA775版がμPGA478版の後塵を許す結果になっている。この傾向は、先のメモリ性能テストの結果とリンクしており、DDR2 SDRAMの性能を引き出せていないことに問題がありそうだ。 Intel 915Gのビデオカード使用時と内蔵グラフィック使用時の違いだが、これはちょっと妙な結果が出ている。560と組み合わせた場合は、内蔵グラフィックを使った場合のほうが良好、もしくは差が小さい傾向にあり、Extreme Editionを使った場合は逆にビデオカード使用時のほうが良好なのである。普通に考えれば、フレームバッファをメインメモリに展開する必要がある内蔵グラフィックのほうがメモリ帯域をロスして性能が下がるはずなので、Extreme Editionの結果のほうが自然な結果に思える。理由が見えてこない、ちょっと不可解な結果である。 Athlon 64勢との比較もしておこう。過去に行なってきたPrescottコアのPentium 4 3.40E GHzとSocket 939版Athlon 64の比較ではAthlon 64勢の強さが見えていた。しかしながら、Winstone 2004以外のテストでは、Intel 925XとPentium 4 560の組み合わせがAthlon 64勢を圧倒している。Winstone2004にしても、これまでのように圧勝という雰囲気が和らいでいるのも確かで、Athlon 64にとっては脅威の存在が表れたといえそうだ。
●3D性能 それでは最後に3D性能のチェックである。先にも述べたが、ここではIntel 915G内蔵のGMA900の性能を中心にチェックすることにする。そのため、GeForce FX 5900 Ultraを使った環境をグラフから外しているのでご了承いただきたい。テストは「Unreal Tournament 2003」(グラフ12)、「3DMark03」(グラフ13)、「AquaMark3」(グラフ14)、「3DMark2001 Second Edition」(グラフ15)、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」(グラフ16)の5種類だ。 ちなみにGMA900はDirectX 9に対応するのだが、DirectX 8.1以前のハードウェアT&Lを(エミュレートも含め)有していない。そのため、ハードウェアT&Lのテストである「3DMark2001 Second Edition」、「FINAL FANTASY Official Benchmark 2」はテストできていない。 ということで、実行できたテストの結果を見てみると、3DMark03では差がほとんどなく、Unreal Tournament 2003のFlyByとAquaMark3ではGMA900が優秀、Unreal Tournament 2003のBotmatchではGeForce PCX 5300が優秀、というはっきりした結果が出た。 その理由を読み解くために、3DMark03の追加テストを行なった結果が(グラフ17、18)である。グラフ17はフィルレートを測定するものだが、ここでGMA900がGeForce PCX 5300を圧倒しているのである。一方Pixel/Vertex ShaderはGMA900のほうが劣る結果になっている。つまり、シェーダ処理を必要としないコンサバティブな3D描画ならば、GMA900はGeForce PCX 5300を圧倒する能力を持っているのである。 もっとも、現時点でLGA775プラットフォームを選択する人にとっては、この性能では不満かも知れない。せめて、ハードウェアT&Lのエミュレート機能を持っていれば、満足する人も増えたのではないかと思われ、そこだけが残念である。
●DDR2ならIntel 925Xを、Intel 915を選ぶならDDRで十分 以上のとおり、LGA775プラットフォームを試してきた。搭載される機能やアーキテクチャが大幅に刷新された、新しいPCプラットフォームの夜明けを感じさせる製品群である。 パフォーマンス面では、全体のインパクトはそれほど強くない。そもそもCPUのコアはSocket 478と同じわけで、クロック上昇分以上の大幅な性能向上があるとしたら、それはメモリがDDR2 SDRAMになったことによるプラスアルファに期待することになる。 確かに、Intel 925Xを利用した場合のパフォーマンスは高い。だが、Intel 915G+Extreme Editionの結果を見てみると、DDR2 SDRAMになったことによる恩恵は小さいように思う。よって、これは「Intel 925Xのメモリアクセス最適化の効果」が大きいという見方のほうが正しいように感じられる。 もちろん、今からPentium 4を選ぶならば、先のないSocket 478という選択肢はないわけで、LGA775へ移行することになるだろう。お金に糸目は付けずハイエンドを求めるならば、Intel 925Xで間違いない。一方、Intel 915をベースにLGA775への移行を検討しているならば、この場合はDDR SDRAMで十分だと思う。ベンチマークからは、こうした印象を受けている。 ちなみに、パフォーマンス面ではインパクトが弱いと述べたが、チップセットの機能面はインパクト大である。パフォーマンスよりも、むしろ、この新しいアーキテクチャを享受できることが、LGA775プラットフォームを導入する意味が大きいようにも思える。もちろん、原則としてCPU/メモリ/ビデオカード/電源の刷新が必要なわけで、すべてを揃えようと思うと敷居が高いのは事実。そこで、パフォーマンスから見た結論を参考にしてほしい。つまり、全面刷新が出来る人はIntel 925Xを。そうでない人には、Intel 915とDDR SDRAMの組み合わせからスタートすることをお勧めする。
□関連記事 (2004年6月22日) [Text by 多和田新也]
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