■大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」■富士通デザイン部門が提案する未来のPC
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NPO法人である東京デザイナーズウィークが、東京のお台場で開催している「TOKYO DESIGNER'S WEEK 2004」の「CONTAINER GROUND(コンテナ展)」で、富士通の総合デザインセンターがデザインした未来のPCや携帯電話など14機種が展示された。
●コンセプトモデルを14点展示
会場はお台場のヴィーナスフォート隣の空き地。会場はすべてコンテナで構成されている | TOKYO DESIGNER'S WEEK 2004の富士通ブース。約20フィートのコンテナに14作品を展示 |
最近では、富士通に限らず、デザイン部門からPCの形を提案するという動きがPCメーカーの間で活発化している。
各社が社内で行なっている提案内容は、製品化を目前に控えたものから、将来に向けたコンセプトモデルなど多様だが、技術・開発部門からの提案とは違った、新たな利用シーンを想定した提案が多くなることから、製品企画にもインパクトを与える取り組みとして各社の間でも注目されている。
今回の提案は、そうした取り組みのなかから将来に向けたコンセプトモデルを公開したものともいえ、デザイン部門ならではの、あっと驚くような提案が見られている。
今回の出展のために用意されたFMVの新しいロゴ。“FUTURE MEDIA VOGUE”の頭文字をとると、「FMV」になる | 総合デザインセンタープロダクトデザイン部 上田義弘部長 |
富士通の総合デザインセンタープロダクトデザイン部 上田義弘部長は、「早ければいまから3年後、あるいは2010年頃のPCの姿はどうなっているのか、ということを想定し、デザイナーに自由にデザインをしてもらった。個人でデザインしたものもあれば、2~3人のチームでデザインしたものもある。今年7月から、このイベントに向けたデザインを開始し、完成した36点のなかから14点を展示した」と話す。
展示されたモデルは、確かに利用シーンの視点からデザインされたものが多い。また、家具などのインテリアとの融合が見られるものも多い。
「PCが生活のなかで利用されるようになり、生活空間に溶け込むようなものがものが求められている。デザインの観点から見れば、将来的には、PCと家具との境界線がなくなることも想定される」と上田部長は語る。今後のデザインにとって、家具との融合は大きなテーマといえるかもしれないといったことを感じさせる内容ともいえた。
今回の「TOKYO DESIGNER'S WEEK 2004」における富士通ブースのキーワードは、「FUTURE MEDIA VOGUE」。
同社では、「日々進化していくITの世界に対して、生活の中で使われるIT端末はどのように進化していくかということをテーマに、自らの思いを形にして出展した。これからのパーソナルIT端末は、ますます多様化する生活の中で、現在のPCの枠を超え、“MEDIA(メディア)”としてその存在を拡大し、よりヒューマンで身近な存在“VOGUE(ヴォーグ)”として変貌していくことになる、と考えた。これまでの概念にとらわれない自由な発想で、生活空間での存在意味を考え直したり、より身近な存在としてのパーソナルIT端末のあり方を考えたり、個人個人の情報ライフスタイルとの調和を再考することから、現在のPCやPDAをとらえ直し、新たな文脈からデザインした」と説明する。
では、出展物から主要なものを見てみよう。
●chest-type PC
ローテーブルやスツールを意識してデザインされたPC。ディスプレイ部を閉めればローテーブルなどとしての利用が可能。部屋に突如として置かれる感じが強いPCを、インテリアに溶け込む自然な形で表現している。キーボードはタッチパネルの技術を利用し、通常のキーボード以外にも様々なレイアウトが可能になる。縁の部分にオプティカルドライブの挿入口などを用意している。ディスプレイは、Tシリーズと同じ22型液晶としている。
●air-put
木目調を配した和室にもなじむホームサーバーと、白い浮遊するデバイスとの組み合わせによる提案。浮遊デバイスは、ユーザーのアバター(化身)となり、部屋内を空中移動する。妖精をイメージしてデザインしており、ユーザーとの会話などによって、ニーズを探り、サーバーからコンテンツを取り出したり、バイタルチェッカーを通じて、ユーザーの健康状態などにも気を配り、状況に応じて医療機関にも連絡をとるといった機能を持つ。ユーザーが外出時には、室内の映像を撮影し配信したり、ビデオ録画を行なう。ユーザーとの間に生活共同体を形成する新たなIT端末を目指しているという。だが、これが5年後に実現できるのかどうかは難しいところか。
●Combinable
まるでブロックのような立方体のモジュールを組み合わせて自由な形に変化できるIT機器。ひとつひとつのブロックには、メモリ、HDD、光ドライブ、ソフトウェアなどの機能が搭載されており、拡張が自由にできる。新しいソフトをインストールしたいという場合、あるいはメモリを増やしたいという場合でも、ブロックを1個購入してきて、これをくっつければいいというコンセプト。組み合わせ方によっては、「あひるPC」も構築できる。
●Flex-type PC
さまざまな利用シーンにあわせ、モジュール化された各種ユニットとフレキシブルフレームを組み合わせて使うIT端末。デスクトップPCとしての利用から、液晶部分を取り外して、キーボードと接続することでノートPCに変形。さらに、キーボード部にディスプレイを乗せることでタブレットPCのような形状にもなる。ディスプレイ部とキーボード部、本体の間はワイヤレスで接続する。
●qb
ポータブルオーディオ機器のような雰囲気を持ったデザインのqbは、部屋のどこにでも持ち運んで、生活のなかに溶け込んだ利用を行なうことを狙ったもの。qbを持ち運べば、部屋のスピーカーから音楽が流れたり、TVにBlu-rayで収録されたコンテンツを表示したりといった利用ができる。天井部分にはFeliCa機能の搭載をはじめ、非接触型のICリーダ/ライターを搭載している。これにより、朝食のテーブルでICタグを張り付けコーヒーカップをqbの天井部分にかざすだけで、毎朝見ている番組にチャンネルを自動的にあわせて、TVに表示してくれるということも実現できる。ホワイトカラーは富士通らしくない色彩だが、縦置きの光ドライブはFM TOWNSを彷彿とさせる富士通らしいデザイン。
●Flip-On
画面を机の上に表示したり、壁に表示したりといったことが可能で、操作は、実際に投射された画面を触って行なう。デジタルカメラで撮影した写真を、手で触って集めたり、分類したりといったこれまでにない使い方ができる。
●POSSY
外への持ち運びやすさはもちろん、壁に掛けて利用することもできる。個人の部屋だけでなく、リビングやキッチンにも設置できるパーソナルアイテムとしての使い方を想定したのが、デザインコンセプトだ。
●五尺ノ一扇
ホームサーバーの将来の姿としてデサインされた。コンテンツを見るための液晶を搭載するとともに、広範囲の水冷方式を採用することで、前面部分に水が流れ落ちるのが見えるデザイン。和室にもしっくりくる風情を持たせた雰囲気とともに、静音化も実現できるという。これを複数接続して、屏風のような形にすることもできる。家庭内でのデータセンター構築には最適か?
●Home Server
●Multi Slider
●Interface Bangle
腕につけるだけでコミュニケーションが可能になるウエアラブル端末。別の携帯機器と常時通信を行ない、光や振動、音などでユーザーにさまざまな情報を伝える。同端末と接続可能な本体機器は自宅以外にもさまざまな場所に置かれ、端末をそこに置くだけで情報をチェックしたり、音を再生したりといったことが可能になる。
なお、TOKYO DESIGNER’S WEEK 2004のCONTAINER GROUNDは、10月11日まで開催している。開催時間は正午から午後10時までで、入場料は500円。会場には約130基のコンテナが設置され、そのなかで各社のデザインが展示されている。IT関連では富士通のほか、シャープやエレコムが出展している。
また、富士通では、5日から幕張メッセで開催されるCEATECで携帯端末のテザインモデルを展示するほか、ワールドPCエキスポでも、今回展示したモデルの一部を出展する予定である。
エレコムは、キーボードのキートップを壁面に敷き詰めたブースで企業イメージをアピール |
シャープは、デザイナーの喜多俊之氏がデザインとともにAQUOSを設置して、くつろげる環境をアピール |
□TOKYO DESIGNER'S WEEK 2004のホームページ
http://www.tdwa.com/04/index.html
(2004年10月4日)
[Text by 大河原克行]