笠原一輝のユビキタス情報局

Windows XP Media Center Edition 2005
搭載PCを自作する(前編)




 前々回は、Windows XP Media Center Edition 2005(当時はシンフォニーと呼んでいたが)を紹介したが、正式にOEM版ないしはDSP版として自作PC市場に投入されるのが、Windows XP Media Center Edition 2005(以下MCE 2005)であることも明らかになるなど、10月2日のリリースに向けての準備が徐々に整いつつある状況だ。

 ユーザーの中にも、これにあわせて新たに自作PCを作ったり、あるいはHDDなどのアップグレードとともにOSをMCE 2005に変更しようという人も少なくないのではないだろうか。

 そこで、今回から2回にわたり、MCE 2005レディPCの条件、さらにはインストール時の注意点などをお伝えしていきたい。

●1.6GHz以上のプロセッサ、256MBのメモリ、60GBのHDDが最低要件

 まず、絶対に必要なものと言えば、言うまでもなくPCだ。ただ、一口にPCといっても、それこそCPUにPentiumを採用している古いノートPCもあるだろうし、最新のLGA775のPentium 4を搭載したデスクトップPCだってあるだろう。従って、ある程度CPUやHDD、メモリ容量など、必要なスペックを知っておく必要があるだろう。

 ただ、実のところMCE 2005は未だMicrosoftから正式発表はされていないため、Microsoftの公式サイトにはMCE 2005の情報が全くない。従って、現状では、その前バージョンであるWindows XP Media Center Edition 2004(以下MCE 2004)における要件や、情報筋などからの情報を元にまとめてみたい。

 Microsoftは米国サイトでMCE 2004におけるシステム要件を公開している。そのファイルによれば、CPU、メモリ、HDD、ビデオカードなどの各要件は次のようになっている。

★MCE 2004のハードウェア要件
【CPU】1.3GHz以上のCPU、1.6GHz以上のCPUを奨励。ただしソフトウェアエンコーダによるTVチューナを利用する場合には3GHz以上のCPU
【メモリ】256MB以上(PC133より高速なDRAM)
【HDD】MCE用の2GBの空き容量が必要、テレビ録画機能を利用する場合には30GB以上が必要
【光学ドライブ】DVD互換ドライブ
【ネットワーク】56kbps以上のモデムないしは100BASE-TXないしはIEEE 802.11b以上の無線LAN
【ビデオカード】AGP 4Xないしはそれと同等の機能を持ち、48MB以上のVRAMを搭載していること。1,024×768ドット表示以上が可能で、1,280×768ドットなどのワイド表示が可能なビデオカードを奨励。

 これは、あくまでMCE 2004の条件であるので、MCE 2005ではやや異なっている可能性がある。筆者が情報筋から得た情報によれば、Microsoftはチャネル向けに、CPUは1.6GHz以上、メモリは256MB以上で512MB以上を推奨、64MB以上のVRAMを搭載したビデオカード、60GBのHDDなどが必要と説明しているようで、大幅に変わりはないと考えていいのではないだろうか。

 ただ、これは必要最低限の機能を利用する場合であり、より高度に利用するのであれば、もう少し上のハードウェアが必要になるのではないだろうか。特に、MCEでは、テレビの録画と再生を同時に行なう場合、CPUに対してかなりの負荷がかかる。というのも、MCEのテレビ再生は、一度ハードウェアエンコーダでファイルに録画したデータを、CPUで再生する仕組みになっているからだ。

 従って、テレビを録画しながら同時に再生という場合は、CPUにかなりの負荷がかかる。たとえば、筆者はPentium 4 2.4B GHzでMCE 2004を利用していたが、実際に録画しながら同時にライブテレビを再生すると、時々画面がぎくしゃくすることもあった。となれば、それなりに高速なCPUが必要であると言っていいのではないだろうか。やはり、メモリも含めてそれなりに余裕があるハードウェア構成がお奨めだと思う。

 HDDの容量に関しては60GBとなっているが、これは、必要最低限と考えればいいだろう。MCEでは「dvr-ms」と呼ばれる形式のビデオファイルで録画されるのだが、画質に関しては最高画質、高画質、標準、長時間の4つの設定が用意されており、それぞれ1時間に必要な空き容量は3GB、2.5GB、2GB、1.5GBとなっている。

 たとえば、60GBのうち10GB近くをOSとアプリケーションに使ったとすると、残りは50GBとなり、標準画質で25時間の録画が可能という計算になる。そう考えると、250GBや300GBなどの大容量HDDを用意した方が快適に利用できると思われる。

 ただ、PCであるだけに、いつでもアップグレードが可能であるのも事実なので、予算に余裕がでてきたところでより大容量のドライブに交換というのもいいのではないだろうか。

●利用できるTVチューナカードは限られる

 上記の要件を満たせば、一応MCE 2005をインストールして利用することは可能になる。ただし、別途リモコンやTVチューナカードを用意しなければ、操作も不便だし、TV録画もできない。また、これはMCEに限ったことではないが、Windows XPでは標準でMPEG-2デコーダがインストールされないので、DVDの再生もできない。つまり、MCEの機能をフルに利用したいと考えるのであれば、

・MCE 2005に対応したTVチューナカード
・MCE 2005に対応したMPEG-2デコーダソフトウェア
・MCE 2005に対応したリモコン

 の3つが必要になる。なお、ビデオ再生、音楽再生、写真再生に関しては利用できるが、リモコンがない状態で10フィートGUIを利用する意味があるかどうかは微妙だ。

 MCE 2005を導入しようという日本人ユーザーで、TV機能を利用しないという人はおそらくいないと思うので、これらの3つは別途用意する必要がある。

 注意したいのは、いずれの製品もMCEに対応していることが必須であるということだ。なぜなら、リモコンはともかく、TVチューナやMPEG-2デコーダソフトウェアは、すでにWindows XP用のものが多数販売されているが、それらの多くはMCE 2005と非互換であるからだ。

 しかも、覚えておいてほしいのは、現在市場にあるTVチューナやMPEG-2デコーダソフトウェアの多くもMCE 2005と互換が無いという事実だ。従って、MCE 2005マシンを自作したいのであれば、TVチューナカードやMPEG-2ソフトウェアデコーダに関しては事実上買い換えになると考えた方がよいのだ。

 TVチューナカードに関しては、基本的にハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載したTVチューナカードで、かつドライバがMCEに対応している必要がある。“基本的に”と書いたのは、例外もあり、ソフトウェアエンコードのTVチューナカードでも使える場合があるからだ。

 たとえば、ATI TechnologiesのAll-In-Wonder 9xxxシリーズは、ハードウェアMPEG-2エンコーダを搭載していないのだが、利用することが可能だ。ただし、ATI Technologiesが販売するエンコーダドライバを別途組み込む必要はある。

 なお、このドライバを入手するにはATIのオンラインストアを通じて購入する必要があるが、そのためには米国の住所がないと購入できないので、日本のユーザーは利用できないのが残念なところだ。

 さて、ドライバの方の条件だが、ドライバがWDM Streaming Capture Deviceとして振る舞い、かつエンコーダのビットレートをWindows XP Driver Development Kitで規定されている仕組みに従って変更できるようになっている必要がある。

 つまり、OS側からTVキャプチャーカードをコントロールできるようになっている必要があるのだ。ここで問題になるのは、現在販売されているTVチューナカードの多くがそうした仕様のドライバにはなっていないことで、筆者の手元にあるMPEG-2ハードウェアエンコーダを搭載したTVチューナカードをすべて試してみたところ下記のような結果になった。

キャプチャカード名動作状況
エルザ EX-VISION 1000TV
アイ・オー・データ機器 GV-MVP/RX×
バッファロー PC-MV5DX/PCI
バッファロー PC-MV5/PCI
カノープス MTV3000W×
NEC SmartVision HG2/R×
AOpen VA2000MAX-SNT6×

 エルザとバッファローのボードは、両メーカーともにMCE 2005で稼働保証されているわけではないが、両メーカーのWebサイトに掲載されているドライバを利用したところ、いずれも動作した。なお、念のため付け加えておくが、いずれも筆者がテストした結果であり、両メーカーが保証しているわけではないので、実際には動作しなかったり何らかの不具合がでる可能性があることを付け加えておく。

 こうしたことからもわかるように、現在流通しているTVチューナカードはほとんどの場合利用できなかった。では、どうすればいいか。これは今後TVチューナカードベンダより発売されるMCE 2005に対応したTVチューナカードを購入すればいいだろう。

 すでにピクセラがMCE 2005に対応したTVチューナカードのリリースを予告しており、他にもいくつかのベンダがMCE 2005への対応を予定しているという。安定した動作を望むのであれば、MCE 2005での稼働保証がされているそうした製品を待つというのが正しい姿勢と言えるのではないだろうか。

●TV機能の利用にはMCE 2005に対応したMPEG-2デコーダソフトウェアが必須

 MCEでTV視聴やTV録画を楽しむには、もう1つの条件としてMPEG-2デコーダソフトウェア、いわゆるDVD再生ソフトウェアが必要になる。なぜかと言えば、それはMCE 2005のTVシステムが、ユニークな仕組みになっているからだ。MCE 2005のTVの仕組みは下図のようになっている。

TVチューナに搭載されたハードウェアエンコーダにより、TVデータはMPEG-2形式に変換されHDDに格納される。この時、単にMPEG-2形式(MP2やM2P)などの形式で格納されるのではなく、録画した時のEPGデータや録画日時などのメタファイルも併せて格納され、「dvr-ms」という独自形式になる。このdvr-msを再度、MPEG-2エンコーダでデコードして画面上に表示するという仕組みになっている。Windowsでは標準でMPEG-2デコーダを搭載していないため、何らかのMPEG-2デコーダが必須となるのだ。

 ところで、Windows XPでのMPEG-2デコーダと言えば、インタービデオのWinDVDやサイバーリンクのPowerDVDなどが有名だが、実際には市販されているこれらのソフトウェアはそのままでは利用できない。筆者の手元に4種類の市販のソフトウェアがあったので試してみたところ、以下のような結果となった。

ソフトウェア名動作状況
インタービデオ WinDVD Platinum 5×
インタービデオ WinDVD Platinum 6×
サイバーリンク PowerDVD 5 Deluxe×
NVIDIA nvDVD バージョン2.55

 なぜ、nvDVDだけ利用できたのかと言えば、それはMCEをサポートしているかいないかの違いだ。nvDVDはMCE 2004を標準でサポートしており、その他の製品は標準ではサポートしていないという違いがあるのだ。ちなみに、NVIDIAはnvDVDの販売をすでに終了している。

 それでは、WinDVDやPowerDVDに、MCEをサポートしているバージョンはないのかと言えば、実はある。OEMメーカーが発売しているMCE 2004搭載マシンにはインタービデオ、サイバーリンク両社のDVD再生ソフトがバンドルされており、これらはMCE上で利用できる。実際、両社ともにMCE 2005に対応したバージョンをOEMメーカー向けに提供を開始していると言われている。

 ただ、いずれもOEM向けのバージョンで、個人ユーザー向けに販売されるパッケージ版ではないというのがやや問題となる可能性がある。しかし、逆に言えば販売店にとっては、工夫のしどころと言え、たとえばビデオカードにバンドルして販売したり、あるいはTVチューナカードにバンドルして販売するという方法をとることも可能だろう。このあたりはOSのOEM版やDSP版と同じ考え方だ。元々、OSそのものがOEM版ないしはDSP版であるのだから、こうした販売方法が一般的になるのではないだろうか。

 いずれにせよ、MCE 2005でテレビ機能を表示するにはMCE 2005に対応したMPEG-2デコーダソフトが必要になり、それは現在販売されているパッケージ版では対応できないという点をしっかり覚えておいた方がいいだろう。

●TV機能の利用にはWindows XPに対応したリモコンが必須

 そして最後に必要となるのがリモコンだ。MCE 2005で利用できるリモコンはMicrosoftがWindows XPやWindows XP Media Center Edition向けに定義しているキーセットに対応したリモコンが必要になる。

 このキーセットに対応したリモコンであれば、Microsoftの純正リモコンではなくても利用できる。筆者の試した範囲では、サイバーリンクのPowerDVD 5 Deluxe用として販売されているリモコンがそのまま利用できたほか、ソフトウェアを利用してキーセットをアサイン可能なタイプのリモコンも利用することが可能だ。

 ただし、Microsoftが販売しているリモコン(フィリップス製といわれているが……)では、レシーバー側に外部チューナに対して赤外線発光をする機能が用意されている。これは、先端に赤外線の発光器がついたケーブルになっており、発光部を外部チューナ側の赤外線受光部に貼り付けることで、MCEのリモコンで外部チューナもコントロールしてしまおうという機能だ。

 これにより、たとえばCATVやBS放送などの外部チューナを利用している場合にもMCEのリモコンでチャンネルを変更できるようになっている。これは、録画時にも有効で、正しく設定しておけば、MCEマシンからチューナをコントロールして録画ができる。

 なお、AKIBA PC Hotline!の記事でもわかるように、すでにMicrosoftとSMKの製品がリリースされることが明らかになっている。情報筋によれば、Microsoftが発売する予定のリモコンは、WinHECなどで公開されたバージョン2と呼ばれる最新のリモコンで、従来のバージョン1に比べて小型になり若干使い勝手が改善されているという。TV機能を利用するのであれば、こうしたリモコンも同時に入手したいところだ。

MCE用のリモコンのレシーバ。写真のように、外部のチューナをコントロールするための赤外線発光器が付属しており、それを外部チューナの赤外線受光部に貼り付けることでMCE側から外部チューナをコントロールできる WinHECで公開されたMCEのリモコンを説明するスライド。バージョン2ではやや小型になり、ボタンの配置などが変わっている

●敷居は決して低くない、自作PCユーザーにはチャレンジングな話題

 このように、実際に、MCE 2005自作PCを作ろうというのであれば、かなりの困難が待ちかまえているといっても過言ではない。高スペックのハードウェアを要求されることもそうだし、TVチューナカードが限られるという点でも注意が必要だ。

 なお、MPEG-2のデコーダソフトウェアに関しては、ピクセラのTVキャプチャカード「PIX-CTV200PW-XB-RY-MCE2」が先週末より販売が開始され、こちらの問題は解決しつつある。

 いずれにしろ、初心者が何も知らずに手を出したりすると、途方に暮れてしまう可能性は依然としてある。

 ただ、筆者個人の感想として、「だからだめだ」などと言うつもりはない。そもそも自作PC、あるいはPC-DIYというのは、そうした困難を乗り越えて自分だけのPCを作るという意味合いもあると思う。買ってきたまま、それを組み上げて動いたのでおしまいというのでは、工場でPCを仕事で組み立てているのと何も変わりがない。

 もちろん、Microsoftが、リテールパッケージで販売し、初心者ユーザーも購入するケースがある、というのなら問題かもしれないが、今回はOEM版ないしはDSP版と呼ばれる、ハードウェアとのバンドル販売のみであり、そもそもの敷居が高いのだから、これはこれでいいのではないだろうか。

 むしろ、中級者以上の自作PCユーザーにとっては、久々に挑み甲斐のある“ネタ”になるかもしれない。実際、筆者も動くTVチューナカードを探すために、秋葉原を何往復もして、かなりの枚数のチューナカードを買ってしまった……。

 今回は、MCE 2005マシンの自作に必要なコンポーネントの紹介を行なったが、次回には実際にMCE 2005マシンを自作し、OSをインストールする際の注意点などを紹介していきたい。


□関連記事
【9月10日】【笠原】次期MCEこと“シンフォニー”の姿
〜自作PC用OSの本命となるか
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0910/ubiq77.htm

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(2004年9月29日)

[Reported by 笠原一輝]


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