笠原一輝のユビキタス情報局

次期MCEこと“シンフォニー”の姿
〜自作PC用OSの本命となるか




シンフォニーの10フィートGUI

 以前、この連載でWindows XP Media Center Edition(MCE)を取り上げたことがあった。その結論で筆者は、「MCEの出来は悪くないが、日本ではメーカー製PCに採用してもらおうと思っても難しく、チャネル向けや自作PCなどに特化すべきだ」としたが、その後マイクロソフトもそう考えたらしく方針を転換し、MCEをチャネル向けにも販売していくことを発表した。

 また、日本でも、自作PC/チャネル向けにOEM版ないしはDSP版と呼ばれるバージョンが9月18日より販売が開始されることが明らかにされた。残念ながら発売日は10月2日に延期されたようだが、いずれにしろ、MCEを搭載した自作PCが登場するまで、あとわずかという状況になっている。

 今回のレポートでは、すでにRTMが完了しOEMメーカーなどへの出荷が開始されるとみられている次世代MCE“シンフォニー”を先行入手したので、バージョンアップポイントなどをお伝えしていきたい。

●“Windows XP Professional-α”+10フィートGUI

 現在、マイクロソフトがOEMメーカーに提供しているWindows XP Media Center Edition(以下MCE)は、開発コードネーム“ハーモニー”と呼ばれる「Windows XP Media Center Edition 2004」だ。日本国内でも、昨年の10月以降、NECや富士通など、各PCベンダから搭載PCが出荷されている。

 ところで、ハーモニーは、MCEとしては2製品目にあたる。なぜなら、MCEには最初のバージョンとして、開発コードネーム“フリースタイル”と呼ばれた「Windows XP Media Center Edition 2002」が存在し、こちらは2003年に出荷が開始されていたからだ。しかし、フリースタイルの日本語版は用意されず、日本向けに出荷もされなかった。つまり、ハーモニーが第2世代、その後継となるシンフォニーが第3世代ということになる。

 そもそもMCEは、Windows XP Professionalに“eHome Shell”と呼ばれる10フィートGUIを追加し、リモコンを利用してメディアファイルの再生ができるようにした製品だった。

 従って、フリースタイル(MCE 2002)もハーモニー(MCE 2004)もWindows XP Professionalの機能を持っており、たとえばドメインへのログオンが可能など、本来家庭向けの製品であるにもかかわらず、オーバースペックになっていた。

 そこで、今回のシンフォニーでは、位置づけが若干変更されている。Windows XP Professionalベースというのは変わっていないが、家庭向けには必要のないドメインログオンや128bitの暗号化といったWindows XP Professionalの企業向け機能が省略されている。

 ただし、リモートデスクトップ接続など、一部の機能は搭載されており、位置づけとしてはHome EditionとProfessionalの中間というイメージだ。これを裏付けるように、シンフォニーのOEM版はProfessionalよりもやや安価になると、ある情報筋は伝えている。

●初期状態からServicePack2とWindows Media Player 10を実装

 シンフォニーでは、ServicePack2(SP2)が標準状態でプリインストールされている。SP2の特徴は、Windowsのセキュリティ関連の機能が強化されていることで、タスクバーに“セキュリティセンター”というアイコンが表示されるようになる。

 また、Windows Media Player 10が初期状態から導入されていることも特徴だ。

 Windows Media Playerのバージョンが上がったことについては、MCEの機能強化という点で非常に重要な意味がある。というのも、MCEの、特にオーディオ周りの機能は、Windows Mediaのエンジンを利用しているからだ。

 たとえば、MCEのシェルであるeHome Shellのオーディオ機能では、プレイリストを編集することが可能だが、そのプレイリストそのものはWindows Mediaのプレイリストを利用している。

 今回、Windows Media Player 10の最も大きなバージョンアップ点は、インターネットのサービス(Napstar)経由で音楽ファイルを購入できることだろう。すでに米国ではサービスが開始されており、まもなく日本でも開始されると言われている。

 MCEでも、Windows Media Playerのバージョンアップに合わせて機能が拡張されており、MCEのeHome Shellから音楽を購入できる。ただし、現時点では日本国内でサービスが始まっていないので、今のところ利用できない。

 近い将来、日本でもサービスが開始されれば、リモコンだけで気軽に音楽ファイルを購入できるようになる可能性があるだけに注目したいところだ。

シンフォニーではSP2が標準なので、セキュリティセンターがもちろん導入されている Windows Media Player 10も標準で導入されている

●複数のTVチューナがサポートされ、裏番組録画も可能に

 日本のユーザーにとって、シンフォニーのバージョンアップで最も有益なのが、eHome Shellにおける複数チューナのサポートではないだろうか。

 というのも、ハーモニー(MCE 2004)までは、TVチューナは1枚しか扱えず、録画しながらほかの番組を見たり、放映時間が重なる2つの番組を同時に録画したりすることはできなかったのだ。

 しかも、TVチューナカード上のSビデオ入力を利用して、外付けの衛星放送のチューナを使うこともできない。これは、MCEでは内蔵のチューナも、外付けのチューナも1つという数え方をするためだ。

シンフォニーでは複数のTVチューナを同時に利用できる

 この点は半分だけ改善され、アナログ放送用のTVチューナカードは2つまで扱うことができるようになった。MCEに対応したTVチューナカードが2枚あれば、それを利用して裏番組録画が可能になっている。たとえば、NHKの総合放送を録画しながら、NHKの教育放送をライブで見るという使い方も可能だ。

 ただし、その2枚のチューナカードは、必ずどちらも同じソース(地上波か、衛星放送か、ケーブルテレビ)に接続されている必要がある。別々のソース、たとえば1枚のカードで地上波を受信し、もう一方のカードで衛星放送を受信、という使い方は依然としてできない。日本では、地上波とスカパー!のような衛星放送を同時に楽しむというユーザーも少なくないと考えられるだけにこの点は残念だ。ぜひ、次期バージョンでこそこの点は改善して欲しいものだ。

 なお、MCEのEPGには日刊編集センターのEPGサービスが利用されている。日刊編集センターのEPGサービスは、地上波だけでなく、地域のケーブルテレビ局の番組データも格納されており、ケーブルテレビを利用しているユーザーでもEPGのデータを活用できるという点で優れている。

 なお、MCEのリモコンには赤外線ケーブルが付属しており、これを利用して外部チューナをコントロールすることも可能で、専用のチューナボックスを利用するケーブルテレビでも利用できる。

 ただし、衛星放送の番組データはBSアナログとBSデジタルしかなく、CS放送のデータは用意されていなかった。筆者はスカパー!を視聴しているが、当然ながら利用できなかった。この点は、EPG側の改良で何とかなるはずなので、今後に期待したい。

 複数のソースが使えないという点は不満として残るが、2枚のチューナカードがサポートできるようになったことで、利便性は確実に向上している点は評価していいだろう。

同時間の2つの番組を録画可能 EPGはケーブルテレビにも対応しているのはよい。ただ、衛星放送はやや弱いのが難点

●eHome Shellもバージョンアップされ、メッセンジャー機能も統合

 シンフォニーではeHome Shellそのものも改良されている。TVやビデオ周りではライブテレビ試聴時のEPG表示が変更された。従来のMCE 2004では画面の下いっぱいにEPGのデータが表示されややうるさい感じだったのが、表示面積がやや小さくなりスマートになった。

 音楽周りの機能では、音楽のリッピングが簡単になった点があげられる。従来のMCE 2004まででは、音楽のリッピングやプレイリストの編集には一度Windows Media Playerに降りる必要があった。せっかくの10フィートGUIなのに、リッピングやプレイリストの編集のためだけにわざわざWindowsに降りてキーボードとマウスで操作というのではあまりスマートではない。シンフォニーではこの点が改善され、MCEのインターフェイスそのままでWMAへのリッピングやプレイリストの編集が可能になった。

 写真と音楽ファイルをCD-RやDVD-Rなどの光学メディアに書き出すことも可能になっている。写真や音楽ファイルのリストから“CD/DVDの作成”というボタンを選択することで、簡単にCDやDVDにデータを書き込むことができるようになっている。

 Windows Messenngerの機能がeHome Shellへ統合されたことも変更点の1つ。たとえばテレビやビデオを見ているときに、リモコンのEPGのボタンを押すと、Messengerというメニューが表示され、そこからWindows Messengerへのログインが可能になった。

 ログイン状態にしておくと、メッセージが来るたび、画面上にポップアップ表示がされるようになる。画面は半透過で表示されるのでテレビなどを楽しみながらインスタントメッセージを楽しむことができる。

 個人的には、この機能は非常に便利だと思う。たとえば、スポーツ番組をみながら友達とチャットして一緒に好きな選手を応援したりとか、様々な用途が考えられる。もちろん、この機能を利用するには、ワイヤレスキーボードなどが必須になるだろうが、それを補ってあまりある魅力を持つ機能だと思う。

EPGの表示はよりスマートなものになった。この画面はビデオ再生の例だが、テレビの画面ではEPGの番組名などが表示される eHome Shellで直接リッピングすることが可能になった
Messengerのログオン画面 ビデオやテレビなどを見ながらチャットすることもできる

●ネットワーク機器との接続性を向上させたシンフォニー

 シンフォニーのもう1つの大きな強化点は、ネットワーク機器との接続性の向上だ。シンフォニーでは、Media Center eXtender(MCX)と呼ばれるDMA(Digital Media Adaptor)と、Portable Media Center(PMC)と呼ばれるポータブルプレーヤーが標準でサポートされる。

 MCXは、TVにSビデオ端子などで接続し、ネットワーク経由でシンフォニーがインストールされたPCに接続し、コンテンツを再生する機器だ。

 MCXの特徴は、接続にRDPのプロトコルを利用することだろう。現在発売されているDMAの多くは、プロトコルにHTTPを利用しているものがほとんどで、言ってみればWebサーバーに接続するようにコンテンツサーバーへ接続する製品となっている。

 今後は、こうした製品もUniversal Plug and Play(UPnP)をベースにしたものに移り変わっていくとみられるが、それでもコンテンツの転送にはHTTPを利用するものとなっている。

 しかし、RDPを利用するMCXでは、シンフォニーのリモートデスクトップサーバーにリモートアクセスし、eHome Shellをユーザーインターフェイスとして利用してコンテンツを表示する。従来のRDPでは、オーディオやビデオのストリーム再生ができなかったのだが、シンフォニーのリモートデスクトップサーバーはその機能が拡張されている。

 ただ、MCXは一見便利なのだが、ユーザーインターフェイスがeHome Shellに固定されるため、メーカー間での違いを出すことは全くできない。つまり、どのベンダが作っても同じ製品にしかならないのだ。これでは、独自性を重視する日本の家電ベンダに見向きもしてもらえないということは容易に予想ができる。

 そうした意味では、汎用のDMAに対応できるUPnPのメディアサーバー機能を搭載して欲しいものだが、今回のシンフォニーでは、UPnPのメディアサーバー機能は実装されていない。

 ただし、マイクロソフトはWindows XP用(MCEだけではない)のUPnPメディアサーバーとしてWindows Media Connect(WMC)を計画しており、こちらは第4四半期にはユーザーにWindows Updateなどの形で配布される予定となっている。それほど遠くない時期と聞いているので、WMCを追加でインストールすれば、UPnPに対応したDMAを利用可能になる。

International CESで展示されていたMCXのサンプル MCXでは、ユーザーインターフェイスはeHome Shellそのものとなっている

●ポータブルメディアセンターとの親和性が高いシンフォニー

PMCとの同期の設定。設定項目が少なく、PCにあまり詳しくない人にでも設定できるように配慮されている。ただ、ビデオプレーヤーとして利用するにはやや柔軟性にかける仕様なのが気になる

 ポータブルメディアセンターとの親和性が高いこともシンフォニーの特徴の1つだ。eHome Shellの“その他のプログラム”という項目に“デバイスの同期”というメニューが用意されており、このメニューからPMCとシンフォニーの同期を行なうことができる。

 別のレポートで、Windows Media Player 10を利用した時との使用感がレポートされているが、シンフォニーとPMCの同期はリモコンでeHome Shellを操作するだけと非常に簡単だ。

 ただし、MCEの録画形式であるDVR-MSは、MPEG-2にメタデータを付加した独自形式であるため、ファイルサイズはMPEG-2なみに大きく、20GB程度のHDDを搭載しているPMCに転送するとすぐHDDがいっぱいになってしまうという問題点がある。

 また、eHome Shellからの同期項目として、テレビに関しては「先週録画したテレビ番組を転送」というオプションしか用意されておらず、今日録画した番組や今週録画した番組というオプションはない。同期という使い勝手のよさにこだわったが故の仕様だと思うのだが、毎日録画しているというようなヘビーユーザーには使い勝手がよくない仕様だと思う。

●自作PCユーザーのOS選択に幅ができた

 現時点では、10月2日より販売されるとされている自作PCユーザー向けのOEM版ないしはDSP版と呼ばれるWindows XP Media Center Editionが、シンフォニーであるのか、ハーモニーであるのかは明らかにされていない。

 しかし、すでにシンフォニーのRTM版が存在するという現在の状況を考えると、10月2日から販売されるMCEがシンフォニーである可能性は高いといえるのではないだろうか。筆者は、これは間違いなくシンフォニーだと確信している(むろん、マイクロソフトから公式の発表がない以上、あくまで筆者の推測にすぎないのだが……)。

 ここまででみてきたように、シンフォニーは、自作ユーザーにとって新たな選択肢となることは間違いない。たしかに、Professionalと比較して、ドメインログオン機能や128bitの暗号化といった機能は省略されているのだが、Home Editionに若干価格を上乗せするだけで、Professionalの一部の機能も利用できるシンフォニーは、自作市場の裾野を広げる可能性がある。特に「eHome Shell」はパーソナルユーザーにとってメリットが多いだろう。

 アテネオリンピックにそなえて大画面テレビを購入した家庭も少なくないと思うが、最近液晶テレビやプラズマテレビなどにPC入力と呼ばれるアナログRGB入力(D-SUB15ピン)やDVI入力などが用意されている例も増えている。もしそういうテレビを持っているのであれば、シンフォニーを導入したPCをテレビの横に置いてみるというのはどうだろうか。

 重要なことは、PCはどんな形式のデータであっても再生できるというメリットを持っていること、さらには、HDDの増設やCPUの交換などを含めたハードウェアのパワーアップも随時可能であることだ。この点はデジタル家電がどんなに逆立ちしても追いつけない部分であると言え、PCだけが持つ大きなアドバンテージである。MCEをホームサーバーとしてだけでなく、メディアプレーヤーとして利用する大きな理由となるのではないだろうか。

 今年の秋、冬、自作PC業界のトレンドは“シンフォニーマシンの自作”で決まりだ!、といっても言い過ぎではないと思うのだが、いかがだろうか。


□関連記事
【9月3日】Creative「Portable Media Center」レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0903/pmc.htm
【7月13日】Microsoft、Media Center Editionを自作市場向けに提供開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0713/ms.htm
【3月18日】リビングPCの夢よ再び?
〜Windows XP Media Center Edition 2004を再評価
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0318/ubiq53.htm

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(2004年9月10日)

[Reported by 笠原一輝]


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