メディア・ナビゲーションが9月17日に発売した「inksaver(インクセーバー)2.0」は、インクジェットプリンタのインク出力をコントロールするソフトウェアだ。このソフトを利用すると、0%から75%までインク量を制限することができる。メディア・ナビゲーションは、「印刷」に関連したソフトを多く品揃えしている。その会社が、インク量を自動調整するソフトを発売するのはどういう理由からなのだろうか。 ●インク代が高すぎて印刷をためらうユーザー
「写真クォリティの印刷を否定する気持ちは全くない。ただ、全ての印刷物に写真のクォリティが必要なのかという疑問はあった」--インクジェットプリンタ活用ユーティリティーソフト「inksaver2.0」を発売したメディア・ナビゲーションの横山徹社長はこう話す。 同社はソフトウェアのパブリッシャーとして、DVD/CDのラベル作成ソフト「らくちんCDラベルメーカーシリーズ」、名刺作成ソフト「フォト名刺倶楽部」など、印刷して利用するソフト群を販売。「印刷に関連したソフトというのが、当社の特徴」(横山社長)として印刷にはこだわりを見せてきた。 さらに、ユーティリティソフト分野にも進出。「ソフト市場が低迷する中、数少ない元気な分野がユーティリティソフト」として、「CPRシステムガード」を販売している。 今回発売した「inksaver」は、同社の商品のコンセプトである「印刷」と「ユーティリティ」の両方の要素を併せ持った商品だ。 印刷に関連するソフトが多い同社には、「インクにかかるコストが思いの外高い」というユーザーの声が寄せられていた。 横山社長は、「一回、印刷はコストがかかると思ってしまうと、印刷をするのに遠慮が出てしまうようだ。本来は10枚印刷したいと思っても、1枚でいいやと最低限の印刷しかしていないユーザーも多い。ユーザーが印刷に対して感じている敷居のようなものを払うことができるソフトはないだろうかと考えていた」と話す。 そして探し出したのが、カナダのSoftware Imaging Limitedが開発したinksaverだった。 「今回の製品を日本で販売する交渉を開始した昨年の7月時点では、Strydent Softwareという会社だったのだが、今年3月にイギリスのSoftware2000Limited、日本の株式会社ジャストウェイ、韓国のジャストウェイ社が合併してSoftware Imaging Limitedに変更になっている。元々、プリンタ用のドライバソフトなど、イメージング処理に関するソフトウェア開発を手掛けてきた会社で、ウェブでのこの会社を見つけて、日本での販売権を獲得するために交渉を開始した。他にも日本での販売を狙って、交渉してきた企業があったようだが、当社が印刷に関連するソフトを手掛けてきた点などが評価され、今回、販売権を獲得することができた」(横山社長)。 ●一度設定すれば、あとはバックエンドで動作 印刷時にかかるインクの量を自分自身で決めるというと、細かい設定を自分の手でしなければならないように思えるが、実際のソフトの操作は思っている以上に簡単だ。 ソフトをインストールして、最初に設定してしまえば、後はバックグラウンドでinksaverが動く仕組みとなっている。 通常、inksaverはタスクバーの中に入れておくことが可能。実際の印刷フローとしては、ユーザーはそれまで印刷してきたように印刷データを指定し、印刷スタートのボタンを押す。すると、アプリケーションからジョブがプリンタに送られるが、ジョブがプリンタに届く前にinksaverがジョブを捕らえてジョブ内容を確認。inksaverがプリントジョブのライン上でユーザーが指定したモードでの印刷を指示するという流れになっている。
実際に利用してみると、印刷にかかる時間が余分にかかってしまうという印象はない。 また、設定についても、「できるだけ簡便に設定が可能とすることで、ヘビーユーザーだけでなく、普段はユーティリティソフトを使わないような層にまで利用できることを心がけた」(横山社長)という。 確かに、インク量を0%から75%まで設定できるといっても、印刷物に適した%がどの程度かは印刷してみるまでわからない。そこで、ユーザー自身がインク量を設定できるモードに加え、印刷データ別の最適値を表示。例えば、デジタルカメラの撮影データであれば、20%以上のインクデータの削減は勧めない。 インク量をセーブして印刷したものを見比べたが、インク量が少なくなっていくとかすれが目立ってくる。写真を撮影して友達にプレゼントするのであれば、インク量は減らさず、通常モードで印刷した方がいいだろう。だが、確認のために印刷をする場合であれば、インク量をセーブして印刷したもので十分だ。 そしてセーブしたインクの量は、金額で換算して表示する。しかも、利用者がそれまで使っていたインク代に比べて、1年でどの程度コスト削減が可能なのかを金額で示すので、利用者ははっきりとinksaverの働きぶりを理解することができるのだ。 インク代をセーブするというと、プリンタメーカーに反旗を翻したソフトに思えてしまうが、「このソフトを利用することで、印刷する機会は増加するだろう」と横山社長は話す。そして、「気軽に印刷する機会を増やすのがこのソフトの狙いでもある」という。 特に年末は、年賀状など家庭でプリンタを使う機会が増えてくる。9月17日という発売日は、そこを意識した発売日で、「製品を評価してもらった流通側の反応は、年末商戦最適という声だった。是非、年末商戦で売れ行きを伸ばしたい」と意欲を見せる。 ●未対応のレーザープリンタへの対応も将来的には視野に 今回発売になる製品は、インクジェットプリンタにのみ対応しているが、実際に大きな反響があると思われるのが、レーザープリンタへの対応だ。個人の場合、試し印刷をする機会はそう多くはないだろう。だが、企業では、例えば提出用書類を確認のために印刷して文字や数字の間違いがないか確認するといった需要がある。 しかも、レーザープリンタのドラムは、インクジェットプリンタのインクのように頻繁に変えることはないだろうが、コスト削減という点では個人ユーザー以上に敏感なのが企業ユーザーだ。 「確かに、レーザープリンタへの対応はしていないのかという問い合わせは来ている。今回、インクジェットプリンタ対応の製品を発売したので、その延長としてレーザープリンタのインク量を調整するソフトも手掛けてみたいとは考えている」と横山社長は話している。 □メディア・ナビゲーションのホームページ (2004年9月22日)
[Text by 三浦優子]
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