元麻布春男の週刊PCホットライン

iAMT、Montecitoなど新技術が公開されたIDF



 9月7日から3日間の予定で2004年秋のIDFがスタートした。'97年9月にスタートした年2回開催のこのイベントも、8年の歴史を積み上げたことになる。15回目となる今回、出席するIntel役員のうちの最上位者によって行なわれる最初のキーノートスピーチを受け持ったのは、Paul Otellini社長だ。

 Otellini社長が最初にトップキーノートを行なったのは2001年秋のIDFで、以来、毎年春のIDFではCraig Barrett CEOが、秋のIDFではOtellini社長と交代で行なうことが恒例となっている。

 業界全体のトレンドや業況にフォーカスすることが多いBarrett CEOのキーノートスピーチに対し、Otellini社長のキーノートスピーチはもう少し自社の製品や技術寄りの話題が多くなるのが持ち味だ(これに対してAndy Grove会長のキーノートスピーチは、自らテーマを設定し、それに即して語るメッセージ性の強いものだったように思う)。今回のキーノートスピーチも、この印象が大きく変わるものではなかった

●システムの稼働状況にかかわらず遠隔操作を可能にする「iAMT」

 Intelの技術、ということですぐに思い浮かぶのは、MHzを超えた価値を生む「T」(Technology)の話だ。すでにIntelは以下の6つのTを公表している

・HT(Hyper-Threading)
・EM64T(Extended Memory 64)
・VT(Vanderpool)
・ST(Silvervale)
・LT(LaGrande)
・CT(Centrino mobile)

 Otellini社長は、このうちクライアントPC向けのHT、LT、EM64T、VTの現状に触れつつ、今回新たに7番目のTとしてiAMTを発表した。iAMTはIntel Active Management Technologyの略。システムの状態(稼働中かシャットダウン中か)やOSの状態(正常に動作しているか、クラッシュしているか)を問わず、ITマネージャが遠隔地からシステムをコントロールし、障害の原因を調査したり、復旧に必要な措置をとることを可能にする技術。

 iAMTがあれば、ITマネージャがユーザーの席まで実際に足を運ぶことを最小限にすることができる。また、XScaleベースのモバイルデバイスからItanium 2をベースにしたメインフレーム級のサーバーまで、すべてのIntelプラットフォームについてOS等に依存しない共通した管理を可能にする、Intel Cross Platform Manageability Programというイニシアチブの立ち上げも発表された。

 確かにPC、あるいはITシステム全体の管理というのは、大企業を中心に大きな課題となっている。が、既存の6つのTが、ユーザーがコンシューマであるか、エンタープライズであるかを問わず活用できる汎用性の高いものであった(STをコンシューマーが利用することはないかもしれないが、それに相当するものとしてVTがある)のに対し、iAMTは専らエンタープライズ向けであるという点で、若干質が異なっている。

 また既存の6つのTが、必ずしもCPUだけの技術ではない(CT、LT等は特に)ものの、CPUの占める比重が高かったのに対し、iAMTはどちらかというとプラットフォーム/マザーボードを対象とした技術であるという点も、異質な印象を与える。

●Longhornを後押しするIntel

Otellini社長のキーノートで行なわれたVTのデモ。基幹アプリケーションが動作する赤いマシン、個人のアプリケーションが動作する黄色いマシン、Linux上でワークステーションアプリケーションが動作する緑色のマシン、管理ツールが動作する青いマシンの4台が、仮想化技術を用いることで1台にまとめることができる、というとても分かり易いもの

 残るクライアント向けのTのうち、すでにHTとEM64Tは実用化がスタートしているが、VTとLTについてはLonghorn待ち、という状況が改めて確認された。いずれの技術もPrescott導入時に新しい技術としてアナウンスされたもので、特にLTに関してはPrescottでのサポートが表明されたものだ。ただし現在出荷されているPrescottではまだイネーブリングされていない。

 しかし、Longhornのリリースは、先日明らかになったWinFSの先送りによる前倒しを考慮しても2006年とされている。現時点で2006年ということは、さらに遅れる可能性も否定できない。今回のキーノートで、Otellini社長はサーバー、デスクトップ、モバイルのすべてのセグメントについて、2005年中にデュアルコア化することを明らかにしており、Prescottのダイ上に準備されているであろうVTやLTの機能が利用されることがあるのかは疑わしい状況になりつつある。

 MicrosoftはWinFSを先送りにしてLonghornの実用化を急ぐ方針を明らかにした際、Indigo(Webサービス)やAvalon(新しいグラフィックスアーキテクチャ)を現行のWindows XP向けにも提供する方針を明らかにした。このような発言の意図の1つは買い控え、特に企業がWindows XPをスキップしてしまうことを防止するためだと思われる。具体的にはWindows 2000を利用しているユーザーがWindows XPへのアップグレードを見送り、直接Longhornへのアップグレードを企画してしまうというケースなどだ。

 ところが、同時にこれはWindows XPとLonghornは何が違うのか、LonghornはWindows XPの焼き直し(Longhorn = Windows XP + Indigo + Avalon)なのではないか、という議論を呼ぶことになった。

 しかし、こうしたIntelの説明を聞く限り、Longhornでなくてはサポートされない(できない)機能も多数あることは明らかだ。もちろん、Windows 98でサポートされず、Windows 98 SEでサポートされた機能もあったわけで、これだけでLonghorn = Windows XPの焼き直し論を否定することにはならないかもしれないが、単純なお化粧直しでないことも事実のように思われる。

 逆に、こうしたハードウェア側からの要請があることが、最大の目玉機能であるWinFSを先送りしてもLonghornのリリースを2006年に実現しなければならない、というモチベーションになっている可能性もある。

●VTとSTの違いが明らかに

 さて、ここで名前が出てきたVT(Vanderpool Technology)はシステムを仮想化するクライアントPC(Pentium/Pentium M)向けのテクノロジだが、同じ仮想化技術でもサーバー(Xeon/Itanium)向けのものはST(Silvervale Technology)と呼ばれる。VTとSTで何が違うのか、ということは現時点で公式には明らかにされていないが、どうやら明確に違う点が見つかった。システムを仮想化し複数のOSを実行するには、システムをそれぞれのOS向けにパーティショニングしリソースを配分する機構(仮想マシンモニタ、VMM)が必要になる。VTとSTは、VMMソフトウェアをサポートするハードウェア(VTとSTの仮想化はハードウェアによりエンハンスされたもの)だと考えられる。

 VTとSTの大きな違いの1つは、VMMソフトウェアをどこで動かすか、という点にある。クライアントPC向けのVTでは、VMMがホストOS上で動作するのに対し、サーバーPC向けのSTではEFI上で動作するようだ。つまり、VTではホストOS(親OS)からゲストOSの立ち上げを行なうのに対し、STではEFI上で動作するモニタからすべてのOSを同列に扱うことになる。

 仮想マシンの管理がOSから独立しているという点でSTの方が望ましいに違いないが、クライアントPC向のBIOSではそのようなソフトウェアを実効することができない(容量制限、コードがリアルモードetc)。もちろんIntelはIA-32に対してもEFIの導入を打ち出しているが、2006年のタイムスパンではクライアントPCに間に合うとは思いにくい。Longhornサーバ + XeonあるいはItaniumではSTが、Longhorn + Pentium/Pentium MではVTがそれぞれ使われることになるのだろう。

 もちろん、将来的にクライアントPCにEFIが標準的に搭載された時、STとVTの垣根はかなり低くなるが、それはLonghornのさらに先の話だ。その時がいつくるのか、本当にくるのかどうかは分からないが、いつまでもリアルモードコードのファームウェアに固執することもないだろう。

●2005年に登場するMontecito

WiMAXの評価ボードを手にするOtellini社長

 さて話が脱線してしまったが、今回のOtellini社長のキーノートでは、これまで形をともなっていなかった技術が、その姿を現した。1つは広域無線ネットワークのWiMAX、もう1つがIA-64アーキテクチャの最初のデュアルコアプロセッサであるMontecitoだ。

 現在IEEE 802.16で標準化が進められているWiMAXは、広域にワイヤレスブロードバンド環境を提供しようというもの。わが国ではどのような形で実用化されるのか今のところ不透明だが、今回初めて評価ボードが公開された。将来的にはCentrinoのオプションにも設定される予定だが、現在の評価ボードはそれだけでノートPCのマザーボードよりも大きい。

 2005年に登場するMontecitoは、90nmプロセスで製造されるIA-64アーキテクチャ初のデュアルコアプロセッサ。17億2,000万個のトランジスタを集積し、コアあたり12MBのL3キャッシュ(計24MB)と、コアあたり1.2MBのL2キャッシュ(命令1MB、データ256KB、合計2.4MB)を搭載する。このMontecitoを含む今後のエンタープライズ向けプロセッサのロードマップについては、午後に行なわれたEPGのAbhi Y. Talwalkar事業部長によるキーノートで説明が行なわれた。そこではXeon DP、Xeon MP、Itaniumの各セグメントごとに新しいプロセッサのコード名が公開されている。

 さてMontecitoでは2つのコアに加え、すでにIA-32プロセッサで導入されているHyper-Threadingに類似したマルチスレッド化技術が同時に導入されることになっており、OSからは1つの物理プロセッサが4つの論理プロセッサに見える。

 既存のItanium2とのソケットレベルの互換性が保たれているため、交換するだけでOSから見たプロセッサの数が4倍になる。4ウェイサーバーは16ウェイサーバーに、32ウェイサーバーは128ウェイサーバーへと変わる。Otellini社長のキーノートでは、4ウェイサーバーにMontecitoを搭載し、16ウェイサーバーとして動作させるデモが行なわれた。

 さらにOtellini社長は現在世界で最も高速な日本の地球シミュレータを上回る、世界最高速のスーパーコンピュータをItanium2プロセッサを用いて構築するNASAのプロジェクト「Columbia」と、NASAの研究者を紹介した。

 今回のIDFは、事前に様々な製品の提供が遅れることが明らかになるなど、新しい話題に乏しいのではないかと懸念されていた。その懸念は半分当たっていたが、それなりに新しい話題もあった。また、WiMAXやMontecitoが具体的な形として登場したことに加え、次世代のサーバー用メモリであるFB-DIMMも展示会場に姿を現した。これまで話だけだったものが、徐々に形をとっていることが確認できたのも、今回の収穫といえるかもしれない。

【動画】Itanium2ベースのシステムで、ハリケーンによる大気の流れをリアルタイムでシミュレーションするデモ 展示会場のNEC Electronics AmericaのブースにあったElpida製のFB-DIMM。中央のバッファ/インターフェイスチップ(AMBチップ)をNEC Electronics Americaが提供する。同様のチップはInfineon等も発表している

□関連記事
【9月9日】【IDF】ポール・オッテリーニ氏基調講演レポート
デュアルコア、Vanderpoolなどの新技術をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0909/idf02.htm
【9月9日】【海外】IA-32系CPUもデュアルコアからマルチコアへ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0909/kaigai118.htm
【9月9日】【笠原】“Rosedale”を武器に普及を目指すIntelのWiMAX戦略
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0909/ubiq76.htm

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(2004年9月10日)

[Text by 元麻布春男]


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