●600番台のProcessor Numberが登場 Intelは「Pentium 4 6xx」ファミリを、来年(2005年)早々に投入する。Pentium 4 6xxの正体は、90nm版Pentium 4(Prescott:プレスコット)のL2キャッシュ強化版「Prescott 2M」。Intelは、これまで高価格のPentium 4 Extreme Editionブランドだけで投入する計画だったPrescott 2Mを、Pentium 4 6xxとしてより広範囲に低価格帯にまで普及させる。 Pentium 4 6xxはL2キャッシュが2MBに増量されたほか、「Enhanced Intel Speedstep Technology(EIST)」と呼ぶモバイル同様のSpeedStep技術も実装される。SpeedStepが実装されているためPentium M系に見えるかもしれないが、CPUコアはDothanコアではなくPrescottコアだ。 今回のPentium 4 6xxファミリ投入には、これまでの新CPU投入と大きく異なる点がある。それは、Pentium 4 6xxがPentium 4 5xxを置き換えるものではない点。Intelは、Pentium 4 6xxを、現在のPentium 4 5xxファミリと並行して販売する。全く同じ価格帯に、Pentium 4 6xxとPentium 4 5xxが並ぶ。ただし、同じ価格帯では、Pentium 4 6xxの方が、動作周波数が低くなる。つまり、Intelは、同価格で、“高クロックだがL2キャッシュが1MB”のPentium 4 5xxと、“L2キャッシュが2MBだが低クロック”のPentium 4 6xxの選択肢を提供する。 IntelのPentium 4 6xxでの新戦略は、2005年中盤のデュアルコアCPU「Smithfield(スミスフィールド)」での戦略が同種のものである可能性を強く示唆している。IntelはパフォーマンスCPUがデュアルコアに完全に置き換わるのではなく、デュアルコアとシングルコアの両ラインが並行して提供されると説明しているという。とすると、2005年前半はPrescott 2MとPrescottが同価格で提供され、2005年後半はSmithfieldとPrescott(Prescott 2M)/Cedarmillが同価格で提供されると推定される。 ●揺れるIntelのCPUロードマップ Intelのデスクトップロードマップは揺れている。1カ月置きに大きな変更が加えられ、ほとんど混沌状態だ。 Intelは、もともと、2005年の第2四半期に次期CPU「Tejas(テハス)」を投入する予定だった。だが、5月頃にTejasをキャンセル、その際に、Prescott 2Mを代わりに2005年前半のフラッグシップCPUに据えた。Prescott 2Mを、“Pentium 4 7xx”ファミリとして今年第4四半期に投入、パフォーマンスとメインストリームのカテゴリのCPUを、PrescottからPrescott 2Mに置き換えて行く計画だった。 だが、この計画は8月頭頃に変更され、Prescott 2MはPentium 4 XEブランドだけで投入されることになった。つまり、Pentium 4 7xx計画は立ち消えとなり、Prescott 2MもハイエンドCPUラインでしか提供されない計画となった。ところが、今回のロードマップ変更で、再びPrescott 2Mはメインストリームに投入されることになった。
Pentium 4 6xxと5xxは、いずれもNetBurst(Pentium 4)系アーキテクチャの90nmプロセスCPU。CPUコア自体はほとんど変わらないと見られる。どちらも、CPUソケットはLGA775、FSBは800MHzで、Hyper-Threadingが有効にされている。 最大の違いはキャッシュ量で、従来のPentium 4 5xx(Prescott)が1MB L2キャッシュであるのに対して、Pentium 4 6xxでは2MB L2キャッシュに増量されている。一方、来年第1四半期時点での最高クロックは、Pentium 4 5xxの4GHzに対して、Pentium 4 6xxは3.8GHz。周波数が抑えられているのは、増えたSRAM分の発熱のためかもしれない。増えたL2キャッシュ分も含めたTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)を、現在のPerformance FMBの115W枠に収めるためにクロックを抑えている可能性がある。 また、Pentium 4 6xxでは、Enhanced Intel Speedstep Technology(EIST)も搭載される。Intelは、以前からSpeedStepをデスクトップに導入する計画を進めていた。昨春のインタビューで、Intelのデスクトップ部門を担当する、ウイリアム(ビル)・M・スー(William M. Siu)副社長兼ジェネラルマネージャ(Vice President and General Manager, Desktop Platforms Group)は「(SpeedStepの実装は)真剣に検討している。モバイルではバッテリ駆動時間を伸ばすためにSpeedStepを使うが、デスクトップでは熱設計などを容易にするために使う方向を検討している」と答えていた。 EISTの実装自体は、Prescottコアで実現しており、それを、Pentium 4 6xxを機に有効化するようだ。 Intelは、Prescott 2Mを、今年第4四半期に90nm版Pentium 4 Extreme Edition(XE)としても投入する。Pentium 4 XE版Prescott 2MとPentium 4 6xxの違いはFSB。Pentium 4 XEはFSB 1066MHzに拡張されるが、Pentium 4 6xxは従来通りFSB 800MHzのままだ。 各CPUファミリの機能は下の一覧の通り。 【Intelの90nmプロセスLGA775版デスクトップCPU】
●価格レンジが並ぶPentium 4 6xxと5xx 現在のIntelのデスクトップ製品計画は下の図の通り。2005年第1四半期に、Pentium 4 6xxファミリとして、Prescott 2Mが一斉に登場する。670(3.8GHz)~640(3.2GHz)まで4スキュー(製品単位)で、270ドルレンジから800ドル台までの構成で提供される。ハイエンドではPentium 4 XEとしてPrescott 2Mが投入されるため、Prescott 2Mはミッドレンジからハイエンドまで一気に揃うことになる。 しかし、すでに説明した通り、Intelは、1MB L2キャッシュ版のPentium 4 5xx(Prescott)ファミリも、クロックを4GHzまで引き上げて継続して提供する。IntelはPentium 4 5xxファミリの価格も今年8月の改定価格を来年前半まで維持する予定でいる。そのため、ミッドレンジから上では、Pentium 4 5xxとPentium 4 6xxが並行して、同価格レンジで販売されることになる。 Pentium 4 5xxと6xxそれぞれの動作周波数とProcessor Number、そして2005年第1四半期時点の予想価格は次の通りとなる。
並べて比較すると、Processor Numberに法則性があることがわかる。まず、Pentium 4 6xx/5xxで、周波数と下2桁が揃えられている。例えば、3.8GHzならどちらもx70番になる。ただし、価格レンジは異なる。Pentium 4 6xxの方が、L2キャッシュによる性能向上分だけ高く設定されているため、同じ周波数で比較すると1ランク価格が高くなる。つまり、Intelは1MBのL2キャッシュ増量=200MHzに換算しているわけだ。 IntelはProcessor Numberによってクロックを目立たなくすることで、自らが打ち立てたGHzマーケティングがら離れた。その結果、異なるクロックの製品を同価格帯に並べることが可能になりつつある。 おそらく、Intelは、今後、こうした複数のCPUファミリを同価格帯で提供する戦略を継続する。次に控えているのは、デュアルコアCPUとシングルコアCPUの併存だ。今回のPentium 4 6xxファミリの価格戦略は、そのための布石かもしれない。 (2004年8月31日) [Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]
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