元麻布春男の週刊PCホットライン

SP2に合わせてPCを新調する



●PCの買い換えタイミング

ELSA EX-VISION 1500TV

 人がPCを乗り換えるタイミングは様々だ。一番現実的なのは、ボーナスなどのタイミングだろうか。だが、ボーナスと縁がなくなって久しい筆者には、残念ながら該当しない。

 今原稿を書いている仕事マシンは、昨年の5月から使っているものだが、それは前の仕事マシンのHDDがクラッシュするという事故を受けてのもの。こちらで更新するタイミングを選んだわけではない。

 筆者が自ら進んでPCを更新する場合、そのタイミングの根拠となるのは、OSのバージョンアップか、システムが一定以上疲弊してしまった場合かのいずれかであることが多い。

 OS、といっても実際に仕事に使っているのはWindowsだから、そのバージョンアップということになるが、これはほぼ避けられない。

 ソフトウェアや周辺機器の対応という点から、いずれは新しいバージョンに移行しなければならないのは間違いないし、こういう仕事をしている以上、普段から最新バージョンを使っているべきだと考えるからだ。

 システムの疲弊というのは、ある程度の期間PCを使い続けていると、どうしてもシステムの調子が悪くなっていくことを指す。もちろん、初期不良を別にすれば、ハードウェアが簡単に壊れることはない。不調になっていくのはもっぱらソフトウェア的な要因によるものだ。

 アプリケーションやパッチのインストール、プラグイン等の利用などにより、HDD上のシステムソフトウェアは日々更新されていく。その積み重ねで、どうしてもシステムは疲弊していくようだ。筆者の手元にあるマシンでも、たとえばTV録画やDVDの書き込みに使っているものは、疲弊の進行速度は極めてゆっくりとしたものだが、仕事マシンのように常時利用しているマシンの進行速度は速い。

 昨年5月から使っている今の仕事マシンも、あまり調子がよろしくない。こうして原稿を書くのは何とかこなせるのだが、各所が腐りつつある。一例は、コントロールパネルの管理ツールで、一時期はこれを開くことができなかった。今は開くことはできるが中身が空っぽという状態だ。

●マシンの“疲弊”は避けられない

 こうした不具合がほかにも散見されるため、そろそろマシンを更新するタイミングがきたように感じている。録画マシンの疲弊度の進行速度が遅いことを考えれば、疲弊の責任のすべてがMicrosoftにあるわけでないことは確かだし、PCがシステムソフトウェアをハードディスクという書き換え可能なメディアに持つ以上、ある程度は避けられない問題に違いない。

 実は、今回仕事マシン更新のタイミングを、Windows XPのService Pack2のリリースに合わせるつもりだった。まぁ、今もタイミングを合わせるつもりなのだから、過去形で書くのは正しくないのだが、6月が7月になり、そして8月と延び延びになるのを見ていると、つい過去形のひとつも使いたくなろうというものだ。

 それはともかく今回のSP2は、Service Packといいながら、本来なら加えられないハズの新しい機能が含まれている。変更の度合いは比較的大きいわけで、できることなら次の新しいマシンは、SP1をインストールした上でSP2を適用するのではなく、SP2が適用されたパッケージ版のOSを新規に購入して利用したいと思っている。

 SP1にSP2を加えたものと、最初からSP2が適用されたWindows XPに何か違いがあるのか、と聞かれると困るが、両者が100%同じでないことは間違いない(これはSP1の時もそうだった)。ただ、この差が有意なものかと言われると、おそらくMicrosoftは両者に有意な差はない(テクニカルサポート的に同じ)と答えるだろう。筆者が新しいパッケージにしたいのは、“げんかつぎ”、あるいは“おまじない”のようなものである。

 問題は、流通パッケージの更新が、SP2がダウンロード可能になってから、さらに1カ月近くかかるのではないかと考えられることだ。つまり、筆者がマシンを更新できるのは9月下旬ということになり、まだ2カ月近く待たねばならない。それまで今の仕事マシンが持ちこたえてくれるか、祈るような気分である。

 ただ、祈ってばかりでもしょうがないので、次の仕事マシンのベースとなる部分はすでに用意し、不測の事態が生じた時に、すぐ代替できる体制を作った。といっても、これまで実験用に使っていたパーツのうち古くなったものの中から、適当にセレクトして、ケースに組み付けただけのこと。次のシステムは、Intel製マザーボードであるD875PBZを中核にしたものになる。

●TVチューナカードの進化とサウンドカードの衰退

 D875PBZ以外のパーツも基本的な部分は決まっているのだが、まだ決めていないのがサウンドカードとTVチューナカードだ。筆者はWindows 3.0の時代、Video for Windowsがベータ版であった頃から、ずっと一貫してTVチューナカードの愛用者であり、10年以上使い続けている。後述のフィーチャーコネクタの有無という観点から、WeitekのPowerシリーズのグラフィックスチップを使わず、S3製のグラフィックスチップに固執したほどである。

 この間、フィーチャーコネクタを利用したアナログオーバーレイ、VGAコネクタを利用したアナログオーバーレイ、PCIバスによるデジタルオーバーレイと、表示方法だけでも進歩してきたし、ビデオキャプチャの際のエンコード処理も、ソフトウェアからハードウェアへと変遷してきた。おそらく将来的には再びソフトウェアへと帰結するのが技術的な流れのハズだが、DRMがその流れに影響を与えるかもしれない。

 OSの堅牢性が向上したことも手伝って、昔はTV番組がキャプチャできるだけで嬉しかったのが、今では予約録画さえ当たり前になっている。

 逆に、かつてほどの賑わいがなくなってしまったのがサウンドカードだ。PCIバスの登場により、カード上にプロセッサ(DSP)やメモリを搭載する意義が薄れ、一般向けのサウンド機能はソフトウェア(マザーボード上のAC'97)で十分ということになってしまった。

 最新のIntel 915/925チップセットに内蔵されているIntel High Definition Audioでは、さらに性能と機能が向上しており、ますますサウンドカードの市場は狭まってしまうだろう。だが、筆者が使うD875PBZにはオンボードサウンドがない。とりあえずサウンドカードを何か用意しなければならない。

 サウンドカードに関して、筆者の最大の要求はS/PDIFによるデジタル出力をサポートしていることだ。アンプのコネクタの関係から光の方が望ましいが、同軸でも対応可である。いずれにしてもPCのサウンド出力をS/PDIFで出力することは、幹線道路に近い(違法CBの影響を受けやすい)筆者の住環境から必須条件だ。

 で、ここでサウンドカードとTVチューナカードのかかわりが出てくる。S/PDIF出力をサポートしたサウンドカードやマザーボード上のオンボードサウンドの多くは、入力されたアナログサウンドをデジタル出力してくれない。アナログサウンドをデジタル出力してくれるのは、CreativeのSoundBlaster Live!やAudigyシリーズ、あるいはAudiotrak製のサウンドカード(実際に使ったことはないが、パッケージにうたわれているので可能なのだろう)など一部の製品に限られる。

 ヤマハのYMF744/754シリーズは、一部のドライバでは可能なのだが、Windows Updateで配布される新しいWHQLドライバを入れるとこの機能が使えなくなるという微妙さだ。同社はこの事業から撤退してしまったので、今後のサポートは期待薄である。

●ELSA「EX-VISION 1500TV」を試す

筆者が以前使っていたISAベースのTVチューナカードであるHauppauge!の「Win/TV Celebrity-N」。VGAコネクタを利用したアナログオーバーレイ方式のカードだ。初代のWin/TVはフィーチャーコネクタ利用だったと思うが、今回発掘することができなかった。下に置いたのがEX-VISION 1500TVで、技術の進歩を実感する

 これまで筆者はTVチューナカードとして、カノープスのMTVシリーズを愛用してきた。何よりソフトウェアに予約録画を任せられるだけの安心感があるからだが、問題はMTVシリーズが音声モニタ用に、サウンドカードとアナログ結線しなければならないことだ。これは最新のMTVX2004HFでも変わらない。

 つまり筆者の環境でMTVシリーズを利用するには、アナログ入力をデジタル出力可能なサウンドカードと併用しなければならない。また実際、そうしてきた。しかし、将来的な流れを考えた時、アナログ入力のデジタル出力という「特殊機能」をサウンドカードにいつまでも求めていていいのか、と考えてしまう(いずれPCでアナログサウンドを扱うことはなくなるだろう)。

 また、もう1つの理由として、複数のTVチューナカードを併用する際の問題も上げられる。TVチューナカードを何枚同時利用できるかが、サウンドカードのミキサーのチャネル数に制約されるのは理不尽だろう。キャプチャファイルの音声については問題がないとしても、音声付でモニタできなくなる。

 幸い今回は、本番システムを構築するまで2カ月近い余裕があるため、時間的な余裕がある。この時間を利用して、MTVシリーズ以外のTVチューナカードを試してみようと考えた。

 付属のソフトウェアの安定度は十分か、モニタ音声をデジタル出力(DirectSoundによるPCIバス経由の出力)して使い勝手で制約されることはないのか、テストしてみたい。その候補として白羽の矢をたてたのがELSA JapanのEX-VISION 1500TVだ。

 そもそもアナログオーディオ出力がない(モニタ音声はPCIバス経由)し、最新のソフトウェアを用いると最大4枚まで同時利用可能だという。4枚使うかは別として、2枚挿しできると便利かもしれない。筆者が今回用いるマザーボードはATXで、ケースもそれなりに大きいが、Low Profileに対応可能ということは、将来的にいいことがあるかもしれない(小型のTV録画専用機を作る、といった場合)。

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(2004年8月4日)

[Text by 元麻布春男]


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