筆者にとってデジタルカメラは「ビミョー」なアイデムだ。仕事柄、その一部として写真を撮るが、それでお金をもらっているわけではない。あくまでも書いた原稿のオマケ、いわばサービス品である。だから、写真の出来上がりより、携帯性や使い勝手を優先することもあるし、それでいいとも思っている。 今、筆者が常用するレギュラーカメラは、モノを撮るのがキヤノンのPowerShot A60、IDF(Intel Developer Forum)等の取材用がパナソニックのDMC-FZ1と富士フィルムのFinePix F401というところ。 A60は手元に残っていたCFとニッケル水素単三電池(一長一短あるが、基本的に筆者は専用リチウムイオン充電池の方が好き)の救済用(?)に買った側面もある。FZ1は、高ズーム倍率と小型軽量が魅力だが、電池寿命が筆者の希望に遠く及ばない(できれば現状の4倍くらい欲しい)。それもあってF401をプレゼンテーションのスライド撮影用などの目的に併用している。 F401はトータルでの使い勝手が良く、今でも良いカメラだと思うのだが、記録媒体がスマートメディアなのが難点だ。スマートメディアは128MBどまりで将来性がないし、最近のノートPCが備えるフラッシュメモリ用のスロットは、SDカードあるいはSDカードとメモリースティックの兼用が主流になりつつある。筆者も、次の世代の標準メディアはSDだと思っているので、できれば出張に持っていくカメラはSDで統一したい。 ●「広角に強い」個性は健在
というわけで、最近記録媒体がSDのカメラをいくつか試している。しばらく前にリコーのCaplio RXを取り上げた理由の1つは、記録媒体がSDだったからだ。今回取り上げるCaplio GXは、RXの上位になるカメラ。もちろん記録媒体はSDで、35mm換算で28mm相当の画角をサポートしているのもRXと同様である。オプションの専用リチウムイオン充電池(DB-43)も、RXと共通のオプションだ。 Caplio GXがRXと異なるのは、ズーム比がRXの3.6倍(35mm換算で28mmから100mm)に対し、3倍(同28mm~85mm)に短縮されたところ。テレ端の焦点距離が短くなったのは残念だが、ワイド端が28mmというのがこのところのリコー製デジカメのアイデンティティ。35mm前後からの3倍ズームにならず、28mmからの3倍ズームの方が個性があって良い。 逆に、ズーム比が小さくなったおかげで、レンズの明るさはF2.5(ワイド端)~F4.3(テレ端)と、RX(F3.1~F5.8)に比べ若干だが明るくなった。前述のようにズーム比が異なるので、テレ端同士を直接比べてもあまり意味がないが、ワイド端でもGXは明るくなっている。また、実際に使って見ると、GXのレンズの方が周辺光量低下が少なくなっており(全くないわけではない)、レンズが上等になったことは間違いないと思う。加えて、起動時、ズーミング時の動作音が静かになっている(レンズの繰り出し音が小さい)のも、個人的には高く評価したいポイントだ。 記録画素数は、RXの324万画素から500万画素へとアップした。が、上で挙げた3機種(A60、FZ1、F401)がすべて200万画素のカメラであることからも分かるように、筆者は画素数を必要としない。A3どころか、A4で写真を印刷するということもしないし、写真の用途はPCディスプレイで見ることと、Web等の記事への埋め込み用であるからだ。 むしろ200万画素くらいのカメラやCCDの方が、絵が生き生きしているような気さえしている。最近の画素数の多いデジカメの絵は、こねくりまわしたような印象を受けることもあるし、出来すぎな気がしなくもない。リコーの場合、割と素直な絵だとは思うが、逆に色抜けがもうひとつで渋すぎる気もする。 ●書き込み速度などの不満も
そうした画質面より、筆者にとって重要なのは、Caplio GXのメディアへの書き込み速度が遅いことだ。爆速をうたうCaplio RX(確かに起動時間やシャッターラグは小さい)も、メディアへの記録速度は爆速ではなかったが、それでも待たされる感じはあまりなかった。電源ON、撮影する、電源OFF、という流れが、それほどストレスなく行なえた。しかし、GXでは明らかにこの流れが、メディアへの書き込み完了を待つため妨げられる。 画素数が増えているのだから、記録時間が増えるのもまぁ当然なのだが、やはり画素数を増やすだけでなく、画像処理エンジンの改良や内蔵バッファを増やすなど、何らかの補償措置が必要だったのではないかと思う。内蔵バッファが2枚分では、連続撮影も辛い。少なくともRXの方が動作がサクサクしていた。 この記録時間が延びたせいもあってか、バッテリの持ちも、GXよりRXの方が若干良かったと思う。が、RXのバッテリは、一部で原子力と呼ばれるほど長持ち(オプションのDB-43を使った場合)なので、GXでもバッテリ寿命は十分以上ではある。あくまでもRXとの比較では、という話だ。なお、7月23日付けでリコーからCaplio GX用のファームウェアアップデートがリリースされた。目的はAFの安定性向上とSD書き込み時の安定性向上だということで、早速導入してみたが、記録速度に体感できるほどの向上はなかった。 さて、以前Caplio RXを取り上げた時、ボディの継ぎ目の処理など、作りがあまり良くないことに触れた。筆者が購入したCaplio GXは、あからさまな段差や隙間はないのだが、工作精度が上がったというより、「あたり」を引いただけ、という気がしなくもない。
機械的な部分で残念なのは、RXで真円に近く押しやすかったシャッターボタンが、RXでは楕円に近いひしゃげた形となり小さくなってしまったことだ。また、GXに設けられたホットシューは、内蔵ストロボの設定と連動する不思議な仕様(内蔵ストロボをONにしないと外部ストロボも発光しない)。専用オプションの設定もなく、これではポケットから出し入れする際、布地にひっかけやすくなっただけのように感じる。 画質の傾向は、基本的にRXと同じ。若干ノイジーで、発色は渋い。人工照明など条件によっては黄色が被りやすい印象もある(おそらく画像処理エンジンは同じなのではないだろうか)。どうしても500万画素、という理由がないのであれば、GXの発売でさらに実売価格が下がったRXの方が動作が軽いだけ良いのではないかと思う。 ●22mmからの広角ズームを実現するワイコン
ではCaplio GXを選択するメリットがないかというと、実はある。それはオプションで用意されているワイドコンバータ、DW-4だ。元々Caplio 400Gwide用のオプションとして設定された0.8倍のワイドコンバータだが、これまたオプションのフード&アダプター(HA-1)を併用することで、GXに取り付けることが可能だ。 このワイドコンバータは画質の劣化が少なく、ズームの全域で用いることが可能なため、つけっぱなしにすることで、Caplio GXは22mm~66mm(35mm換算)の3倍ズーム機となる。広角22mmが使えるデジタルカメラとしては、世界最小クラスではないかという気がする(すべてのデジタルカメラを調べたわけではないが)。テレ端も66mmになってしまうが、世の中望遠に強いデジカメは少なくない。そうしたカメラと併用すると割り切れば、これでも良いと思う。 ちまたには、35mm前後からの光学3倍ズームの300万画素~500万画素のデジタルカメラが溢れている。言うまでもなく、こうしたスペックのデジタルカメラは使いやすく、売りやすいから売れ筋になっているわけだが、逆に言えば、来年あるいは再来年の携帯電話は必ずこのスペックを狙ってくる。たとえスペックが同じでも、カメラと携帯電話ではレンズの明るさや描写力が違ってくるハズだが、レンズ付フィルムがローエンドコンパクトカメラ市場を席巻したように、もう携帯電話が内蔵するカメラ機能で構わない、というユーザーもたくさん現れることだろう。リコーのような個性派は、そんな時代にも生き残れる確率が高いのではないか。 筆者の半分仕事、半分遊びカメラという視点からみて、たとえばセミナーのスライドを撮るのにCaplio GXはF401より優れているかと聞かれれば、答えはノーだ。F401の方がレンズが明るく、CCDの感度が高いから、純粋に仕事のメモ用途を考えればF401の方がいい。けれども、22mmからの3倍ズームという個性が光るCaplio GXは、あまり仕事色が強くない旅行ならこちらを持っていこうと思わせるものがある。買ったり売ったりであまりカメラを手元に残していない筆者だが、このCaplio GXは手元に残しておこうと思っている。 【お詫びと訂正】
□リコーのホームページ (2004年7月23日) [Text by 元麻布春男]
【PC Watchホームページ】
|
|