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2枚挿し可能なTVキャプチャカード「ELSA EX-VISION 1500TV」を試す



ELSA EX-VISION 1500TV

 前回は、筆者が近々仕事マシンを更新するつもりであること、そのベースにIntelのD875PBZを選択、Windows XP Service Pack 2がリリースされるまでの時間を利用して、TVチューナカードをはじめとする周辺機器の組合せテストでもボチボチやってみるつもりであることを述べた。特にTVチューナカードについて、モニタ音声をアナログ出力しないで済むものを試してみたいと思い、ELSAジャパンのEX-VISION 1500TVをまずテストしてみることにしたことまで話が及んだ。

 EX-VISION 1500TVについて取り上げる前に、まず筆者手持ちのD875PBZに搭載されていないサウンド機能について触れておこう。新しいマシンのサウンドカードとしてとりあえず選んだのは、AudiotrakのPARAO MK-II GOLDだ。このカードも、Low Profileのカードである。

 筆者は前回、音声のS/PDIF出力さえサポートしてくれれば良いと述べたが、最終的にモニタ音声のアナログ出力を必要とするTVチューナカード(カノープスのMTVシリーズのように)に変更する可能性がゼロでないこと、このカードがパッケージにDigital Monitor機能(アナログインプットされた音声をデジタル出力する機能)を大々的にうたっていることから購入してみた。

 同社の現行サウンドカードは、おおむねこのDigital Monitor機能をサポートしているようだが、ラインナップ中、本製品が一番安価な製品ではないかと思われる。これも選択理由の1つだ。

 購入して付属CD-ROMのドライバをインストールしたところ、何かの拍子にWAVEの出力ができなくなるというトラブルに見舞われたものの、ドライバをアンインストールし、Webサイトにある最新ドライバをインストールしたところ、動作が安定した。というか、それ以降は大きなトラブルに遭遇していない。これでEX-VISION 1500TVを試す準備が整った。

●TVキャプチャカードとして十分なスペック

 EX-VISION 1500TVは、Low Profileに対応したTVチューナ付キャプチャーカードだ。ALPS電気製のTVチューナユニットを搭載しているほか、MPEG-2エンコーダエンジン、3次元YC分離回路、ゴーストリデューサなどはNEC製のチップで実装されている。

 ノイズリダクション機能も搭載されているが、3次元Y/C分離と排他利用となる。非常にコンパクトなカード(ELSAジャパンによると、このスペックで世界最小)で、コネクタもアンテナ入力、音声入力、映像入力(Sビデオ端子)の3つに絞られている。今回はこのEX-VISION 1500TVを2枚同時利用してみた。

 TV視聴・録画用のアプリケーションとして用意されているのはInfocityの「Info.TV Plus」。Infocityは、一時国内ブランドのTVチューナ/キャプチャカードによくバンドルされていた「bitcast」ブラウザ等のアプリケーションで知られるソフトウェアハウスだ。

 放送電波の隙間を利用してデジタルコンテンツの配信を行なうbitcastは、面白いアイデアだとは思うものの、ブロードバンドが普及した今、以前ほどの利用価値を感じない点は否めない。ただ、bitcastブラウザを提供していたInfocityに、この種のアプリケーションに関するノウハウがあることは十分予想できる。

 Info.TV Plusは、Infocityの最新TV視聴・録画アプリケーションで、この6月に発表されたばかりのもの。このEX-VISION 1500TVが最初の採用製品となる。製品添付のものは、マルチチューナに対応した最新版ではない(本稿執筆時点)ので、最新版をダウンロードする必要がある。

 非常に多機能なアプリケーションだが、その中核となるのはADAMS-EPG+によりInternet配信される番組データだ。これを用いてInfo.TV Plusは一体化された電子番組表(EPG)機能を提供、キーワード登録によるまかせ録りを行なう。iEPGと異なり番組データをあらかじめダウンロードする方式のため、TV番組を視聴中も、現在表示している番組の情報を画面の一部にワンタッチで表示したり、といった小技を利かせることができる。

 もちろん録画アプリケーションとして一般的な機能は一通りサポートしており、休止状態やスタンバイ状態から復帰しての予約録画も可能だ。録画設定も柔軟で、内蔵ハードウェアエンコーダによるMPEG-2録画はもちろん、外部ソフトウェアエンコーダによる録画も可能だ。WMV7~9、DivX、Huffyuv等に対応するが、ELSAジャパンが動作保証するものではない。

 ハードウェアエンコーダによるMPEG-2録画は、サポートする解像度が720×480ドット、480×480ドット、352×480ドットの3種。CBR(固定ビットレート)とVBR(可変ビットレート、平均ビットレートとピークビットレートの両方を設定可)のいずれもが可能で、設定可能なビットレートは2Mbps(2,000Kbps)~15Mbps(15,000Kbps)となっている(音声は128Kbps~384Kbps)。

おまかせ録画の設定。時間帯や曜日、ジャンルを設定しキーワードを指定する ADAMS-EPG+による番組表データをキーワードで検索した結果。この結果を予約してもよいし、おまかせリストで条件設定(おまかせ1)の左にある録画チェックボックスをチェックしておくと、条件に合致したものが自動的に録画される チューナ設定画面。地域ごとのチャンネル設定のほか、複数インストールされたTVチューナカードと、Info.TV Plusで扱うチューナ番号の関連付けや、ビューモードの切り替えを行なう
Info.TV Plusの画質設定。ハードウェアエンコーダ以外にソフトウェアエンコーダを選択できる 番組表モード。高解像度のPCディスプレイを利用するため、情報量の多さが生きる。ここで番組名をダブルクリックすると、必要なパラメータが渡された上で予約設定画面が開く

●マルチビューモードで2番組同時表示

 最新版でサポートされたマルチチューナ機能は、シングルビューモードと、マルチビューモードに大別される。シングルビューモードはチューナカードを1枚のみ利用する場合と互換性を持つ表示モードで、全画面表示やビデオファイル再生時のピクチャインピクチャ表示(ビデオを表示している一角でTVチューナのライブ映像を表示可)をサポートする。このモードでは、2つのチューナユニットによる2番組同時表示ができないので一瞬驚くが、裏番組録画などチューナユニットを2つ持つことによる他の機能は利用できる。

INFO.TV Plusの通常TV視聴ウィンドウ。フチがオレンジなのはTVチューナカードを複数インストールしている証拠 余分な表示を省いたミニTVモード

 マルチビューモードは、複数のチューナカードをインストールした場合のみ利用可能なモードで、インストールしたチューナカードの数だけInfo.TV Plusアプリケーションを起動することができる。

 ピクチャインピクチャができなくても、複数のInfo.TV Plusを立ち上げることで、十分その代わりになるし、手動でウィンドウサイズを最大化することで、フルスクリーンに近いサイズでの表示もできる。

 初期設定はシングルビューモードだが、複数チューナをインストールした場合は、チューナ設定でマルチビューモードに切り替えて利用したい。マルチビューモードではアクティブ(音声出力される)なInfo.TV Plusの枠がオレンジ色に縁取られることで、どの番組の音声が出力されるのか一目で分かるようになっている。

●画質も概ね良好

 画質だが、CD-ROMに付属していたデバイスドライバでは、録画画質は高品質だったものの、正直言って表示画質はもうひとつの印象が否めなかった。解像感が弱く、少しぼんやりした印象の画だったのだが、8月4日付けで提供された新しいドライバに入れ替えると、この不満もほぼ解消された。

 古いドライバではテロップ等が若干読みにくく感じたが、新しいドライバではテロップの表示もシャープだ。各種の高画質機能もそれぞれうまく働いているようだが、筆者の環境では唯一ゴーストリデューサーだけは例外となってしまった。

 というのも、筆者の自宅は都内では珍しくほとんどゴーストのない環境であるため、ゴーストリデューサーを有効にすると、わずかではあるが副作用が出る。だが、逆に言えば本機のゴーストリデューサーはちゃんと働いているということであり、ゴーストの入る環境では有効な機能に違いない。

 また、録画予約機能の安定度だが、筆者が5日間ほど試用した範囲において、不安定さを感じることはなかった。基本的に設定しておいた予約はすべて実行された。

 欲を言えば、予約録画終了時の動作設定(そのまま、休止する、スタンバイする)をグローバルに決める以外に、予約個別に設定できたり、予約録画時に番組開始時間のどれくらい前にシステムを起動するか、といったことをオプションで選択できれば良いとも思うが、現状でも大きな不満はない。

●やはり2枚挿しは便利

 モニタ音声がデジタル出力されるため、ほかのWave音声との音量バランスが気になるところだが、Info.TV Plusの音量調整はWindowsのミキサーとは独立しているため、適切なバランスに設定することができた。Info.TV Plusは原則的に前回終了時の設定(ウィンドウサイズ、表示位置等)をちゃんと覚えてくれるのも筆者好みである。

 というわけで、1週間弱の試用期間ではあったが、この期間中EX-VISION 1500TVを使って、不満を感じる部分はほとんどなかった。また、頭では分かっていたつもりだが、実際に使って見るとTVチューナの2枚挿しは思った以上に便利である。強いて残念な点を挙げれば、2枚セットの割安パッケージが用意されていないことくらいだろうか。今、本気で2枚挿しを検討しているところだが、ベンダを問わず2枚挿しができればなお良いのに、と思わずにはいられない。おそらくこれにはMicrosoftの対応、新OSが必要になるだろう。

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http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040729/elsa.htm

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(2004年8月9日)

[Text by 元麻布春男]


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