鈴木直美の「航空写真で見る街」


無料で見られる航空写真地図サイトをチェック




 今いる場所やこれから行こうとする場所を調べたり、経路や周辺の状況を知るのがオーソドックスな地図の使い方である。

 そして、そんな私たちのニーズに合った情報を提供すべく、色々な地図が作られている。観光地図、道路地図、住宅地図、路線図、案内図……そこに掲載されている情報は、基本的には現実を映したものではあるが、用途や目的に応じて取捨選択され、必要に応じてディフォルメされたのが、ふだん私たちが見ている地図だ。

 もし、現実を細大漏らさず忠実に再現してしまったら、見やすくわかりやすい地図にはならないのである。が、あえてそれを敢行した地図がある。空から撮影した地上の姿を、そのまま地図にしてしまった航空写真地図がそれだ。

 航空写真には、空から見えるもの全てがそのまま写っているので、良くも悪くも図面の地図ではわからない自然の姿を見ることができる。縮尺が大きければ(縮小率が小ければ)、個々の建物はもちろん、街路樹や車、ときには人影までもが載ってしまうほどで、現実の街中で探すのと同程度の努力を惜しまなければ、普通の地図には載っていない些細なものもまで探し出すことができる。

 逆に、縮尺が小さくなれば(縮小率が大きくなれば)、重要なものもそうでないものも関係なく現実の比率のまま縮小されて行ってしまうので、その辺のチッポケな建物や道はあっという間に消滅。普通の地図では探せるものも探せなくなってしまう。

 常識的な地図らしさを求めてしまうと、かなり与太な奴といわざるを得ない存在ではあるが、普通の地図では飽き足りない方や、飛行機の窓際及び展望台好きな方にはたまらない、そんな航空写真地図を何回かに分けて採りあげてみたい。


●全国規模の航空写真地図『いくとこガイド』

 パスコが提供する「いくとこガイド」は、MapionやMapFan Webと同様の地図情報サービスだが、ベースマップに航空写真を表示できるというのが、他にはない大きな特徴だ。

 2001年に始まったこのサービスは、当初はJavaアプレットベースの重くて使いにくいサービスだったが(多機能ではあった)、昨春のリニューアルで一般的なHTMLベースのインタフェイスに一新。アクセス過多で地図が表示できないことも多々あるが、以前のサービスに比べると、かなりよくなったことは確か。周辺のイベント情報が表示される機能もユニークである。

 航空写真の表示は、地図画面の下にある「航空写真」のボタンを押すだけ。表示中の場所に航空写真が用意されていれば、図版の地図が航空写真地図に切り替わる。

 ただし、航空写真を表示できるのは、1/4,000〜1/20,000の縮尺に限定されているので注意が必要だ。サイトには、収録エリアについての記載が無いため、実際にどのくらいの地域の写真があるのかはよくわからない。が、元々が都市計画図などの大縮尺地図を作成するようなニーズのあるところが撮影ポイントなので、都市部が中心であることは容易に想像できる。

 自然が生み出した地形美の閲覧はあまり期待できないが、図版の地図で家の形まで描かれているような詳細図のあるところやその周辺に関しては、かなり広範囲にわたってカバーされている。ちなみに、同社が販売する航空写真画像データのページには、2002年度の撮影エリア図が掲載されている。この中のどれくらいがいくとこガイドに反映されているかは不明だが、収録場所の参考になるだろう。

 無料でここまで見せてもらえれば、もう大満足なのだが、残念なのは、施設オプションでON/OFFできるアイコンのほかに、相当量の文字や記号が書き込まれていて、非表示にできない点である。写真だけだと、地図として利用するのはかなり厳しくなってしまうが、できれば純粋な航空写真としても楽しめるように、全解除のオプションが欲しいところである。

□いくとこガイド
http://www.ikutoko.com/

●地図の縮尺と解像度

 地図の縮尺は、地図上の大きさが実際の何分の1に縮小されているのかを表しているのはご存知の通り。1/25,000の地図なら、地図上の1cmが25,000cm=250mということだ。市販の地図ソフトやオンラインの地図も、同様の縮尺表示を採用しているものが多い。

 ところが、それを見ているユーザーのディスプレイは、画面の大きさも解像度もまちまちなので、紙地図のように、そのまま定規で測れば即距離に換算というわけには行かない。地図によっては、画面の大きさを入力させて、実際に表示されているサイズに準じた縮尺を表示するタイプもあるし、マウスのクリックで簡単に距離計算をしてくれるものもある。だが、たいていは、これらとは別に、○m単位や○km単位のスケール(物差し)を表示したり、図枠の縦横の実距離を示して、実距離が把握できるようにしている。

 では、画面に表示される地図の縮尺って何なのだろうか。ひとつには、地図に含まれている情報量や精度が、どれくらいの縮尺の紙地図に相当するのかという目安でという場合もあるが、細かに区分された縮尺は、基本的に各社が一定の画面を想定した換算値になっている。

 先の「いくとこガイド」の場合、航空写真が表示できる最も大きな1/4,000の縮尺時に、画面の1ピクセルが1mに相当する。想定している画面の解像度は100dpiくらいなので、13型XGAクラスの液晶ディスプレイだと、ほぼ縮尺どおりのサイズで表示される。縮尺表示を採用しているところでは、MapionやMapFan Webが70dpi強(MapFanは、北に行くほど南北がつぶれるが)なので、同じ縮尺であってもちょっと大きめの表示になる。

 このようにディスプレイで見る地図の縮尺表記には、紙地図のような正確さはない。異なるサービス間で大きさを比較する場合には不適切なので、以後ここでは、画像の1ピクセルが実際の何メートルに相当するのかを示すことにする。

 これは、航空写真や衛星写真の画像データが、どれくらい精密なのかを示す場合に用いる指標と同じで、「解像度」あるいは「分解能」と呼んでいる。「解像度」だと、ことばが重複してしまうので、ここでは「分解能」としておこう。

 他の地図サービスだと、Mapionの「1/3,000」、MapFan Webの「1/3,125」、its-mo Guideの「500m」、ちず丸の500mの「おおきいサイズ」(ちず丸はサイズによって縮尺が変わる)が、だいたい1ピクセル1m相当。目的地周辺がかなり詳しく見られるサイズである。

 写真でいう1ピクセル1mの分解能は、300万画素のデジカメの標準レンズで撮影した、3kmくらい先の景色に相当。およそ60秒といわれる私たちの目の分解能も、だいたいこれくらいである。

 1mが1ピクセルならば、1mの大きさのものは画像に記録される計算になるが、それを識別できるかどうかは別問題だ。実際にご覧いただくとわかると思うが、乗用車クラスの大きさのものが、あるべき場所(車なら道路や駐車場)に写っていれば識別できるが、周囲の状況から推定できないようなものを、わずか数ドットの点の集まりだけで判別するのは難しい。だがこれが、家くらいの大きさになると識別は容易で、光の加減次第では、切妻か寄棟かなんてのも見分けられるようになる。

 もっとも、50坪の地所でも1文字分くらいの大きさしかなので、多少の技量と周辺の予備知識は必須。自宅ならば、かなり密集していても容易に探し出せるだろうが、取引先の田中さんちを探すのは、ちょっと難しいかも知れない。逆に1mに満たないようなものでも、例えばお寺の境内に並んでいる墓石などは、なんとなくそれとわかる。

●分解能25cmで眺める23区『東京空間遊歩人』

 先のパスコでは、25cm分解能の航空写真が見られる「Bird's View」というオンラインサービスも提供しているが、いきなり年額18万円という驚異の世界。もっとでっかい奴は見てみたいものの、ちょっとゴメンナサイな価格である(@niftyの会員向けに2時間500円、8時間1,500円のサービスもある)。

 そんなところに登場したのが、オー・エイ・エスが提供する「東京空間遊歩人」。昨年の夏から始まったこのサービスでは、同社が扱う分解能25cmの画像データを、ドーンと無料公開。図形の地図が国土地理院の1/25,000地形図(いくとこガイドはMapFanと同等)で、掲載エリアも東京23区に限られるため、純粋な地図サイトとしてはちょっと弱いが、高分解能航空写真の迫力は、そんなことを全て吹き飛ばしてしまう。

 最初は、何かの手違いで売り物の方を公開してしまったのではないかと心配してまったほどの鮮明な写真で、分解能1mの家感覚で、今度は車が識別できてしまう。車に疎い筆者は、タクシー会社くらいしか識別できないが(都内のタクシーは無線の系列別に色分けされているので正確には会社ではないが)、詳しい方なら車種まで当てられるのかも知れない。さらに、駅前などの特定の場所ならば、人らしきものも判別できてしまうほどである。何はともあれ、サイトにひとっ飛びしてご覧いただきたい。

 この東京空間遊歩人の画像は、デカい上に、ランドマークを隅に移動したり、全て非表示にもできるありがたい仕様になっている。文字や記号に隠れて肝心な地上が見えないなんてことは無いし、純粋な空撮画像で空中散歩が楽しめるのは何よりだ。ちなみに登録されているランドマークは、国土地理院の1/2,500レベルの情報(地名や駅、公共施設など)が収録済みで、あとはユーザーが書き加えて育てて行くという、ユニークな仕様になっている。

 使用している航空写真は、デフォルトが2001年撮影とのことで、いくとこガイドの都内の写真よりも1年くらい前の姿を眺めることができる。

 特筆すべきは、このほかに'97年撮影の画像が選べる点である。地図といえば、鮮度がひとつのウリだが、筆者は前々から、このように過去にも遡れる地図というのが欲しかった。4年のインターバルだと、埋め立てで地形が変わってしまうような派手な変化は期待できないが、要所要所で面白い経年変化を見ることができる。

 例えば、何かと話題の「六本木ヒルズ」を見てみよう。六本木6丁目のテレビ朝日周辺は、2000年の春までは、古くからの住宅が軒を連ねていた一画だ。これが、僅か3年でご存知の高層ビル街に変身してしまうわけだが、2001年版の航空写真だとその初期段階、更地に森タワーやテレ朝の土台が作られている様子がうかがえる。

 次に「画像・画質の変更」で'97年版に変えると、町並みは一変して昔の住宅街が浮かび上がってくる。このようなリアルな変化が楽しめるのも、航空写真ならでは。ちなみに、いくとこガイドで見ると(「東京都港区六本木6丁目(数字は全角で)」で住所検索)、森タワーがたいぶ出来てきたその後の様子がわかる。

□東京空間遊歩人
http://tokio.decore.jp/
□東京空間遊歩人で眺める六本木ヒルズ
http://tokio.decore.jp/wander.asp?tokyo=35.39.25.567,139.43.57.385&zm=1

●地方自治体の航空写真地図

 先にも少し触れたが、航空写真の最も重要な用途のひとつが地図の作成である。地図製作といえば、おそらく国土交通省国土地理院を真っ先に思い浮かべるだろう。確かにここも、地図の元ネタとなる大量の航空写真を保有しており、一部はインターネットでも公開しているが、これについては日を改めてご紹介する。

 地図製作に欠かせないもうひとつの機関が、地方自治体である。都市計画図をはじめとする大縮尺(1/5,000とか1/2,500など)の地図は、各都道府県や市町村が独自に、あるいは国土地理院と協力して製作しており、役所の窓口で購入できるところも多い。

 前出のパスコやオー・エイ・エスの地図画像に、東西2,000m、南北1,500mの等間隔でつなぎ目があることにお気づきだろうか。この2,000×1,500mが、公共測量で使われる1/2,500の地図1枚の図郭になっており、これを貼り合わせてモザイク画像にしたのが、先ほどの航空写真地図というわけだ。

 地方自治体の場合には、家屋の新増築などを把握して適正に課税する目的にも、航空写真を使用しているそうなので、こちらも定期的に相当量の航空写真を保有しているはず。中には、インターネットで公開しているところもあるだろうと思い、探してみることにした。

 結果は、全体から見ればごく小数ではあるものの、その数は筆者の予想以上に多く、次から次へと出てくる。全てを見ていては原稿が全く進まなくなってしまうので、発掘調査は途中でひとまず打ち切り。これまでの成果を表にまとめたので、地元の方は覗いてみて頂きたい。

 いくとこガイドでは空振りに終わってしまう地域の航空写真や、東京空間遊歩人並の25cm級のものもあったりする。なお、まだチェックしていないサイトの方がはるかに多いので、「ここにもあるよ」という情報があったら、是非教えていただきたい。

 地方自治体のサービス(今回は地図の体裁になっていないものは割愛している)は、写真を並べて閲覧できるようにしたものから、地図サイト並のシステムまで千差万別だが、中でも特に目についたのが、パスコの提供するASP(Application Service Provider〜ネットワーク経由でアプリケーションの機能を提供する事業者)サービスを使ったタイプである。

 パスコでは、自治体向けに「わが街ガイド」という地図情報サービスを提供している。簡単にいえば、いくとこガイドの自治体版で、いくとこガイド独自の施設情報の代わりに、自治体独自の情報を盛り込んだり、自治体が保有する地図を載せたりするこができるようになっている。

 ベースとなる地図や航空写真は、いくとこガイドに準じたものなので、このタイプのサービスで見られる航空写真は、基本的にいくとこガイドと同じもの。異なるのは、より大きな図郭(標準で500×500、大きな地図で820×600)で閲覧できる点と、比較的サクサク動く点。

 それから、いくとこガイドの1/20,000(わが街ガイドでは2km)の航空写真が無い代わりに、1/4,000(わが街ガイドでは500m)よりも大きな縮尺でも、航空写真が表示される点だろうか(画像自体は同じ1m分解能なので、拡大した荒い画像になってしまうが)。

●地方自治体の航空写真地図一覧

★付録その1〜東京空間遊歩人リンクフリー記念「東京高いところマップ」

 東京空間遊歩人のトップページから入ると、いきなり俯瞰ショットの東京タワーが迎えてくれる。高いところって、上から見ても高いんだなぁ〜と妙に関心してしまった筆者は、23区の高層建造物を手当たりしだいに訪ねてみることにした。お暇な方は一緒にどうぞ。

★付録その2〜地図にないもの、あってはいけないもの

 地図の情報って、けっこう古いんだよ……目的地が地図で見つからないと、勝手にそう決め付け、結局現地で路頭に迷ってしまうことになる筆者は、ある日ふと思い立って、地図にないもの、あってはいけないものを追跡調査することにした。注目されないランドマークは、果たしていつになったら地図に載るのだろうか。


(2004年7月5日)

[Text by 鈴木直美]


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