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速さも画質も“フラッグシップ級”
キヤノンEOS-1D MarkII




 フラッグシップとは司令官の乗る旗艦のことだが、コンサイスカタカナ辞典を見ると『同類のものの中で最もすぐれた重要なもの』という意味もある。ところが、デジタル一眼レフ(デジイチ)には2つのフラッグシップが存在する。「画質」のフラッグシップと「速さ」のフラッグシップだ。ただ、フラッグシップが2つも存在するのはどうにも釈然としない話で、フラッグシップを名乗るならば「画質」でも「速さ」でもトップクラスの性能を誇らないと、看板に偽りありである。

 しかし、デジタルカメラの場合、画質を追求すれば画素数が多くなり、画素数が多くなるほど撮像素子からデータを読み出すのに時間がかかる。つまり、画質を追求すると連写スピードが遅くなり、連写スピードを追求すると画素数を落とさざるを得なかったのだ。

 ところが、キヤノンEOS-1D MarkIIは、820万画素という画素数と、秒8.5コマ/連続40コマのJPEG連写を両立させているのが特徴だ。これまでのように、“速さのフラッグシップ”と威張ってみても、画素数では低価格のデジタル一眼レフや普及型デジタルカメラにすら負けている、という情けない状況ではなくなった。EOS-1D MarkIIは、「速さ」のフラッグシップであると同時に「画質」の準フラッグシップモデルでもあるわけだ。

 発売当初の実売価格も従来のEOS-1Dに比べ、約20万円近くも安くなっている。1,110万画素の35mmフルサイズCMOSセンサー搭載のEOS-1Dsは、確かに憧れのデジイチではあるがいかんせん100万円近い価格は高すぎる。しかし、実売58万円前後のMarkIIなら、頑張ればなんとか買えるかも……、と奮起させられる値段だ。EOS-1Dsはとても買えないが、10Dでは不満というEOSユーザーにとっては、MarkIIは唯一の選択肢であり、また選択肢があるだけ他社のユーザーより幸せと言えるだろう。



  むしろ安い?
EOS 10Dの3倍にもなるが
納得のいく価格差

 ただ、EOS 10Dとの価格差は約3倍弱。果たしてそれだけの価値がMarkIIにあるのだろうか?

 MarkIIの魅力は、

  1. 秒8.5コマの高速連写能力
  2. 820万画素の描写力
  3. 28.7×19.1mmの大サイズの撮像素子 (同じ焦点距離のレンズを装着しても実撮影画角が10Dよりも広い)
  4. 視野率100%のファインダー&交換可能なファインダースクリーン (視野の広さは10Dとほぼ同等ながらピントの山が見分けやすいのも魅力)
  5. 撮影作動耐久20万回のシャッターユニット
  6. 45点測距の高精度&高速AF (F2.8対応水平センサーによる高精度なピント検出)
  7. 最短40msのシャッタータイムラグ(パーソナルファンクション設定時)
  8. スポット測光&±3EVの露出レベル表示
  9. 1/8,000秒の高速シャッター&1/250秒の高速シンクロ
  10. 防滴・防塵仕様の堅牢なボディ
  11. 起動時間が実測で約0.3秒と高速
  12. 新開発のアルゴリズム採用のRAW現像ソフト「Digital Photo Professional」同梱

などだ。

 一方、EOS 10Dで不満な点は、

  1. 起動時間が実測で約2.4秒と遅い
  2. AF測距精度が不十分
  3. ピントの山が把握しづらいMFに不向きなファインダースクリーン
  4. スポット測光がない
  5. RAWとJPEGの同時記録時、JPEGがRAWに埋め込まれていて専用ソフトで抽出作業が必要
  6. APS-Cサイズにマッチした画角のEFレンズが絶望的に不足

といったところで、細かい不満はあるものの、致命的な弱点があるわけでもなく、中堅機種としては手堅くまとまっていて、画質もなかなかのものだ。

 ちなみに、同社の銀塩一眼レフの中堅機EOS7sとフラッグシップ機EOS-1V HSの実売価格比率は約3.2倍。これに対して10DとMarkIIの実売価格比率は約2.8倍。中堅機種とフラッグシップモデル(画質では準フラッグシップモデルだが……)の価格比率としては順当な線ではないだろうか?

 また、EOS-7sとEOS-1V HSの実売価格差は約20万円弱なので、上位機種と下位機種のカメラ部にかかるコスト差を約20万円くらいと考えられる。つまり、10DとMarkIIの実売価格差の37万円のうち、約20万円はカメラのメカ部分にかかってしまうコストというわけだ。しかも、10DとMarkIIの付属品を比べてみると、MarkIIはバッテリー関連の付属品が高価なので、約8万円は付属品にかかるコスト差だ。

 となると、かなりアバウトな計算ではあるが、残る9万円がデジタル部分のコスト差というわけで、実撮影画角が焦点距離の1.3倍の大型撮像素子搭載、画素数は820万画素にアップ、JPEG40コマ、RAWで20コマという連続撮影枚数を考えると、9万円以上の価値はあるのではないだろうか?

 特に撮像素子はサイズが大きくなればなるほど面積比以上にコストアップする。これは、オーブンでクッキーを焼くことを考えてみるとよくわかる。小さなクッキーなら1枚の天板にたくさん並べられるので、一度にたくさん焼ける。つまり、1枚の天板でクッキーを焼くというコストが同じなら、一度にたくさん焼ける小さなクッキーの方が1枚あたりの値段は安くなるわけで、大きさが倍になれば(一度に焼けるクッキーの数は半分になるので)価格も倍になるわけだ。しかも、クッキーを焼くときに面積に比例してある確率でクッキーにひびが入ってしまうとしよう。すると、大きなクッキーになればなるほどひびが入って売り物にならない確率は高くなる。つまり、不良品が増えると、良品の価格はますますハネ上がることになる。

 これと同じように、撮像素子もサイズが大きくなればなるほど、面積比以上に単価がハネ上がる。そのため、35mmフルサイズの巨大な撮像素子を搭載しているEOS-1Dsは、あれほどまでに高価なのだ。

 こうして考えてみると、MarkIIの価格は、その作りに対して決して高くはないと思う。結局、なにが不満かというと、10Dのカメラ性能でもMarkIIの価格でもなく、10DとMarkIIの中間に位置付けられるプロ・ハイアマ向けの機種が存在しないことが最大の不満だ。

 そして、意を決してMarkIIを買ったとしても、1年も経たずして10D後継機やEOS3クラスのデジイチが登場して、MarkIIのアドバンテージが高速連写だけになってしまうのではないだろうか、という不安もある。だから、なかなか思い切ってMarkIIを買うことができないのだろう。

 だが、EOS 10Dの後継機やEOS3クラスのデジイチが登場して、例え画素数では並ばれたとしても、カメラ全体の作りはMarkIIの方が格上なのには変わりないはずだ。視野率100%のファインダーや秒8.5コマの高速連写といったスペックを脅かすのは、MarkIIの後継機であるMarkIIIだけだと思う。少なくとも銀塩でもEOS-1系ボディを愛用しているのであれば、思い切ってMarkIIを買って、イイ写真を撮りまくった方が充実したデジタル写真ライフを楽しめる。

 かく言うボクも、銀塩ではずっとEOS-1系ボディを使っていたのだが、さすがに400万画素の1Dに75万円も払う気はなかったし、100万円コースの1Dsはクレジットカードで衝動買いできる限度を超えている。しかし、57万円前後のMarkIIなら、高いとはいえ、まだなんとか買える額だし、その性能を考えると十分納得できる価格なので、思い切って買ってしまった。

 10DやKiss Digitalに比べると、内蔵フラッシュもないのにズッシリ重いし、レンズもより高性能なものを求めたくなるので、カメラバッグは重くなる一方だが、やはり撮影している最中の手応えというか、本気度がまったく違う。ハッキリ言おう、MarkIIを買って良かったと……。(少なくとも今は)心からそう思っている。



  1Dsには及ばないものの
パラメータをいじれば
820万画素ならではの細部描写力

 さて、次はMarkIIの画質に目を向けてみよう。MarkIIが発売されてからすでに2カ月が経過しているが、雑誌付録のCD-ROMや国内外のWebサイトでMarkIIの実写サンプル画像を見て、なんでこんなにボケボケ画像なのかと驚いた人もいると思う。

 というのも、MarkIIの現像パラメータ設定は、標準でシャープネスが0(最弱)になっているので、パッと見た目にはモヤッと甘い感じがするのだ。しかも、従来の1Dは画素数が400万画素と少なかったので、ローパスフィルターを弱めにし、シャープネス重視の画質セッティングになっていた。だから、なおさら甘く見えてしまうのだろう。ボクも初めてメーカー提供のMarkIIのサンプル画像を見て、う〜んとうなってしまった。シャープネスが低く、しかも妙に腰がなく、フレアがかかったような軟調でにじんだ描写だったからだ。

 では、MarkIIは、820万画素とは名ばかりの高速連写しか能がないデジイチなのだろうか? 否! MarkIIの画質は現像パラメータ設定とカラーマトリックスの選択で大きく変わる。MarkIIを買ってからいろいろ試行錯誤をしてみて、現像パラメータ設定でシャープネスを「3」ないし「4」に設定すると、カリッと気持ちのいい描写が得られることがわかった。

 また、メリハリ不足に感じるのであれば、コントラストを+1に設定して撮影すると、10DやKiss Digital的な描写になる。さらに、カラーマトリックスを3(高彩度)にすれば、レタッチ要らずの一般受けする描写になる。MarkII本来の素材性をスポイルしてしまう愚かなセッティングかもしれないが、JPEGはパッと見た目重視と割り切り、素材性を追求するならRAWでも同時記録するというのが一番だ。今回、ここに掲載する実写サンプルの多くは、こうしたパラメータ設定で撮影したものだがいかがだろうか?

 画質に対する評価は人それぞれだし(特にこのクラスのデジイチともなると、相当シ ビアな観察眼の人も多いと思う)、現像パラメータ設定やカラーマトリックスで画質が変わるとはいえ、1,110万画素フルサイズCMOSセンサー搭載のEOS-1Dsとは、まだまだ画質面で大きな開きがあるのが現状だ。しかしながら、少なくとも10DやKiss DigitalよりもMarkIIのほうが細部描写力に優れていることだけは実感してもらえることと思う。

●基本画質比較

 EOS-1Ds、1D、1D MarkII、10D、ニコンD2Hの基本画質を比較してみた。なお、各機種ともパラメータは標準で撮影している。

以降に掲載する作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更しています)。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。SD10の画像は、RAW現像時に回転して出力されています
特に記載がない限り、クリックすると2,464×1,632ピクセル以上の大きな画像が別ウィンドウで表示されます
キヤノン EOS-1Ds キヤノン EOS-1D MarkII
キヤノン EOS-1D キヤノン EOS 10D
ニコン D2H

●感度別画質比較

感度によって画質がどのように変化するか、各機種で撮り比べてみた。なお、EOS-1D/1D MarkII/1Dsのカラーマトリックスは「3.高彩度」、ニコンD2HのカラーモードはMode IIIに設定。また、1D MarkIIの現像パラメータ設定は「シャープネス:3」にしている

キヤノン EOS-1Ds
ISO50 ISO100 ISO200
ISO400 ISO800 ISO1250

キヤノン EOS-1D MarkII
ISO50 ISO100 ISO200
ISO400 ISO800 ISO1600
ISO3200

キヤノン EOS-1D
ISO100 ISO200 ISO400
ISO800 ISO1600 ISO3200

キヤノン EOS 10D
ISO100 ISO200 ISO400
ISO800 ISO1600 ISO3200

ニコン D2H
ISO200 ISO400 ISO800
ISO1600 ISO3200 ISO6400

【お詫びと訂正】記事初出時、D2HのISO表記が誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。



  各社のRAW現像ソフトを比較
フィルムや現像液を選ぶように
RAW現像ソフトを選べるのもデジイチならでは

 ところで、MarkIIに限った話ではないが、デジタル現像するソフトウェアによって同じRAWから現像したものでも画質が微妙に変化する。画像生成のアルゴリズムがそれぞれ異なっているからだ。

 MarkIIには「EOS Viewer Utility(EVU)」と「Digital Photo Professional(DPP)」という2種類のデジタル現像ソフトが同梱されているが、EVUはカメラのパラメータ設定をエミュレーションしながら現像できるのが特徴だ。一方、DPPは、EVUとはまったく異なるコンセプトで開発されたソフトで、カメラ内の画像処理とは異なる考え方でデジタル現像が行なわれ、撮影時の現像パラメータ設定やカラーマトリックス設定はDPPでは無視される。

 また、DPPの色調整を「撮影時設定」から「忠実設定」に変更すると、彩度の高い色が彩度が高いままに再現されるようになり、青や黄色、赤などの彩度や色相がかなり変化する。通常は彩度の高い色が簡単に色飽和しないよう、彩度が高い部分だけうまく彩度を圧縮しているが、その分、リバーサルフィルムのような鮮烈な描写になりにくい。忠実設定では、色飽和は起こしやすくなるものの、鮮烈な色を鮮烈に再現できるようになる。カラーマトリックスを「3.高彩度」に設定するのとは、同じ鮮やかでもまったく色再現の傾向が異なっている。

 さらに、キヤノン純正のEVUとDPP以外にも、Adobe Photoshop CSのAdobe CAMERA RAWプラグイン(ACR)、PhoseOneのC1SE3.5、市川ソフトラボラトリー SILKYPIX Developer Studio 開発テスト版といったMarkIIのRAWに対応したデジタル現像ソフトがあり、現像ソフトによって、色や階調再現が違えば、ノイズの出方や細部描写のクセもさまざまだし、現像ソフトのパラメータを変えれば仕上がり結果もかなり変わるので、フィルムや現像液を変えるようにいろいろな描写の違いを楽しむことができる。

 その一例として、同じRAWファイル(江戸東京たてもの園の都電)を各種デジタル現像ソフトで現像してみた。パラメータは基本的に標準設定のままだ。電停の「町」という文字や都電の窓ガラス越しに見える車内の細部描写、青空の色再現、樹木の葉っぱの再現などを見比べてみると、それぞれの現像ソフトの描写傾向が見えてくると思う。なお、MarkIIのRAWファイルも公開するので、上記ソフトを持っている人はダウンロードしていろいろパラメータを変更して現像し、MarkIIの画質をどこまで引き出せるか、試してみるといいだろう。

●デジタル現像ソフトによる仕上がりの違い

 RAW(ロー)とは、カメラ内で画像処理せず、撮像素子からアナログ-デジタル変換されたデータをそのまま記録したもので、パソコンに転送してからデジタル現像(画像生成処理)を行なう。ホワイトバランスや画質調整などを撮影時に決めなくて済むので、撮影者は露出とピント合わせ、シャッターチャンスに全神経を集中すればよく、しかもJPEG圧縮に伴う画質劣化もないのが魅力だ。

 なお、デジタル現像ソフトは、メーカー純正のソフトだけではなく、サードパーティからも何種類か発売されていて、デジタル現像ソフトによって画像処理は異なるので、仕上がり結果も微妙に異なる。これもまたRAWで撮影する楽しみだ。

 使用した1D-MarkIIのRAWデータはこちらからダウンロードできる。

キヤノン EOS Viewer Utility
カラーマトリックス:1(標準)
キヤノン EOS Viewer Utility
カラーマトリックス:3(高彩度)
キヤノン Digital Photo Professional
(撮影時設定)
キヤノン Digital Photo Professional
(忠実設定)
Adobe Photoshop CS Adobe CAMERA RAWプラグイン PhaseOne C1SE3.5
市川ソフトラボラトリーSILKYPIX Developer Studio 開発テスト版

●MarkII実写サンプル

予約していたMarkIIが到着したのは4月29日の午後2時。箱からカメラを取り出し、あわてて横浜の帆船日本丸に直行。ちょうどこの日は帆を広げる総帆展帆だったのだが、かろうじて帆をたたむ直前に到着。
標準の現像パラメータで撮影していたのだが、RAWも同時記録していたので、EVUでシャープネスとコントラストを変更して現像した。シグマの12-24mmの15mm域で撮影しているが、撮像素子が10Dよりも大きいので、12-24mmズームが15.6-31.2mm相当の画角で撮影できるのもMarkIIの魅力だ
撮影データ:シグマAF12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL HSM 絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO100 WB:太陽光 EVUで現像 カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
従来の1Dは赤が色飽和しやすかったが、MarkIIはカラーマトリックスを3(高彩度)にしても赤は簡単に色飽和しないようだ。ただ、その分、鮮烈さには欠ける傾向があるが、RAWで撮影してDPPの忠実設定でデジタル現像すると、なかなかいい感じに仕上げられる。カラーマトリックス設定でもDPPの忠実設定と同じ絵作りが選べないのが残念だ。偽色が目立ちやすいカットだが、1Dに比べるとかなり偽色は少なめだ
撮影データ:キヤノン EF70-200mm F2.8L USM 絞り優先AE F5.6 1/1000秒 +0.3EV ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
山中湖の花の都公園で撮影したチューリップと富士山。今年もチューリップの開花が早めだったので、MarkIIでチューリップを撮るのは半ばあきらめていたのだが、山中湖まで足を伸ばしたらちょうどチューリップの真っ盛り。
チューリップの本数は多いが密度がまばらだったので、ワイドでチューリップにググッと寄って大きく写すことで、富士山との対比を狙ってみた。ワイドレンズとはいえ、撮影距離が短いとF11まで絞ってもピントが合う範囲はかなり狭い
撮影データ:キヤノン EF16-35mm F2.8L USM 絞り優先AE F11.0 1/125秒 ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
その後もチューリップを追い求めて、山梨県フラワーセンターまで遠征。ゴールデンウィーク直前に満開だったので、ほとんどのチューリップは枯れ果てドライフラワー状態だったが、かろうじてまだ咲いているチューリップが残っていたので、前ボケ、後ボケを活かして撮影してみた。
評価測光とはいえ、こうした被写体の反射率が高いシーンでは露出補正が必要となることが多い
撮影データ:キヤノン EF180mm F3.5L MACRO USM 絞り優先AE F4.0 1/1250秒 +1.0EV ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
枯れかけたチューリップの花弁をアップで撮影。しかし、こうしたマクロ撮影では被写界深度がないに等しく、どの雄しべにピントを合わせるか、しっかり選択されたAF測距枠を確認して、なおかつファインダーでピントを確認しながら撮影しないと、良い結果は得られない。シェアウェアのBreezeBrowser Ver.2.9には、どのAF測距枠が選択されているのかを表示する機能があるので、撮影結果を確認・検証する際には便利だ
撮影データ:キヤノン EF180mm F3.5L MACRO USM 絞り優先AE F5.6 1/500秒 +0.3EV ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
キヤノン純正のズームレンズでもっとも広い画角をカバーするEF16-35mm F2.8L USM。EF17-40mm F4L USMが半額近い実売価格で買える今、あまりこのレンズを選択する理由はないかもしれないが、MarkIIには中央の7点測距にF2.8対応水平センサーが搭載されていることもあってか、AF検出精度が低下するワイド端の撮影でもAFの繰り返し精度は非常に高く、何回測距し直してもほぼ同じ位置でフォーカスリングが止まる。10DクラスのAFとはやはり精度の違いが感じられ、安心感がある
撮影データ:キヤノン EF16-35mm F3.8L USM 絞り優先AE F11.0 1/100秒 ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
AFモードをAI SERVO、AF測距枠を自動選択にして撮影。ボクの70-200mmF2.8Lは「ISなし」なので、感度をISO800まで上げて手ブレを防いでいる。さすがにISO800まで増感すると、ノイズもそれなりに目立ってくるが、画素数が多いので、プリント時には相対的にノイズの粒が小さくなる。それに、フィルムの粒子のようなノイズなので、さほど不快には感じない。ただ、トーンカーブでシャドー部を持ち上げすぎると、まだらなツブレが露呈するので注意。露出アンダーならレタッチで救済しよう、という安易な姿勢は禁物だ
撮影データ:キヤノン EF70-200mm F2.8L USM 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO800 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
さらに陽が落ちて、シャッタースピードはなんと1/80秒。200mm(35mmカメラ換算で260mm相当の画角)では手ブレ必至の条件だが、片膝を立ててしゃがみ、立てた膝の上に肘をついてホールディングの安定化を図って撮影。数カット連写したなかで、このカットだけが奇跡的にブレていなかった。連写すると偶然ブレずに撮影できるカットがあるものだが、MarkIIは結構ミラーショックが大きいので、連写中もしっかり構えないとかえってブレカットを量産しかねない。シャッターボタン押しっぱなしの連写は要注意だ
撮影データ:キヤノン EF70-200mm F2.8L USM 絞り優先AE F2.8 1/80秒 ISO800 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:4 コントラスト:+1
ウィンドサーフィンをアクセントに、逆光に光る海を撮影。後ろに見えるのは江ノ島。材木座海岸からの撮影だ。
MarkIIは撮像素子が大きく、10Dよりも広い画角で撮影できるのは魅力だが、反対に10Dよりも望遠撮影には弱くなるので、より焦点距離の長いレンズが欲しくなる。EF100-400mm F4.5-5.6 IS USMは、最近では珍しい直進式ズームだが、その写りは絶品。単焦点の300mmF4よりも絞り開放からシャープな描写が得られる。水面の反射も偽色や色収差による色づきは発生しておらず、整った描写だ。しかし、これほど遠景の撮影でも、手前から無限遠までピントを合わせることは困難だ
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F8.0 1/1250秒 ISO125 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:+1
江ノ島のノラ猫。ボクがMarkIIを買った理由のひとつに、MarkIIの45点測距と連写能力があれば、もっと自然なノラ猫の表情を(まぐれ当たりで)撮れるかもしれない、との期待もあったのだが、残念ながらまだまぐれには恵まれていない。とはいえ、10Dクラスのデジイチに比べると、格段にいいカットが撮れる確率はアップしている。やはり、電源を入れてから撮影可能になるウエイクアップの時間が約0.3秒と俊敏で、シャッターレリーズ後も像消失時間も短く、すぐ次のチャンスに反応できるのが魅力だ
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F6.3 1/800秒 +0.7EV ISO800 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:+1
美しいボケ味には定評のあるEF135mmF2L USMを使ってノビをしている猫を撮影。できれば横位置で撮影したかったところだが、残念ながらフレーミングを変える時間的余裕がなかった。残念! まだまだ精進が必要だ。MarkIIを手にすると、いいレンズを使いたくなる。おかげでカメラバッグはますます重くなる一方で、MarkIIオーナーは財力だけでなく、体力も求められる。測距点自動選択のONE SHOT AFで撮影しているが、ほぼ期待どおりの位置にピントを合わせてくれた
撮影データ:キヤノン EF135mmF2L USM 絞り優先AE F3.5 1/500秒 +0.7EV ISO200 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:+1
ワイドレンズでググッと寄って、被写体の置かれた状況を見せつつ、背景をボカして撮影するのが好きだ。コストパフォーマンスに優れたEF17-40mm F4L USMの登場で、すっかり存在意義が薄れつつあるEF16-35mm F2.8L USMだが、開放F値の明るさが1段明るいというのは大きなアドバンテージだ。周辺部の描写はともかく、画面中央部の描写はやはり高価なLズームだけのことはある
撮影データ:キヤノン EF16-35mm F2.8L USM 絞り優先AE F3.5 1/125秒 +0.7EV ISO1000 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:+1
厚木のビーチサイドグランプリでスポーツ走行を楽しむバイクをAI SERVOで連写。これはその中の1カットだ。
こうしたスポーツ撮影はシロウト同然のボクだが、きちんと被写体をフレーミングし続けられれば、かなりの確率でAFが追随する。できれば、もっとシャッタースピードを落として動感を表現したいところだが、まだまだこれからの課題だ。ちなみにビーチサイドグランプリでは、レンタルカートや持ち込みのスポーツ走行が行なえる
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F7.1 1/500秒 -0.3EV ISO100 WB:オート カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:+1
今年4月16日にグランドオープンした新江ノ島水族館。従来の江ノ島水族館は35-105mmクラスのズームでもイルカのパフォーマンスショーを十分撮影できたが、“新えのすい”では少なくとも70-200mmクラスのズームは必須。また、背景がうるさいので撮影ポジション選びがむずかしい。また、どこからイルカが飛び出してくるか、なかなか見極められず、シャッターチャンスとフレーミングには苦労する。
秒8.5コマで連続40コマのJPEG撮影ができるMarkIIとはいえ、むやむやたらにシャッターを切っていてはアッという間にバッファメモリがいっぱいになり、記録待ちに陥ってしまう。少しでも連写枚数を増やすために記録解像度をM1(6M)やM2(4M)に落として撮影するのも手だ
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F8.0 1/1600秒 0.7EV ISO800 WB:色温度直接指定(5000K) カラーマトリックス:3 シャープネス:4
何度かイルカのパフォーマンスショーを見ていると、トレーナーの仕草で次にどのようなジャンプを指示しているのかがわかるようになる。これはトレーナーの指示を見て、スピンしながらのジャンプだと予想して待ち伏せて撮影したカットだ。
とはいえ、毎回イルカがジャンプするポジションは微妙に変化するので、水面に飛び上がってからフレーミングを決め、シャッターボタンを押してもAFが追随するMarkIIのカメラ能力に助けられている面は大きい。これも600万画素のM1モードに設定、連続撮影枚数がISO100で50コマまでアップする
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F8.0 1/1600秒 0.7EV ISO800 WB:色温度直接指定(5000K) カラーマトリックス:3 シャープネス:4
ボクはいわゆる鉄ちゃん(鉄道マニア)ではないのだが、なぜか路面電車に強く惹かれる。生まれが広島なので、深層心理になにか擦り込まれているのだろうか。専用軌道を走る路面電車にはあまり興味はなく、人やクルマと渾然一体となって走る姿がいい。このカットは、江ノ電の腰越〜江ノ島間で撮影したもので、超望遠ズームを使って遠近感の圧縮を狙ってみた
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F8.0 1/1250秒 0.3EV ISO400 WB:色温度直接指定(4800K) カラーマトリックス:3 シャープネス:4
江ノ島の海岸にあるオブジェを超望遠レンズで切り取ってみた。こうして一部分を切り取ると、まるで日本ではないみたいだ。
撮像素子が35mmフルサイズのEOS-1Dsだと、レンズ性能が低下する周辺部までしっかり写ってしまうので、手持ちのレンズにどんどん欲求不満を感じるようになってしまうが、MarkIIなら画質が低下する周辺部がトリミングされ、なおかつ10DやKiss Digitalよりは実撮影画角が広いので、既存の35mm用交換レンズ群を流用するデジイチとしては個人的にはもっとも精神衛生上好ましいと思っている
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F9.0 1/1600秒 0.3EV ISO400 WB:色温度直接指定(4800K) カラーマトリックス:3 シャープネス:4
MarkIIは白飛びしやすいという人もいるが、ボクは決してそんなことはないと思う。むしろハイエストライトからハイライトのつながりは非常に良く、唐突かつ不自然に白飛びすることがないのが気に入っている。ただ、全体に階調が持ち上がっていてコントラストが低く見えるので、力強さに欠けて見えるのかもしれない。しかし、このカットのように輝度差の大きな被写体を撮影しても、ハイライトからシャドーまでしっかり出ている。スポーツ撮影など補助光が使えない撮影で、シャドー部が暗く落ち込まないような画質設計にしているのではないだろうか? デフォルトの階調再現特性が気にくわないならば、パソコンからトーンカーブ設定をカスタマイズすることもできる
撮影データ:キヤノン EF70-200mm F2.8L IS USM 絞り優先AE F4.5 1/1250秒 ISO400 WB:色温度直接指定(4700K) カラーマトリックス:3 シャープネス:4
東京の多摩動物公園のレッサーパンダ。手前に檻やガラスなどの障害物がなく、のびのびと動き回るレッサーパンダの姿を撮影できる絶好の撮影場所だが、300〜400mmクラスの超望遠ズームがないとアップで写すのはむずかしいかも。晴れた日は明暗差が激しく、しかも午後になると逆光気味になるので、むしろ薄ぐもりくらいが撮影には適していると思う。それでもレッサーパンダの白い毛並みに露出を合わせると黒い部分がつぶれてしまうので、現像パラメータ設定でコントラストを-1に設定して撮影してみた
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F7.1 1/320秒 -0.3EV ISO800 WB:色温度直接指定(5200K) カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:-1
レッサーパンダは夜行性なので、昼間は割とグデッとしていることが多いのだが、この日は珍しく活動的だった。レッサーパンダの撮影にはEF100-400mmF4.5-5.6L IS USMが欠かせない。この焦点距離域のレンズとしては非常に描写性能が高く、秒差に甘さが少ないのが魅力だ。ただ、開放F値は明るくないので、感度はISO800くらいにしないと手ブレの危険が増大する。MarkIIは高感度でもノイズが少な目とは言われているが、緑色のシャドー部分には結構ノイズが目立つし、階調も途中でベタッとつぶれてしまっていることが多い。レタッチで必要以上にシャドーを持ち上げるのは厳禁だ
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F7.1 1/320秒 -0.3EV ISO800 WB:色温度直接指定(5200K) カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:-1
ISO1600ともなるとノイズも結構目立つようになるが、記録解像度をM2(4M)に落とすと、ノイズもさほど目立たなくなり、ISO100時のJPEG連続撮影枚数も53コマと、M1の50コマから微増する。画素数が少なくなったことで、手ブレやピンぼけも目立ちにくくなる効果もあり、悪条件での撮影では、思い切って高感度にして記録解像度を落としてみるのも、失敗作を量産して落ち込まない自衛手段だ(笑)
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F6.3 1/800秒 -0.3EV ISO1600 WB:色温度直接指定(5200K) カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:-1
これもISO1600、記録解像度M2での撮影だ。おそらく800万画素で撮影していたらもっとアラが露呈していたかもしれないが、400万画素まで落とせば細かいアラは消えてしまう。RAWとJPEGの同時記録する場合もJPEGの記録解像度を落とした方が、撮影枚数的には有利だ。ちなみに、「速さ」のフラッグシップモデルとして使う場合はJPEG、「画質」の準フラッグシップモデルとして使うときはRAW+JPEGの同時記録で撮影している。RAWと同時記録のJPEG記録解像度もメニューではなく背面の解像度ボタン+サブ電子ダイヤルで切り替えられるのも便利だ
撮影データ:キヤノン EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM 絞り優先AE F5.0 1/500秒 -0.7EV ISO1600 WB:色温度直接指定(5200K) カラーマトリックス:3 シャープネス:3 コントラスト:-1

伊達淳一(だてじゅんいち)
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌でカメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自らも身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。

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http://canon.jp
□製品情報
http://cweb.canon.jp/camera/eosd/1dmk2/index.html
□関連記事
【1月29日】キヤノン、820万画素で秒間8.5コマ連写の「EOS-1D Mark II」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0129/canon.htm
【5月11日】【那和】 キヤノン EOS-1D Mark II
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0511/dcr014.htm

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(2004年6月29日)

[Reported by 伊達淳一 ]


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