石井英男のDigital Life

e-Bookリーダー「LIBRIe EBR-1000EP」を試す
〜世界初、電子ペーパーを実用化




 前回取り上げた松下電器産業の「ΣBook」に続いて、ソニーからも電子書籍を読むための専用端末「LIBRIe EBR-1000EP」(以下EBR-1000EP)が発売された。EBR-1000EPは、ΣBookと同じ電子書籍専用端末であるが、その形状や製品コンセプトには大きな違いがある。

 今回は、EBR-1000EPを試用する機会を得たので、ΣBookと比較しながらその使用感を紹介することにしたい。


●E INK方式の電子ペーパーを採用

 ソニーのEBR-1000EPは、電子書籍を読むための専用端末(e-Bookリーダー)である。EBR-1000EPの最大の特徴は、液晶パネルではなく、電子ペーパーと呼ばれる全く新しい方式の表示デバイスを利用していることである。

電子ペーパーを採用したEBR-1000EP。コントラストが高く、視認性には満足できる 液晶パネルと違って、視野角依存性がないので、斜めからみてもくっきりと表示される

 電子ペーパーにもいくつかの方式があるが、EBR-1000EPで採用されているのは、E INK方式の電子ペーパーと呼ばれるもので、プラスに帯電した白色顔料とマイナスに帯電した黒色顔料が無数に浮遊しているマイクロカプセル(直径約40μm)が敷き詰められた構造をしている。イメージとしては、小さなイクラのようなカプセルが一面に並んでいると思えばよい。背面の電極から電圧をかけることで、白と黒の顔料を上下に移動させ、文字や映像を表示する仕組みである。

 電子ペーパーは、液晶パネルと違って視野角依存性がなく、印刷された本物の紙のように見える。自ら発光するわけではなく、書き換え時にしか電圧をかける必要がないので、消費電力が非常に小さいことも利点だ。

 松下電器産業のΣBookでは、表示デバイスとして記憶型液晶と呼ばれる特殊な液晶パネルが採用されていたが、コントラストが低く、表示品質には満足できなかった。しかし、EBR-1000EPの電子ペーパーの表示は非常に見やすく、まるで画面の部分に写真を貼り付けたモックアップかと思うほどである。

 EBR-1000EPの電子ペーパーのサイズは6型で、解像度はSVGA(800×600ドット)だ。グレースケールの階調は4階調で、ΣBookの16階調グレースケールに比べると劣る。また、ΣBookは、XGA(1,024×768ドット)液晶を2枚採用しているので、一度に表示できる情報量という点では、ΣBookのほうが格段に多い。

 電子ペーパーの白は完全な白ではなく、ややグレーがかかっているが、新聞と同等以上のコントラストと反射率が確保されているので、実用上は十分だろう。

 なお、自発光型ではなく、フロントライトも装備していないので、暗いところでは視認性は落ちる。このあたりも、一般の紙と同じだと思えばよいだろう。

 ちなみに、E INK方式の電子ペーパーを採用した製品は、EBR-1000EPが世界で初めてとなる。実際に直射日光の当たる屋外でも使ってみたが、非常に視認性は高かった。紙に性質がよく似ている電子ペーパーは、電子書籍を実現するには最適なデバイスといえる。

●厚さ13mmのスリムで軽いボディを実現

 EBR-1000EPの本体サイズは126×190×13mmで、重量は約190g(カバー、乾電池含まず)とスリムで軽い。乾電池やカバーを含めても約300gなので、片手でも楽に持てる。

 ΣBookは、見開きページを実現するために2枚の液晶パネルを装備しており、書籍を模して折りたためるデザインを採用していたが、EBR-1000EPは単純なスレート型で、デザイン的にはシンプルである。ΣBookの本体サイズは、閉じた状態で154.5×205×25.4mm、開いた状態で292×205×12.7mmと、EBR-1000EPに比べるとかなり大きい。重量も電池とSDメモリーカード込みでは、約558gなので、携帯性はEBR-1000EPのほうが格段に上だ。イメージ的には、EBR-1000EPは文庫本や新書を持ち歩く感覚に近く、ΣBookはハードカバーの長編を持ち歩く感覚に近い。

 なお、電子ペーパー部分がむき出しになっているため、そのまま持ち運ぶには抵抗があるが、付属のソフトカバーを装着することで、電子ペーパー部分を保護できる。

 電子ペーパーは、書き換え時にしか電力を消費しないので、電池の持ちも時間ではなく、書き換えページ数で表される。単4形アルカリ乾電池4本または付属のACアダプターで動作するが、単4形アルカリ乾電池使用時では約10,000ページ分の書き換えが可能だ。1冊250ページだとすると40冊分読める計算になり、電池の持ちも十分満足できる。なお、一定時間操作していないと、スタンバイモードに移行し、その後同じ時間だけ経過すると、自動的に電源がオフになる。スタンバイモードへの移行時間は、10/15/30分から選択可能だ。

文庫本とのサイズ比較。文庫本よりは一回り以上大きいが、携帯性は優秀だ 本体の厚みの比較。左が230ページの文庫本。中央がEBR-1000EP(ソフトカバー装着時)。右がCDのジュエルケース 持ち運びの際に電子ペーパー部分を保護するためのソフトカバーが付属する
ソフトカバーを閉じたところ。電子ペーパーやキーボードが全てカバーされる ソフトカバーの2つの穴を本体裏側の突起にはめることで、ソフトカバーが装着される 単4アルカリ乾電池4本で約10,000ページ分もの書き換えが可能
スタンバイモードへの移行時間は、10/15/30分から選択できる キーボードとジョグダイヤル部分のアップ。キーやジョグダイヤルはかなり小さいので、やや操作しにくい

 操作はジョグダイヤルとキーで行なう。ジョグダイヤルやキーは小さいので、慣れるまで多少使いづらく感じることがある。ΣBookは、操作ボタンが5つ用意されているだけで文字の入力などはできなかったが、EBR-1000EPは、小さいながらもキーボードを装備しているので、文字入力も可能である。

●画面の切り替え速度は十分だが全体的な反応が鈍い

 EBR-1000EPでは、文字の表示を2階調(速い)と4階調(きれい)から選択できる。4階調では、グレースケールフォントで表示されるので、小さい文字でも読みやすい。4階調の場合は、画面の書き換えの際に、一瞬画面全体を黒くリフレッシュしてから、文字が表示されるが、書き換え速度は約1秒程度でそれほど遅いという印象は受けない。2階調にすると、画面が黒くならずに書き換わるので、さらに高速だ。ΣBookでは、見開きで2枚分の表示を切り替えるのに、約4秒もかかっていた。

 文字サイズは、200/175/150/125/100%の5段階に変更できるので、視力の弱い人にも嬉しい。音声付きコンテンツに対応していることも特徴だ。ΣBookでは、音声付きコンテンツをサポートしておらず、このあたりも、あくまで従来の書籍の電子化を狙ったΣBookとはコンセプト的に異なる。

 ただし、ページ送り自体は比較的高速なのだが、メニュー操作や電源オフの状態からの起動など、全体的なレスポンスは遅めだ。メニューを選ぶ際など、項目が行き過ぎてしまっていらいらすることがあった。

文字の表示は、2値と4値から選択できる 4値にすると、フォントのジャギーが目立たず、読みやすい 2値では、書き換えが高速になるが、フォントのジャギーがやや目立つ
内蔵メモリやメモリースティックに格納されている書籍データは、著者順やタイトル順で表示される 途中まで読んだ書籍は、「続きを読む」か「最初から読む」かを選択できる 100%サイズ(通常サイズ)での表示例。文庫本とほぼ同程度の情報量を表示可能
文字サイズは、200/175/150/125/100%の5段階に変更できる 最大サイズの200%で表示したところ。視力の弱い人でもこのサイズなら問題なく読めるだろう
スピーカーを搭載しており、音声付きコンテンツにも対応する メニューボタンを押すと、メニューが表示される

●本文中の語句を内蔵辞書で引くことができる

 EBR-1000EPは、「マイペディアJOY」、「パーソナル現代国語辞典」、「カタカナ新語辞典」、「現在新語情報辞典」の4種類の辞書を内蔵していることも特徴だ(別売りのメモリースティック-ROM辞書にも対応)。これらの辞書を利用して、文中の不明な言葉の意味を調べることができる。ちなみに、キーボードを装備していないΣBookでは、辞書を使うことは想定されていない。また、本文にしおりを挟んだり、文章の一部をスクラップして本体メモリに保存することも可能だ。

「マイペディアJOY」、「パーソナル現代国語辞典」、「カタカナ新語辞典」、「現在新語情報辞典」の4種類の辞書を内蔵している メニューから「辞書を引く」を選べば、本文中の語句から辞書検索が行なえる ジョグダイヤルを使って、語句の始点と終点を指定する
検索結果はこのようにウィンドウ表示される マルチ検索機能では、内蔵している全ての辞書を使ってインクリメンタルサーチが可能だ カタカナ新語辞典の検索結果。文字はかなり小さいが、十分読める

●コンテンツの流通は期間限定のレンタル方式を採用

 EBR-1000EPで閲覧できるコンテンツは、ソニーが開発したBBeB(BroadBand eBook)規格に準拠したデータのみだ。BBeBはテキストベースのフォーマットなので、容量が小さいという利点があり、10MBの内蔵メモリに約20冊分の書籍データを格納できる。また、メモリースティックスロットも装備しており、512MBのメモリースティックProを利用すれば最大500冊(本体内蔵メモリとメモリースティックあわせて最大500冊まで)もの書籍を持ち出すことが可能だ。

 BBeB規格の書籍データは、「Timebook Town」(http://www.timebooktown.jp/)から1冊あたり210〜315円程度で入手できる。Timebook Townのユニークなところは、売り切り制ではなく、レンタル方式(貸本制度)を採用していることだ。期間は60日間で、ダウンロードしてから60日間は自由に読めるが、それ以降はいっさい読めなくなってしまう。これはかなり思い切った流通方式であり、賛否両論ありそうだ。個人的には、売り切りとレンタル形式の両方が選べれば(当然売り切りのほうが価格は高く設定されることになる)、ベストだと思うのだが。

 もちろん、EBR-1000EPで直接Timebook Townからダウンロードすることはできないので、いったんPCにダウンロードし、USBケーブルかメモリースティック経由でEBR-1000EPに転送して読むことになる。

 なお、USB経由で接続してデータを転送するには、ACアダプタを本体に接続する必要がある。転送には、EBR-1000EPに付属のソフトウェア「LIBRIe for Windows」を利用する。また、「LIBRIe for Windows」は、BBeBビューワーとしての機能も装備しており、PCでもBBeB規格の書籍を読むことができる。なお、PCからEBR-1000EPへの転送には機器登録が必要で、「LIBRIe for Windows」がインストールされているPCを含めて最大4台までの機器を登録できる。

本体上部にメモリースティックスロットを装備している 底面には、ミニUSBポートやDC電源、ヘッドホン端子、音量ボタン、電源スイッチが用意されている
付属の「LIBRIe for Windows」を使えば、PCでもBBeB形式のコンテンツを読むことができる。PCからEBR-1000EPへのコンテンツの転送も、LIBRIe for Windowsを利用する 小説だけでなくコミックのコンテンツもいくつか用意されているが、ΣBookとは違って見開き表示はできないため、コミックにはあまり適していない

●BBeB規格のデータを気軽に作れるオーサリングツールの登場も期待したい

 EBR-1000EPは、視認性の高い電子ペーパーを採用しており、気軽に携帯できるサイズと重量を実現したことなど、なかなか気になる存在だ。

 文字の視認性や書き換え速度は(EBR-1000EPも操作自体の反応は決して高速とはいえないのだが)、先行したΣBookに比べて明らかに勝っている。しかし、利用できるコンテンツがレンタル方式のみであることや、実売価格が42,000円前後もすることなどを考えると、やはり万人にお勧めできる製品とは言いがたい。

 しかし、最大500冊もの書籍を気軽に携帯できるというのは、やはり電子書籍ならではのメリットだ。海外出張や旅行などの道中に読む本を持っていきたいのだが、荷物が重くなるのは嫌だという人や、単行本を買っても一度読んだら二度読み返すことがなく、本棚が一杯になって困っている人には、魅力的な製品であろう。

 また、テキストファイルからBBeB規格の書籍データを作成するオーサリングツールが無料あるいは低価格で提供されることも期待したい。こうしたツールが気軽に使えるようになれば、青空文庫からダウンロードした著作権切れのテキストファイルや自分で書いた文章などもEBR-1000EPで読めるようになるので、さらに使い道が広がるだろう。

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【3月24日】ソニー、E INK採用の電子書籍端末「LIBRIe」
〜電子書籍レンタルサービス「Timebook Town」も開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0324/sony.htm

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(2004年6月11日)

[Reported by 石井英男]


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