Taipei International Convention Center 会期:6月1日~5日(現地時間)
GPUベンダのNVIDIAは、COMPUTEX期間中に報道関係者や同社の顧客を対象としたプライベートショーを、会場近くで開催している。 NVIDIAの展示会場では、「CK8-04」の開発コードネームで呼ばれる次世代nForceのプロトタイプが展示されたほか、先月同社が発表したノートPC向けGPUモジュール規格である「MXM」に準拠したビデオカードなどが展示された。しかも、MXMに関しては実際に動作している様子がデモされた。 ●正式発表されたnForce3 Ultraと次世代チップセットのCK8-04 NVIDIAのブースでは、別レポートにもあるSocket 939に対応したnForce3 Ultraのデモと、CK8-04(Crush K8-04)の開発コードネームで知られる次世代nForceのプロトタイプが展示された。 COMPUTEX TAIPEIの初日の時点では正式発表がされていなかったnForce3 Ultraだが、その後NVIDIAからプレスリリースが出て正式に発表された。 nForce3 Ultraは、基本的にはnForce3 250GbのSocket 939対応版で、システムバスであるHyper Transportの動作クロックが1.6GHzから2GHzに引き上げられている。ただ、基本的には従来のnForce3 250Gbと同等で、大きな差はないと考えてよい。VIA K8T800のSocket 939/Hyper Transport 2GHz対応版がK8T800 Proであるのと同じような位置づけの製品であると言える。 これに対して、CK8-04は次世代nForceとなる製品だ。開発コードネームのCK8-04は“Crush K8-04”の意味で、Crush K8(nForce3の開発コードネーム)の4番目の製品という意味になる。 CK8-04の最大の特徴は、PCI Expressに対応していることだろう。CK8-04は従来のnForceと同じ1チップのチップセットで、いわゆるノースブリッジ機能とサウスブリッジ機能が1つになっているものだ。 PCI Express x16とx1が2ポートという仕様になっているほか、Serial ATAが4ポートなどほかのPCI Express世代のチップセットと互角の仕様といえる。NVIDIAによれば今回は製品発表はなく、あくまで技術デモということだった。 なお、CK8-04には、Socket 940、つまりOpteron用のProfessional版も用意されており、CK8-04 Proの開発コードネームで呼ばれている。NVIDIAのブースにはCK8-04 Proを搭載したiWillのマザーボードが展示されており、AMD-8131もHyper Transportで接続され、PCI-Xスロットも用意されていることが特徴だ。 仕様としては、PCI Express x16が1つ、PCIバス×2、PCI-X×3となっていた。CPUソケットにはSocket 940が2つ搭載されており、Opteron 2xxシリーズをデュアルで利用できるようになっている。
●MXMの普及を印象づける実働デモを公開 さらに、NVIDIAのブースでは、先月発表されたノートPC向けのPCI Express対応モジュールである「MXM」(Mobile pci-eXpress Module)の実働デモが行なわれた。 MXMはOEMメーカーのブースでも展示されているが、NVIDIAブースでは、IntelのPCI Express向けチップセットであるAlviso(Intel 915 PM/GMの製品名で呼ばれる予定)と見られるチップセットを搭載したリファレンスマザーボードに搭載され、実際に動作するデモが公開された。 MXMは、NVIDIAがODMメーカー向けに策定したPCI Expressのモジュールスペックで、NVIDIAのGPUや、他社のGPUを搭載して利用可能になっている。PCメーカーは、MXMを利用することで簡単にGPUをBTOできるほか、MXMカードをユーザーが交換できるように設計すれば、将来、新しいGPUがリリースされた場合でも交換できるようになる。 今回公開されたのは、NV37mの開発コードネームで呼ばれているもので、PCI ExpressをAGPに変換するブリッジチップを、GPUと同じパッケージに封入したもの。これにより、別途HSIのチップを用意しなくてもPCI Express対応とすることができる。チップの機能それ自体はNV36m(GeForce FX Go 5700)とほぼ同じ仕様で、NV36mのPCI Express対応版と言ってもよい。 ただし、MXMのようなブリッジチップを利用した場合には、消費電力が問題になる。PCI Express x16のコントローラの消費電力はそれなりに大きいといわれている。これはPCI Expressのコントローラが16個内蔵されている計算になるため、どうしても消費電力が大きくなってしまうのだ。 さらに、ブリッジチップの場合には、ブリッジチップとGPUの双方にAGPのコントローラが必要になる。その分が余計な消費電力がかかるわけで、どうしてもネイティブのPCI Expressに比べて不利になる。 むろん、NVIDIAもその問題は認識しており、実際に出荷されるのは、ブリッジチップだけではなく、ネイティブ版も用意することになるようだ。 「HSIを利用した場合にはどうしても不利になることは事実だ。このため、弊社ではモバイルPCでPCI Expressが必要になるまでにはネイティブ版をリリースする予定だ」(NVIDIA モバイルプロダクトマネジメント担当ディレクター ビル・ヘンリー氏)との通り、IntelがAlvisoをリリースするまでにはネイティブ版をリリースする予定であるとのことだ。 なお、このほかにも、MXMを搭載したモジュールが数点展示されたが、いずれもMXM Iであり、今回はIIやIIIなどに関しての展示はなかった。
●ATIは「AXIOM」を発表して対抗 なお、昨日ATI Technologiesは、MXMに対抗するPCI Expressベースのモジュール仕様としてAXIOMを発表している。 AXIOMは、昨日発表されたPCI ExpressネイティブのモバイルPC向けGPUであるMOBILITY RADEON X600に対応したPCI Expressベースのモジュールで、Advanced eXpress I/O Moduleの略となっている。 なお、MOBILITY RADEON X600は、開発コードネームRV370で知られてきたPCI Expressのネイティブに対応したX600のモバイル版で、初のモバイル向けPCI ExpressネイティブのGPUということになる。 ATIがAXIOMを発表した背景には、PCI Express世代になることで、同社のアドバンテージの1つであった“FLEXFIT”と呼ばれるピン互換戦略が、一度リセットされる形になると受け止めているからだ。 というのも、FLEXFITをうまく活用することで、OEMメーカーは、下はMOBILITY RADEON(M6)から、MOBILITY RADEON 7500(M7)、MOBILITY RADEON 9000(M9)、MOBILITY RADEON 9600(M10)、そして上はMOBILITY RADEON 9700(M11)まで、1つの同じフットプリントで対応できるようになっていた。OEMメーカーは1枚のPCB(基板)で、様々なGPUのバリエーションに対応可能で、この点でATIはNVIDIAをリードしてきた。 しかし、GPUのバスがAGPからPCI Expressに変更されることで、この点はリセットされ、再びフルラインナップをそろえるまで、ピン互換というものは存在しなくなる。だから、NVIDIAにとってもMXMを投入してモジュール互換という戦略をとるチャンスなのだ。逆に言えば、当然ATIはNVIDIAのそうした動きに警戒感を持ってもおかしくなく、AXIOMの発表はその表れといえるだろう。 現時点ではAXIOMに関する資料はATIのWebサイトにあるMOBILITY RADEON X600に関する資料のみで、詳細はわかっていない。本日、ATIはPCI ExpressネイティブGPUの発表会を行なう予定で、そこで何らかの発表がされる可能性がある。MXMと互換性があるのかないのか、なども含めて要注目だ。 □COMPUTEX TAIPEI 2004のホームページ(英文) (2004年6月3日)
[Reported by 笠原一輝]
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