初期バージョンの回路図は非常にシンプルだ。電源は±15v(アナログと一部DAC)/±5v(DAC)/+5v(デジタル)を用意し、DAIのCS8412とDACのTDA1541Aはデータシートに書いてあるままOut I2S Formatでつなげただけ。I/V変換とLPFの回路は、8パラDACのものをそのまま使い、OPA2604で作動チェックした後、ゲタを使ったOPA627BP+OPA627APに即置き換えた。以降、順を追って説明する。
TDA1541A 1FS DAC V1.0デジタルフィルタが無く、回路は非常にシンプルになる。LPFはfc=約40KHzと高めなので、抵抗を3KΩ+3KΩとしfc=約30KHzにした方がいいかも知れない。CS8412はOut I2S Formatで作動 |
DAC本体けっこうギリギリになってしまった。大きい抵抗はI/V変換用のDALE NS-5B。NS-2Bと同じ値段で音がいいと聞いたので使ってみた。TDA1541Aの左右に並ぶコンデンサが特徴的だ |
とりあえず完成!TDA1541Aの電流出力は2mAを基準に4mA流れるので、I/V変換すると約+3.7vのDCオフセットが出る。従ってDCカットのコンデンサが必要。手持ちの25SA33を使った。オペアンプ側が+となる |
電源回路 V1.0とりあえず一番簡単に必要な電圧が得られる回路にした。ダイオードブリッジの手前が約13v、ブリッジ後が√2倍になり約19vあるので、三端子レギュレータを使い、±15v/±5v/+5vを作る |
電源周り1後に作り変える予定だったので、コストをかけずほとんど8パラDACを作った時の余り部品で済ませた。約19vから5vも作っているので発熱が心配であったが、全く問題無く作動している |
音出し中1軽くOPA2604で聞いた後、ゲタを使ったOPA627BP+OPA627APへ乗せ換え、この状態で約一週間エージングを行なった。LPFの効きが悪いのか!?少し高域がキツイものの、全体的には非常に生っぽい素直な音だ |
電源回路 V2.0先に紹介した1fs/8fs切り替え式DACの電源キットが出たのでオプションのRA40と共に購入し、±12vを作る7812/7912を7815/7915へ置き換えパーツも変更。8パラDACで特注したRA30をこちらへ回した |
電源周り2V1.0と比較して、Rコアトランス、デジタル/アナログ/DACは独立回路となったので、それなりに音は良くなるハズである。ヒューズもSBF-1.0Asに付け替えた。この電源部だけでも結構な金額になってしまうのは痛い |
音出し中28パラDACの時に経験したのと同じように音は激変した。これを聞いた後だともうV1.0の電源には戻れない。また普通のヒューズは音量を上げると煩く感じるが、SBF-1.0Asは静けさの中に音がある感じで自然 |
リクロック回路追加精度を上げるためリクロックを行なった。検索した結果、いろいろな方法があったものの、非常にシンプルなパターンを選んだ。CS8412の作動モードをIn I2S Formatへ変更し、簡単なクロック回路を付けただけである |
高精度水晶発信器クロックの基準となる11.2896MHzの三田電波製高精度水晶発振器(5v/1ppm仕様)をプラクトサウンドシステムから購入。ピン配置自体はDIP 14pinと同じ(但し1/7/8/14pinのみ)で、ICソケットがそのまま使える |
音出し中3驚くほどの効果があった。8パラDACでOPA627BPを使ったI/V変換から、SATRI-ICを使ったI/V変換へ換えた時に匹敵する。定位が良くなり音も非常に滑らかになる。この時点で8パラDAC(改)を抜いてしまった |
ライントランスを使った回路気になっていた高域のキツさは、デジタルノイズが多く乗っているのが原因か!?前回のUSBオシロスコープで測ったデータからもそれが解る。高次LPFを自作するのは難しいので、ライントランスでノイズ除去を試す |
集めたトランスライントランスとして使える600Ω:600Ωを二種類揃えた。どちらもタムラ製である。片方はTD-1。ヤフオクで落としたものだ。本命は別にあるが、ここで型番を書くとヤフオクで高騰するかも知れないので伏せておく(笑) |
音出し中4トランス自体の色が付く(可能性もある)ので好き嫌いは解れると思われるがその効果は絶大だ。耳障りな感じは全く無くなり滑らか。更に馬力が付いてレンジも広く聞こえる。筆者的には好みの変化である |
SATRI-IC I/V変換回路切り札(?)のSATRI-ICを使ったI/V変換。8パラDACから外し、LPFを0.1μFから0.2μFにしてfc=約20KHzへ、DCサーボの10KΩを1KΩへ、出力保護を100Ωからライントランス対応で560Ωへと若干の回路変更を行なった |
8パラ用から若干の手直しDCサーボの10KΩを1KΩへ変更したのは、TDA1541Aの2mAオフセットを打ち消すため。また非反転作動のままなのは、反転作動にすると、この2mAのオフセットが更にDCサーボに乗り面倒なことになるからだ |
音出し中5逆相についてはD/Dコンバータで対応した。一般的に簡単なのはSDATAにAC04などを入れ反転するか、ライントランスを逆接にすればよい。音はもちろん抜群!ライントランスはケースへ入れるときに接続する |
以上、現時点の工作内容をご紹介した。ベースの部分が出来上がると、後は応用でいろいろなバリエーションを好みに応じて追加可能だ。特に今回はリクロックとライントランスが有効であることを実感した。個人的にはさまざまな年代のパーツが一つのDACを構成しているのが面白いと思っている。自作ならではと言えるのではないだろうか!?
実は、これらの実験結果からもう一度作り直すことを考え、回路図は書いてあるのだが最近仕事が忙しく、それどころではなくなっている。回路図(DAI+DAC+ReClock+電流式LPF, SATRI-IC I/V)を置くので興味のある人は見て欲しい。ポイントはI/V変換以降を別基板へ。更にSATRI-ICを使ったI/V変換は反転作動にした上でDCサーボではなく抵抗による半固定式へ変更する。また、I/V変換以降を別基板にしたことで、SATRI-ICを使ったI/V変換だけではなく、オペアンプ式、抵抗式やトランス式など、いろいろなパターンを簡単に実験できる。もちろん、このnon-oversampling DACに限ってはライントランスを使うことが大前提。海外では抵抗式I/V変換の後、真空管を使ったバッファが流行っているようだ。更なるステップとして、TDA1541AのDual作動なども考えているが、工作はいつになることやら……。