西川和久の不定期コラム
「大人の休日“PCM61P 8パラDACを作る” 前編」



PCM61P 8パラDAC(改)

 前回はASIO4ALLを使って、PCで音質向上を!的な記事を書いた。今回はその流れでS/PDIF→DAC(D/Aコンバータ)を作ってみる。と言うのも、Yahoo! オークションで面白いDACのキットを見つけたからだ。一般的に店舗で販売しているキットと違い、数も少なく非常にレアな逸品であるが、箸休めとして読んで欲しい。

 元々工作が好きで、延長線上としてパソコンを触りだした読者の方も多いと思う。休みの日は、昔に戻って半田ゴテ握るのもいいのではないだろうか!? 筆者も大昔、6CA7シングルの真空管アンプからはじまり、Z80までは手配線したものだ。

Text by Kazuhisa Nishikawa


●ヤフオクで面白そうなキット発見!

 いつものようにYahoo! オークションでいろいろ眺めていると、『PCM61P 8パラ構成DAコンバータ(DAC)基板キット』を発見!もしや!?と思い、ページを見たところ、やはりh_fujiwara_1995氏だった。彼は以前から面白い自作DACを出品しており、何回も入札寸前まで悩んだことがある。一番印象的だったのは『PCM61P−32パラDAC(自作)』だ。記述によると、「DACチップの並列化のメリットは、その個数の平方根に比例してS/N比が向上する点にありますが、聴感上はそれ以上に音の力強さが増すようです」ということらしい。メーカー製では筆者の知る限り、DACを4つパラったものはあるものの、流石に32パラとは豪快過ぎる。そして今回はDACのキット化だ。

 このキットの仕様を簡単に並べると、
  1. デジタルオーディオ復調(TC9245N) 32/44.1/48kHz自動追従(IC仕様)Coaxial入力
  2. デジタルフィルタにPD00601を使用。8倍オーバサンプリング
  3. DACはPCM61P Jグレード 18bit分解能、8個パラレル電流加算接続
  4. I/V変換はオペアンプ(4580DD)+I/V抵抗使用
  5. ポストLPFはオペアンプ(4580DD) 二次ローパス(fc=約40kHz)
  6. 電源部はDAC/デジタル部/アナログ部を分離構成。DAC部はL/Rチャンネルでレギュレータを独立。トランスは付属せず。出力1:AC7〜8V/0.6A以上×2 DAC用(±5V), 出力2:AC7〜8V/0.2A以上 デジタル回路用(+5V), 出力3:AC12〜15V/0.2A以上×2 アナログ(オペアンプ)回路(±12V)が別途必要
  7. プリント基板はガラスエポキシ両面スルーホール。寸法180.3mm×195.6mm
といった感じである。中でも惹かれるのはやはりDAC8パラ接続だろう。メーカー製で無いものをキットで作る。これは実に明快で楽しいコンセプトだ。しかも即決価格は何と14,730円。これは安い! 思わずゲットしたのは言うまでもない。

 残念ながらこの記事が掲載される頃は既に売り切れている。しかし、2月の中旬に第2ロット(これで最後)が出るらしいので、興味のある人は要チェック!!

●内容とパーツ交換

 翌日届いて、さっそく中身を拝見。詳細は写真とキャプションを参考にして欲しいが、非常に良くできたキットで市販品も真っ青と言った感じだ。ただ、使用パーツに関しては、安いだけあってほとんどが一般グレード。この件をメールでh_fujiwara_1995氏に聞いたところ、「あまりグレードをあげるよりも、価格を抑えてできるだけ多くの人が自作の世界(地獄の世界ともいう)にはまりこむのを手助けしたいです(笑)。」ということだった。なるほど! それならいきなりパーツを交換して地獄行き直行便に乗るしかない! 多くの読者の方はオリジナルパーツでの音質が気になるところだと思うが、そこは筆者の連載ということでお許し頂きたい。

キットを開けて直ぐの状態
キットを開けてすぐの状態
左上がパーツ全てが入った袋。右上がプリント基板。左下は10ページのマニュアル+PCM61PとNJM4580DDのデータシート。右下が回路図で1ページ目は電源、2ページ目はDAC本体、3ページ目はプリント基板のサイズとなっている。マニュアルは非常に丁寧に書かれていて好感が持てる。
パーツ袋の中身
パーツ袋の中身
各袋には内容がわかるようにタグが入っている。左上のオレンジのバーはPCM61P×16個。右上の電解コンデンサは今回違うパーツに乗せ替えるため全く使わない。TC9245NとPD00601は同じ袋でデータシート入り。手前のブルーの包みは三端子レギュレータの放熱板だ。
簡単なブロック図
簡単なブロック図
ネットではDAIはCS8412、DFはSM5843とかがよく見かける型番。今回のTC9245NとPD00601のコンビネーションは初めてだ。最後のアナログ部は、2回路のオペアンプを使い、半分をI/V変換、もう半分をLPFに振り分けている。同じ8ピンでも1回路のオペアンプと入れ替えても動かないので注意!
プリント基板(表)
プリント基板(表)
良くできたプリント基板。真ん中の白い破線で切断することにより、電源部とDAC部を分離できる構造になっている。
プリント基板(裏)
プリント基板(裏)
一部細かいパーツがあるとはいえ、これだけ余裕があると楽に半田付け可能だ。改造したART DI/Oよりはるかにパターンが太い。
オリジナルパーツを使った完成写真
オリジナルパーツを使った完成写真
いきなりパーツ変更するので、オリジナルパーツを使った完成写真が撮れず、h_fujiwara_1995氏に写真を送ってもらった。


 パーツの交換も含めて、予算は最大5万円程度に設定する。大人の工作でこの程度なら許されるだろうという範囲だ。本体約1.5万円、電源トランス約1万円、ケース約1万円……。残りのパーツ代は約1.5万円となる。オリジナルのままで安く上げれば2万円以内に抑えることができるだろう。グレードアップするパーツは経験と好みから、電解コンデンサはOS-CONを使い、耐圧や容量の不足する電源周りはMUSE、整流用ダイオードはFRDからSBDへ、アナログ回路はDALE CMF-55(金属皮膜)とERO、I/V変換はDALE NS-2B(巻き線)、オペアンプは2回路なのでとりあえずOPA2604と言ったところか!? 予算とスペースがあれば、アナログ周りの抵抗は全てNS-2Bへ、コンデンサはSEマイカかディップマイカを使いたいところだが、ここは完成後に音を聞いての宿題とする。

オリジナルパーツ 交換パーツ 単価(円) 個数 購入場所
整流用FRD IN4002 (100V/1A) 11EQS10 36 8 株式会社千石電商
整流用FRD D3SM (100V/3A) 31DQ10 160 4 株式会社千石電商
オペアンプ NJM4580DD OPA2604 550 2 有限会社サン・エレクトロ
電解コンデンサ ELNA 470μF/35V OS-CON 16SA470M (470μF/16V) 390 10 株式会社若松通商
電解コンデンサ 100μF/50V OS-CON 20SA100M (100μF/20V) 300 4 株式会社若松通商
電解コンデンサ 2,200μF/50V ELNA Duorex II 3,300μF/25V ※2 570 4 株式会社若松通商
電解コンデンサ 3,300μF/35V ※1 MUSE 3,300μF/16V 400 10 海神無線株式会社
金属皮膜抵抗 100Ω DALE CMF-55 100Ω 60 2 海神無線株式会社
金属皮膜抵抗 2KΩ DALE CMF-55 2KΩ 60 4 海神無線株式会社
金属皮膜抵抗 360Ω(I/V変換用) DALE NS-2B 360Ω ※3 480 2 海神無線株式会社
フィルムコンデンサ 2,200pF ERO KP1830 2,200pF 160 2 海神無線株式会社
フィルムコンデンサ 1,000pF ERO KP1830 1,000pF 160 2 海神無線株式会社

※1 標準構成は6つ。オプションでプラス4つの空きパターンがあり、パラで接続され容量が増える。※2 この電解コンデンサは、たまたま手元に2つあったので、少しでも安く上がるように追加で2つ購入した。MUSE 3,300μF/25V×4でも問題無い。耐圧に余裕が無いので35Vの方が無難かも知れない。サイズが合えば、更に大容量のものを使うのも手だ。※3 DALE NS-2Bはリード線が太いため、そのままではプリント基板に刺さらず、穴を大きくする必要がある。面倒な場合はDALE CMF-55や何か好みのものを使えばよい。かなり高価(1本1,500円程度)ではあるが、ビシェイ抵抗もいいだろう。

 消費税込みで計14,965円!(ELNA Duorex II 3,300μF/25Vは、実際2つしか買っていない)ある程度計算しながら買い物をしていたとは言え、当初のもくろみにピッタリだと自分でも驚いてしまった。しかしこの手のパーツは高い。特に電解コンデンサ。全体の約50%を占めている。オリジナルパーツからどこを変えても音は変わるが、電源周りの大容量電解コンデンサは後回しにしてもいいだろう。但し、オプションの4つは付けた方が無難かな!?

●いざ出陣!!

 パーツも揃ったところで、いよいよ実際の組み立てに入る。部品が多く、数カ所細かいところがあるものの、難易度はさほど高くない。自分のペースでやれば問題ない範囲だ。全部終わってから極性や半田のチェックは大変なので、1ブロックごとに休憩をはさんでチェックした方が結果的に効率はよい。一般的に小さいもの、背の低いものから順に半田付けしていく。

まずチップコンデンサからやっつける!
まずチップコンデンサからやっつける!
マニュアルでは、パターンの片方へ半田を盛り、ピンセットを使ってチップコンデンサを持ち、半田を溶かしながら取り付ける図がある。ただ、筆者の場合はピンセットより指でやった方が効率よかった。
次はSOPのPD00601
次はSOPのPD00601
今回、一番大変だったのがここだ。実は10番ピンと11番ピンがブリッジしてしまい、その直しに手間がかかった。とりあえず何とかなったものの、この部分は慎重にやった方がいいだろう。
TC9245Nとその周辺
TC9245Nとその周辺
ここは普通の半田付け。抵抗値とコンデンサの容量、ダイオードの極性、ICソケットの向きだけ注意すればいい。小さいブルーのコンデンサは電源周りにもあるのでついでにやってしまった。
改造用のパーツ一式
改造用のパーツ一式
左上から、MUSE、ELNA Duorex II、OS-CON。電解コンデンサは色とりどりだ。中段はERO KP1830、OPA2604、DALE NS-2B、31DQ10。手前は11EQS10、DALE CMF-55。
オペアンプとその周辺
オペアンプとその周辺
アナログ周りは全パーツ変更。真ん中にある黒い抵抗がI/V変換に使うDALE NS-2Bだ。そのままでは穴が小さく入らないので、加工して取り付ける。幅がキツイにも関わらず縦に付けず横にした理由は後編で。
三端子レギュレータとその周辺
三端子レギュレータとその周辺
左上にあるダイオード31DQ10のリード線はかなり太い。イライラせずのんびりやるのが吉。三端子レギュレータはシリコングリスを塗り、放熱板へネジで仮止めし、その後プリント基板へ半田付けする。
PCM61Pを付ける
PCM61Pを付ける
計16個の取り付け。16ピン×16個なのでけっこう半田を消費する。この状態はまだ4パラDACだ。
最後は電解コンデンサ!
最後は電解コンデンサ!
最後の一踏ん張り!電解コンデンサの極性に注意して28個取り付ける。OS-CON 16SA470Mだけサイズギリギリ。
完成!!
完成!!
オリジナルパーツと比較して電解コンデンサがカラフルな分、少し高級そうに見えるかな!? 工作時間約5時間。

●一旦休憩

 仕上げに電源トランスをつないで音出し!したいところではあるが、実はまだ電源トランスが無いのだ。冒頭で書いたように、このキットは3種類の電源トランスが必要。普通に秋葉原で売っているのを使うと、トランスが3つ並ぶことになる。また、せっかくここまでパーツを入れ換えてたのに一般品というのもイマイチ面白くない。いろいろ悩んだ末、株式会社フェニックスという会社へトランスを発注した。ここは個人で1個からでも対応してくれる自作派には強い味方だ。注文したのはRA30というタイプで、二次出力3回路(7-CT-7V/1.0A, 7V/0.5A, 15-CT-15V/0.4A, 静電シールド付き)。これならトランスは1個で済む上、Rコア+ダイエイ電線とオーディオグレードだ。納期2週間。ものが届くまでの間、ミス配線が無いか、のんびりチェックしながら待つことにする。あっ、ケースやコネクタ類も買わなければ……。(後編へ続く)

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(2004年2月10日)

[Text by 西川和久]


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